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全寮制男子校の寮は、門限を過ぎれば静寂に包まれる。
それぞれの部屋で勉強する音、寝息、遠くでかすかに聞こえるテレビの音だけが生活の気配を残していた。
依澄は部屋のベッドに横になってはいるが、目は冴えていた。 天井をぼんやり見つめながら、今日朝陽に言われた言葉が何度もリフレインする。
『……その、我慢以外のことも……教えてよ』
あのとき朝陽は、どこか茶化すように笑っていたけど―― どこまでが本気だったのか。どこまでが冗談だったのか。 けれど、冗談にしては……あの目は、ずっと、深くて。
(……触れたいと思ってしまった)
そんな自分の気持ちが怖くて、思わず顔を手で覆った。
そのころ――生徒会室。 朝陽もまた、デスクにノートパソコンを広げたまま、手が止まっていた。 進まないレジュメ。集中できない。
(なんで、あいつの顔ばっか浮かぶんだ)
依澄のまっすぐな目。 昨日の、漏らしたあとの姿。 「限界です……」と言ったときの、あの恥ずかしそうな顔。
「……っ、バカみたいだ」
椅子から立ち上がり、ドアの前まで行って――気がつけば寮棟へ向かっていた。
ノックの音に依澄はハッと顔を上げる。 こんな時間に、とドアを開けると、朝陽が立っていた。私服姿。いつもよりずっと無防備な顔で。
「……寝てた?」 「いや。起きてました」
「じゃあ、ちょっとだけ。……入っていい?」
朝陽はそっけなくそう言ったが、声がどこか弱い。 依澄は静かにうなずいて、部屋に招き入れた。
「……この時間にどうしましたか」 「わかんない。……なんとなく、来た」
沈黙。 ソファに座る朝陽。ベッドに腰かける依澄。互いに視線を合わせないまま、距離だけが妙に近い。
「なあ」
先に口を開いたのは、朝陽だった。
「俺たち……いつから、こんなふうになったんだろうな」
「“こんなふう”って、どんなですか」
「わからない。でも……今日も、またお前に触れたいって思ってる」 「……」
依澄は顔を逸らしたまま、ぽつりと呟く。
「こっちだって……ずっとドキドキしてんの、気づけよ……」
「え?」 「……何でもないです」
静寂。 けれどその中で、依澄はゆっくりと朝陽の手に触れた。 逃げるかと思ったが、朝陽は手を引かない。ただ、うっすらと頬を染めた。
「……このまま寝ますか?」 「ここで?」 「いや、ここで、っていうか……隣で」
「お前って本当……わざとなのか?」
そう言いながらも、朝陽はそっと依澄の肩にもたれかかってきた。
ふたりは、そのまましばらく黙っていた。 名前のつかない感情のまま、夜の静けさに身を預けるように。
依澄は部屋のベッドに横になってはいるが、目は冴えていた。 天井をぼんやり見つめながら、今日朝陽に言われた言葉が何度もリフレインする。
『……その、我慢以外のことも……教えてよ』
あのとき朝陽は、どこか茶化すように笑っていたけど―― どこまでが本気だったのか。どこまでが冗談だったのか。 けれど、冗談にしては……あの目は、ずっと、深くて。
(……触れたいと思ってしまった)
そんな自分の気持ちが怖くて、思わず顔を手で覆った。
そのころ――生徒会室。 朝陽もまた、デスクにノートパソコンを広げたまま、手が止まっていた。 進まないレジュメ。集中できない。
(なんで、あいつの顔ばっか浮かぶんだ)
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「……っ、バカみたいだ」
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ノックの音に依澄はハッと顔を上げる。 こんな時間に、とドアを開けると、朝陽が立っていた。私服姿。いつもよりずっと無防備な顔で。
「……寝てた?」 「いや。起きてました」
「じゃあ、ちょっとだけ。……入っていい?」
朝陽はそっけなくそう言ったが、声がどこか弱い。 依澄は静かにうなずいて、部屋に招き入れた。
「……この時間にどうしましたか」 「わかんない。……なんとなく、来た」
沈黙。 ソファに座る朝陽。ベッドに腰かける依澄。互いに視線を合わせないまま、距離だけが妙に近い。
「なあ」
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「わからない。でも……今日も、またお前に触れたいって思ってる」 「……」
依澄は顔を逸らしたまま、ぽつりと呟く。
「こっちだって……ずっとドキドキしてんの、気づけよ……」
「え?」 「……何でもないです」
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「……このまま寝ますか?」 「ここで?」 「いや、ここで、っていうか……隣で」
「お前って本当……わざとなのか?」
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