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得意なもの
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何を話したか忘れてしまうほど、上の空で柚流は歩く。
尚澄も、何か考え込んでいるようだ。
完全に空が暗くなる前に家につくと、尚澄から家に寄らない?と誘われた。
親は妹と弟を学童から連れて帰るため、あと1時間くらいはかかるそうだ。
2人共、親の仕事が遅く鍵を持たされている。
柚流の親は今日は早く帰ると言っていたが、まだ家の窓は暗い。
兄も、遠くの大学に行っているため帰りが遅い。
まだ、誰もいないから、帰宅が遅れても良いだろうと判断する。
それに、家にいなくても真っ先に尚澄の家に確認しにくる。
そう思って柚流は頷き、一緒にリビングに入った。
何度も小さい頃から、見ていた風景だ。
リビングのいつものソファーに腰掛ける。
少しの沈黙の後、気づまりで何か話題をと思い、柚流はランドセルの中から小さな袋を取り出した。
「これ、お兄ちゃんの彼女さんに頼まれたアクセサリーなんだ。上手に出来たから、何となく離れがたくて学校に持っていっちゃった。」
そう言って、袋から取り出したレジンで作ったネックレスやらキーホルダーを見せる。
柚流は、運動も勉強もいまいちだけど、美術だけは褒められていた。
最近は、レジンという樹脂を固めたものを、良く作っている。
尚澄は、感心したようにアクセサリーを手に取る。
「すごいね。中に花とかキラキラしたの入ってる。器用だね。」
そして、光にかざすと反射してきれいに見える、と言いながら回転させては感心している。
柚流は、自分の作品を見てくれることが嬉しくて、尚澄に近づいて話す。
「部活さ。どうしようかな、って思ったけど、色々やりたいことが山ほどあるんだ。部活の時間を絵を描く練習とか、他のことにあてたくて。」
「そうだね。美術部もあるけど、ほぼ幽霊部員か、落書きしながらおしゃべりしてたしね。」
2人は去年の部活体験へ中学校へ行った時のことを思い出す。
「運動部はちゃんとやってたよね。」
「そうそう。厳しそうだった。」
スポーツはどの部活も良い先生がいるらしく、強いって言っていた。きっと、尚澄は活躍するだろう。
「すみくん、中学校は部活入ったほうが良い。運動神経が良いんだから、もったいないよ。ぼくが帰宅部だからって同じにするの止めて。」
柚流は、めずらしく少し厳しい口調で言う。
尚澄は、どう返答すれば良いのか分からず、悲しそうな顔をしている。
「ごめん。帰るね。」
黙っている尚澄に声をかけ、アクセサリーをしまいランドセルを肩がけする。
その時、タイミングよく、尚澄いるのー?と、玄関から声が聞こえてきた。
「あら、柚流くん。こんばんは。お夕飯、こっちで食べる?」
「いいえ。いつもよりは親が早く帰るって言ってたんで帰ります。いつも、ありがとうございます。」
そう、早口で言うと、玄関でまだ靴を並べていた二人の弟妹に手を振って、急いで帰る。
バイバーイ!と後ろからかわいい声が聞こえるが、無視してしまった。
気にしてないだろうか。
柚流は、駆け足で1分もかからない自宅の玄関の前に立ち、後悔する。
「今日は何度もすみくんに、悲しそうな顔をさせてしまった。」
柚流は、その夜、丸い型でレジンをいくつか作り、紐を通して割れないシャボン玉の飾りを作った。
今度、あげようと思って。よろこんでくれるだろか。
尚澄も、何か考え込んでいるようだ。
完全に空が暗くなる前に家につくと、尚澄から家に寄らない?と誘われた。
親は妹と弟を学童から連れて帰るため、あと1時間くらいはかかるそうだ。
2人共、親の仕事が遅く鍵を持たされている。
柚流の親は今日は早く帰ると言っていたが、まだ家の窓は暗い。
兄も、遠くの大学に行っているため帰りが遅い。
まだ、誰もいないから、帰宅が遅れても良いだろうと判断する。
それに、家にいなくても真っ先に尚澄の家に確認しにくる。
そう思って柚流は頷き、一緒にリビングに入った。
何度も小さい頃から、見ていた風景だ。
リビングのいつものソファーに腰掛ける。
少しの沈黙の後、気づまりで何か話題をと思い、柚流はランドセルの中から小さな袋を取り出した。
「これ、お兄ちゃんの彼女さんに頼まれたアクセサリーなんだ。上手に出来たから、何となく離れがたくて学校に持っていっちゃった。」
そう言って、袋から取り出したレジンで作ったネックレスやらキーホルダーを見せる。
柚流は、運動も勉強もいまいちだけど、美術だけは褒められていた。
最近は、レジンという樹脂を固めたものを、良く作っている。
尚澄は、感心したようにアクセサリーを手に取る。
「すごいね。中に花とかキラキラしたの入ってる。器用だね。」
そして、光にかざすと反射してきれいに見える、と言いながら回転させては感心している。
柚流は、自分の作品を見てくれることが嬉しくて、尚澄に近づいて話す。
「部活さ。どうしようかな、って思ったけど、色々やりたいことが山ほどあるんだ。部活の時間を絵を描く練習とか、他のことにあてたくて。」
「そうだね。美術部もあるけど、ほぼ幽霊部員か、落書きしながらおしゃべりしてたしね。」
2人は去年の部活体験へ中学校へ行った時のことを思い出す。
「運動部はちゃんとやってたよね。」
「そうそう。厳しそうだった。」
スポーツはどの部活も良い先生がいるらしく、強いって言っていた。きっと、尚澄は活躍するだろう。
「すみくん、中学校は部活入ったほうが良い。運動神経が良いんだから、もったいないよ。ぼくが帰宅部だからって同じにするの止めて。」
柚流は、めずらしく少し厳しい口調で言う。
尚澄は、どう返答すれば良いのか分からず、悲しそうな顔をしている。
「ごめん。帰るね。」
黙っている尚澄に声をかけ、アクセサリーをしまいランドセルを肩がけする。
その時、タイミングよく、尚澄いるのー?と、玄関から声が聞こえてきた。
「あら、柚流くん。こんばんは。お夕飯、こっちで食べる?」
「いいえ。いつもよりは親が早く帰るって言ってたんで帰ります。いつも、ありがとうございます。」
そう、早口で言うと、玄関でまだ靴を並べていた二人の弟妹に手を振って、急いで帰る。
バイバーイ!と後ろからかわいい声が聞こえるが、無視してしまった。
気にしてないだろうか。
柚流は、駆け足で1分もかからない自宅の玄関の前に立ち、後悔する。
「今日は何度もすみくんに、悲しそうな顔をさせてしまった。」
柚流は、その夜、丸い型でレジンをいくつか作り、紐を通して割れないシャボン玉の飾りを作った。
今度、あげようと思って。よろこんでくれるだろか。
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