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しおりを挟むロレシオと結婚して、唯一変わったことと言えば。
「毎日毎日、マリヴェルに触れられるなんて夢のようだ……!」
そう、毎日にようにロレシオが工房に来るようになったのだ。
目的は子作りである。身もふたもない。
私は彼のことが好きだし、触れられるのも嬉しいが、こう毎日のようにやってこられると彼の体力が心配になる。彼は騎士でも王城勤めの近衛なのでまだ危険性の少ない仕事だが、それでも疲労の蓄積はまずいだろう。
「ロレシオ、無理はしないでください。子種は毎日出しても大丈夫なのですか?」
「嬉しいから平気だ!」
「そうですか……?」
私の背中やお尻を丹念に撫で回しながら、ロレシオは心底嬉しそうに言う。何せ彼は性に目覚めてから十年近く、私をずっとオカズにしてきたらしい。
気持ちが悪いと思わねばいけないところだろうが、新婚で脳内お花畑な私は、やはり嬉しいと思ってしまう。
「想像していたよりも、すべすべでキレイで柔らかくて良い匂いがするな! マリヴェルは」
「うんもう! 犬ですか!」
「犬でかまわないよ!」
もう、でれっでれのどろっどろだった。彼は私のことが好きで好きで堪らないと言わんばかりの熱くとろけきった視線を向けてくる。きっと尻尾が生えていたらぐるんぐるん回していることだろう。
ちょうどロレシオみたいな毛色の大型犬がいたような気がする。名前は忘れたけど。
ここで私は素朴な疑問を投げかけてみた。
「なんで私のことがそんなに好きなんですか?」
「んっ……何でと言われてもなぁ」
私の胸の双方を揉みしだきながら、ロレシオは困ったように眉尻を下げる。「気がついたら大好きだった」というのが彼の持論だ。
「マリヴェルはとても可愛らしいし、優しいし、しっかりしているし、声も可愛い。好きにならないでいるほうが難しいよ」
私を押し倒し、覆いかぶさった状態で全肯定してくれる彼のほうこそ、かっこいいし優しいししっかりしているし、声もいいのだ。
まぁ、私が絡むと様子がおかしくなるんだけど。
「そんなことないです……私」
「そんなことあるから、挿れてもいいかな?」
気がつけば、私は蛙のごとく足をひろげていて、彼は陰茎の先を──亀頭を私の陰部にすりすりと押し付けていた。
「あ、ど、どうぞ」
毎回この瞬間が苦手だった。異物がめりめりと押し入ってくる。くるしくて声が漏れた。
「気分は悪くないか?」
こくこくと頷く。行為自体はともかく、ロレシオをすごく近くに感じるのは嬉しかった。ロレシオの身体はきれいで、声もものすごく優しい。
彼と繋がれて幸せだった。七年間もプロポーズを断り続けていた間は、こんな幸せがやってくるだなんて夢にも思わなかった。
いつの日か彼は私をあきらめてしまって、別の人を妻に迎える日がくる。彼はもう二十三歳で、貴族男性の結婚適齢期である二十五歳まで後二年しかなかった。
いつロレシオは別の人を奥さんにするのだろうかと、いつもビクビクしていた。私がモンシプール家の嫁になりたくないばかりに、彼の求婚を断り続けていたというのに。私は本当に勝手な人間だ。
でもこんな勝手すぎる私を、彼は許してくれた。
「ロレシオ、私、幸せです」
せいいっぱい彼に腕を伸ばす。ロレシオは身体を屈めてくれた。彼の金色の髪に触れる。癖があって柔らかそうなのに、意外にもしっかりした手触りの髪が好きだった。
頭をなでよう。そうした瞬間、身体を揺らされた。
「あっ、やぁっ!」
「こういう時にかわいいことを言うな」
「いやぁっ、……ロレシオっ」
みっしりと熱杭を詰められた下腹部に、さらに質量が加わったと思ったら、がつがつ腰を動かされた。いきなり始まった突き上げるような動きに悲鳴がとまらない。
痛くはないが、まず痒いような、腰を浮かせずにはいられない感覚に泣き出しそうになる。これが気持ちいいという感覚なのか、気持ちいいはずなのに苦しかった。
後ろ手に枕を掴み、必死に耐える。口からは否定のことばが漏れるが、ロレシオにはやめてほしくなかった。
「やっやめないで、ロレシオ」
「分かっているから、心配するな」
ロレシオは私の頰を撫でてくれた。幸せだった。この人がこんなに近くにいてくれるのならば、もしかしたら侯爵夫人になっていたとしても幸せになれたのかもしれない。
浮かれた頭でそんなことを考えてしまう。
「マリヴェル……」
ぎゅっと頭や身体をかかえるように抱きしめられ、熱杭を奥の奥まで差し込まれた。彼は律儀だった。早々に跡継ぎがほしいと願っているうちの両親のため、少しでも孕みやすいようにといつも奥に出してくれる。
私はどちらでも良かったが、たくさん産んで色んな毛色の子がいる家庭を目指すのもいいかもしれない。彼は金髪碧眼、私は黒髪緑目。顔つきや体軀はロレシオに似てほしいが、二人の特徴が混じり合った子どもがいる家庭。
──うん。悪くないかもしれない。
「いつもありがとうございます、ロレシオ」
「なんかお礼を言われるのは微妙なんだよな」
義務のようで嫌だとロレシオは口を尖らせる。
「──では、何といえば?」
「その他人行儀な言葉使いももうやめてほしいな。疲れるだろう? 家族なのに」
腕を回され、身体を引き寄せられた。額に、こめかみに、やさしくキスを落とされる。近衛騎士をしているロレシオの身体は逞しいが、触れると存外、筋肉は柔らかかった。
彼の胸元に頰をよせる瞬間がたまらなく好きだった。
私の問いにロレシオは一瞬迷った顔をして、天井を見つめ、こう言った。
「お礼はもういい……。んー……また、好きだって、たくさん言ってほしいな」
ドライだと思っていた彼は、意外にも距離なしさんだった。彼もばっちりモンシプール家の特性を受け継いでいたのである。
一瞬迷った顔をしたあと、まばゆいほどの明るい笑みを浮かべて、「たくさん好きって言って」だなんて、そんな可愛いことを言ってきた。
超至近距離で大好きな男の人からこんな素敵な事を言われてしまった私の方はと言うと、ときめきすぎて悶絶していた。胸を押さえ、下唇を噛む。
「うっ……」
「マリヴェル?」
「す、すぅ……すきです……」
腹から何とか絞り出して言った言葉。ロレシオは破顔して喜んでくれた。
今まで言えなかった分、たくさん好意を伝えよう。彼は「もう、ごめんなさいはたくさんだ」と困ったように笑っていた。
たくさん謝ってきた分、これからはいっぱいいっぱい『好き』と言おう。
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