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第三章 探索
自由時間
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~灰谷ヤミの死刑まで残り23日~
私が灰谷ヤミの囚われている独房にやってきてから、3日目の朝。いつものように早朝のルーティーンを済ませ、私はヤミと一緒に朝食を食べていた。
さて、今日は何をしよう。ずっとこの部屋でヤミとのんびりしているわけにはいかない。
とりあえずやるべきことは二つ。まず『魔法が使えない原因』を調べること。そして『カミサマ』とやらの正体を探ることだ。
これは根拠のない直感だけど、すべての鍵を握っているのは『カミサマ』な気がする。彼に会えたら、この世界の時空の歪みのことだってわかるんじゃないかしら。
看守に頼めないかな、カミサマに会わせてって。……流石に無理だろうか。
そんなことを考えていたら、独房の扉がガラリと開いた。例の大柄の看守が立っている。
……こいつ、相当不気味。顔色が悪すぎるし表情がない。精神をやられている人間の顔をしている。
つまり『カミサマ』は、十中八九ヤバいヤツ。ああ、魔法を使えないこの状況で、ヤバいヤツを相手にしなくちゃいけないのか……ちょっと心配だ。
だけど、私には武器がある。ナイフは没収されないように、肌身離さず身につけておかないと。
深呼吸をひとつ。……よし、カミサマに会えるか聞いてみよう。
看守に向かってカミサマのことを聞こうと思ったそのとき、相手が先に口を開いた。
「今日から刑務所施設内の自由行動を許可する」
自由行動!?まさかむこうから望んだシチュエーションを用意してくれるとは思わなかった。私は頭のなかで口笛を吹く。
「ただし」
そう言って看守は、自由時間のルールを告げた。その内容は、次のようなものだった。
・独房の外に出られるのは一日三回決められた時間のみ
・時間内に独房に戻らなかった場合、命の保証はない
・立ち入り可能なのは許可されたエリアのみ
看守が話し終えたところにすかさず、ヤミが質問を投げる。
「許可されたエリアかどうかっていうのは、どうやってわかる?」
彼はぽやっとしているように見えて、頭の回転が早いと思う。数日一緒に過ごしただけだけど、なんとなくそれを感じている。
「施錠されていなければ『許可されたエリア』、施錠されていれば『許可されていないエリア』だ。許可されたエリアの扉には、部屋の名前が書かれているからすぐにわかるはずだ。
ちなみに、もし他の囚人の独房が開いていたとしてもむやみに入らない方がいい。余計なトラブルに巻き込まれたくなければな」
「……他の囚人もいたんだ。あまりにも静かだったから、僕の貸切かと思ってたのに」
……ヤミって、誰に対してもあの喋り方だしあの調子なのね……。相手は看守なのに……。よくわからないことに感心していると、ヤミは看守に次の質問をした。
「あと、時間はどうやって確認できる?基準になる時計はどれなのか教えて欲しい」
「時計はフロアの廊下や各部屋にあり、時間はすべて揃っている。囚人番号2084、これ以上は口を慎むように。もう質問は受け付けない。とにかく、決められたエリア以外には行かないことと、時間厳守は絶対だ」
仕事を終えた看守が背を向けて去ろうとする。いなくなる前に呼び止めないと。
「あの、ひとついいですか!?」
看守を呼び止める。彼は立ち止まってこちらを向いた。……よかった、反応はしてくれるのね。
「なんだ」
「えっと、カミサマに会わせていただけません?私、勝手にここに来てしまったし……一度ご挨拶しておきたくて」
「必要ない」
「……必要ない?どうして?カミサマがそう言っていたの?」
私の質問には答えず、看守は扉を閉めた。……無視されたら、自分で調べちゃうけどいいの?私を甘く見ないほうがいいよ。
「もうすぐ9時だね」
ヤミが独房の時計を見て言う。……朝の自由時間の開始時刻だ。そろそろ手持ち無沙汰になっていたから、正直言って外出許可は助かった。
「部屋の外を歩けるの、ちょっと楽しみ」
「僕もだよ。運動室があればいいんだけど……そろそろ走りたい。あとは、図書室があればなおいい」
「図書室は私もほしいなあ。……そういえば、『シェークスピア』の話をしていたときから思ってたけど、ヤミって本が好きなの?」
「好きだよ。読書は僕の数少ない趣味のひとつだ」
「ランニングと水泳と読書」
「……と、考え事」
「あら、気が合う」
「……そう?……やっぱりもっと早く会えたらよかったね」
「ふふふ……そうかもしれない」
ブーーーーーーッ
けたたましく鳴り響く電子音が、私達の会話をかき消す。そのブザー音は4秒くらい続き、そのあと扉のロックがガチャリと解除された音がした。
「開いた……のかな」
私は扉に手をかける。……うん、鍵が開いている。
「よし、行こう」
ヤミが私を見る。金色の瞳が私を映す。……満月だ。夕闇に浮かぶ月みたい。キレイだなと思う。彼はなんとなくワクワクしているように見える。どうしてだか私も嬉しくなる。
扉をくぐる。白い世界が広がっている。限定的ではあるけれど、私は3日ぶりに『自由に歩ける日々』を取り戻したのだった。
私が灰谷ヤミの囚われている独房にやってきてから、3日目の朝。いつものように早朝のルーティーンを済ませ、私はヤミと一緒に朝食を食べていた。
さて、今日は何をしよう。ずっとこの部屋でヤミとのんびりしているわけにはいかない。
とりあえずやるべきことは二つ。まず『魔法が使えない原因』を調べること。そして『カミサマ』とやらの正体を探ることだ。
これは根拠のない直感だけど、すべての鍵を握っているのは『カミサマ』な気がする。彼に会えたら、この世界の時空の歪みのことだってわかるんじゃないかしら。
看守に頼めないかな、カミサマに会わせてって。……流石に無理だろうか。
そんなことを考えていたら、独房の扉がガラリと開いた。例の大柄の看守が立っている。
……こいつ、相当不気味。顔色が悪すぎるし表情がない。精神をやられている人間の顔をしている。
つまり『カミサマ』は、十中八九ヤバいヤツ。ああ、魔法を使えないこの状況で、ヤバいヤツを相手にしなくちゃいけないのか……ちょっと心配だ。
だけど、私には武器がある。ナイフは没収されないように、肌身離さず身につけておかないと。
深呼吸をひとつ。……よし、カミサマに会えるか聞いてみよう。
看守に向かってカミサマのことを聞こうと思ったそのとき、相手が先に口を開いた。
「今日から刑務所施設内の自由行動を許可する」
自由行動!?まさかむこうから望んだシチュエーションを用意してくれるとは思わなかった。私は頭のなかで口笛を吹く。
「ただし」
そう言って看守は、自由時間のルールを告げた。その内容は、次のようなものだった。
・独房の外に出られるのは一日三回決められた時間のみ
・時間内に独房に戻らなかった場合、命の保証はない
・立ち入り可能なのは許可されたエリアのみ
看守が話し終えたところにすかさず、ヤミが質問を投げる。
「許可されたエリアかどうかっていうのは、どうやってわかる?」
彼はぽやっとしているように見えて、頭の回転が早いと思う。数日一緒に過ごしただけだけど、なんとなくそれを感じている。
「施錠されていなければ『許可されたエリア』、施錠されていれば『許可されていないエリア』だ。許可されたエリアの扉には、部屋の名前が書かれているからすぐにわかるはずだ。
ちなみに、もし他の囚人の独房が開いていたとしてもむやみに入らない方がいい。余計なトラブルに巻き込まれたくなければな」
「……他の囚人もいたんだ。あまりにも静かだったから、僕の貸切かと思ってたのに」
……ヤミって、誰に対してもあの喋り方だしあの調子なのね……。相手は看守なのに……。よくわからないことに感心していると、ヤミは看守に次の質問をした。
「あと、時間はどうやって確認できる?基準になる時計はどれなのか教えて欲しい」
「時計はフロアの廊下や各部屋にあり、時間はすべて揃っている。囚人番号2084、これ以上は口を慎むように。もう質問は受け付けない。とにかく、決められたエリア以外には行かないことと、時間厳守は絶対だ」
仕事を終えた看守が背を向けて去ろうとする。いなくなる前に呼び止めないと。
「あの、ひとついいですか!?」
看守を呼び止める。彼は立ち止まってこちらを向いた。……よかった、反応はしてくれるのね。
「なんだ」
「えっと、カミサマに会わせていただけません?私、勝手にここに来てしまったし……一度ご挨拶しておきたくて」
「必要ない」
「……必要ない?どうして?カミサマがそう言っていたの?」
私の質問には答えず、看守は扉を閉めた。……無視されたら、自分で調べちゃうけどいいの?私を甘く見ないほうがいいよ。
「もうすぐ9時だね」
ヤミが独房の時計を見て言う。……朝の自由時間の開始時刻だ。そろそろ手持ち無沙汰になっていたから、正直言って外出許可は助かった。
「部屋の外を歩けるの、ちょっと楽しみ」
「僕もだよ。運動室があればいいんだけど……そろそろ走りたい。あとは、図書室があればなおいい」
「図書室は私もほしいなあ。……そういえば、『シェークスピア』の話をしていたときから思ってたけど、ヤミって本が好きなの?」
「好きだよ。読書は僕の数少ない趣味のひとつだ」
「ランニングと水泳と読書」
「……と、考え事」
「あら、気が合う」
「……そう?……やっぱりもっと早く会えたらよかったね」
「ふふふ……そうかもしれない」
ブーーーーーーッ
けたたましく鳴り響く電子音が、私達の会話をかき消す。そのブザー音は4秒くらい続き、そのあと扉のロックがガチャリと解除された音がした。
「開いた……のかな」
私は扉に手をかける。……うん、鍵が開いている。
「よし、行こう」
ヤミが私を見る。金色の瞳が私を映す。……満月だ。夕闇に浮かぶ月みたい。キレイだなと思う。彼はなんとなくワクワクしているように見える。どうしてだか私も嬉しくなる。
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