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城人編
捜査三日目(正と正)
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「今日のことを覚えておけよ」
外に出ると、シズとカザンに背中を向けたままハクエン局長は言った。
「正と正は重ならない。そして、平和にうぬぼれてもいけない。戦争やってろうとやってなかろうと犠牲はある。人が生きるには犠牲が付きものだ。犠牲の重みを知っているかいないかで己の価値は代わる」
ハクエンは振り返る。
「安い仕事をするなよ」
息を飲み込み、シズはカザンとともに返事をした。
「よし。カルセドニーは俺達の車に乗せたから、ロドを頼んだぞ」
「はい」
ハクエンが車へと行く。私とカザンもカラミンが待っている車へ急いだ。
「ヨンキョクさん!」
シズが立ち止まり振り返ると目を赤くしたウェルネルがいた。
「ウェルネルさん……」
大丈夫ですかなんて安易な言葉をかけられなかった。
「あの、たぶんなんですけど、ロドさんのことで言っておきたいことがあります」
車には、ロドの隣にカラミン、カラミンの向かいにシズ、そしてシズの隣にカザンが座った。沈黙を乗せて車は走る。
「ロドさん」
沈黙をそっと避けるように、シズはロドに話しかけた。
「我々が見つけた銃の部品あなたがわざとあそこに落としたんじゃないですか? 」
ロドさんは静かな瞳をシズに向ける。
「あそこに城人が視察が来るのは誰でも知れたことです。あなたは見つけて欲しくて部品を溝に置いたんじゃないですか? 」
「……どうして分かったんですか? 」
ロドは全てを削ぎ落とすことに躊躇がないようだった。
「先ほどウェルネルさんが教えてくれました。あなたがサンプルだと言って部品を持ち出したことを」
カザンが説明すると、やっぱりあれでばれたかとため息混じりの微笑みを車窓に映した。
「最後の最後にロドさんが歯止めをかけてくれたんだって言ってましたよ、ウェルネルさん」
シズが言った。
「え? 」
「あなたが部品をワザと落としたことで銃が完成されることはまぬがれた。ウェルネルさん達は人殺しの武器を完成させずにすんだ、と」
腫れた目で最後の最後にウェルネルはシズ達にそれを伝えた。許せない気持ちはあるはずだ。それでも伝えにきてくれた。
「ウェルネルは甘いですね。今更あがくなら最初から社長に部品作りを止めれば良かったんですよ」
ロドは自嘲した。
「私も馬鹿でした。どうしようもない馬鹿でした。それをカルセドニーさんに拾ってもらい知識を付けて貰いました。それで秘書にまでなりました。この人のためにどんなことでもしようと決めていたんです。言い訳になるかもしれませんが、カルセドニーさんはいい人です。いい人過ぎたんです。賭場には行っていましたがお小遣い程度に遊ぶだけでした。事業拡大もアーカートとかいう胡散くさい男に唆されただけです。仲人したきりどこかへ消えてしまいましたし」
右の二の腕に十字の傷がある男、ユオ・オーピメン。
「借金も利子でもうどうしようもないことになっていました。私もカルセドニーさんももう銃の部品を作ることしか工場を守る手はないと思い込んで……」
正と正は重ならない。ハクエンの言葉がシズの頭にリフレインした。世間的には「正」ではないことだが、ロド達にとっては唯一の「正」だったのだ。
「今日の最後の取引を終えるとカルセドニーさんは自殺するつもりでした。私は別にウェルネル達の罪悪感を拭うために部品を落とすように頼んだのではありません」
「カルセドニーを生かすためってことね」
カラミンの言葉にロドは頷いた。するとカザンがあの、と呟いた。
「部品を落とすように頼んだって、あなたが落としたのではないのですか? 」
「はい。視察の城人さんに見つけて貰えるにはその日の当日が良かったのですが、社長の付き添いで前日から出掛けることになっていました。なのでたまたまレストランで出会った用心棒兼何でも屋という方にお願いしました」
用心棒兼何でも屋。シズは絵描きのじいさんがインデッセからの用心棒が来るとか話していた。
「その用心棒兼何でも屋っていう奴の名前と特徴は? 念のために教えて貰いたい」
カラミンが尋ねればロドはここで躊躇した。
「彼はあれが銃の部品だとは知りません」
「けどあなたの言ってることが正しいかどうか、念の為に確認取らなくちゃいけないから。まあ用心棒なら居場所見つけるのは大変だろうけど。悪いけど、どっちにしても話さないといけないことだから」
「……そうですか。ならば言います。名前はサルファーと名乗っていました。苗字は分かりません。髪の毛の色はオレンジ色で、年齢はあなた達ぐらいですね」
ロドはシズ達の方を見る。レニーってカザンと同じ名前だな、とシズはちらりとカザンを見たが、カザンは顔を背けていてどんな顔をしているか分からなかった。
外に出ると、シズとカザンに背中を向けたままハクエン局長は言った。
「正と正は重ならない。そして、平和にうぬぼれてもいけない。戦争やってろうとやってなかろうと犠牲はある。人が生きるには犠牲が付きものだ。犠牲の重みを知っているかいないかで己の価値は代わる」
ハクエンは振り返る。
「安い仕事をするなよ」
息を飲み込み、シズはカザンとともに返事をした。
「よし。カルセドニーは俺達の車に乗せたから、ロドを頼んだぞ」
「はい」
ハクエンが車へと行く。私とカザンもカラミンが待っている車へ急いだ。
「ヨンキョクさん!」
シズが立ち止まり振り返ると目を赤くしたウェルネルがいた。
「ウェルネルさん……」
大丈夫ですかなんて安易な言葉をかけられなかった。
「あの、たぶんなんですけど、ロドさんのことで言っておきたいことがあります」
車には、ロドの隣にカラミン、カラミンの向かいにシズ、そしてシズの隣にカザンが座った。沈黙を乗せて車は走る。
「ロドさん」
沈黙をそっと避けるように、シズはロドに話しかけた。
「我々が見つけた銃の部品あなたがわざとあそこに落としたんじゃないですか? 」
ロドさんは静かな瞳をシズに向ける。
「あそこに城人が視察が来るのは誰でも知れたことです。あなたは見つけて欲しくて部品を溝に置いたんじゃないですか? 」
「……どうして分かったんですか? 」
ロドは全てを削ぎ落とすことに躊躇がないようだった。
「先ほどウェルネルさんが教えてくれました。あなたがサンプルだと言って部品を持ち出したことを」
カザンが説明すると、やっぱりあれでばれたかとため息混じりの微笑みを車窓に映した。
「最後の最後にロドさんが歯止めをかけてくれたんだって言ってましたよ、ウェルネルさん」
シズが言った。
「え? 」
「あなたが部品をワザと落としたことで銃が完成されることはまぬがれた。ウェルネルさん達は人殺しの武器を完成させずにすんだ、と」
腫れた目で最後の最後にウェルネルはシズ達にそれを伝えた。許せない気持ちはあるはずだ。それでも伝えにきてくれた。
「ウェルネルは甘いですね。今更あがくなら最初から社長に部品作りを止めれば良かったんですよ」
ロドは自嘲した。
「私も馬鹿でした。どうしようもない馬鹿でした。それをカルセドニーさんに拾ってもらい知識を付けて貰いました。それで秘書にまでなりました。この人のためにどんなことでもしようと決めていたんです。言い訳になるかもしれませんが、カルセドニーさんはいい人です。いい人過ぎたんです。賭場には行っていましたがお小遣い程度に遊ぶだけでした。事業拡大もアーカートとかいう胡散くさい男に唆されただけです。仲人したきりどこかへ消えてしまいましたし」
右の二の腕に十字の傷がある男、ユオ・オーピメン。
「借金も利子でもうどうしようもないことになっていました。私もカルセドニーさんももう銃の部品を作ることしか工場を守る手はないと思い込んで……」
正と正は重ならない。ハクエンの言葉がシズの頭にリフレインした。世間的には「正」ではないことだが、ロド達にとっては唯一の「正」だったのだ。
「今日の最後の取引を終えるとカルセドニーさんは自殺するつもりでした。私は別にウェルネル達の罪悪感を拭うために部品を落とすように頼んだのではありません」
「カルセドニーを生かすためってことね」
カラミンの言葉にロドは頷いた。するとカザンがあの、と呟いた。
「部品を落とすように頼んだって、あなたが落としたのではないのですか? 」
「はい。視察の城人さんに見つけて貰えるにはその日の当日が良かったのですが、社長の付き添いで前日から出掛けることになっていました。なのでたまたまレストランで出会った用心棒兼何でも屋という方にお願いしました」
用心棒兼何でも屋。シズは絵描きのじいさんがインデッセからの用心棒が来るとか話していた。
「その用心棒兼何でも屋っていう奴の名前と特徴は? 念のために教えて貰いたい」
カラミンが尋ねればロドはここで躊躇した。
「彼はあれが銃の部品だとは知りません」
「けどあなたの言ってることが正しいかどうか、念の為に確認取らなくちゃいけないから。まあ用心棒なら居場所見つけるのは大変だろうけど。悪いけど、どっちにしても話さないといけないことだから」
「……そうですか。ならば言います。名前はサルファーと名乗っていました。苗字は分かりません。髪の毛の色はオレンジ色で、年齢はあなた達ぐらいですね」
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