PINK

ヴァンター・スケンシー

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第三話「VR」

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巨大仮想空間は本当にいろんなことができるようになった。
ビジネスやスポーツだけではなく、映画、ライブ、演劇などのさまざまなオンラインイベント、2000年前のピラミッドを復元したエジプトや、伝説とされているムー大陸への旅行などの、現実以上の体験もできるようになった。
現実世界との連携もとれた、仮想空間のあるとある建物が現実世界に存在している。
現実世界にいるユーザーはMRサングラスなどを着用してログインすれば、現実世界の中でも仮想空間を体感することができる。
もちろん仮想空間にいる人間とコミュニケーションを取ることもできるのだ。
現実空間にいる人間と仮想空間にいる人間が、同じ場所で待ち合わせをして話をしたりすることができた。

仮想空間のアバターは何種類か使用することができた。
デフォルメされたCGキャラ、ゲームやアニメのキャラ、そして自分自身をCG化した物など、さまざまなアバターが仮想空間上には存在していた。
ルッキズムやジェンダー問題、そのほか色々めんどくさい輩はこの世界の中にもいたので、自分自身の姿をしたユーザーはあまり存在しなかった。

だが『あること』をする時だけ、多くのユーザーは自分の姿のアバターに変えて仮想空間で過ごすことが多かった。『あること』とは恋愛だった。

遠距離恋愛をしてる恋人たちは、仮想空間上で会うことができた。
婚活やマッチングのイベントや会場でも、多くのユーザーが自らの姿で参加することがマナーのようになっていた。

そう『恋愛』で使用することが多かった。
恋愛にも色々ある、デートで映画を見にいったり、一緒にイベントに行ったり・・・
あとは・・・大人の恋愛もあるわけだ。
仮想空間のプライベート空間で、アバター同士で性行為をすることができた。
ゴーグルの他に性器に特殊なアタッチメントを装着しなくてはいけないが、離れたところに住んでいる彼女と『する』ことができた。
アバターを使用することは他にも利点があった。
コスプレ・・・つまり、お互いにお互いの好みの姿に変身して『する』こともできたし、同性愛者たちが、現実ではできない行為をすることもできた。
『ふたなり』『アンドロギュノス』のアバターも存在していた。
成人向けにセクシーアイドルのモデルを使ったAIとコミュニケーションを取れるサービスもあった。

俺も男なので、もちろん興味がある。
一度経験したが予想以上の没入感があり、想像以上の体験だった。
最近ゴーグルとアタッチメント以外にも新しいツールが人気が出ている。
スーツだ、なんといえば良いのだろうか・・・・ちょっとサイバーな全身タイツ?
これを着用すると、ゴーグルでの視覚と、性器につけたアタッチメント以外に、全身の感触が味わえることができるのだ。触られたり、抱き締めたりするとその感触暖かさも感じることができる。
発売されると一気に人気商品になり、すぐに一般的に普及するようになった。
値段も発売当初は高価だったが、普及することにより価格はどんどん下がり、俺でも購入できるほどの物だった。

購入し早速成人サービスを体験したが・・・・
段違いの体験だった。
興奮と快楽を得たと同時に、俺は不安に襲われた。

「こんなことを続けていたら、彼女なんて、結婚なんて一生できなくなりそうだ・・・」

俺は結婚相談所に登録することにした。
マッチングではなく、結婚相談所にしたのは、真面目に結婚相手を考えているからだ。
少し前は実家に帰った時に両親に「良い歳なんだから・・・」「孫の顔が見たい・・・」などとプレッシャーをかけられていたが、最近、仮想空間を使ってもプレッシャーをかけ始めた・・・お見合いリストを送ってきたり・・・姉夫婦の子供の運動会の動画を送りつけてきたり・・・・

俺はそんなにモテるタイプではないので、大人しく結婚相談所に相談してみることにした。
モテない変わりってわけではないが、歳の割には収入はあるはずなので、ある程度こちらからも選ぶこともできるはず。と思っている。

早速、仮想空間内の結婚相談所に登録した。

あらかじめ個人データ、相手に望む条件、好みのタイプを入力した。
そしてこれが一番恥ずかしいのだが、全裸で全身の写真を撮り、CGデータを制作し直した。
CGデータは前に作ったが、結婚と前提というシリアスなテーマで行動をするので、より制度の高い本人のCGを制作することをこのサービスでは義務付けられていた。
ただ、ちょっとラッキーなことがあった。
普通に撮影する場合は、スマートフォンを三脚などで固定し、全裸で両手を広げて360度撮影をしなくてはいけなかった。
しかし、スーツを着ると、スーツの中にあるセンサーを利用することで、体の写真をとる必要はなかった。邪な気持ちで買ったスーツだったが、思わぬところで役に立った。

「はじめまして、大原歩夢・・あゆむさんでよかったかしら?」

「はい、そうです」

「私は、大原さんの担当の小林です、AIじゃないわ、人間よ。一応担当は男性でも女性でフリーでもなんでもいいって書いてあったから、私が担当になったんだけど、大丈夫かしら?」

「はい、大丈夫です」

「じゃあ・・事前に答えてもらったことと少しダブルこともあるんだけど、少しだけ質問いいから?」

「はい」

「えーと、結婚の形式は、トラディショナルなスタイル、現実世界でも一緒に住んで暮らすスタイルね。」

「はい、そうですね、なんでできれば近くに住んでいる人が良いです」

「地域を限定するとね・・・おすすめ出来る方が少なくなるのよね・・・興味ないかしら?遠距離結婚」

「いえ・・・ぶっちゃけると両親に早く孫を。って言われてるので、その・・妊活とかもなるべく早めにって考えているので」

「一応ご説明させていただくと、仮想空間上でのセックスはご経験ある?」

「ええ・・相手はAIでしたけど」

「そう。性器のアタッチメントに特殊な装置をつければ、仮想空間上でのセックスの時の精子を抽出、保存して、お相手の卵子に人工受精ってことも出来るけど・・・・」

「ええ、一応調べました。でも・・まずは現実世界で・・・って思っています」

「そうね、わかったわ。いろんな結婚のスタイルがあって当然よね」

「じゃあ・・・一応今、私というかAIと相談して4名選んでみたわ、見てもらえる?」

仮想空間上に4人の女性が現れた。

「簡単に紹介するわね、一応私の主観のオススメポイントも話させて・・・」
「1人目は『相田瞳さん』年齢が大原さんと同じ35歳、出産をご希望なんで、年齢が少し気になるかもしれないけど、最近は医療も進化しているので問題はないわ。で、おすすめのポイントは・・・見ての通りです」

瞳さん・・・綺麗なお姉さん。スタイルも良い・・俺にはちょっと勿体ないくらいだな・・・

「2人目は『菅原清美さん』年齢は28歳、この方はすごくしっかりしてるわ。古い言い方だと家庭的なタイプね。あと・・お家が割と裕福な方で、育ち良いというか・・・清楚な感じね」

清美さん、うん。おとなしい感じはするけど、確かに育ちの良さを感じるな・・・親父とお袋は好きそう・・・・

「3人目は『吉田エレンさん』彼女も28歳ね、ちょっと見た目は気の強そうに見えるかもしれないけど、とても可愛らしい方よ。お仕事が好きですごく頑張ってる方だけど、子供が大好きで、たくさん子供を作りたいと思ってる方よ」


エレンさん、ハーフ?クォーターかな、綺麗な方だな・・・・
モテそうなのになぁ・・・・

「4人目は・・・・あれ?ちょっと待ってね『折原璃子さん』ね。一番若い24歳ね。最近加入した方みたいなので、他の方よりデータはちょっと少ないんだけど、結婚願望、出産願望は高いみたいね、あと・・年上の男性が好きみたいよ。あと・・・見た通り、若くて可愛いわね」

璃子さん、可愛いな・・・正直見た目は一番好みだけど・・・24歳。一回り近くも違うのは・・・


「今私がおすすめするのはこの4名よ、いきなり連絡をとるっていう方法もあるんだけど・・・一応みなさんには仮想デートをすることをオススメしてるわ」

「仮想デート?」

「ええ、彼女たちのデータはこの仮想空間上で蓄積されているの。そのデータをAIに移植して本人そっくりなAIとデートが出来るの。人となり、声や仕草なんかもね。
デートした内容をデータ、疑似体験として相手と共有することも出来るわ。本人に直接告白する勇気がなくてAIで告白した人もいたりするわね。もちろん送らなくてもオッケーよ。ただ、仮想デートしたことは本人には伝わるので、少し気になってるっていう意思表示にはなるけど・・・みんなとりあえずやっているから、そんなに重く考えなくていいわよ」

「なるほど・・リハーサルか・・・」

「そうね・・・私からの説明はこれくらいね。何か質問はある?」

「いえとりあえずは・・・まず仮想デートしてみようと思います」

「そうね、私もそれが良いと思う。何かあったら連絡して、私が直接話ができないときは私のAIが答えてくれるわ」

「はい、ありがとうございます」

小林さんはそう言って去っていった。

さて・・・正直思ったよりみんな綺麗だし、予想以上だった。
こうやって見た目とデータだけ見てもな・・仮想デートでちょっと人となりを知りたいな。
ただ・・・璃子さんだけはちょっとないかな・・・
正直可愛いしすごい好みだけど・・やっぱり年齢がな・・・見ている分には良いけど、結婚となるとな・・・・

俺はまず瞳さんと仮想デートしてみることにした。まずって言い方は失礼だが、4人もオススメしていただいたので、全員と一応デートしてみよう。

俺は瞳さんを選び『仮想デートに向かう』を選んだ。

『どこでデートしますか?』

え?場所を選ぶのか・・・・まあまず話をしてみたいからカフェでいいか・・・

カフェを選ぶと俺の部屋はカフェにかわり、先に席で待っているシュチュエーションになっていた。
仮想デートには30分の時間制限がついていた。

少し待っていると、瞳さんがやってきた。
大人っぽいワンピース姿だった

「はじめまして歩夢さん、あっ歩夢さんって呼んでいいかしら?」

「あっはい、はじめまして。はいもちろんです・・・じゃあ僕も瞳さんと呼んでもいいですか?

「はい、瞳って呼び捨てでもいいですよ、ふふっ」

なんだこれ?すごいぞ・・・・
本当に瞳さんと会話しているみたいだ・・・
確かに一回このデートを経験しておくと、実際に会う時に少し緊張しなくてすむな・・・・

俺は瞳さんとデートを始めた。
瞳さんは話し上手、聞き上手、見た目通り大人っぽい女性だった。
話も弾んだし、楽しかった。

『そろそろ時間です』

え?もう30分経つのか?
楽しかったせいかあっという間に時間が経っていた。

「楽しかったです、また・・会いましょうね、歩夢さん」

「はい」

瞳さんとの仮想デートが終わった。

すごいな・・・瞳さん良い人だったな、すごく綺麗な人だったし。
うん、他の方ともデートしてみよう。
でも、喋りすぎたのと仮想とはいえ少し緊張したな・・・
俺は飲み物を飲んで少し休憩していた。

しばらくすると、メッセージが入っていることに気づいた。
瞳さん?
そうか・・俺がデートしたことは伝わるって言っていたもんな。
メッセージを開いてみた。

「歩夢さん、仮想デートありがとうございました。私も歩夢さんとデートしてみたので、良かったら、体験してみてください」

体験?ああ・・・デートのデータを相手に送ることが出来るって言っていたな・・・
どんなデートだったんだろう?見てみよう。
俺は、瞳さんが送ってくれたデートデータを開こうとした。

『アタッチメントを使用するシチュエーションが含まれております、アタッチメント装着しますか?」

え?アタッチメント?・・・・・・
まさかと思うが・・俺はアタッチメントをつけてデートデータを開いた。

ホテルのベッドの上に寝転んでいる俺、そして下着姿の瞳さんがいた・・・
そして・・・俺は仮想デートで瞳さんと行為に及んだ・・・
瞳さんのテクは・・・すごかった・・・・

「こんなこともできるのか・・・・・・」

例え相手がAIだとはいえ・・・相手と同意がないとできないよな・・・
いや・・・俺のAIがきっと同意したんだろうな・・・・・

俺の頭に邪な考えが浮かんでしまった。
こちらからデータを送らなければ・・・どんなデートかはわからないよな・・
それに・・・そういう雰囲気を作れなければ無理だよな・・・

俺は璃子さんとデートすることにした。
いや、実際に結婚相手としてはちょっと厳しいとは思う。思うけど・・・
『こんな可愛い若いこと1回くらいしてみたい』
男の欲求に俺は負けてしまった。

璃子さんとの仮想デートを選択した。

『どこでデートしますか?』

あっ・・・・あった・・・『ホテル』・・・・・

俺は璃子さんとのデート始めた。

薄暗いホテルの一室に俺と璃子さんがいた。

「ふふふ、歩夢さんって思ったより積極的なんですね」

「あ・・いや・・・」

「大丈夫ですよ、嫌いじゃないです、積極的な人」

「あ、いやはじめましてなんだけど、あまりにも可愛かったから・・・」

「大丈夫って言ったじゃないですか、あと・・・体の相性って大切だと思いますよ」

璃子さんは俺をベッドに押し倒した。
ベッドの上で・・俺は璃子さんと行為をした・・・
・・・・・・・・・・

瞳さんには本当に申し訳ないんだが・・・
スーツを通して感じる、肌の感触が明らかに違った
柔らかくてなめらかで・・・
俺は夢中になっていた。

『そろそろ時間です』

えっもう・・・・

「うふふ、またデート誘ってくださいね」

璃子さんは笑顔でそう言ってくれてデートは終了した。

いけないとは思ったが・・・
もう一回デートしたいと思ってしまった・・・

少し放心状態になっていると、またメッセージが入った。

え?ひょっとして璃子さん?

そう思ってメッセージを確認すると、小林さんからの動画メッセージだった。
件名が「至急ご確認ください。お詫びの連絡です」

お詫び?至急?

「ああ、大原さん、ごめんなさい。デート中だったかしら?
ちょっと重大なことが起こったので、すぐに連絡させてもらったわ」

なんだろう・・・

「こちらのミスなので、大変申し訳ないわ・・・後で再度しっかりお詫びはさせていただくけど、とりあえず状況を説明させて頂くのとお詫びをするわ。本当に申し訳ありません。」

なんだ・・・そんな重要なことなのか・・・

「大原さんにご紹介した『折原璃子』さんなんですけど、こちらの手違いがあって・・・」

ああ、なるほど・・そうだよな・・あんな可愛くて若い子が俺のことを気になるなんてないもんな・・・じゃあさっきのデートしておいて良かったな・・・
まあ、正直結婚相手としては・・って思っていたし、良い経験ができて得したって感じだよ。


「えーと・・・・後からどうせ分かってしまうので・・・隠蔽みたいなことはしたくないから、はっきりお伝えするわ」

うん?

「えーーーと・・・『折原璃子』さんなんだけど・・・存在しないの・・・」

え?

「正確にいうと、もう存在しないの・・・彼女はもう亡くなっているの」

え?

「今原因は調べているんだけど・・・例え仮想デートだろうと・・本人との生体データとのリンクがある程度の間隔で行われないとデータは起動できないんだけど・・・折原さんが亡くなったのは・・・3年前・・・・・本当に原因がわからなくて・・・今調査中です。
調査結果がわかり次第、大原さんにもすぐに共有します。
この度は本当に申し訳ございませんでした。折原さんのデータの消去は確認できたので、もう大原さんの候補からも削除されているはずです・・・・」

え?・・・・・俺は死んだ女の子と行為をしたのか?
いや・・スーツを通じて感じた感触は・・・・
俺はゾッとして全身に鳥肌が立ってしまった・・・・・

俺は呆然としていた、心を落ち着かせようと飲み物でも飲もうかと思った時

メッセージが入った・・・・相手は・・・・

『折原璃子』
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