人質王女が王妃に昇格⁉ レイラのすれ違い王妃生活

みくもっち

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27 海賊

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 予定通りの日程でウィンダミアに到着。
 ウィンダミアではこの辺り一帯の小領主リアムの館を拠点とし、様々な準備を行う。

 リアムはやたら卑屈な男でペコペコと頭は下げておべっかを使うが、海賊討伐についてはすべてこちらに任せるといった体たらくだった。

 館の利用や物資の供給については協力するが、それ以外は勝手にやってくれというのが言葉の端々に感じられた。

「なにあのリアムっていう領主⁉ 態度は丁寧だけどなんていうか、感じ悪い! 海賊を放置してたくせになんでまだ領主なんだろ」

 館の一室でジェシカがさっそく文句を言っている。
 船の用意や物資の積み込み、水夫の確保も問題なく進んだ。
 これもウィリアムやフロストが兵や騎士たちに睨みを利かせてくれたおかげだろう。

 海賊の情報も続々とわたしの元に届いている。

 わたし達は町に着いて二日後には出港し、海賊の追跡を開始することができた。


 
 海に出て数時間後。意外にも早く海賊を発見。商船を狙う途中だったようだ。
 漁船を改造したであろう小型の船。

 わたしたち船団が近づくと、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 漕ぎ手はこちらが多いガレー船だが、船足はあちらのほうが早い。
 しかもこちらの船が入れないような浅瀬や島門に逃げていくのでそれ以上は追跡できなかった。強引に追えば座礁の危険がある。

「なるほど。今までの騎士団が失敗してきたのもこれが原因ですね。船足の速さに加え、地の利を熟知している彼らに追いつくのは不可能に近い」

 逃げていく海賊たちを眺めながらわたしが感心していると、ジェシカがわたしの袖を引っ張る。
 
「ちょっと、感心してる場合? こんなんじゃらちが明かないわ。あ、そうだ。前にオークニーから軍船の設計図もらったんだよね。立派な軍船でドカーンと一網打尽に出来ないの?」
「あの設計図の軍船は建造に時間がかかりますし、この船より大型なので海賊の拿捕には向いていないでしょうね。大規模な海戦ともなれば話は別ですが……」
「う~ん、一筋縄ではいかないと思ってたけど。こんな大勢の兵がいても海の上じゃあ思い通りにいかないわ」
「いえ、そうとも言い切れませんよ。兵が多い分、情報収集に力を入れることが出来ました。そこからなにか打開策を見つけましょう」

 実際にこの港町に着く前から情報は随時集めている。
 直接海賊に関係ないものでも気になるものはすべて記録している。
 


 それから二週間が経ち──。
 わたしは連日海に出ているけど、まだ一人の海賊も捕らえてはいなかった。

 今日も海賊とは遭遇したものの、同じように逃げられてやむなく帰港。
 
 館では領主のリアムが揉み手でわたしを出迎える。

「いや、王妃殿下。今日もお疲れ様でした。しかしこの二週間これといった成果が出ていないようにお見受けしますが……いえ、これまで何度も騎士団が失敗しているので不思議なことではありません」

 言葉は丁寧ながら、にやけ顔でリアムはこう付け足してきた。

「ここはやはり戦略的に撤退も考えては? 三千もの兵を長期間駐留させるのは大変でしょうし。わたしの館にもそれなりの負担が……いやいや、なにせ地方の小領主は財政的にも厳しくて」

 どうにもこのリアムは騎士団がここにいるのが気に入らないようだ。
 わたしは少し圧をかけるように返事をする。

「そちらで負担した物資や資金については後日王宮に請求させるようにしましょう。それと……わたしはこの剣と騎士団を陛下から預かる身。軽々と使命を投げ出すつもりはありません。海賊の問題を解決するまでは帰らぬ覚悟です」
「そ、そうですか。頼もしい限りですが、無理はなさらぬように」

 リアムは逃げるように館の奥へ引っ込んでいった。それを見てジェシカがケラケラと笑う。

「痛快だわ。今の顔見た? レイラが言い返したら引きつってたわよ」
「ええ……どうやら彼にとって我々はどうにも邪魔なようですね。その理由についても密かに探っていますが」
「あ、ウィリアムに頼んでいた件ね。海賊とは関係なさそうな事だけど、なにか分かったの?」
「いえ、特にはまだ。ですがウィリアムのことですので近日中には色々判明するでしょう。それより明日も海に出ますよ。早めにゆっくり休みましょう」
「わかったわ。でも明日も逃げられちゃうんじゃないの? せっかく海賊船は早めに見つけられるようになったのにね」
「ええ。出没する場所や時間帯は特定できるようになりましたね。明日はそこからさらに工夫を加えます」


  ✳ ✳ ✳


 翌日。わたしが率いる船団は早朝より出港し、午前中のうちに海賊船数隻の発見に成功した。
 だがいつものように海賊は戦う気はなく、バラバラに逃げ出す。

「ああっ、また追いつけない! 逃げられちゃうわ!」
「いえ、今日はそうはいきません。フロスト、漕ぎ手に指示を」
「はっ」

 近くに控えていたフロストが漕ぎ手に号令。漕いでいた櫂を一斉に引っ込めた。

「えっ、漕いでいるのをヤメたらますます追いつけなくなるわ!」
「いえ、この二週間で強い風が吹く方向や時間帯は把握しています。ここからが勝負です」

 さらにフロストが指示を出し、船の帆を張る。
 強い風に煽られるようにわたしの乗った船はぐんぐんと速度を上げる。

「わっ、すごいスピード! わ、わっ、ぶつかる!」
「ジェシカ、何かにつかまっていてください! 皆さんも衝撃に備えて!」

 わたしの船は船首からまっすぐに敵船の船尾へと衝突。
 水線下に取り付けた衝角がメキメキと容赦なく海賊船にめり込んでいく。

 怒号を上げながらフロストを先頭に兵たちがなだれ込んだ。
 わたしも弓を取ってフロストらが乗り込むのを援護。

 だけど抵抗らしい抵抗もなく、海賊たちは投降した。
 
 多くが元漁民で操船は巧みだが、兵士相手となると命がけで戦うつもりはないらしい。
 
 衝突の際に落水した者たちも救助し、二十名を捕縛。その日はそれで帰港することにした。

「すごいわね、レイラ。ついに海賊を捕まえることができたわ。しかもこっちの犠牲者はゼロ。これってすごい成果じゃない?」

 帰りの船上。喜ぶジェシカを前に、わたしは首を横に振る。

「いえ、まだたった一隻分の海賊を捕らえただけですから。実際の海賊の規模はこの十倍以上でしょう。もっと効率よく捕まえるためには海流や暗礁の位置まで知る必要がありますね。それなら船団による待ち伏せも可能になります。地元の漁師の協力を得られれば早いのですが」
「そっか。それでいろんなとこから情報集めてたのね」
「ええ。ですが金品を積んでも漁師の方々は非協力的で……どうにも国や役人に対して嫌悪感があるようなのです」
「難しいってわけね。じゃあ独自にまたレイラが海のこと調べるわけ? まるで学者さんみたいに」
「そうなりますね。また時間がかかりますが……他に良い方法がありませんから」
「あ、今日捕まえた海賊を尋問すればいいじゃん! アジトのこととか、他の海賊のこととか聞き出そうよ!」
「ええ。いい考えですが、彼らは普通の漁師以上に我々を嫌っています。仲間意識も強い。だからこそ海賊稼業などしているのでしょうが。普通に聞いてもまともな答えは得られないでしょう」
「う~ん、レイラの性格からして拷問なんてしないだろうしなあ。でもきっとうまくいくわ! 今まで一回も成功しなかったことをレイラはやってのけたんだもの!」

 根拠の無い楽観さだが、今までもこのジェシカの明るさに救われてきた。
 
 それに今回はウィリアムもフロストもいる。
 海賊討伐という大きな目標にはまだまだ課題が多いが、ジェシカの大きな瞳を見ていると本当にうまくいきそうな気がして自然と笑みがこぼれた。
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