13 / 14
付き合ってなかったですけど⁉︎
そして私たちはマトロア地区へ戻ってきた。
騎士団の詰所へ戻って驚いたことがある。副官のボガトフさんは、団長自ら私との結婚について話していたので、彼が私たちの結婚のことを知っているのはまあ分かるのだが。
何故か他の騎士や一般兵、そして街の人たちもが、私たちの関係を知っていた。知っていたというか、皆が皆、私たちが付き合っているものだと勘違いしていた。
何故? 団長と私では月とスッポンではないか。
「えっっ、団長とサラさん、付き合ってたんじゃなかったんスか⁉︎」
「えええ……あの距離感で付き合ってないとか……」
「ありえないだろう……」
「あんなにイチャイチャしてたのに?」
「オレは『あく結婚しろよ』って思ってた」
何故みんな、私たちが付き合っているなどと勘違いしていたのか? まったく理解できない。確かに二人で呑みに行くことだってあったし、私は時々団長の家に泊まっていた。でも、プロポーズされるまでは色っぽい展開に一切ならなかったのだ。だいたいセックスする時だって、私たちはまるで部隊表を作る時のような雰囲気でする。私が提案したことを却下する時の団長の顔と口調は、二回戦目を拒む団長のそれとそっくりだ。
「皆、勘違いするな。俺たちは付き合っていない。俺はサラと付き合っていない状態で彼女にプロポーズしたからな」
「団長……」
付き合ってもいないのに、いきなり部下にプロポーズする男はそうはいないだろう。非常識がすぎる。団長は突き放すような物言いはするが実は面倒見が良いし、常に命令口調だけど優しいところもある。だが、お坊ちゃん育ちだからか何なのか、けっこう世間ズレしている。前はそんな団長のことがめんどくさいと思っていたけれど、今は何だか可愛いなと思っている。恋は盲目とはよく言ったものだ。
「団長、いつサラさんと籍を入れるンすか?」
「もう入れてきた」
入籍をしたと団長が口にすると、そこかしこからヒューヒューという口笛と、拍手が鳴った。目に涙を浮かべている人たちもいる。
私たちは自分たちが知らないだけで、多くの人たちから注目されていたようだ。
「皆にはすまないが、俺は実家の伯爵家を継ぐため、今月で騎士を退役する。妻のサラもだ」
「皆さんっ、今までお世話になりました! あと残り少ないですけど、よろしくお願いします」
妻のサラ。人妻になるのは二回目なのに『妻』の響きにすごくドキドキする。
また食堂に集まった皆から、大きな拍手がわきあがる。みんな、すごく良い笑顔だ。
「あーーもう! 自分のことみたいに嬉しいぜ!」
「ほんとほんと、お二人が上手くいって良かったぁ~~」
「今夜は良い酒が呑めそうだ!」
次々に嬉しい言葉があがる。こんなに周囲の人たちに祝福して貰えるなんて。思ってもみなかった。
「皆さん、ありがとうっ……ございます!」
胸がいっぱいになってじわじわ涙が込み上げてくる。鼻の奥がツンとした。
「伯爵の奥さんなんて、私に務まるかどうか分かりませんけど、頑張ります!」
「いやいや、団長の奥さんが務まるのなんか、サラさんだけッスよ!」
「サラさん以外ありえねえよなぁ~~」
「そうそう!」
お祝いの場面だからか、皆発言が無礼講すぎやしないか。
ふと、ひやひやしながら隣りにいる団長を見上げる。
団長は口の端をあげて得意げにこう言った。
「まあ、俺たちは皆が認める似合いの夫婦ってことだ」
「そう、みたいですね」
信じられない。今まで自分は周囲から、団長とは釣り合わないと思われていると、そう思い込んでいた。詰所の皆からこんなに祝福してもらえるだなんて本当に信じられない。
この後は仕事どころではなく、見廻りがない人たちで祝賀会になった。今までここで頑張ってきて良かった。心からそう思った。
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
後宮入りしたら、冷酷な幼なじみ皇太子に囲われて逃げられません
由香
恋愛
幼い頃、ただ一人だけ優しかった少年。
けれど彼は――皇太子になっていた。
家の都合で後宮に入れられた私は、二度と会うはずのなかった幼なじみと再会する。
冷酷無慈悲と噂される彼は、なぜか私にだけ異常に甘くて――
「他の男に触れるな。……昔から、お前は俺のものだろ」
囲われるように守られ、逃げ場を失う距離感。
けれど後宮は甘さだけじゃ生き残れない。
陰謀、嫉妬、命を狙う妃たち――
それでも彼は、私の手を離さない。
これは、後宮で“唯一の執着”に愛された少女の物語。
【完結】 君を愛せないと言われたので「あーそーですか」とやり過ごしてみたら執着されたんですが!?
紬あおい
恋愛
誰が見ても家格の釣り合わない婚約者同士。
「君を愛せない」と宣言されたので、適当に「あーそーですか」とやり過ごしてみたら…?
眉目秀麗な筈のレリウスが、実は執着溺愛男子で、あまりのギャップに気持ちが追い付かない平凡なリリンス。
そんな2人が心を通わせ、無事に結婚出来るのか?
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。