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21 フロスト
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一週間はあっという間に過ぎ、ついに咎人の儀当日──。
わたしは兵に囲まれながら城外の広場まで移動。
付き添い人としてジェシカ、武芸の指南役としてウィリアムの同行が認められたのは良かったけれど、さすがに緊張する。
戦場かと思うほどの喚声がすでに渦巻いていた。
普段は兵たちの調練として使われる広場には特設の闘技場が造られ、すり鉢状に観客席が設けられている。
上段に行くほど身分の高い騎士や廷臣が観客として座っているようだった。
そして最上段のさらに上、櫓のような建物からわたしを見下ろしているのはアレックス王。
どこか苛立ったような顔をしていた。
わたしがこの雰囲気に呑まれ、震えるのを期待していたからか。毅然とした態度が気に入らないのかもしれない。
わたしは胸を張って堂々と闘技場へ入場。
入口の扉が閉められ、ジェシカとウィリアムは塀ごしにわたしへ呼びかけてくる。
「レイラ、無理はしないで。かなわないって思ったら降参すれば命だけは助けてもらえるかも」
ジェシカはもう泣きそうな顔だ。わたしは手を伸ばし、その頬に触れる。
「大丈夫です。必ず生きて戻ると約束します。こんなところでアレックス王の思惑に屈するわけにはいきません」
今度は深刻な顔をしたウィリアムがわたしに武器を渡す。
「王妃殿下、本当にこの道具だけで良いのですか? いえ、たしかに訓練の様子は見ておりましたが……万が一、ヤツに通用しなかったら。それに防具もろくに着けずに」
わたしの格好は狩りの時と同じような髪を結い上げた軽装姿。
革製の胸当てと小手、脛当てだけを装着している。
決闘ともなれば鉄製の防具でガチガチに身を固めるのがセオリーなのだろうが、わたしの使う武器と戦術にはそれは不要だった。
「はい。動きやすさと精密な動きにはこれが良いのです。それに相手も油断するでしょう」
麻袋のついたロープを受け取りながらわたしは微笑む。
ウィリアムはまだ何か言いたげだったが、飲み込むようにして頷いた。
闘技場全体が揺れるような喚声と足踏み。
向かい側の入口から対戦相手が入場してきたようだ。
熊のような巨躯を全身鎧で包んだ騎士。
喚声に応えるように手にした戦槌を高く掲げた。
より一層観客が盛り上がる。
あれがダラム随一と言われる勇士フロストなのだろう。
はじめて見るけれど、たしかにこの距離でも凄まじい威圧感。
兜の隙間からギョロリと血走った眼球がわたしを見据える。
正直寒気が走るが、それを悟られないようにわたしは闘技場中央へと進む。フロストも大股に歩いてわたしと相対する。
フロストからやや遅れて入場してきたのは神官服の男。
わたしとフロストの間の位置に立ち、儀式用の杖をまずわたしに向けた。
「汝、咎人のレイラよ。汝は王妃の身であることを利用し、大恩ある陛下を毒物をもって害しようとした。これに相違ないか」
「事実に反します。毒物が混入していたのは間違いありませんが、わたしが入れたものではありません」
咎人の儀、というだけあって儀礼的な前置きがあるのだろう。わたしは前にアレックス王に伝えたように答えた。
「無実を訴えるも、その証拠となるものも証人もあらず。もはや事の真実は神に問うしかない。もし本当に汝が無実ならば──」
神官はここでフロストに杖を向けた。
「この勇士フロストと戦っても無事に生き延びるであろう。神が無実の者を見捨てるはずがないのだから」
そんなことを言って、今まで何人の無実の者が死んでいったのだろうか。
神の教えを全く信じていないわけではないが、無理なこじつけに聞こえてしまう。
フロストはわたしを見下ろしながら肩を揺らして笑った。
「名誉ある咎人の儀の相手が女とはな。いいか、この闘技場内では身分など関係ない。貴様も今は王妃の権限はない。それが分かっているのか」
わたしが王妃の立場を利用してこの場を切り抜けようとしていると思ったのだろう。
もちろんそんな甘い考えが通用するとは考えていない。あのアレックス王も許さないだろう。
わたしは睨み返しながら答えた。
「無論、承知しています。身分の上下も性別も関係なく、ただの咎人としてここに立っているのです。わたしが助かる術はひとつ。あなたに打ち勝つことだけというのも」
こう言うと、どっと観客席から笑いが起きた。
フロストも呆れたように肩をすくめる。
アレックス王は笑ってはいなかった。まだ不機嫌な顔をしている。
フロストが首をかしげながら聞いてきた。
「それで貴様の武器は? 剣も槍も持っておらんようだが。まさかこの俺相手に素手で戦うとでも?」
「いえ、わたしの武器はここに」
わたしはそう言って肩に巻きつけたロープを指差す。
観客席からまた笑い声が起き、フロストは憤慨したように戦槌を握りしめる。
「貴様、後悔するなよ」
このやり取りを見ていた神官がしびれを切らしたように咳払いをする。
「両者、用意はいいか」
わたしは無言で頷き、フロストは「いつでも」と野太い声で答える。
「それでは咎人の儀の開始だ。どちらか一方の死によってのみ決着とする──はじめいっ!」
神官が叫び、素早くその場を離れた。即座にフロストが振りかぶる。
長柄の戦槌。直撃を喰らえば即死。かすっただけでも致命傷になりかねない。わたしは冷静にバックステップで距離を取る。
ゴッ、と地面にめり込む戦槌。かわせたけれど、その威力を目の当たりにして改めて恐怖を覚えた。
軽々と地面から引き抜き、フロストは次は横に薙いできた。
かがんでかわす。頭上を暴風が通り過ぎていくようだった。
「ちょこまかと」
さらに戦槌を振り回すフロスト。
軌道は単純なので見極めるのは難しくない。だが逃げ回っているだけでは勝つことはできない。
それにこのロープを使うにはもっと離れないとダメだ。
あの巨体、そして重そうな全身鎧と武器にしては接近するスピードが速い。これは予想外だった。
「おおおっ!」
雄叫びを上げながら突進してくるフロスト。
これも横にかわす。フロストは勢い余って闘技場の塀に激突。
木製とはいえ、何層も分厚い板を重ねた塀が一撃で砕けた。
塀の残骸に足を取られ、フロストがもたついている。ジェシカが「今よっ」と叫んだ。
わたしもこの機を逃がすつもりはない。距離も十分に取った。
肩に巻いていたロープを外し、手首で回しはじめた。
砂石の入った麻袋がヒュンヒュンと音を立てながら回転する。
闘技場内に困惑するような声や、嘲笑の声が入り混じる。
見たことのないこの武器と動きに皆驚いているようだ。
「なんだあ? 大道芸でもやるつもりか」
フロストも油断している。麻袋の回転の勢いは辺りに砂埃が舞うほどに増している。
わたしはぱっと手を離した。
ガァンッ、と金属に硬いものが当たる音が響く。
ウィリアムが「やった!」と叫び、闘技場内にもどよめき。
砂石の入った麻袋は狙い通りフロストの頭部に命中。
巨体がよろめき、兜のへこんだ部分を押さえている。
「ぬ、あっ……なんだあ? 何が起きた?」
ただでさえ視野が狭そうな兜。飛来する麻袋の動きを捉えきれないようだ。
ただ、あの一撃で仕留められなかったのは想定外。
地下の修練場では朝早くから深夜まで練習を繰り返し、木像を粉々にするほどの威力まで技術を高めた。
鉄製の甲冑内にも効果がある打撃。並の者だったら死なないまでも、昏倒するはず。
こればかりはフロスト自身の耐久力や首の筋力が並外れていると思うしかない。
「ウソでしょ、あれを喰らってピンピンしてるなんて」
ジェシカも驚きの声をあげている。
ならば、とわたしは麻袋を引き寄せて再び手首で回転させる。
一度で効かなければ二度三度と打ち込むしかない。
「ああ~? そのぐるぐる回ってるヤツでぶん殴りやかったのか」
フロストもようやく理解したようだ。
今度は警戒しながら戦槌を構える。
非力なわたしが勝つ方法。
相手が知らない武器で奇襲ともいえる先制攻撃。
さっきは上手くいったが、これがまた通じるのか。
わたしは兵に囲まれながら城外の広場まで移動。
付き添い人としてジェシカ、武芸の指南役としてウィリアムの同行が認められたのは良かったけれど、さすがに緊張する。
戦場かと思うほどの喚声がすでに渦巻いていた。
普段は兵たちの調練として使われる広場には特設の闘技場が造られ、すり鉢状に観客席が設けられている。
上段に行くほど身分の高い騎士や廷臣が観客として座っているようだった。
そして最上段のさらに上、櫓のような建物からわたしを見下ろしているのはアレックス王。
どこか苛立ったような顔をしていた。
わたしがこの雰囲気に呑まれ、震えるのを期待していたからか。毅然とした態度が気に入らないのかもしれない。
わたしは胸を張って堂々と闘技場へ入場。
入口の扉が閉められ、ジェシカとウィリアムは塀ごしにわたしへ呼びかけてくる。
「レイラ、無理はしないで。かなわないって思ったら降参すれば命だけは助けてもらえるかも」
ジェシカはもう泣きそうな顔だ。わたしは手を伸ばし、その頬に触れる。
「大丈夫です。必ず生きて戻ると約束します。こんなところでアレックス王の思惑に屈するわけにはいきません」
今度は深刻な顔をしたウィリアムがわたしに武器を渡す。
「王妃殿下、本当にこの道具だけで良いのですか? いえ、たしかに訓練の様子は見ておりましたが……万が一、ヤツに通用しなかったら。それに防具もろくに着けずに」
わたしの格好は狩りの時と同じような髪を結い上げた軽装姿。
革製の胸当てと小手、脛当てだけを装着している。
決闘ともなれば鉄製の防具でガチガチに身を固めるのがセオリーなのだろうが、わたしの使う武器と戦術にはそれは不要だった。
「はい。動きやすさと精密な動きにはこれが良いのです。それに相手も油断するでしょう」
麻袋のついたロープを受け取りながらわたしは微笑む。
ウィリアムはまだ何か言いたげだったが、飲み込むようにして頷いた。
闘技場全体が揺れるような喚声と足踏み。
向かい側の入口から対戦相手が入場してきたようだ。
熊のような巨躯を全身鎧で包んだ騎士。
喚声に応えるように手にした戦槌を高く掲げた。
より一層観客が盛り上がる。
あれがダラム随一と言われる勇士フロストなのだろう。
はじめて見るけれど、たしかにこの距離でも凄まじい威圧感。
兜の隙間からギョロリと血走った眼球がわたしを見据える。
正直寒気が走るが、それを悟られないようにわたしは闘技場中央へと進む。フロストも大股に歩いてわたしと相対する。
フロストからやや遅れて入場してきたのは神官服の男。
わたしとフロストの間の位置に立ち、儀式用の杖をまずわたしに向けた。
「汝、咎人のレイラよ。汝は王妃の身であることを利用し、大恩ある陛下を毒物をもって害しようとした。これに相違ないか」
「事実に反します。毒物が混入していたのは間違いありませんが、わたしが入れたものではありません」
咎人の儀、というだけあって儀礼的な前置きがあるのだろう。わたしは前にアレックス王に伝えたように答えた。
「無実を訴えるも、その証拠となるものも証人もあらず。もはや事の真実は神に問うしかない。もし本当に汝が無実ならば──」
神官はここでフロストに杖を向けた。
「この勇士フロストと戦っても無事に生き延びるであろう。神が無実の者を見捨てるはずがないのだから」
そんなことを言って、今まで何人の無実の者が死んでいったのだろうか。
神の教えを全く信じていないわけではないが、無理なこじつけに聞こえてしまう。
フロストはわたしを見下ろしながら肩を揺らして笑った。
「名誉ある咎人の儀の相手が女とはな。いいか、この闘技場内では身分など関係ない。貴様も今は王妃の権限はない。それが分かっているのか」
わたしが王妃の立場を利用してこの場を切り抜けようとしていると思ったのだろう。
もちろんそんな甘い考えが通用するとは考えていない。あのアレックス王も許さないだろう。
わたしは睨み返しながら答えた。
「無論、承知しています。身分の上下も性別も関係なく、ただの咎人としてここに立っているのです。わたしが助かる術はひとつ。あなたに打ち勝つことだけというのも」
こう言うと、どっと観客席から笑いが起きた。
フロストも呆れたように肩をすくめる。
アレックス王は笑ってはいなかった。まだ不機嫌な顔をしている。
フロストが首をかしげながら聞いてきた。
「それで貴様の武器は? 剣も槍も持っておらんようだが。まさかこの俺相手に素手で戦うとでも?」
「いえ、わたしの武器はここに」
わたしはそう言って肩に巻きつけたロープを指差す。
観客席からまた笑い声が起き、フロストは憤慨したように戦槌を握りしめる。
「貴様、後悔するなよ」
このやり取りを見ていた神官がしびれを切らしたように咳払いをする。
「両者、用意はいいか」
わたしは無言で頷き、フロストは「いつでも」と野太い声で答える。
「それでは咎人の儀の開始だ。どちらか一方の死によってのみ決着とする──はじめいっ!」
神官が叫び、素早くその場を離れた。即座にフロストが振りかぶる。
長柄の戦槌。直撃を喰らえば即死。かすっただけでも致命傷になりかねない。わたしは冷静にバックステップで距離を取る。
ゴッ、と地面にめり込む戦槌。かわせたけれど、その威力を目の当たりにして改めて恐怖を覚えた。
軽々と地面から引き抜き、フロストは次は横に薙いできた。
かがんでかわす。頭上を暴風が通り過ぎていくようだった。
「ちょこまかと」
さらに戦槌を振り回すフロスト。
軌道は単純なので見極めるのは難しくない。だが逃げ回っているだけでは勝つことはできない。
それにこのロープを使うにはもっと離れないとダメだ。
あの巨体、そして重そうな全身鎧と武器にしては接近するスピードが速い。これは予想外だった。
「おおおっ!」
雄叫びを上げながら突進してくるフロスト。
これも横にかわす。フロストは勢い余って闘技場の塀に激突。
木製とはいえ、何層も分厚い板を重ねた塀が一撃で砕けた。
塀の残骸に足を取られ、フロストがもたついている。ジェシカが「今よっ」と叫んだ。
わたしもこの機を逃がすつもりはない。距離も十分に取った。
肩に巻いていたロープを外し、手首で回しはじめた。
砂石の入った麻袋がヒュンヒュンと音を立てながら回転する。
闘技場内に困惑するような声や、嘲笑の声が入り混じる。
見たことのないこの武器と動きに皆驚いているようだ。
「なんだあ? 大道芸でもやるつもりか」
フロストも油断している。麻袋の回転の勢いは辺りに砂埃が舞うほどに増している。
わたしはぱっと手を離した。
ガァンッ、と金属に硬いものが当たる音が響く。
ウィリアムが「やった!」と叫び、闘技場内にもどよめき。
砂石の入った麻袋は狙い通りフロストの頭部に命中。
巨体がよろめき、兜のへこんだ部分を押さえている。
「ぬ、あっ……なんだあ? 何が起きた?」
ただでさえ視野が狭そうな兜。飛来する麻袋の動きを捉えきれないようだ。
ただ、あの一撃で仕留められなかったのは想定外。
地下の修練場では朝早くから深夜まで練習を繰り返し、木像を粉々にするほどの威力まで技術を高めた。
鉄製の甲冑内にも効果がある打撃。並の者だったら死なないまでも、昏倒するはず。
こればかりはフロスト自身の耐久力や首の筋力が並外れていると思うしかない。
「ウソでしょ、あれを喰らってピンピンしてるなんて」
ジェシカも驚きの声をあげている。
ならば、とわたしは麻袋を引き寄せて再び手首で回転させる。
一度で効かなければ二度三度と打ち込むしかない。
「ああ~? そのぐるぐる回ってるヤツでぶん殴りやかったのか」
フロストもようやく理解したようだ。
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