二人だけの秘密の時間

tomoe97

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番外編 伊藤大紀の目撃

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大紀は、四月に学園に入学してから毎日、兄である斗紀にこき使われていた。新学期が終わって、落ち着いてきたかと思ったら今度は問題無用で生徒会の補佐をさせられ、正式に雑用を押し付けられる日々。

洗濯、料理、制服のアイロンなど、実家でもそうだったがこの兄は本当に人使いが荒い。
しかも、2個しか変わらないのに体格差が大きく、逆らったら何をされるか分からないので大人しく従うしかない。
そして、大紀が大きく文句を言えないのには、もう一つ理由があった。

それは、学園に入ってから一目惚れした、生徒会副会長、中川朝陽の存在があるからだった。
こんなに、綺麗な人がいるのかと驚いた。
地元の共学にだって、もしかしたら芸能人よりも綺麗で、すぐに好きになった。

華奢という言葉を男の人に使うのはあまり褒め言葉ではないかもしれないが、俺より背が高いけれど細身で、彼のツンとした表情によく似合っていた。
よく兄や生徒を叱っているが、それすらも可愛いと思っていた。

兄の部屋は生徒会役員と風紀委員の専用エリア。雑用をこなしにいく名目で、朝陽さんの近くに行けることが優越感でいっぱいだった。

その日は、横暴な兄の我儘で夜遅くに呼び出され、夜食を持って部屋に向かう所だった。
兄の隣の部屋の前に誰かがいた。焦って入っていくように見え、何となく気まずくて思わず廊下の隅に身を隠す。よく目を凝らしてみると、それは俺の好きな人で。

「え……朝陽さん……」

動揺して部屋にドタバタ入ってきた俺に兄は顔を顰めた。

「お前、何時だと思ってんだ……」
「兄ちゃんの隣の部屋って誰!?!?」

兄の不機嫌な声も無視して、俺は話を続ける。

「は?」
「は?じゃなくて、兄ちゃんの隣の部屋の人って誰なの!?」
「誰って……白崎だけど」 
「……!」

白崎……依澄。兄と同じ三年生、風紀委員長。堅物で、真面目で、融通が聞かなくて氷のように態度が冷たい。
指導を受けた生徒を中心に恐れられている。

しかし反面整った顔立ちと男前な体格から憧れているファンは多く、生徒会長の兄と並ぶ程密かに人気が高い。
誰ともつるんでいる所を見たことがなく、強いて言えばうちの兄とはよく二人で会議というか軽い打ち合わせみたいなものをしている。

そんな白崎先輩の部屋に、朝陽さんが慌ててやってきた。
しかも、声色から察するにかなり甘め。そんな、まさか。

サァ……とみるみる顔が青ざめていく俺に兄が不審に思ったのか肩を揺すってくる。

「おい、どうした。白崎が隣だと何かまずいのか」
「兄ちゃん……、やばい……。朝陽さんが……」
「……朝陽?」
「朝陽さんが、白崎先輩に抱かれちゃう……」
「は?」

俺は、廊下で見た光景を説明した。
焦って白崎先輩の部屋を訪ねてきた朝陽さん。
小さな声で招き入れる白崎先輩。
二人の声色が恋人同士のように甘い雰囲気だったこと。

順を追って説明していると、今度は兄の顔がどんどん青ざめていった。

「嘘だろ……なんで白崎と朝陽が……」
「え、兄ちゃんも、もしかして朝陽さんのこと……」
「俺のこと好きなんじゃないのかよ、白崎……!」
「あっ、そっち……」

兄は盛大に勘違いしていた。
誰とも仲良くなりたがらない白崎先輩が、自分とだけ二人で話す時間が多く、完全に好き同士だと思っていたらしい。兄は、身長が180㎝以上あり、高身長だが、白崎先輩はその更に上をいく。
自分より体格の良い人物を学園に入ってからはじめてみたらしく、兄が一年生の時、つまりは生徒会役員になる前から密かに憧れていたらしい。


「あいつら、いつからそんなに仲良く……。もしかしてもう付き合ってんのか?」
「そんな……俺の朝陽さんが……」

俺たちは、二人とも項垂れていた。兄はソファに沈み、俺はベッドへとよたよた歩きダイブする。
お互いなんのやる気も起きず部屋が静まり返っていた。このままふて寝してしまおうか、そう思っていた時だった。

「……ンあっ……!」

隣の部屋から微かに漏れて聞こえてきた声に兄と目を合わせる。

「……あっ、あっ、や、……んん、ま、って」

壁に耳を当ててみると激しく鳴るベッドのスプリングの音と喘ぎが生々しく聞こえた。
二人ってもうそこまで言ってるのか……激しいんだ……と思いつつ、この状況に興奮を隠せない。

実の兄の前で大きくなっていく股間が恥ずかしかったが、聞くのを止めることは出来なかった。
同じく、息を荒くしてこの状況に興奮している様子の兄だったが、段々と音声だけだが鮮明になっていく二人の行為に眉を寄せた。

「……なぁ、この声って白崎じゃないか?」
「え……」

そんなまさか。だって白崎先輩といえば堅物だけどかっこよくて兄ですら憧れる男前で。
朝陽さんは綺麗で、凛としていて、可愛い人で。

「あぁッ!だ、め、もうイく、ンああっ!」
「いいよ……白崎……俺も、そろそろ出すよ……」
「あっ、あっ、っひ、っんんん~~!!」

二人は同時に果てたのか声が小さくなり、殆ど聞こえなくなった。
俺の中の二人のイメージがガラガラと音を立てて変えられていく。
優しいけれど何度も容赦なく攻めたてる朝陽さん、エロすぎる声で喘ぎまくる白崎先輩。白崎先輩がイく所を想像しても、自分のモノが萎えていなかったことが驚きだった。それどころか……。

ごくん、と喉を鳴らしたのはどちらの声に反応したからかもう分からない。

「……やべ、出てた」
「……俺も」

兄も俺も、賢者タイムで再び沈み込んでいた。
お互い、好きな人の性行為を盗み聞きして、あろうことか果ててしまったのだ。
その自己嫌悪は凄まじい。

「兄ちゃん……」
「……なんだ」
「今日泊まっていい……?」
「あぁ……シャワーは浴びろよ……」

いつになく優しい声の兄が気持ち悪くて、少しだけ泣いた。俺の恋が思わぬ形で終わりを告げた、そんな日になった。
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