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5 第五区荘園
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この計画書骨子を完全にするためにも、来週までに情報を集めなければならない。
ジェシカは侍女の仕事もあるのに、しっかりと召使いたちから話を聞き出せている。
元王族とは思えないほどの気さくな性格とコミュニケーション能力。
わたしだったら、あれほどうまく出来なかっただろう。
とはいえ、わたし自身も聞き出しを行わないといけない相手がいる。
本で調べたところ、十年前の使節団は城の防備や兵の調練の様子を視察している。
今回の使節団でもそれは実施される可能性が高い。
その案内役は騎士団に所属する者が行うだろう。
確認という名目で、わたしはひとりの騎士に近づいた。
名をウィリアムという、騎士団でも中堅クラスの地位にある男。
地位が高い騎士団長など、アレックス王と繋がりがありそうな者は避けたかった。
偶然なのか、わたしが話しかけた騎士ウィリアムはあの謁見の間でわたしに剣を突きつけた男だった。
ウィリアムはわたしの前でひざまずき、あの時の非礼を侘びた。
「王妃殿下、お許しください。あの時は陛下の命にてやむなく」
「いえ、気になさらないで。それよりもあなたに確認したいことが」
「わたしで分かることであればなんなりと」
「来週に控えた使節団の視察についてですが」
慎重に相手の反応をうかがいながら質問する。
実際に兵や防備について視察があるとは限らない。
使節団が来るほどの友好国とはいえ、自国の軍事面を見せつけるような真似はしないことも考えられる。
特にダラムの最近の軍拡については相手国を警戒させてしまう一因にだってなるだろう。
ウィリアムは特に不自然なふうもなく、はいと答えた。
「オークニーは海洋国家のため、我が国の歩兵や騎馬隊の戦い方に興味があるようですね。実際に兵を動かし、演習を披露することになっています」
「そうでしたね。兵を指揮するのはあなたが?」
「いえ、兵の指揮は別の者が務めます。わたし自身は使節団の案内を担当していますので」
ここで少し怪訝な表情になったので、わたしは話題を変えた。
「タムワース領への出兵が決まりましたね。本当はそちらに参加したかったのでは?」
「騎士として武勲を立てるのならばそうでしょう。ですが、使節団の案内も大事な役目だと心得てます」
若いながら実直な性格の持ち主のようだ。使節団の案内を任されたというのにも納得がいった。
「その通りですね。視察の案内についてはあなたに任せておけば安心のようです。細かな事はわたしの指示を仰がずとも自身の裁量で行ってください」
「……はっ、お任せください」
視察の内容の一部は軍の演習だと特定できた。そしてその細部はウィリアムに任せる事もできた。これは大きな収穫だった。
あと前回の視察で行っていることは。
本で調べたことだと、前回は農耕や畜産の視察が含まれている。
これについては誰に聞いたらいいのか。
政務を担当している大臣? いや、彼らは税として収められる生産物の計上をしているだけに過ぎない。
実際に農耕に関わっているのは荘園内の農民たちだ。
その荘園の管理をしているのは各地方の領主。
だけどわざわざ王都を離れてまで他領地を視察するはずはない。
ダラム直轄の農地で行うはずだった。
たしか農地は王都郊外にあったはず。
そしてその管理者となると廷臣の誰か。
「王妃殿下。それではわたしはこれで失礼します」
ウィリアムが立ち去ろうとするが、わたしはそれを引き止めた。
「忙しいところ申し訳ありませんが、もうひとつだけお願いが」
「なんでしょうか」
「郊外の農地を見ておきたいのです。護衛をかねて、あなたに案内してもらいたいのですが」
「郊外へ? 城から出られるという意味でしょうか」
「ええ、そういうことになりますね」
「しかし、それは」
「陛下にも許可は頂いています。問題はありません」
とっさに嘘をついた。ウィリアムは少し考えた様子を見せてから、かしこまりましたと答えた。
ウィリアムの用意した馬車に乗り、わたしは王都の郊外へ向かう。
王妃が勝手に外出など許されないことだろうが、城門でも王都の関所でも咎められることはなかった。
御者がウィリアムということが幸いしたようだ。
門兵や巡回の兵に顔が利く。なんの疑問も抱かれずに郊外の農地へと到着した。
もうじき収穫を控えた黄褐色の麦穂が畑一面に広がっている。
意外なのはこの麦畑や周りの耕拓地の範囲は狭く感じたことだった。
近くの山のせいで斜面が多く、日当たりも悪い。
大国ダラムならば広大な土地に豊かな作物があるものだと想像していたのでこれは意外だった。
わたしの表情から察したのか、ウィリアムが説明してくる。
「この第五区荘園は数年前に切り拓いたばかりの土地でまだ拡張途中なのです。荘園の中では最も小規模で収穫が少ないのですが、王都から最も近かったので」
「なるほど。そうだったのですね」
わたしは馬車から降り、少し離れた牧草地で草を刈っている農夫に声をかけた。
「こちらの農地の責任者は今、どちらにいますか?」
わたしの格好を見た農夫は目を丸くしながらも、川向こうの水車小屋にいるとたどたどしく教えてくれた。
「ありがとうございます」
礼を言い、わたしは牧草地沿いの道を歩く。
ウィリアムもついてくる。
「こう言っては失礼かもしれませんが、王妃殿下は少し変わっていらっしゃいますね」
歩きながらウィリアムが抑揚のない声でそう言ってきた。
「そうですか? どのあたりが?」
「その、王族の方が農奴に声をかけたり、礼を言ったりするのをはじめて見たので」
「? そうなのですか? シェトランドでは普通にしていたことなので」
「……そうなのですね。驚きました」
それからウィリアムは黙りこくってしまった。
少し気まずいと思いながらも、特に話題も思いつかず、そのまま無言で歩く。
水の流れる音。そしてほどなくして川が見えてきた。
川沿いに上流へ歩くと、橋がある。そこを渡ってすぐの所に水車小屋はあった。
近づくと、水車小屋からひとりの男が出てくる。
小太りの中年男性で、工具を手に額の汗を拭っていた。
こちらに気づくと、軽くお辞儀をしてから愛想よく話しかけてきた。
「こんにちは。どちらの貴族のご令嬢の方ですかな。この水車小屋に興味が?」
わたしが返事するより早く、ウィリアムが前に出てくる。
「控えよ。こちらの方はダラム国王妃殿下であらせられるぞ」
「おっ、王妃殿下⁉ なんでこんな所に⁉ これは失礼をば……!」
男は工具を放り投げ、その場に這いつくばる。
「いえ、大丈夫ですよ。顔を上げてください。少し確認したいことがあってうかがったのですが」
「はっ、はは~」
男は顔を少しだけ上げ、また地面に額をこすりつける。
「あなたがこの一帯の責任者なのですよね」
「そっ、そうです! フィンと申します! ダラム直轄の荘園第五区の監督官として務めておりますっ」
荘園第五区。
使節団が視察を行うとしても、まだこことは限定できていない。規模が小さいなら可能性も低い。
ウィリアムは演習のことは知っていても、荘園の視察については何も知らないだろう。
ここに案内したのは、ただわたしが農地だとしか伝えてないから。王都に一番近い場所を選んだにすぎない。
「来週に使節団が来ることはもう聞いていると思いますが」
ここでも探るように質問。ウィリアムにもこのフィンにもわたしはすでに視察の内容を全て知っていることにしておかねばならない。
「は、はい。荘園の運営や農耕のノウハウを学びたいとかで。だいぶ前にもやったみたいですが」
この時点で荘園の視察は確定した。わたしはさらに質問する。
「フィン。あなたはどう思いますか? 視察の場所はすでに決まっているのですが、専門家のあなたの意見も聞きたくて」
「は、はあ。家令様がおっしゃってましたが、視察の場所は一番大きな第一区の荘園が良いだろうと言ってたのですが」
家令とは領主直属の官吏でいくつかの荘園の総まとめ役だろう。
視察の場所はその第一区。となると案内役はその第一区の監督官がするはず。
接触するべきはその第一区の監督官だが、今さらこの流れでまたそこへ移動するのも不自然だ。
それにこのフィン。なにか言いたそうな表情だ。
「あなたの考えは違うのですね」
聞くと、フィンの顔がぱっと明るくなった。
「はい。オークニーの土地は元が氷食地で、痩せた土地が多いと聞きます。日照時間も少なく、冬場では野菜が不足するほどだと」
「詳しいのですね」
「それはもう。土いじりや水車の修理ぐらいしか取り柄がないもので。自分なりにいろいろ勉強しておるのです。今では他国の農地にも興味がありまして」
フィンは頭をかきながら屈託なく笑った。
そして恥ずかしながら、と続けた。
「この第五区荘園は最も収穫が少なく、範囲も狭いのですが、土地の条件的にはオークニーに一番近いのかと。視察はここで行ったほうが良いアドバイスが出来ると思います」
ここまで言って、また地面へ深々と頭を下げる。
出過ぎたことではありますが、と。
なるほど、とわたしはしばらく考えてからこう告げた。
「視察場所は第一区からこの五区へ変更します。そして案内役はフィン。あなたが務めなさい」
「ほ、本当ですか? これはえらいことになった」
恐縮しつつも、フィンは嬉しそうな声をあげた。
「家令にはこちらから伝えておきます。案内する順序や内容はあなたに一任するので、それ以外で分からないことがあれば家令を通さず、直接わたしに言ってきなさい」
「え、え? それはまた、恐れ多いことで」
「フィン、頼みましたよ」
「ははーっ、身に余る光栄です」
これで荘園の視察についてはクリアしたことになる。
わたしは帰りの馬車の中で計画書の骨子案に今日の内容を付け加えた。
ジェシカは侍女の仕事もあるのに、しっかりと召使いたちから話を聞き出せている。
元王族とは思えないほどの気さくな性格とコミュニケーション能力。
わたしだったら、あれほどうまく出来なかっただろう。
とはいえ、わたし自身も聞き出しを行わないといけない相手がいる。
本で調べたところ、十年前の使節団は城の防備や兵の調練の様子を視察している。
今回の使節団でもそれは実施される可能性が高い。
その案内役は騎士団に所属する者が行うだろう。
確認という名目で、わたしはひとりの騎士に近づいた。
名をウィリアムという、騎士団でも中堅クラスの地位にある男。
地位が高い騎士団長など、アレックス王と繋がりがありそうな者は避けたかった。
偶然なのか、わたしが話しかけた騎士ウィリアムはあの謁見の間でわたしに剣を突きつけた男だった。
ウィリアムはわたしの前でひざまずき、あの時の非礼を侘びた。
「王妃殿下、お許しください。あの時は陛下の命にてやむなく」
「いえ、気になさらないで。それよりもあなたに確認したいことが」
「わたしで分かることであればなんなりと」
「来週に控えた使節団の視察についてですが」
慎重に相手の反応をうかがいながら質問する。
実際に兵や防備について視察があるとは限らない。
使節団が来るほどの友好国とはいえ、自国の軍事面を見せつけるような真似はしないことも考えられる。
特にダラムの最近の軍拡については相手国を警戒させてしまう一因にだってなるだろう。
ウィリアムは特に不自然なふうもなく、はいと答えた。
「オークニーは海洋国家のため、我が国の歩兵や騎馬隊の戦い方に興味があるようですね。実際に兵を動かし、演習を披露することになっています」
「そうでしたね。兵を指揮するのはあなたが?」
「いえ、兵の指揮は別の者が務めます。わたし自身は使節団の案内を担当していますので」
ここで少し怪訝な表情になったので、わたしは話題を変えた。
「タムワース領への出兵が決まりましたね。本当はそちらに参加したかったのでは?」
「騎士として武勲を立てるのならばそうでしょう。ですが、使節団の案内も大事な役目だと心得てます」
若いながら実直な性格の持ち主のようだ。使節団の案内を任されたというのにも納得がいった。
「その通りですね。視察の案内についてはあなたに任せておけば安心のようです。細かな事はわたしの指示を仰がずとも自身の裁量で行ってください」
「……はっ、お任せください」
視察の内容の一部は軍の演習だと特定できた。そしてその細部はウィリアムに任せる事もできた。これは大きな収穫だった。
あと前回の視察で行っていることは。
本で調べたことだと、前回は農耕や畜産の視察が含まれている。
これについては誰に聞いたらいいのか。
政務を担当している大臣? いや、彼らは税として収められる生産物の計上をしているだけに過ぎない。
実際に農耕に関わっているのは荘園内の農民たちだ。
その荘園の管理をしているのは各地方の領主。
だけどわざわざ王都を離れてまで他領地を視察するはずはない。
ダラム直轄の農地で行うはずだった。
たしか農地は王都郊外にあったはず。
そしてその管理者となると廷臣の誰か。
「王妃殿下。それではわたしはこれで失礼します」
ウィリアムが立ち去ろうとするが、わたしはそれを引き止めた。
「忙しいところ申し訳ありませんが、もうひとつだけお願いが」
「なんでしょうか」
「郊外の農地を見ておきたいのです。護衛をかねて、あなたに案内してもらいたいのですが」
「郊外へ? 城から出られるという意味でしょうか」
「ええ、そういうことになりますね」
「しかし、それは」
「陛下にも許可は頂いています。問題はありません」
とっさに嘘をついた。ウィリアムは少し考えた様子を見せてから、かしこまりましたと答えた。
ウィリアムの用意した馬車に乗り、わたしは王都の郊外へ向かう。
王妃が勝手に外出など許されないことだろうが、城門でも王都の関所でも咎められることはなかった。
御者がウィリアムということが幸いしたようだ。
門兵や巡回の兵に顔が利く。なんの疑問も抱かれずに郊外の農地へと到着した。
もうじき収穫を控えた黄褐色の麦穂が畑一面に広がっている。
意外なのはこの麦畑や周りの耕拓地の範囲は狭く感じたことだった。
近くの山のせいで斜面が多く、日当たりも悪い。
大国ダラムならば広大な土地に豊かな作物があるものだと想像していたのでこれは意外だった。
わたしの表情から察したのか、ウィリアムが説明してくる。
「この第五区荘園は数年前に切り拓いたばかりの土地でまだ拡張途中なのです。荘園の中では最も小規模で収穫が少ないのですが、王都から最も近かったので」
「なるほど。そうだったのですね」
わたしは馬車から降り、少し離れた牧草地で草を刈っている農夫に声をかけた。
「こちらの農地の責任者は今、どちらにいますか?」
わたしの格好を見た農夫は目を丸くしながらも、川向こうの水車小屋にいるとたどたどしく教えてくれた。
「ありがとうございます」
礼を言い、わたしは牧草地沿いの道を歩く。
ウィリアムもついてくる。
「こう言っては失礼かもしれませんが、王妃殿下は少し変わっていらっしゃいますね」
歩きながらウィリアムが抑揚のない声でそう言ってきた。
「そうですか? どのあたりが?」
「その、王族の方が農奴に声をかけたり、礼を言ったりするのをはじめて見たので」
「? そうなのですか? シェトランドでは普通にしていたことなので」
「……そうなのですね。驚きました」
それからウィリアムは黙りこくってしまった。
少し気まずいと思いながらも、特に話題も思いつかず、そのまま無言で歩く。
水の流れる音。そしてほどなくして川が見えてきた。
川沿いに上流へ歩くと、橋がある。そこを渡ってすぐの所に水車小屋はあった。
近づくと、水車小屋からひとりの男が出てくる。
小太りの中年男性で、工具を手に額の汗を拭っていた。
こちらに気づくと、軽くお辞儀をしてから愛想よく話しかけてきた。
「こんにちは。どちらの貴族のご令嬢の方ですかな。この水車小屋に興味が?」
わたしが返事するより早く、ウィリアムが前に出てくる。
「控えよ。こちらの方はダラム国王妃殿下であらせられるぞ」
「おっ、王妃殿下⁉ なんでこんな所に⁉ これは失礼をば……!」
男は工具を放り投げ、その場に這いつくばる。
「いえ、大丈夫ですよ。顔を上げてください。少し確認したいことがあってうかがったのですが」
「はっ、はは~」
男は顔を少しだけ上げ、また地面に額をこすりつける。
「あなたがこの一帯の責任者なのですよね」
「そっ、そうです! フィンと申します! ダラム直轄の荘園第五区の監督官として務めておりますっ」
荘園第五区。
使節団が視察を行うとしても、まだこことは限定できていない。規模が小さいなら可能性も低い。
ウィリアムは演習のことは知っていても、荘園の視察については何も知らないだろう。
ここに案内したのは、ただわたしが農地だとしか伝えてないから。王都に一番近い場所を選んだにすぎない。
「来週に使節団が来ることはもう聞いていると思いますが」
ここでも探るように質問。ウィリアムにもこのフィンにもわたしはすでに視察の内容を全て知っていることにしておかねばならない。
「は、はい。荘園の運営や農耕のノウハウを学びたいとかで。だいぶ前にもやったみたいですが」
この時点で荘園の視察は確定した。わたしはさらに質問する。
「フィン。あなたはどう思いますか? 視察の場所はすでに決まっているのですが、専門家のあなたの意見も聞きたくて」
「は、はあ。家令様がおっしゃってましたが、視察の場所は一番大きな第一区の荘園が良いだろうと言ってたのですが」
家令とは領主直属の官吏でいくつかの荘園の総まとめ役だろう。
視察の場所はその第一区。となると案内役はその第一区の監督官がするはず。
接触するべきはその第一区の監督官だが、今さらこの流れでまたそこへ移動するのも不自然だ。
それにこのフィン。なにか言いたそうな表情だ。
「あなたの考えは違うのですね」
聞くと、フィンの顔がぱっと明るくなった。
「はい。オークニーの土地は元が氷食地で、痩せた土地が多いと聞きます。日照時間も少なく、冬場では野菜が不足するほどだと」
「詳しいのですね」
「それはもう。土いじりや水車の修理ぐらいしか取り柄がないもので。自分なりにいろいろ勉強しておるのです。今では他国の農地にも興味がありまして」
フィンは頭をかきながら屈託なく笑った。
そして恥ずかしながら、と続けた。
「この第五区荘園は最も収穫が少なく、範囲も狭いのですが、土地の条件的にはオークニーに一番近いのかと。視察はここで行ったほうが良いアドバイスが出来ると思います」
ここまで言って、また地面へ深々と頭を下げる。
出過ぎたことではありますが、と。
なるほど、とわたしはしばらく考えてからこう告げた。
「視察場所は第一区からこの五区へ変更します。そして案内役はフィン。あなたが務めなさい」
「ほ、本当ですか? これはえらいことになった」
恐縮しつつも、フィンは嬉しそうな声をあげた。
「家令にはこちらから伝えておきます。案内する順序や内容はあなたに一任するので、それ以外で分からないことがあれば家令を通さず、直接わたしに言ってきなさい」
「え、え? それはまた、恐れ多いことで」
「フィン、頼みましたよ」
「ははーっ、身に余る光栄です」
これで荘園の視察についてはクリアしたことになる。
わたしは帰りの馬車の中で計画書の骨子案に今日の内容を付け加えた。
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