【R18・完結】王女メリアローズの決断

野地マルテ

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頭の中で、渦巻くもの ※

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 やはりもっと慎ましい寝衣をまとうべきだったか、話し合うのに、この格好は破廉恥すぎたか。勝負服のつもりだったが、みっともなかっただけかもしれない。
 沸騰しそうな頭の中、ぐるぐると後悔の念が渦巻く。

 メリアローズはエリヴェルトと並んで寝台に座る。寝衣の丈は短く、下手すると下生えが見えてしまいそうだ。丸出しになっている太腿も太い。
 顔から火を吹き出しそうな思いをしていると、エリヴェルトが口を開いた。

「すまない、メリアローズ……。すべては清廉ぶってしまった私のせいだ。夜な夜な君から誘われる夢を見ているような低俗な人間なのに、やせ我慢をした」
「私も……あなたを救うだなんて偉そうなことを言っていましたが……。本当はあなたが欲しかっただけなのです」

 視線がかちりと合ったあと、ごく自然に唇が重なった。柔らかく湿った感触が心地良い。メリアローズが口を僅かに開くと、エリヴェルトは舌を潜り込ませてきた。

「ぅっ、んぅっ……」

 ぴちゃぴちゃと音を立てて、お互いの舌を絡めあう。エリヴェルトの唾液の味が好きだと思った。ほんのり甘くて、頭の奥が蕩けそうだ。
 唇を深く合わせている間にも、薄い布ごしに彼の無骨な手が這い回る。寝衣の頼りない肩紐をおろされて、乳房がまろび出る。
 たわわをやんわり握りこまれた後、すでに芯を持っている乳頭を指先で摘まれた。

「んんっ、あっ……」

 ぐにぐにと硬い乳頭を弄られ、もどかしい刺激に堪らず唇を離してしまう。 
 薄着をしていて寒かったはずなのに、頬が熱い。
 肩を上下させて息を深く吸う。

 胸の上を這っていたエリヴェルトの手がまた、顔の輪郭に添えられた。
 琥珀色の双眼に射抜かれる。彼の目にはあの夜と同じ欲の色が滲んでいるような気がした。

「好きだ、メリアローズ……初めて出会った時から、君のことが好きだった。こんな風に触れ合う日を長い間夢見ていた」

 こんなにも想われていたのに、どうして自分は十年も彼の気持ちを無視していたのか。自分の彼への気持ちを気がつかないふりをしていたのか。……後悔しかなかった。どれだけ謝っても、謝りきれない。

「……私は浅ましい女です」
「どんな君でも好きだ、理屈じゃない。君がほしい……」
「ごめんなさい……本当に、ごめんなさい……」
「もう、謝るな」

 膝下に腕を入れられ、ふわりと抱き上げられると、そのまま寝台の上にゆっくり下された。
 シーツの上に仰向けになったメリアローズは、エリヴェルトの顔を見上げる。彼は眉間に皺をよせ、どこか苦しそうな顔をしていた。

「……謝るのなら、好きだと、愛していると言ってほしい」
「好きです。認められなかっただけで、本当はずっとあなたを愛していたのです……」

 エリヴェルトが覆い被さってくる。すぐにまた唇が重なった。メリアローズは彼の広い背に腕を回した。
 しばらく抱き合っていたが、ふいにメリアローズは気がつく。腹に何か当たるものがあると。
 エリヴェルトは起き上がると、自身のゆったりしたシャツの首元に手をかけた。縦に並んだボタンを外すと、ごつごつとした鋼のような身体が露わになる。

「メリアローズ、……いいだろうか?」

 今更聞かれなくても、いいに決まっていた。

 お互いに着ていたものはすべて脱いだ。
 メリアローズは大きな枕を背に横たわると、少し恥ずかしく思いながら脚を横に開いた。

「濡れていて……恥ずかしいです」
「感じてくれていて嬉しいよ」

 濡れそぼるあわいに、エリヴェルトの手がのばされる。秘裂をなぞるように指が這わされると、くちゅりくちゅと粘着のある水音がした。もうすでに女陰の奥が疼いて仕方がなかったメリアローズは、自ら腰を浮かせてしまう。
 エリヴェルトの節くれだった指が、濡れた隘路に入ってくる。彼の一部が自分の中に埋められている。そう考えるだけで嬉しくて胸がいっぱいになった。

「ああ、温かいな」

 少し楽しそうにエリヴェルトは言う。指の腹でゆっくり膣壁を撫でられる。まったりとした気持ち良さに、メリアローズの身体から力が抜けていく。
 二人で進める行為が、こんなにも幸せで、気持ちがいいものだとは思わなかった。一方的に自分から彼を求め、興奮させた時には得られなかった喜びだ。
 メリアローズが微睡んでいると、エリヴェルトの頭が股に埋められる。
 行為は、指を抜き差しされるだけでは終わらなかった。

「あっ、ひゃぁっ!」

 下生えの中、ぷくりと膨らんだそれに滑った感触が。
 膣壁を撫でられているのとは、まったく違う刺激が走る。陰核を舐めて、舌先で転がされたのだ。
 初めてエリヴェルトと身体を重ねたあの夜も、同じようにされたことを思い出す。

「やはりメリアローズはここが弱いのだな」
「……お、女の人は、皆弱いと思います」
「……そうか、こんなことをした相手はメリアローズが初めてだったから、知らなかった」

 エリヴェルトは女性から好まれるような爽やかな顔立ちの美男子で、軍人らしく逞しい体躯をしている。モテる彼は、年相応に閨事の経験があるのだと思っていたが、そうではなかったらしい。

「私が初めて……」
「ああ、口づけも肌を合わせるのも、君が初めてだった。力加減が分からなくて……痛い思いをさせていたら申し訳ない」

 困ったように笑みを浮かべるエリヴェルトに、メリアローズは無言のまま、首を横に振った。
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