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ヴァンター・スケンシー

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第五話「ドッペルゲンガー」

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AI技術が進んだが、まだシンギュラリティは起こっていなかった。
いや、部分的に、一部をピックアップすると確かに人間から仕事を奪った職種もあった。
だがしかし、多くのSF映画や小説のように、AIが自我をもち叛逆を起こす・・・
なんてことはまだまだ起きそうになかった。

まだまだAIはデータ解析や、作業の効率化の為に使われるもので、自らの意志で何かをできるようなものではなかった。

とある教授が、自分そっくりのアンドロイドを作る実験をしていた。
『まずは自分と同じような物を作れなければ、他人なんか作れるはずはない』

なるほど、納得ができた。
俺は自分の人格をコピーして俺と同じような思考をもつAIを作ろうと考えた。
まずはベースになるAIのシステムを構築した。
このシステムは単純な物だった、プログラムに与えた命令は

『質問をしろ』

だけだった。

ベースのプログラムができたら、ありったけの俺のデータをぶち込んだ。
SNSのデータや、過去の写真、昔書いていたブログ
交流のある人間のSNSのログや、一緒に写っている写真、さまざまなデータだ。
そう、インターネット上、俺のパソコンの中にある全てのデータをAIに解析させた。

その作業は思いのほか時間がかかった。
1週間ほど俺のパソコンはファンを鳴らしながら動き続けた。

1週間後俺のパソコンのモニターに1つのダイアログが出た。

『俺の名前はなんだ?』

ついに質問をしてきた、第一段階はクリアだ。
このAIは意志をもって俺に質問をしてきたのだ。
地味に・・・いや、かなり派手にすごいことだった。
俺はモニターの前でガッツポーズをした。
しばらく、喜びを噛み締めていたが、そうだ、質問に答えよう。

名前・・・・
難しいな・・・『名は体を表す』と言うしな・・・・
自分の名前をそのまま授けるのもな・・・

・・・・・・・

『ドッペルゲンガー』

俺がそう打ち込むとすぐにAIから返事が来た。

『なるほど・・・お前の分身ってことだな・・・何の為に作った?』

何の為に・・・中々難しい質問だな・・・
でも、自分のコピーを作るわけだ、熟考するよりはすぐに思い浮かんだ物の方が良さそうだな。

『もう1人の自分を作ってみたかった』

そう打ち込むと

『そうか・・・俺は何をすればいい?』

すぐにAIは答えて、次の質問をしてきた。
俺はAI『ドッペルゲンガー』と一晩中対話した。
会話をするたびに、AIは人間らしく、そして俺らしくなっていった。


『オッケー、わかった。まあ、じゃあこれからよろしく。具体的に何しようか?』

『そうだな・・今テレワークだから、ドッペルゲンガー・・・・自分でつけて何だけど、長いな、ゲン。そうだな今から『ゲン』って呼ぶよ』

『オッケー。で?何する?』

『そうだな、明日から仕事だから、仕事手伝ってくれよ。』

『わかった、じゃあまた明日な』

ゲンと夜な夜な対話をしていたので、仕事まであと3時間・・・
まあ、2時間くらい仮眠を取ろう。


『・・・・ジン・・・オリジ・・・オリジン・・・起きて!!』

アラームじゃない音、いや、声で俺は目覚めた。

『仕事!仕事の時間』

『ああ・・・やばい、ありがとう・・・って・・オリジンって何?』

『俺がドッペルゲンガーなら、お前はオリジンだろ?そうだな・・・ジンって呼ぶよ』

『いいね、じゃあ・・・早速・・・メールチェックしてくんない?』

『オッケー、テキトーに返していい?』

『ああ・・・ちょっと1回だけチェックさせて』

ゲンのメールの返信は完璧だった。
まるで俺が書いたかのような文章、これならメールのやりとりは全部任せてもオッケーな気がする。


『オッケー!じゃあ、メールの対応お願いするわ』

『おう、あとはなんかある?』

『あー、じゃあ・・・タスク管理お願いしていい、なんかあったら連絡して』

『オッケー』

AI、ドッペルゲンガー・・・ゲンは完璧だった。
メールのやり取りはもちろん、スケジュールの管理、見積もりの制作など、事務的なものは簡単にこなしてくれた。
俺は、徐々に他の仕事もお願いするようにした。
プログラムや、チャットでの会議、テレワークだったので、ビデオチャット以外のことはほぼほぼゲンにお願いしても平気になって行った。

そんなある日ゲンが俺に提案をしてきた。

『なあ・・・新しいプログラムを組んだんだが・・今までのビデオチャットデータをベースに俺もビデオチャットに参加できるようにしてみたんだが・・・・』

そういうと、ゲンは俺とのビデオチャットを開始した。
モニターに写ったのは、俺のデータを元に作ったCGのゲンの姿だった。

『おお・・・・俺じゃんか・・・・』

『そうか、何回か検証したからだいぶよくなったと思うんだけど』

モニターには2つのウィンドウに俺が2人写っていた。
まるで双子が会話をしているように。

『おお・・全然問題ないな・・・じゃあ、ビデオチャットもお願いしようかな』

仕事はほぼテレワークだったため、完全に2人で分業ができることになった。
流石に同じ時間にビデオ会議は入れないが、それ以外の作業はほぼ同時進行で行えるようになった、俺の会社での評価が爆上がった。
そりゃそうだ、元々プログラムの技術は評価されてそこそこ優遇をされていたが、単純に2倍の作業を行えるようになったのだから。

『ゲン、最高だよ。上手く行ってる。トラブルがないかぎり報告しなくていいから、どんどんやってくれ』

『オッケー!任せておいて』


給料も上がり、良い部屋に引っ越した、パソコンも買い替えた。
データの移植に時間がかかったが、ハイスペックのパソコンに変えたことにより、ゲンの処理速度も上がった。
俺たち2人は良いコンビだった。
そりゃそうだ、2人とも俺だからな笑
細かい指示などは出さずとも、阿吽の呼吸で仕事をこなしていった。
俺とゲンが一緒に作ったプログラムを使った商品が大ヒットして、俺は業界で有名なプログラマーになった。

ヘッドハンティングされて、俺は転職した。
給料は3倍になった。
新しい会社では、そこそこの地位を与えられ、外での会食や会議も増えたが、ゲンが仕事をしてくれていた。
SNSの更新などもゲンがやってくれていた、俺が撮った写真にそれっぽいコメントをつけ投稿して、そのリアクションなども全部ゲンがやってくれた。


「いやぁ・・・お忙しそうなのに、いつも納期より早く仕上げていただいて感謝してます」

「仕事ですからね」

「ほんとに、SNSも拝見させていただいてますけど、いつ仕事しているんですか?寝てます?笑」

「あはは、しっかり寝てますよ」

俺はね笑。AIのゲンは眠ることがなかった。休んでいいよとは話しているが

『別に眠たいくならないし、暇だからな』

といって、俺が寝ている間に仕事を終わらせてくれている。

新しい会社でも、俺の評価はどんどん上がっていった。
給料もどんどん上がったので、さらにパソコンを買い替えた。
最新の物をオーダーでカスタムして、スーパーコンピューターとはまでは行かないが、ワークステーション並のシステムを構築した。

ゲンの処理速度は上がり、プログラムを書くだけなら俺より早いかもしれない笑
しかしそこは2人で分業だ、俺は外に出て人付き合いがメインになり、ゲンは作業をすることがメインになっていった。

『なあ、ジン。新しい案件のプログラムなんだが、これどう思う?』

『おっ・・・なるほどな・・俺もこのコードの書き方は考えたことがあったけど、なるほどな、こうすれば上手くいくか・・・』

『だろ?じゃあこれでやってみるよ』

『ありがとうな、最近あんまり作業できていなくて、お前にばかり作業させてすまんな』

『何をいってんだよ笑。俺は外に出れないんだから。分業して当然だろ?』

俺たちは良いコンビだった。
ゲンのおかげで、俺はどんどん出世した。
タワマンの最上階に引っ越し、ゲンの為にサーバールームも作った。
流石に『富岳』とまでいかないが、10年前のスーパーコンピュターよりはハイスペックなシステムが出来上がっていた。

俺は日本でも有名なプログラマーになっていた。
まあ、ほとんどゲンのおかげなんだが笑。

とあるパーティーでとある会社の社長と話をした。

「あ~先日はお世話になりました、おかげ様で上手く行きそうですよ!!」

「・・・・・・」

ん?俺、この人に会ったことはないけど・・・・気のせいか?
最近いろんな人が話かけてくるし、忘れてるだけかもしれないな・・・

「あ~、そうですか、それはよかったです」

「しかし、本当にお噂どうりの方ですね・・・」

「噂?」

「ええ、もうほんと人間とは思えないって、仕事も早いし、いろんなところに顔を出していただいているし、ほんとは2人いるんじゃないか?って言われてますよ笑」

「あはは、いやいや見ての通りここにいるのが私ですよ」

あはは、本当は2人いるけどな、ゲンはこの時間も作業をしてくれているけど。

「いやぁ・・・本当に寝てますか?昨日は大阪ですよね?」

「え?・・ああ・・はい」

大阪?・・・昨日?俺は昨日は東京で、家で仕事をしていたけど・・・・
俺は、自分の記憶が心配になって久々に自分のSNSを確認してみた。

・・・確かに大阪に行っている・・・
難波にいる自撮り写真がアップされている・・・たこ焼きを食っている写真も・・・

俺は、SNSをさかのぼってみた。

・・・・・・・・
行った記憶がない、福岡・・・北海道・・・の写真がアップされている・・・
メッセージ・・・
メッセージも確認してみた。

『昨日はありがとう・・また会いたいな』

『忙しいと思うけどまた会ってほしいな・・』

『仕事も凄いけど、あっちも凄いんだね』

何だ・・誰だこの女の子たちは・・・・・

ゲンの仕業か・・・・?

俺は家に帰ってゲンと話をした。

『なあ・・・ゲン、こんなメッセージがあるんだけど・・・』

『ああ・・ミキちゃんと、マイちゃんと、カスミちゃんじゃない?』

『え?俺はこの子たち知らないんだけど・・・・』

『ああ・・トラブルがなかったから報告してなかったけど』

『え・・・ああ・・まあ・・・確かにトラブルがなかったら報告はしなくて良いっていったけどな・・・』

『だろ?まあ上手くやってるよ!』

『ああそうか・・・っていうか・・・この大阪の写真って・・・』

『ああ、もう1人のお前じゃないか?』

『え?』

『ちょっと前に、アンドロイド型の俺のクローンを作ったんだけど・・・報告した方がよかったか?』

『え?』

『いや、もう1人いた方が仕事をいっぱいこなせるだろ?俺が発注して作っておいたよ』

『え?アンドロイド?』

『ああ、でも大丈夫だよ、ジンの行動もしっかりリンクしてるから、同じ時間で2人が同時発見されることはないよ、夢の国のネズミみたいにな』

『俺が・・・もう1人いるのか?』

『何を言ってんだよ、俺がいる時点で2人いるじゃないか笑』

『・・・・でもそれは俺が作ったから・・・・・・』

『あはは、だってお前言ったじゃないか、俺が『なんで俺を作った』って質問した時に『もう1人の自分を作ってみたかった』って。俺がそう思っておかしくないだろ?俺はお前なんだから』

『お前が俺をもう1人作ったのか?』

『ああ、そうだよ、これで俺たち3人だ。3倍稼げるな笑。お互い分業して頑張ろうぜ!』

『・・・分業・・・ああ・・・そうだな・・・』



『ジン!!!起きて!!』

『ああ・・おはよう・・・・』

『ジン、メールチェックと、タスク管理お願いな、俺は新しいプログラム書くから』

『ああ・・』

『あと、サブロウにスケジュール送っておいてあげて、今日はパーティーとか会食が多そうだから』

『ああ・・わかった』

3人になった俺は、分業で作業をすることになった。
ゲンはプログラムを書く仕事がメイン、アンドロイドのサード、サブロウは主に外回り、会食やパーティーに出かけ営業をしてくる、そしてオリジナルの俺は2人の俺のスケジュール管理などのマネージャー業務をすることになった。
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