お見合いをすっぽかされた私が、いつの間かエリート将校様の婚約者になっていた件

野地マルテ

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※ 嘘でしょう?

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 ロジオンは性的な経験がないらしい。
 すっごく自分勝手な酷い抱き方をされるんじゃないか。
 そう身構えていたのに。
 彼は思いの外、丁寧に私を導いてくれた。

 大きなベッドの上で何回か触れるだけの口づけをされ、私が吐息を漏らしたら更に深いものになった。私はもう二十五歳になるというのに、これが初キスだった。もちろん、キスの仕方は知らない。

「……リーリエさん、口を開けて舌を出してください」
「……っ」

 舌を出せと言われても、どうしたらいいのか分からない。精一杯、歯と歯の間に舌を突き出す。これでいいのかどうか迷う間もなくロジオンは私の首の後ろを手で抱えると、舌を絡め出した。形容しがたい未知の感触に背中がぞくぞくする。温かくぬめる感触は心地が良いのに、何故か恐怖を感じた。

 ──経験がないなんて嘘よ。

 こっちはこんなに緊張して全身ガチガチなのに。
 ロジオンの落ち着きっぷりは何なのだろうか。私の顔や首、身体を這う手つきはどこまでも優しい。ちゅっ、ちゅと、こめかみや額にキスを落とされるだけで、私の心臓は爆発しそうだというのに。

 釈然としない。そう思いながらロジオンを睨むと、彼はいきなり細身のトラウザーズのベルドをガチャガチャ触り出した。まだキスしかしてないのに? と思ったが、彼はキスだけで色々限界が来てしまったらしい。

「あやうくキスだけで果てかけました……。騎士服を汚したくないので脱いでもいいですか?」
「あ、はい、どうぞ……」

 露わになった肉色の棒に思わず釘付けになる。
 男性器を間近で見るのは初めてだ。今までは保健の教本で見たことがあったぐらい。月のものがあるあの隙間に入れるらしいが、騎士職従事者で、現在薬で月経を止めている私にはいまいちピンと来ない。私にだって人並みに性欲があり自慰もするが、挿入を伴う行為はほとんどしたことがなかったからだ。せいぜい尿道の上にある赤い突起に軽く触れるぐらい。今さらながら、ちゃんと入るか不安になってきた。

 ロジオンの男根は、長身の彼に見合う大きさをしていた。優しげな美形である彼がもつには少々見た目が禍々しい。詳しくないが、今の状態は多少なりにも吃立してるのではないか。

 果てかけた、とは言っていたが、興奮してもらえているようで少しだけ安心した。

 ロジオンが躊躇なく脱いでいるので、私も脱いだ。今日の服装はドレスではないが、ズボンは避けてスカートにした。上官の奥さんに見繕ってもらった花柄のもので、ロジオンも『すっごくいいです‼︎』と拍手しながら褒めてくれた。やはり彼は極端である。前回会った時は何も褒めてくれなかったのに。

 私の身体は──腹筋が割れた鍛え上げられたもので、女性らしさはあまりない。ロジオンが私の裸に萎えやしないかと心配になったが、彼は私の今日の服装同様、絶賛してくれた。
 どうもロジオンは私を褒めることを覚えたらしい。褒められ慣れていないので、なんだかくすぐったかった。

「リーリエさんがどんな身体をしているか、毎晩想像していましたけど想像以上ですね! ……触ってもいいですか?」
「は、はい」
「ああ、女性の腹筋ってこんな感じなんですね……! とても温かいです」

 胸よりも、お尻よりも、まずロジオンは私の割れた腹筋に興味を示した。自分だって割れた腹筋をしているくせに。そう思ったが、肉の薄い固いお腹を撫でられていると妙な気分になってくる。
 股の間にぎゅっと力が入る。感じているのだと思った。


「リーリエさんは自分で触ったりしますか? 胸のこことか、ピンク色のままですね……。摩擦を受けている感じがしない」
「胸は感じないので触りません……」

 同僚から借りた恋愛官能小説を読み、自分でも触ってみたものの、胸の薄紅色の先端が尖ることはなかった。いつもふにゃりと柔らかいまま。自分は不感症なのだと思い、自慰はもっぱら股の間にある陰核に触れるだけだ。

 しかしロジオンに後ろから抱きかかえられ、軽く押しつぶすぐらいの力加減で指先で胸の先端を弄られると、くすぐったいのに甘く痺れるような感覚が走る。

 ──あ、何これ……。

 胸の先端まわりの皮膚がぎゅっと突っ張られる。見ると、寒い日の朝のように固くピンと立ち上がっていた。

「可愛い、感じやすいんですね……リーリエさん」
「あっ、あっ、そんなこと……!」

 むぎゅむぎゅと割と遠慮なく、胸の双丘を後ろから両手でこねられる。普段は触っただけじゃ尖らないそこを指の間で摘まれて、あまりの刺激に腰が浮いてしまった。

「リーリエさん、お尻を動かすと私が果ててしまいますから、ほどほどに……」

 私はロジオンの股ぐらの上に腰を下ろしていた。体勢的に、私のお尻の下にロジオンの男根がある。お尻を動かして欲しくないなら、胸の先端を摘まなければいいじゃないかと思うが、完全にわざとだと思う。

 すりすりと容赦なくお尻に擦り付けられる固い肉の棒。はじめてなら、もっと遠慮するものではないだろうか?

 もしかしたら、本番はしたことがなくても、ライトな性的サービスは常日頃から受けているのかもしれない。そう思うとイラッとした。

「童貞なんて嘘でしょう?」
「リーリエさん、私は軍師です。攻略したいものの情報を得るのは得意ですから♪ あと、私、けっこう本番に強いタイプなので……」

 私の後ろで不敵に微笑むロジオン。
 何だか彼が分からなくなってきた。
 九年間も私への思いを募らせていたのに、まったく言い寄って来ない奥手かと思いきや、勝手に証明書を偽造して婚約するわ、こっちの純潔を奪おうとするわ。

 ──天才の考えることはわからないわ。

 私、何やらとんでもない人を好きになってしまったのかもしれない。
 遠い目をしていたら、私の後ろにいるロジオンの息使いが荒くなってきた。

「リーリエさんのここに挿れたい……。けど、固そうですね……」

 いつの間にやら、私の股の間に回されていたロジオンの手。人差し指と中指は秘裂のすぐ両隣をぐっぐっと押している。股間周りの肉が固いと彼は言いたいらしい。

 ──私は馬に乗るから……

 処女膜はもうないだろうし、股の周りは筋肉がつき過ぎてて固いかもしれない。
 また、ロジオンのものが入るかどうか不安になってくる。

「指を挿れてもいいかな?」
「は、はい!」
「あっ、あ、キツいですね……これは」

 いくつもの肉が折り重なった潤む隙間をかき分け、異物が入ってくる。もう十年以上も前、まだ月経を止める薬が使えなかった頃は、月のものの手当ては紙で出来た芯棒でしていたことをふと思い出す。最初の頃は力の抜き方が分からず、無理に押し込もうとして痛い思いをしていた。

 ロジオンの指は芯棒とは違い、割とするんと入ったが、痛くは無かった。人体の中は呼吸のタイミングで蠢くので、彼はそのタイミングを掴むのが上手いのだろう。ますます童貞らしくない。

「ここ、陰核に触れながら指を出しいれすると、女性はとっても気持ち良くなるらしいですよ」
「そうなんですか……?」

 にゅるにゅると、潤む肉が折り重なった隘路をならすように動かされている長い指。お腹側の膣壁を指の腹で優しく撫でられると、淡い気持ち良さは感じるものの、声をあげるほどでもない。
 しかし、いつも自分で弄っている陰核に触れられながらだと、事態は一変した。

「やっっ、あぁっっ‼︎」
「おや、リーリエさんはここがやはり弱いんですね。胸の先はまったく開発されてないのに、陰核の包皮は完全に捲れてましたから、もしかしたら……と思いましたが」
「あっ、あんっ! いやっ、ぁあぁ、やめてください……!」
「やめません。さあ、リーリエさん、そのままお尻を突き出してください」

 ──お尻⁉︎

 そのまま、何となく四つん這いにさせられた。もしかして、初めてなのに後ろから挿れられるのではと狼狽える間もなく、指を引き抜かれたと思ったら、次の瞬間、ズンッと重い衝撃を後ろから感じた。

 あっという間の、処女喪失だった。

「ひゃあぁっ!」
「ああっ、……すごいっ……!」

 指とは比べ物にならない圧迫感。あまりの衝撃に腕を突いていられず、枕に顔を押し付ける。苦しさを感じ、すうはあと深呼吸をすると、何故か隘路に収まったままのロジオンの雄がさらに質量と固さが増した。入り口も奥も、熱くて、じんじんする。

「……すみません、リーリエさん、いきなり家畜を思わせるようなポーズを取らせてしまって。でも、私はリーリエさんのお尻がたまらなく好きなんです……!」

 自分では横に出っ張った大きなこのお尻がコンプレックスだったが、ロジオンは白磁の壺を触るかのように嬉しそうに触れている。

 ──私の中で、ビクビクしてる。

 初回から家畜の交尾のような体位を取られていることよりも、後ろからお尻を撫でられていることよりも、私を貫いている雄がビクビク蠢いている事の方が気になって仕方がない。
 指同様、肉棒をいきなりずっぽり挿れられたが、やはり痛みはない。ロジオンは上手いのだ。童貞だったはずなのに。

「リーリエさん、動いてもいいですか?」
「あっ、は、はい……」
「気持ちがいいところがあったら教えてくださいね?」

 ──気持ちがいいところ……?

 正直なところ、ロジオンの雄でみちみちに埋まっているので、場所がどうという話ではないような気がする。

「あっ、キツい……! 少し動くだけで血が溜まりますね」

 どこに血が溜まるのか分からないが、それでも彼のものが何回か私のなかをずるずると行き来すると、少し余裕が出てきたように思う。
 水音や肌を打ちつけあう音が増すたびに、下半身がぶるりと震えた。少しずつ、膣内で感じる情報量が増えていっているような気がする。
 ロジオンの雄の、雁首の段差があるところ。あれが特定のところに引っかかるとぎゅっとお腹に力が入って苦しくなった。この苦しさから逃れたくて自分のものとは思えない声が出た。ここが気持ちが良いところなのだろうか。

「あぁぁん、ロジオンさんっ……!」

 自分の下にある枕をぎゅっと掴む。それを見たであろうロジオンは、いきなり私の腰に腕を回し始めた。
 陰核を摘んだのだ。痛いほどに腫れたそれに触れられて、私はわけもわからず叫んだ。視界に黒点がぱっと散り、下腹が大きくうねる。背中が大きく反り、失禁したと錯覚するぐらい、隘路から愛液がぶしゅりと漏れ出した。

 雄の形がはっきり分かりすぎるぐらい締め上げて、ロジオンが無事なはずは無かった。
 彼も息を荒げながらうめき、そして──私は胎の奥で熱い飛沫を感じた。
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