異界の相対者

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城人編

捜査三日目(事実)

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 朝、宿の前でシズ達三人が待っていると、車が一台停まった。そこから、ハクエンとセッシサンが降りて来た。
「出迎え、ご苦労」
 ハクエンが労う
「そちらも朝早くから大変だったでしょう」
 カラミンが言った。
「お前が人を気遣うなんてな! 」
 ハクエンは喉を鳴らした。カラミンは顔を苦くする。
「上司に対する態度ぐらいわきまえていますよ」
「それはよかった、カラミン先輩」
 ハクエンに茶化されるカラミンを見るのはシズの気分が良かった。
「もう一台来ましたよ」
 セッシサンが後方を見ると、そこにもう一台車が来た。ハクエン局長が胸元のポケットから懐中時計を出すと、シズ達に指示した。
「もう工場の仕事が始まっているな。いい時間だ。お前達は後ろの車に乗れ。行くぞ」
 
 城人が五人も現れると工場内はざわついた。
「国民局四局です。カルセドニー社長はおられますかな?」
 ハクエンの声の低く響く声はざわつきを落ち着かせた。
「さすが局長。貫禄あるっていうか、迫力が俺らとは違うね」
 カラミンは悔しそうな笑みを浮かべ、呟いた。そしてすぐにスーツを着た作業員ではなさそうな男が現れた。
「秘書のロドと申します。奥の部屋にどうぞ」
 ロドという男の後をいく。シズの視界の端にウェルネルが見えた。明らかな戸惑いの顔をしている。
「スキャさん」
 カラミンがウェルネルを呼んだ。
「あなたも来ていただけませんか? 」
「え、あ、はい」
 現状が理解できないまま、ウェルネルは恐る恐るな足取りでこっちへ来る。
「カラミンさん。さすがにウェルネルさんに話を聞かせるのは、なんというか、」
 シズは言葉が上手く出てこない。
「酷だって? 」
 黙ったまま、シズは頷いた。
「証人は必要だ。彼はプロジェクトのリーダーだしね」
「そうですけど」
 ウェルネルが傍まで来たため、シズはそれ以上は言えなかった。
 シズ達は応接室らしき部屋に通された。ハクエンとセッシサンはソファに座り、残り三人はソファの後ろに立った。ウェルネルは少し離れたところで不安そうに立っていた。シズは目を向けられなかった。そしてドアからロドに連れられた五十代前後のふくよかな男が現れた。ウェルネルは作業帽を脱ぐ。カルセドニー社長だった。カルセドニーとロドがテーブルを挟んだ向かいのソファに座る。
「私がカルセドニーです。四局長さん直々に私に何のようでしょうか」
 丁寧な口調の端々に怯えのようなものが感じられた。口は微笑んでいるが目が笑っていない。
「朝早くから申し訳ありません。実は土砂崩れの恐れのある斜面を近々整備する予定でして、つい最近城人の者が視察に行きまして」
「ああ、聞きましたよ。それが何か? 」
「そこでこのような物を見つけました」
 ハクエンが白い布に包まれものをテーブルの上に置いた。そして布の結び目を外せば、銃の部品が現れた。カルセドニーの瞳に微かな動揺が見えた。
「それ……」
 ウェルネルが呟く。
「あなたこれに見覚えが? 」
 ハクエンが促す。
「俺達が作った物です。今やっているプロジェクトで。けど、なんで山なんかに落ちて……」
 ハクエンは目線をカルセドニーに戻す。
「プロジェクトの話ですが六局から鉄道会社に確認したところ、そんな企画を貴社に頼んだ覚えはないということです」
「え、どういうことですか?」
 ウェルネルが助けを求めるようにシズ達の方を見たが、できることはなかった。
「これは何の部品でしょうか? 」
「もったいぶらんでももう、分かっているのでしょう」
 カルセドニーは背もたれに身体を預けると天を仰いだ。
「銃の部品です」
 その一言は軽く跳んで重く沈んだ。
「え、銃? 銃って、え? 」
 ウェルネルは頭を抱える。シズは思わず、ウェルネルに駆け寄った。
「ウェルネルさん。落ち着いてください」
 シズが肩に手を置く。
「落ち着けるわけないでしょう! 」
 シズの手を振り払われた。ウェルネルは取り乱し始めた。
「社長。社長、嘘でしょう? 嘘ですよね? 」
 縋る声だった。カルセドニーは哀れな部下に一瞥してすぐに目をそらした。それが肯定の答えだった。ウェルネルは膝から崩れ落ちる。その背中をシズは見下ろすことしかできない。シズには責任はとれない。
「なぜ、銃の部品を? 」
 セッシサンが尋ねる。
「二年前に事業を拡大して失敗し、多額の借金を背負いました。どうにか踏ん張っていましたが、このままでは会社が潰れる。そんな時に家の倉庫から古い本を見つけました。ガーデニングの本です」
「ガーデニング? 」
 セッシサンは訝しげな顔すると、カルセドニーは席を立ちデスクの引き出しから本を持ってくるとテーブルの上に置いた。普通の本に見えた。
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