53 / 241
城人編
非常階段
しおりを挟む
「サルファー、スフェンが帰って来たわよ! 」
母親の声にサルファーは読んでいた本を閉じると二階の部屋を出て一階へと駆け下りた。そこには、母と祖母に囲まれた兄のスフェンがいた。スフェンは弟に気が付くと優しい兄の顔をした。
「サルファー! お前もしかして背伸びたか? 」
「少しね」
照れたように言えばスフェンはサルファーに手招きをした。サルファーは嬉しそうに近づけばスフェンはサルファーの頭を両手でくしゃくしゃに撫ぜた。
「寂しかったか? 」
「そんなことないよ」
「あら、サルファーお兄ちゃんが早く帰って来ないかなっていつも言っていたじゃない」
「お母さん! 」
サルファーが恥ずかしさに怒れば家族は大笑いした。
「俺はサルファーに沢山話したいことある。兄ちゃんの話聞いてくれるか? 」
「……いいよ」
「ありがとな」
スフェンはお土産があるとトランクを開けた。スフェンの背中にサルファーは兄の友人の事を聞いた。
「ルバも孤児院に帰って来ているの? 」
スフェンは手を止めた。そしてゆっくりと振り返る。その兄の顔には先ほどまでの優しさが消えていた。冷えた、ぞっとする表情だった。
「帰って来ているかもな。けどサルファー。もうあいつとは会ってはいけないよ」
「え、ど、どうして」
「あいつは悪い奴だ」
悪い奴。兄が親友のことをそんな風に言うことがサルファーは信じられなかった。
「あいつはアルガー先生に反抗して学校を辞めたんだ」
「ルバ君が学校を辞めたの? 」
母親も驚き口に手を当てた。
「そうだよ。あいつは先生に反発したんだ。アルガー先生はとても素晴らしい先生なのに」
兄の口からルバの名前が出なかった。あいつとしか言わないスフェンにサルファーは今まで感じた事のない不安と恐怖を感じた。
「所詮、親がいない子だからね。仕方ないさ」
今までルバが良い子だと言っていた祖母の言葉にサルファーは言葉を失った。
「まあ、そうよね」
母親も同意する。サルファーは縋る気持ちでスフェンを見上げる。スフェンはサルファーの頭に優しく手を置いた。
「孤児院育ちが全員そうとは限らないよ。おばあちゃん、母さん。けどもう会わない方がいいんだよ、サルファー。お前の為にも。兄さんと約束だ」
見下ろすスフェンの瞳を見て、オレンジの髪を太陽で輝かせ笑うルバの顔がサルファーの頭の中に蘇る。ルバは優しく、面白く、頼りになる兄のようなものだった。そのルバを兄の一言で邪険にする家族。サルファーは言い返さなければならないとスフェンの顔を見上げた。けれど兄の壊れない笑みに自分がルバを庇うことを許されないような気がした。サルファーは抵抗を込めてゆっくりと頷いた。
カルセドニー工場の事件から十日経った。カルセドニーとロドを逮捕した日の夜、取引が行われるという場所に四局が行ったけれど、取引相手は来なかった。カルセドニー達が四局に捕まったことが漏れたみたいだな、とハクエン局長が言った。結局、取引相手が誰だったのかは不明なままだ。この一件をハクエン局長は、一局長、二局長、八局長に報告した。そして王に意向を確認した。局長達の助言もあり、押収した銃の部品は取引相手を捕まえるまで証拠として、地下倉庫に厳重に保管して置くことに決まった。事件も世間的にはカルセドニー社長が借金のためにありもしないプロジェクトをでっちあげ、国から補助金を騙し取ろうとしたという、無理なものになった。新しい社長が就任したそうだがこれからあの工場が、ウェルネルがどうなるかシズは分からない。
「あ、そうそう。君達、長期休暇いつ取る? 」
カラミンが椅子をくるりと回転させると藪から棒に言った。
「長期休暇なんて取れるんですか? 」
シズが聞き返す。
「いくら四局員だって年から年中働けるわけないでしょ?本当にカンダはアンポンタンだねぇ」
「てめぇが説明不足なんだよ」
オドーがカラミンを椅子事蹴り飛ばすと、カラミンは叫びながら滑っていく。
「見回りとか門番があるから、他の局みたいに一度に全員休むって訳にはいかないからな。好きな月に一週間休暇が貰えるんだ」
オドーがシズとカザンに説明してくれている間に、カラミンは椅子を引きずりながら戻って来た。
「俺は十二月がいいからそれ以外にしてくれない? 」
「お前たまには後輩から選ばせてやれよ」
オドーが呆れたようにカラミンを睨んだがどこ吹く風だった。
「では、僕は来月でいいです」
カザンが素っ気なく希望を言った。
「カザンが九月ね。カンダはどうする? 」
別にいつでもいいとシズは思った。
「じゃあ十月で」
「そんな適当に決めていいのか? 少し考えてもいいんだぞ」
カラミンとは反対のいい先輩オドーは心配してくれた。教育係がオドーのアシス達が、シズは羨ましい。
「私はいつでもいいんで」
「僕もいつでも結構なので」
シズはカザンの横顔をちらりと見る。これと言って大きなものではないが、カザンの様子がちょっと前と比べて変な気がした。見回りや門番をしていても時々上の空のようなことがある。
「そろそろ見回りの時間じゃない? 」
カラミンが壁の時計を見て言った。カザンが立ち上がってエンジジャケットをはおり歩いていく。シズはアシスを振り向いた。
「なあ、最近カザンちょっと変じゃないか?」
「そう?よく分からないけど、失恋したんじゃない?」
「それはなくないか? リョークじゃあるまいし」
「おい、聞こえてんぞ! カンダ! 」
アシスの向こうにいたリョークが怒る。それから逃げるように、シズはエンジジャケットを掴むとカザンの後を追った。
国民局の四階非常階段。カラミンは腕時計を眺めていると背後で扉が開く音がした。
「お、先客がいた」
カラミンとオドーの同期、二局のシナバ・タンサだった。タンサは煙草を咥えるとカラミンの横に来た。カラミンの視界にタンサの赤毛がちらついた。
「サボり魔め」
「ただの休憩ですー。それにお前に言われたくない」
「喫煙者は休憩が沢山必要なんだよ」
タンサは煙草に火を付けた。口から離すと煙を天に吐き出した。
「カルセドニー工場の件、聞いたぞ」
「さすが二局のエース。お前の耳にまで入るとはね」
カルセドニー工場の事件の真相は城人でもごく一部しか知らない。ウェルネルにも他言しないようにと口止めをした。ウェルネルはとても仕事仲間達に言えやしないと、苦しげに言った。その顔をカラミンは思い出した。
「カルセドニーの取引相手、手がかりないのか? 」
「ぜーんぜん。仲介をしたユオ。オーピメンとかいう男の身元も不明。多分偽名だろうけど」
「だろうな。でも、相手国内だといいな。他国の奴だったら国際問題になって大ごとになるぞ。うちの国は利用されたことになるぜ」
「国内だったらもみ消せる。あの保管された銃の部品と一緒にね」
タンサはカラミンの瞳に狂気を感じた。カラミンという男は適当でへらへらしている表面の裏に、冷たく残酷な心を持っているようだった。そんな事本人に言う訳ではなく、タンサは煙草を咥えた。
「まあ、四局であるカラミンさんがしっかり調べますよー」
カラミンは再び時間の狂った腕時計を眺めた。
「……まだトイサキレウさんのことこそこそ調べてるのか? 」
カラミンはヘラついた笑みをタンサに向けた。タンサは眉間に皺を寄せるとカラミンの顔に煙を吹きかけた。カラミンは咳き込む。
「何するんだよ」
「あんまり危ない事やっていると九局が叩きにくるぞ。ばれないようにな」
「はーい」
母親の声にサルファーは読んでいた本を閉じると二階の部屋を出て一階へと駆け下りた。そこには、母と祖母に囲まれた兄のスフェンがいた。スフェンは弟に気が付くと優しい兄の顔をした。
「サルファー! お前もしかして背伸びたか? 」
「少しね」
照れたように言えばスフェンはサルファーに手招きをした。サルファーは嬉しそうに近づけばスフェンはサルファーの頭を両手でくしゃくしゃに撫ぜた。
「寂しかったか? 」
「そんなことないよ」
「あら、サルファーお兄ちゃんが早く帰って来ないかなっていつも言っていたじゃない」
「お母さん! 」
サルファーが恥ずかしさに怒れば家族は大笑いした。
「俺はサルファーに沢山話したいことある。兄ちゃんの話聞いてくれるか? 」
「……いいよ」
「ありがとな」
スフェンはお土産があるとトランクを開けた。スフェンの背中にサルファーは兄の友人の事を聞いた。
「ルバも孤児院に帰って来ているの? 」
スフェンは手を止めた。そしてゆっくりと振り返る。その兄の顔には先ほどまでの優しさが消えていた。冷えた、ぞっとする表情だった。
「帰って来ているかもな。けどサルファー。もうあいつとは会ってはいけないよ」
「え、ど、どうして」
「あいつは悪い奴だ」
悪い奴。兄が親友のことをそんな風に言うことがサルファーは信じられなかった。
「あいつはアルガー先生に反抗して学校を辞めたんだ」
「ルバ君が学校を辞めたの? 」
母親も驚き口に手を当てた。
「そうだよ。あいつは先生に反発したんだ。アルガー先生はとても素晴らしい先生なのに」
兄の口からルバの名前が出なかった。あいつとしか言わないスフェンにサルファーは今まで感じた事のない不安と恐怖を感じた。
「所詮、親がいない子だからね。仕方ないさ」
今までルバが良い子だと言っていた祖母の言葉にサルファーは言葉を失った。
「まあ、そうよね」
母親も同意する。サルファーは縋る気持ちでスフェンを見上げる。スフェンはサルファーの頭に優しく手を置いた。
「孤児院育ちが全員そうとは限らないよ。おばあちゃん、母さん。けどもう会わない方がいいんだよ、サルファー。お前の為にも。兄さんと約束だ」
見下ろすスフェンの瞳を見て、オレンジの髪を太陽で輝かせ笑うルバの顔がサルファーの頭の中に蘇る。ルバは優しく、面白く、頼りになる兄のようなものだった。そのルバを兄の一言で邪険にする家族。サルファーは言い返さなければならないとスフェンの顔を見上げた。けれど兄の壊れない笑みに自分がルバを庇うことを許されないような気がした。サルファーは抵抗を込めてゆっくりと頷いた。
カルセドニー工場の事件から十日経った。カルセドニーとロドを逮捕した日の夜、取引が行われるという場所に四局が行ったけれど、取引相手は来なかった。カルセドニー達が四局に捕まったことが漏れたみたいだな、とハクエン局長が言った。結局、取引相手が誰だったのかは不明なままだ。この一件をハクエン局長は、一局長、二局長、八局長に報告した。そして王に意向を確認した。局長達の助言もあり、押収した銃の部品は取引相手を捕まえるまで証拠として、地下倉庫に厳重に保管して置くことに決まった。事件も世間的にはカルセドニー社長が借金のためにありもしないプロジェクトをでっちあげ、国から補助金を騙し取ろうとしたという、無理なものになった。新しい社長が就任したそうだがこれからあの工場が、ウェルネルがどうなるかシズは分からない。
「あ、そうそう。君達、長期休暇いつ取る? 」
カラミンが椅子をくるりと回転させると藪から棒に言った。
「長期休暇なんて取れるんですか? 」
シズが聞き返す。
「いくら四局員だって年から年中働けるわけないでしょ?本当にカンダはアンポンタンだねぇ」
「てめぇが説明不足なんだよ」
オドーがカラミンを椅子事蹴り飛ばすと、カラミンは叫びながら滑っていく。
「見回りとか門番があるから、他の局みたいに一度に全員休むって訳にはいかないからな。好きな月に一週間休暇が貰えるんだ」
オドーがシズとカザンに説明してくれている間に、カラミンは椅子を引きずりながら戻って来た。
「俺は十二月がいいからそれ以外にしてくれない? 」
「お前たまには後輩から選ばせてやれよ」
オドーが呆れたようにカラミンを睨んだがどこ吹く風だった。
「では、僕は来月でいいです」
カザンが素っ気なく希望を言った。
「カザンが九月ね。カンダはどうする? 」
別にいつでもいいとシズは思った。
「じゃあ十月で」
「そんな適当に決めていいのか? 少し考えてもいいんだぞ」
カラミンとは反対のいい先輩オドーは心配してくれた。教育係がオドーのアシス達が、シズは羨ましい。
「私はいつでもいいんで」
「僕もいつでも結構なので」
シズはカザンの横顔をちらりと見る。これと言って大きなものではないが、カザンの様子がちょっと前と比べて変な気がした。見回りや門番をしていても時々上の空のようなことがある。
「そろそろ見回りの時間じゃない? 」
カラミンが壁の時計を見て言った。カザンが立ち上がってエンジジャケットをはおり歩いていく。シズはアシスを振り向いた。
「なあ、最近カザンちょっと変じゃないか?」
「そう?よく分からないけど、失恋したんじゃない?」
「それはなくないか? リョークじゃあるまいし」
「おい、聞こえてんぞ! カンダ! 」
アシスの向こうにいたリョークが怒る。それから逃げるように、シズはエンジジャケットを掴むとカザンの後を追った。
国民局の四階非常階段。カラミンは腕時計を眺めていると背後で扉が開く音がした。
「お、先客がいた」
カラミンとオドーの同期、二局のシナバ・タンサだった。タンサは煙草を咥えるとカラミンの横に来た。カラミンの視界にタンサの赤毛がちらついた。
「サボり魔め」
「ただの休憩ですー。それにお前に言われたくない」
「喫煙者は休憩が沢山必要なんだよ」
タンサは煙草に火を付けた。口から離すと煙を天に吐き出した。
「カルセドニー工場の件、聞いたぞ」
「さすが二局のエース。お前の耳にまで入るとはね」
カルセドニー工場の事件の真相は城人でもごく一部しか知らない。ウェルネルにも他言しないようにと口止めをした。ウェルネルはとても仕事仲間達に言えやしないと、苦しげに言った。その顔をカラミンは思い出した。
「カルセドニーの取引相手、手がかりないのか? 」
「ぜーんぜん。仲介をしたユオ。オーピメンとかいう男の身元も不明。多分偽名だろうけど」
「だろうな。でも、相手国内だといいな。他国の奴だったら国際問題になって大ごとになるぞ。うちの国は利用されたことになるぜ」
「国内だったらもみ消せる。あの保管された銃の部品と一緒にね」
タンサはカラミンの瞳に狂気を感じた。カラミンという男は適当でへらへらしている表面の裏に、冷たく残酷な心を持っているようだった。そんな事本人に言う訳ではなく、タンサは煙草を咥えた。
「まあ、四局であるカラミンさんがしっかり調べますよー」
カラミンは再び時間の狂った腕時計を眺めた。
「……まだトイサキレウさんのことこそこそ調べてるのか? 」
カラミンはヘラついた笑みをタンサに向けた。タンサは眉間に皺を寄せるとカラミンの顔に煙を吹きかけた。カラミンは咳き込む。
「何するんだよ」
「あんまり危ない事やっていると九局が叩きにくるぞ。ばれないようにな」
「はーい」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる