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付き合ってなかったですけど⁉︎
しおりを挟むそして私たちはマトロア地区へ戻ってきた。
騎士団の詰所へ戻って驚いたことがある。副官のボガトフさんは、団長自ら私との結婚について話していたので、彼が私たちの結婚のことを知っているのはまあ分かるのだが。
何故か他の騎士や一般兵、そして街の人たちもが、私たちの関係を知っていた。知っていたというか、皆が皆、私たちが付き合っているものだと勘違いしていた。
何故? 団長と私では月とスッポンではないか。
「えっっ、団長とサラさん、付き合ってたんじゃなかったんスか⁉︎」
「えええ……あの距離感で付き合ってないとか……」
「ありえないだろう……」
「あんなにイチャイチャしてたのに?」
「オレは『あく結婚しろよ』って思ってた」
何故みんな、私たちが付き合っているなどと勘違いしていたのか? まったく理解できない。確かに二人で呑みに行くことだってあったし、私は時々団長の家に泊まっていた。でも、プロポーズされるまでは色っぽい展開に一切ならなかったのだ。だいたいセックスする時だって、私たちはまるで部隊表を作る時のような雰囲気でする。私が提案したことを却下する時の団長の顔と口調は、二回戦目を拒む団長のそれとそっくりだ。
「皆、勘違いするな。俺たちは付き合っていない。俺はサラと付き合っていない状態で彼女にプロポーズしたからな」
「団長……」
付き合ってもいないのに、いきなり部下にプロポーズする男はそうはいないだろう。非常識がすぎる。団長は突き放すような物言いはするが実は面倒見が良いし、常に命令口調だけど優しいところもある。だが、お坊ちゃん育ちだからか何なのか、けっこう世間ズレしている。前はそんな団長のことがめんどくさいと思っていたけれど、今は何だか可愛いなと思っている。恋は盲目とはよく言ったものだ。
「団長、いつサラさんと籍を入れるンすか?」
「もう入れてきた」
入籍をしたと団長が口にすると、そこかしこからヒューヒューという口笛と、拍手が鳴った。目に涙を浮かべている人たちもいる。
私たちは自分たちが知らないだけで、多くの人たちから注目されていたようだ。
「皆にはすまないが、俺は実家の伯爵家を継ぐため、今月で騎士を退役する。妻のサラもだ」
「皆さんっ、今までお世話になりました! あと残り少ないですけど、よろしくお願いします」
妻のサラ。人妻になるのは二回目なのに『妻』の響きにすごくドキドキする。
また食堂に集まった皆から、大きな拍手がわきあがる。みんな、すごく良い笑顔だ。
「あーーもう! 自分のことみたいに嬉しいぜ!」
「ほんとほんと、お二人が上手くいって良かったぁ~~」
「今夜は良い酒が呑めそうだ!」
次々に嬉しい言葉があがる。こんなに周囲の人たちに祝福して貰えるなんて。思ってもみなかった。
「皆さん、ありがとうっ……ございます!」
胸がいっぱいになってじわじわ涙が込み上げてくる。鼻の奥がツンとした。
「伯爵の奥さんなんて、私に務まるかどうか分かりませんけど、頑張ります!」
「いやいや、団長の奥さんが務まるのなんか、サラさんだけッスよ!」
「サラさん以外ありえねえよなぁ~~」
「そうそう!」
お祝いの場面だからか、皆発言が無礼講すぎやしないか。
ふと、ひやひやしながら隣りにいる団長を見上げる。
団長は口の端をあげて得意げにこう言った。
「まあ、俺たちは皆が認める似合いの夫婦ってことだ」
「そう、みたいですね」
信じられない。今まで自分は周囲から、団長とは釣り合わないと思われていると、そう思い込んでいた。詰所の皆からこんなに祝福してもらえるだなんて本当に信じられない。
この後は仕事どころではなく、見廻りがない人たちで祝賀会になった。今までここで頑張ってきて良かった。心からそう思った。
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