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三章
一話
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任務は遂行された。フリードの暗殺者としてのプライドをへし折るように、包丁で刺し殺すという形でだ。
方法は何であれ、任務は完遂だ。
フリードはサマエルに加入出来る事になり、ルベルトはルディネス・キュプレと名前を変え、ボスが引き取る事になった。
キュプレ家は代々皇族の闇部分を引き受けてきた公爵家だ。表向きは人前にはあまり出てこない影の公爵という謎の存在となっている。
ルディネスは養子となったわけではないが、キュプレ家の関係者として認められるのだ。
フリードはルディネスをボスに預けた後、ルブロスティン公爵家へと戻った。警備兵達はまだ倒れたままなので問題ないが、使用人棟で眠る者達に気付かれてはならない。
持ち前の隠密術で音を立てずに、自室へと戻って眠った。
朝になると騒然としていた。
公爵家に仕える侍従が部屋にいない公爵を探したのだ。何故か警備兵達があちこちで倒れている。彼らを起こして書斎へと向かった。
そこで見たものは、血を大量に流して冷たくなっている公爵だった。
「う、うわあああぁぁっ!!」
叫び声だ。侍従は腰を抜かして座り込み、警備兵達は慌てて使用人達を呼びに行った。
全員が書斎前に集まり、顔面蒼白させている。
「警察……裏警察を呼びなさい! 現場はそのまま動かしてはなりません」
と、執事のギルセンが侍従に指示をし、書斎の扉を閉めた。
指示された侍従は、転びそうになりながらも走って屋敷を出ていった。フリード含めた使用人達が書斎前に集まる。
皆、恐怖と不安で顔が青ざめている。
その騒然の中、イグナートが「どうしたんだ?」と言いながら書斎前にやってきた。
「坊っちゃま……ご主人様が……」
涙目になっているギルセンを見て、状況を把握したイグナートは書斎の扉を開いた。
「お父様!! お父様ぁっ!!」
中に入って、駆け寄ろうとするイグナート。ギルセンはすぐにその身体を羽交い締めにして、制止した。
「ダメです、坊っちゃま! これから裏警察が来ます。現場はそのまま保存しないと、捜査に不都合が生じる虞がございます!」
「ギルセン、離せ! 捜査なんか知るもんか! あのままお父様を、床で寝かせておくなんてっ! 」
「坊っちゃま、それでも。ご遺体には犯人の手掛かりがある可能性がございます。
死因が確定しましたらお会いになれます。それまでは耐えて下さい」
「……分かった」
悲痛に歪む顔。涙がボロボロと流れている。少し落ち着いたイグナートが書斎から出ていったが、そこで立ち止まった。
「使用人達はこれで全員か?」
と、疑問を口にした。答えたのはギルセンだ。
「今裏警察を呼びに向かった者はおりませんが……そういえば、ルベルトさんがいませんね?」
「ルベルトがいないだと? ルベルトは? まだ寝ているのか?」
本来なら既に仕事を始めている時間だ。ここにいないのはおかしい。
イグナートが走り出した。
「坊っちゃま!!」
ギルセンが叫び、フリードが後を追った。
「俺が追います」
イグナートが向かったのは使用人棟の屋根裏部屋だ。
彼は膝を着いて呆然としていた。
「坊っちゃま!」
振り向いたイグナートの顔は真っ赤になっており、目は充血し、涙が止まらなくなっているようで、床に何滴も涙を落としていた。
「ルベルト……」
「坊っちゃま?」
フリードは目を見開き、驚きを隠せなかった。机の上に置き手紙があったのだ。
「ターバイン君の手紙か……?」
フリードは手紙を手に取った。一枚に文章がまとめられており、彼の覚悟がどれ程のものだったか、改めて知る事となった。
『罪深き私をお許し下さい。
私はルブロスティン公爵を殺すと決めました。
彼が私の両親を私利私欲のために陥れたからです。どうしても許せない。
成功しても失敗しても死刑は免れないでしょう。それでもこの手に掛けると決意しました。
優しくしてくださったフリードさんや使用人の方々、大変お世話になりました。
イグナート、また君に恨まれてしまうね。それでも決行する事にした。俺を許さないでくれ。
ルベルト・ターバイン』
(ルディ……こんなものを用意していたのか)
「許されなければならないのは……俺の方だ」
「イグナート?」
「うわぁぁぁぁあ!!」
イグナートは身体を丸めて床に伏せると、悲しみの叫び声を上げて泣いていた。
彼が落ち着くまでフリードはじっと待っていた。
泣き声が止んだ頃、フリードはイグナートの肩に手を置いた。
「落ち着いたか?」
「はい」
「戻れるか?」
「はい」
イグナートはのろのろと身体を起こした。目は腫れ上がり、顔は真っ赤だ。
すっかり大人しくなってしまったイグナートを連れて書斎前に戻った。全員が待機しており、皆イグナートの心配をしていた。
「坊っちゃま、お気持ちはよく分かります」
「お辛いでしょう。椅子を用意致しました、こちらへお掛けください」
「坊っちゃま……」
執事やメイド達がイグナートを思いやって、椅子を用意したり、ハンカチや飲み物を出していた。
「大丈夫だ。心配かけてすまない。ありがとう」
落ち着いたイグナートは、顔を上げて使用人達に感謝をした。
そうしていると玄関の扉が開いた。裏警察を呼びに行った侍従が走って屋敷に戻ってきたのだ。
全員が無言になり、場の緊張感が高まる。侍従が「こちらです」と案内しながら戻ってきた。
裏警察は十名。殆どが男性で構成されているが、一人女性も混ざっている。
全員厳しい顔つきで現れ、同じ隊服、同じ歩幅、同じ速さで歩く姿は軍隊に近いものを感じる。
一番前に初老の男性が後ろに三列ずつ並ぶ者達を引き連れている。
フリードは他の使用人達の前へ出た。
「フリードさん?」
声を掛けたのは執事のギルセンだが、すぐに裏警察の先頭に立つ男がフリードの前に立ち、ぴしりと伸ばした指先をこめかみに当てて敬礼した。
残りの九人も、バッと同じように敬礼をする。
「隊長、ご指示を」
「書斎内に公爵のご遺体がある。四人でご遺体の状況を見た後に、書斎内で何が起こったのか捜査してくれ。ご遺体は丁寧に扱い、二人で医務局へ運ぶように。
他四人は屋敷の者達の聞き取り調査をしてくれ」
「ハッ!!」
フリードが指示を出すと、十人全員揃って返事をした。すぐに先頭の男が誰がどの任に就くかを割り振り、素早く行動していく。
「ふ、フリードさん。あなたは……一体……」
ギルセンが困惑しながらも義務感だけでフリードに近寄った。恐る恐る聞いてみたという様子だ。
フリードは振り返る。
「隠していて申し訳ありません。私は、今裏警察を取り仕切っている指揮官なのです」
「……指揮官? では公爵家の使用人になったのは、潜入捜査官の為だったとでもいうのですか?」
使用人達がざわつく。困惑した様子でフリードに視線を向けている。
「今ここでは話せません。これより使用人の役目を辞退し、裏警察の職務に戻りますが、よろしいでしょうか? 坊っちゃま」
今判断出来る者はイグナートしかいない。彼は、呆然とフリードを見つめていた。
「俺を騙していたのか?」
ショックが大きいのだろう、静かに放った言葉は疑惑をぶつける事のみだった。
「いいえ、騙してはおりません」
「裏警察という事は潜入捜査だろう? 何の為に? お父様を陥れる為か?」
「そうですね、この際事実を話しましょうか。俺は潜入捜査の為に使用人としてこの屋敷に参りました」
ざわつく使用人達。ギルセンも予想外の出来事に困惑してフリードを睨むだけだ。
「捜査内容は……あなた方使用人の内、数名は知っている事でしょう。
ルブロスティン公爵夫人殺害事件の本当の黒幕を──」
反応したのは五名ほどだ。フリードの視線から逃れるように俯いた。無表情でいようとしている者もいたが、フリードに隠す事は出来ない。
その中にギルセンも含まれる。
「何の事だ!?」
イグナートの怒りは最高潮だ。父親が死に、悲しみの最中にフリードの裏切りが発覚したのだ。
兄のように慕っていただけに、そのショックは大きい。
フリードを睨みつけている。
「坊っちゃま。公爵様は」
「フリード様! それ以上はなりません!」
大声で止めるギルセン。フリードは更に大きな声でイグナートに聞こえるよう事実を語る。
「いいえ、ここで事実をお伝えします! 公爵様はサーシュ侯爵夫人を利用し、自身の妻を死に至らしめたのです」
方法は何であれ、任務は完遂だ。
フリードはサマエルに加入出来る事になり、ルベルトはルディネス・キュプレと名前を変え、ボスが引き取る事になった。
キュプレ家は代々皇族の闇部分を引き受けてきた公爵家だ。表向きは人前にはあまり出てこない影の公爵という謎の存在となっている。
ルディネスは養子となったわけではないが、キュプレ家の関係者として認められるのだ。
フリードはルディネスをボスに預けた後、ルブロスティン公爵家へと戻った。警備兵達はまだ倒れたままなので問題ないが、使用人棟で眠る者達に気付かれてはならない。
持ち前の隠密術で音を立てずに、自室へと戻って眠った。
朝になると騒然としていた。
公爵家に仕える侍従が部屋にいない公爵を探したのだ。何故か警備兵達があちこちで倒れている。彼らを起こして書斎へと向かった。
そこで見たものは、血を大量に流して冷たくなっている公爵だった。
「う、うわあああぁぁっ!!」
叫び声だ。侍従は腰を抜かして座り込み、警備兵達は慌てて使用人達を呼びに行った。
全員が書斎前に集まり、顔面蒼白させている。
「警察……裏警察を呼びなさい! 現場はそのまま動かしてはなりません」
と、執事のギルセンが侍従に指示をし、書斎の扉を閉めた。
指示された侍従は、転びそうになりながらも走って屋敷を出ていった。フリード含めた使用人達が書斎前に集まる。
皆、恐怖と不安で顔が青ざめている。
その騒然の中、イグナートが「どうしたんだ?」と言いながら書斎前にやってきた。
「坊っちゃま……ご主人様が……」
涙目になっているギルセンを見て、状況を把握したイグナートは書斎の扉を開いた。
「お父様!! お父様ぁっ!!」
中に入って、駆け寄ろうとするイグナート。ギルセンはすぐにその身体を羽交い締めにして、制止した。
「ダメです、坊っちゃま! これから裏警察が来ます。現場はそのまま保存しないと、捜査に不都合が生じる虞がございます!」
「ギルセン、離せ! 捜査なんか知るもんか! あのままお父様を、床で寝かせておくなんてっ! 」
「坊っちゃま、それでも。ご遺体には犯人の手掛かりがある可能性がございます。
死因が確定しましたらお会いになれます。それまでは耐えて下さい」
「……分かった」
悲痛に歪む顔。涙がボロボロと流れている。少し落ち着いたイグナートが書斎から出ていったが、そこで立ち止まった。
「使用人達はこれで全員か?」
と、疑問を口にした。答えたのはギルセンだ。
「今裏警察を呼びに向かった者はおりませんが……そういえば、ルベルトさんがいませんね?」
「ルベルトがいないだと? ルベルトは? まだ寝ているのか?」
本来なら既に仕事を始めている時間だ。ここにいないのはおかしい。
イグナートが走り出した。
「坊っちゃま!!」
ギルセンが叫び、フリードが後を追った。
「俺が追います」
イグナートが向かったのは使用人棟の屋根裏部屋だ。
彼は膝を着いて呆然としていた。
「坊っちゃま!」
振り向いたイグナートの顔は真っ赤になっており、目は充血し、涙が止まらなくなっているようで、床に何滴も涙を落としていた。
「ルベルト……」
「坊っちゃま?」
フリードは目を見開き、驚きを隠せなかった。机の上に置き手紙があったのだ。
「ターバイン君の手紙か……?」
フリードは手紙を手に取った。一枚に文章がまとめられており、彼の覚悟がどれ程のものだったか、改めて知る事となった。
『罪深き私をお許し下さい。
私はルブロスティン公爵を殺すと決めました。
彼が私の両親を私利私欲のために陥れたからです。どうしても許せない。
成功しても失敗しても死刑は免れないでしょう。それでもこの手に掛けると決意しました。
優しくしてくださったフリードさんや使用人の方々、大変お世話になりました。
イグナート、また君に恨まれてしまうね。それでも決行する事にした。俺を許さないでくれ。
ルベルト・ターバイン』
(ルディ……こんなものを用意していたのか)
「許されなければならないのは……俺の方だ」
「イグナート?」
「うわぁぁぁぁあ!!」
イグナートは身体を丸めて床に伏せると、悲しみの叫び声を上げて泣いていた。
彼が落ち着くまでフリードはじっと待っていた。
泣き声が止んだ頃、フリードはイグナートの肩に手を置いた。
「落ち着いたか?」
「はい」
「戻れるか?」
「はい」
イグナートはのろのろと身体を起こした。目は腫れ上がり、顔は真っ赤だ。
すっかり大人しくなってしまったイグナートを連れて書斎前に戻った。全員が待機しており、皆イグナートの心配をしていた。
「坊っちゃま、お気持ちはよく分かります」
「お辛いでしょう。椅子を用意致しました、こちらへお掛けください」
「坊っちゃま……」
執事やメイド達がイグナートを思いやって、椅子を用意したり、ハンカチや飲み物を出していた。
「大丈夫だ。心配かけてすまない。ありがとう」
落ち着いたイグナートは、顔を上げて使用人達に感謝をした。
そうしていると玄関の扉が開いた。裏警察を呼びに行った侍従が走って屋敷に戻ってきたのだ。
全員が無言になり、場の緊張感が高まる。侍従が「こちらです」と案内しながら戻ってきた。
裏警察は十名。殆どが男性で構成されているが、一人女性も混ざっている。
全員厳しい顔つきで現れ、同じ隊服、同じ歩幅、同じ速さで歩く姿は軍隊に近いものを感じる。
一番前に初老の男性が後ろに三列ずつ並ぶ者達を引き連れている。
フリードは他の使用人達の前へ出た。
「フリードさん?」
声を掛けたのは執事のギルセンだが、すぐに裏警察の先頭に立つ男がフリードの前に立ち、ぴしりと伸ばした指先をこめかみに当てて敬礼した。
残りの九人も、バッと同じように敬礼をする。
「隊長、ご指示を」
「書斎内に公爵のご遺体がある。四人でご遺体の状況を見た後に、書斎内で何が起こったのか捜査してくれ。ご遺体は丁寧に扱い、二人で医務局へ運ぶように。
他四人は屋敷の者達の聞き取り調査をしてくれ」
「ハッ!!」
フリードが指示を出すと、十人全員揃って返事をした。すぐに先頭の男が誰がどの任に就くかを割り振り、素早く行動していく。
「ふ、フリードさん。あなたは……一体……」
ギルセンが困惑しながらも義務感だけでフリードに近寄った。恐る恐る聞いてみたという様子だ。
フリードは振り返る。
「隠していて申し訳ありません。私は、今裏警察を取り仕切っている指揮官なのです」
「……指揮官? では公爵家の使用人になったのは、潜入捜査官の為だったとでもいうのですか?」
使用人達がざわつく。困惑した様子でフリードに視線を向けている。
「今ここでは話せません。これより使用人の役目を辞退し、裏警察の職務に戻りますが、よろしいでしょうか? 坊っちゃま」
今判断出来る者はイグナートしかいない。彼は、呆然とフリードを見つめていた。
「俺を騙していたのか?」
ショックが大きいのだろう、静かに放った言葉は疑惑をぶつける事のみだった。
「いいえ、騙してはおりません」
「裏警察という事は潜入捜査だろう? 何の為に? お父様を陥れる為か?」
「そうですね、この際事実を話しましょうか。俺は潜入捜査の為に使用人としてこの屋敷に参りました」
ざわつく使用人達。ギルセンも予想外の出来事に困惑してフリードを睨むだけだ。
「捜査内容は……あなた方使用人の内、数名は知っている事でしょう。
ルブロスティン公爵夫人殺害事件の本当の黒幕を──」
反応したのは五名ほどだ。フリードの視線から逃れるように俯いた。無表情でいようとしている者もいたが、フリードに隠す事は出来ない。
その中にギルセンも含まれる。
「何の事だ!?」
イグナートの怒りは最高潮だ。父親が死に、悲しみの最中にフリードの裏切りが発覚したのだ。
兄のように慕っていただけに、そのショックは大きい。
フリードを睨みつけている。
「坊っちゃま。公爵様は」
「フリード様! それ以上はなりません!」
大声で止めるギルセン。フリードは更に大きな声でイグナートに聞こえるよう事実を語る。
「いいえ、ここで事実をお伝えします! 公爵様はサーシュ侯爵夫人を利用し、自身の妻を死に至らしめたのです」
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