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4 計画書
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「オークニーの使節団への対応は貴様がやれ。王妃ならば当然だろう」
試すような言い方でアレックス王はそう告げた。そしてこう付け加える。失敗は許されない、と。
わたしは目をそらさずにはっきりと答えた。
「承知致しました。こちらに来たばかりで慣れぬ事も多々ありますが、全力を尽くしましょう」
評議室の大臣たちがざわめく。
まだここへ来てから日も浅く、王妃とはいえ疎んじられている立場。
堂々と了承するとは思っていなかったのだろう。
わたしの返事に、アレックス王は満足したような顔。
「ふ、お手並み拝見といこうか。温室育ちの苦労知らずな女に何が出来るか」
わたしを困らせたいのだろうけど、ここで弱みを見せるつもりはない。
評議会はそれで終了し、大臣たちが退出していく。
わたしはその中のモーガン外務卿をつかまえた。
「使節団への対応ですが、すでに計画は立てているのですよね」
使節団の到着は来週。歓待の仕方や視察の内容はもう決まっているはず。
わたしは対応する代表という形で、マニュアル通りに動けばそう難しくないように思えた。
「え、ええ。それについての計画書は出来上がっております。総責任者は王妃殿下が務められるのならば、これをお渡ししておきます」
モーガン外務卿から書類を預かり、とりあえずは安堵する。
自室へ戻り、机の上に書類を置いた。
部屋で掃除をしていたジェシカがどうだった? と聞いてきたので、使節団の対応をする責任者に任命されたことを説明した。
「げ。なんかすごく面倒くさそう。そんなの、王妃のレイラがやらなきゃダメなことなの?」
「本来なら挨拶程度で済んだのでしょうが。総責任者なら、細々した手配もわたしが指示しないといけないでしょうね」
「絶対それ、嫌がらせだよね。本当にアレックス王って嫌なヤツ」
「外務卿より計画書は預かっていますので、そこまで大変ではないと思います。あとで目を通しておきましょう」
ここでまたドアの外から召使いのひとりが呼びかけてきた。
どうやら朝食の用意が出来たらしい。
評議会があったので少し遅めの朝食となる。わたしはジェシカに朝食をとってくると告げて、再び部屋の外へ。
朝食をとるホールではダラムの王族たちと一緒だった。
結婚式で少し言葉を交わした程度で、それ以来はほとんど話したことがない。
あちらも意図的にわたしと距離を取っているようで居心地が悪かった。
アレックス王はこの場に顔を見せない。
やはり食事のときもひとりを好む。親族すら近くに寄せつけないのは用心深いを通り越して異常にすら思える。
食事を終えて自室のほうへ。
向こうから洗濯カゴを持ったジェシカとちょうどドアの前で再会。
「さてと。洗濯物も出したし、これからわたしもちょっと休憩しようかな。あ、この部屋で休んでてもいい?」
「ええ、もちろん」
ふたりで部屋に入り、わたしは机に座った。
外務卿から預かった計画書に目を通そうとしたときだ。
計画書が見当たらない。たしかに机の上に置いていたのに。
机の下や本棚、引き出しの中も確認してみたがどこにもなかった。
「レイラ、どうしたの?」
「ジェシカ、机の上に置いておいた書類を知りませんか?」
「うん、掃除のときも机の上は触らなかったから。見てないけど」
「そうですか……他に誰か部屋の中に入ってきませんでしたか?」
「ううん、掃除のときは誰も。でも洗濯物を出しに行ってたときはわからない」
おそらくはそのときだ。
何者かが部屋に侵入して計画書を持ち出したのだろう。
わたしに対する嫌がらせのつもりだ。
それを命じたのはアレックス王か、大臣の誰かか。
もう一度モーガン外務卿に計画書を作成してもらうか。
いや、そんな時間はないだろうし、紛失したのはわたしだとアレックス王に責任を問われる形になる。
そんなのはまさに相手の思うつぼだ。
「大事なものだったの? 一緒に探そうか?」
「いえ、おそらくもう見つからないでしょう。しかしあれがないと」
あの書類が使節団に対応する計画書だと説明すると、ジェシカは自分のことのようにうろたえる。
「ど、どうすんのよ。来週ってあと数日しかないじゃない。計画もなしにぶっつけ本番でうまくとは思えないわ」
「たしかに。でもやれるべきことはやっておかないと。ジェシカ、あなたにも協力してもらいたいのですが」
「それはもちろんいいけど。わたしに出来ることなんてあるのかな」
自信なさげなジェシカに、わたしはいくつかお願い事をする。
侍女ならば城で働いている召使いたちと接点が多いし、話も聞きやすい。
使節団を歓待するために催事が行われるのは間違いない。
召使いたちはすでに各々準備すべきものは聞いているはずだ。
パーティーの開催場所、時間。参加人数。料理の種類、用意する食器の数。飾り付け。楽隊や余興の内容。宿泊する施設にその期間。
これらを召使いたちから聞き出してほしい。
わたしは別に調べたいことがある。
「わ、わかったわ。やってみる」
「お願いします」
力強くうなずき、部屋を出ていくジェシカ。
わたしはそのジェシカとは別の方向へ。
向かったのは城の地下にある蔵書庫。
ここにはダラム国の歴史や主だった出来事が記録されているはず。
もしかしたら過去にも他国の使節団を招いたことがあるかもしれない。
わたしは燭台の灯りを頼りに、膨大な数の書物からそれを探した。
何時間もかかったけれど、それらしき記録を見つけることができた。
今から十年前にも一度、オークニーから使節団が訪れている。
そこまで詳しくはないが、大まかな歓待の様子や視察の内容が書かれていた。
この本と、オークニーの文化や風習について書かれている本を持ち出し、自室へ戻る。
自室ではそれらの本から重要なことを別紙に書き写す。
戻ってきたジェシカもいくつか情報を仕入れていた。
召使いから聞き出した内容は個々の仕事ごとにバラバラなものだったが、それらひとつひとつを照らし合わせていくと共通点が出てくる。
そこから日程と参加人数を割り出す事ができた。
さらに情報を集めていけば、詳しい内容を把握できるだろう。
本から調べたことも参考にして、まだ不明な点を予測していく。
ジェシカには引き続き召使いたちから情報を引き出してもらう。
わたしは夜遅くまで机に向かい、計画書の骨子を作り上げた。
試すような言い方でアレックス王はそう告げた。そしてこう付け加える。失敗は許されない、と。
わたしは目をそらさずにはっきりと答えた。
「承知致しました。こちらに来たばかりで慣れぬ事も多々ありますが、全力を尽くしましょう」
評議室の大臣たちがざわめく。
まだここへ来てから日も浅く、王妃とはいえ疎んじられている立場。
堂々と了承するとは思っていなかったのだろう。
わたしの返事に、アレックス王は満足したような顔。
「ふ、お手並み拝見といこうか。温室育ちの苦労知らずな女に何が出来るか」
わたしを困らせたいのだろうけど、ここで弱みを見せるつもりはない。
評議会はそれで終了し、大臣たちが退出していく。
わたしはその中のモーガン外務卿をつかまえた。
「使節団への対応ですが、すでに計画は立てているのですよね」
使節団の到着は来週。歓待の仕方や視察の内容はもう決まっているはず。
わたしは対応する代表という形で、マニュアル通りに動けばそう難しくないように思えた。
「え、ええ。それについての計画書は出来上がっております。総責任者は王妃殿下が務められるのならば、これをお渡ししておきます」
モーガン外務卿から書類を預かり、とりあえずは安堵する。
自室へ戻り、机の上に書類を置いた。
部屋で掃除をしていたジェシカがどうだった? と聞いてきたので、使節団の対応をする責任者に任命されたことを説明した。
「げ。なんかすごく面倒くさそう。そんなの、王妃のレイラがやらなきゃダメなことなの?」
「本来なら挨拶程度で済んだのでしょうが。総責任者なら、細々した手配もわたしが指示しないといけないでしょうね」
「絶対それ、嫌がらせだよね。本当にアレックス王って嫌なヤツ」
「外務卿より計画書は預かっていますので、そこまで大変ではないと思います。あとで目を通しておきましょう」
ここでまたドアの外から召使いのひとりが呼びかけてきた。
どうやら朝食の用意が出来たらしい。
評議会があったので少し遅めの朝食となる。わたしはジェシカに朝食をとってくると告げて、再び部屋の外へ。
朝食をとるホールではダラムの王族たちと一緒だった。
結婚式で少し言葉を交わした程度で、それ以来はほとんど話したことがない。
あちらも意図的にわたしと距離を取っているようで居心地が悪かった。
アレックス王はこの場に顔を見せない。
やはり食事のときもひとりを好む。親族すら近くに寄せつけないのは用心深いを通り越して異常にすら思える。
食事を終えて自室のほうへ。
向こうから洗濯カゴを持ったジェシカとちょうどドアの前で再会。
「さてと。洗濯物も出したし、これからわたしもちょっと休憩しようかな。あ、この部屋で休んでてもいい?」
「ええ、もちろん」
ふたりで部屋に入り、わたしは机に座った。
外務卿から預かった計画書に目を通そうとしたときだ。
計画書が見当たらない。たしかに机の上に置いていたのに。
机の下や本棚、引き出しの中も確認してみたがどこにもなかった。
「レイラ、どうしたの?」
「ジェシカ、机の上に置いておいた書類を知りませんか?」
「うん、掃除のときも机の上は触らなかったから。見てないけど」
「そうですか……他に誰か部屋の中に入ってきませんでしたか?」
「ううん、掃除のときは誰も。でも洗濯物を出しに行ってたときはわからない」
おそらくはそのときだ。
何者かが部屋に侵入して計画書を持ち出したのだろう。
わたしに対する嫌がらせのつもりだ。
それを命じたのはアレックス王か、大臣の誰かか。
もう一度モーガン外務卿に計画書を作成してもらうか。
いや、そんな時間はないだろうし、紛失したのはわたしだとアレックス王に責任を問われる形になる。
そんなのはまさに相手の思うつぼだ。
「大事なものだったの? 一緒に探そうか?」
「いえ、おそらくもう見つからないでしょう。しかしあれがないと」
あの書類が使節団に対応する計画書だと説明すると、ジェシカは自分のことのようにうろたえる。
「ど、どうすんのよ。来週ってあと数日しかないじゃない。計画もなしにぶっつけ本番でうまくとは思えないわ」
「たしかに。でもやれるべきことはやっておかないと。ジェシカ、あなたにも協力してもらいたいのですが」
「それはもちろんいいけど。わたしに出来ることなんてあるのかな」
自信なさげなジェシカに、わたしはいくつかお願い事をする。
侍女ならば城で働いている召使いたちと接点が多いし、話も聞きやすい。
使節団を歓待するために催事が行われるのは間違いない。
召使いたちはすでに各々準備すべきものは聞いているはずだ。
パーティーの開催場所、時間。参加人数。料理の種類、用意する食器の数。飾り付け。楽隊や余興の内容。宿泊する施設にその期間。
これらを召使いたちから聞き出してほしい。
わたしは別に調べたいことがある。
「わ、わかったわ。やってみる」
「お願いします」
力強くうなずき、部屋を出ていくジェシカ。
わたしはそのジェシカとは別の方向へ。
向かったのは城の地下にある蔵書庫。
ここにはダラム国の歴史や主だった出来事が記録されているはず。
もしかしたら過去にも他国の使節団を招いたことがあるかもしれない。
わたしは燭台の灯りを頼りに、膨大な数の書物からそれを探した。
何時間もかかったけれど、それらしき記録を見つけることができた。
今から十年前にも一度、オークニーから使節団が訪れている。
そこまで詳しくはないが、大まかな歓待の様子や視察の内容が書かれていた。
この本と、オークニーの文化や風習について書かれている本を持ち出し、自室へ戻る。
自室ではそれらの本から重要なことを別紙に書き写す。
戻ってきたジェシカもいくつか情報を仕入れていた。
召使いから聞き出した内容は個々の仕事ごとにバラバラなものだったが、それらひとつひとつを照らし合わせていくと共通点が出てくる。
そこから日程と参加人数を割り出す事ができた。
さらに情報を集めていけば、詳しい内容を把握できるだろう。
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ジェシカには引き続き召使いたちから情報を引き出してもらう。
わたしは夜遅くまで机に向かい、計画書の骨子を作り上げた。
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