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第二章
船は何を運んでる?
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部屋を出て長い廊下を歩きながら、ユーゴは小さく息をついた。誰もいない廊下に、ふたり分の足音だけが響いている。胸の中がざわざわとして落ち着かない。左隣で、半歩先を歩くレイのプラチナブロンドが揺れていた。
「大丈夫やから」と、背中を撫でてくれた彼の感触がまだ残っている気がする。大丈夫、と、ユーゴは心の中で繰り返した。
でも──もしかしたら、もう誰かが危険な目に遭っているかもしれない。エイミーかもしれないし、他の子どもたちかもしれない。そんな想像が脳裏をかすめるたび、胸の奥がきりきりと痛む。
そんなユーゴの様子に気づいたのか、固く握っていた拳をレイの手がするりと掴んだ。
「大丈夫」
ユーゴの心を見透かしたように微笑んで、拳を解いて指を絡ませてくる。そのまま温かな手にきゅっと強く握られて、ユーゴは小さく息を吐いた。
こちらを見返してくるレイの瞳は、まっすぐで穏やかで嘘がない。その瞳に吸い込まれるように、ユーゴは自然と「うん」と頷いていた。
船長室に着いてそのドアを開けると、中にはセオドアの他にタフィーとリアムの姿があった。
「良かった。おまえら呼ぶかって話してたところだったんだ」
タフィーが言ってセオドアを振り返る。執務机に座っていたセオドアは、「タフィーからだいたいの話は聞いている」とレイとユーゴに告げ、「どうぞ」とソファを指して、ふたりに着席をすすめた。タフィーとリアムの正面にそれぞれ座ると、セオドアが視線でリアムを促す。
「さっき頼まれた子たちの記憶、綺麗に消しておいたよ。すごく丁寧に、ね」
「ありがとう」
「で、消す前に少し話をしたんやけど」
リアムがタフィーを見ると、彼は小さく頷いた。
「あの子ら、エイミーともうひとりも含めて、十六人がこの船に乗ってるみたいなんやけど、全員特待生なんやって」
「十六人、全員が?」
レイとユーゴは顔を見合わせた。さっき部屋でも話していたことだけれど、特待生の名目でそれだけの人数が集められているのは、やっぱり奇妙だ。
「それで、乗船記録を確認したんだけど」
セオドアがトントンと机の上の紙束を指で叩き、深く息をつく。
「記録では、全員神学学術院の生徒で、研修旅行の帰りということになってる」
「研修旅行?」
「でも、おかしい。全員がそれぞれ違う港から乗ってきていて、この船で初めて顔を合わせたんだそうだ」
「研修旅行なのに初対面…?」
ユーゴが疑問を口にすると、セオドアは頷いた。
「乗船申込の段階では、全員が初対面かどうかなんてわからないから一旦置いておく。乗る港がバラバラなのは、その時点で少し変だとは思ったが、班ごとに別々の研修地に行ってたんだと言われた。それで納得してしまったんだ。───神学学術院が、この船を研修旅行で使うのは珍しいことじゃないからな」
セオドアは紙束を指でトントンと叩きながら続けた。
「学術院は金持ちの子どもが多いし、学校自体も寄付で潤ってる。豪華な研修旅行だって話題作りの一環なんだろう。俺も今回も同じだと思い込んで、深く確認しなかった」
「でも、今回の子たちは違ったんやね?」
リアムが静かに促すと、セオドアはトントンと指を止め、深い息を吐いた。
「記録を見返したら、乗ってる子どもたちは全員、寒村やそれに近い町の出身だ。それも、全員に学術院への『推薦状』が送られていたらしい」
「推薦状?」
ユーゴが思わず声を上げた。セオドアが真剣な顔で頷く。
「エイミーだけじゃないんだ。十六人全員、誰かの推薦を受けたことになっている。───もちろん推薦者は偽名だろうがな」
「じゃあ…彼らは何のために?」
訊ねるユーゴの声が震えた。セオドアの拳が、ドン! と強く机を叩く。
「本当の『目的地』は学術院じゃない可能性が高い。くそ……俺の船を利用して、碌でもないことをしやがって…!」
「ま、まだそうと決まったわけじゃないじゃん!」
あわてて立ち上がったタフィーが、側に立ってセオドアを宥める。リアムが、やれやれといったふうに首を振った。
「船をいいように使われてるのは気に入らんけど、おかげで怪しいとこの目星はついた。そっちの対策練りましょう」
「そうやね」
それまで黙って話を聞いていたレイが、そう相槌を打ってニコッと笑った。───嫌な予感がする。
「なんかいい考えでもあんのか?」
レイの様子にセオドアが彼にそう訊ねる。
相変わらずニコニコ笑いながらレイが口を開いた。
「おれが潜入する」
………は?
聞き違いかとユーゴはあわてて隣を見たけれど、レイは至って普通だ。何で? と困惑しているユーゴたちを不思議そうな顔で見ている。
「だって何かあってもおれなら自力で逃げれるし、適任やない? リアムが記憶操作して他の子と入れ替えてくれれば、いけると思うんやけど」
「駄目だ」
レイの提案をセオドアが即座に却下した。
「おまえ、さっきステージで歌ってただろうが。忘れたか? おまえみたいな目立つやつが紛れ込むとか出来るわけないだろ」
「えー! いい考えだと思ったんやけどなぁ」
「リアムの暗示だって万能じゃない。それにせっかく見つけた手がかりだ。無駄にできない」
確かにセオドアをはじめ、ここの船員は船内で有名人だし、もしかしたらルイーズの街でもそうなのかもしれない。それに皆、身長も高い。ユーゴだってそうだ。この中で小さいのはセオドアとタフィーくらい。そう思って前を向くとタフィーが盛大なため息をついた。
「あー…俺かぁ。俺だよな。俺しかいないじゃんね?」
ニヤッと笑ってみせたけれど、その口元が少し引きつっている。それでもタフィーは、仕方ないという風に口を開いた。
「いいよ、俺。やるやる。───そうだ。エイミーと入れ替わろっか?」
「えっ!?」
びっくりしてユーゴはソファから腰を浮かせた。
「で、でも…」
「性別違う方が変装って感じでいいじゃん」
「そうじゃなくて…っ」
「まあいいじゃん。あの子が安全なとこにいた方が、おまえ、安心だろ?」
言われてユーゴは咄嗟に返事が出来なかった。
そんなユーゴにタフィーがことさら明るく笑う。
「別にユーゴのためにやるわけじないよ。どうせ誰かと入れ替わるんだから、ってだけ。元々こういう仕事なんだし」
「……いいのか?」
訊いたのはセオドアだ。
タフィーは肩をすくめた。
「だって、元々の依頼主はサイラスでしよ。あいつが知りたいのはそこなんだろ? この船で運ばれてきた子供たちが、どこに連れて行かれるのか。ルイーズで開かれてる闇オークションと、この『特待生』の件が繋がってるのか。確かめたいのはそこなんだろ。確かめようよ」
「危ないよ?」
レイがそう言うと、「嫌なこと言うなよ」とタフィーが顔を顰める。
「それでも、あの子たちがただの『特待生』なのか『部品』として連れてこられたのか、突き止めないわけに行かないじゃん。───でも俺、怖いのも痛いのも嫌いだから、ヤバくなったらすぐ助けに来てね」
タフィーはちょっとおどけてそう言ったけれど、頷いた皆の顔は真剣そのものだった。
「大丈夫やから」と、背中を撫でてくれた彼の感触がまだ残っている気がする。大丈夫、と、ユーゴは心の中で繰り返した。
でも──もしかしたら、もう誰かが危険な目に遭っているかもしれない。エイミーかもしれないし、他の子どもたちかもしれない。そんな想像が脳裏をかすめるたび、胸の奥がきりきりと痛む。
そんなユーゴの様子に気づいたのか、固く握っていた拳をレイの手がするりと掴んだ。
「大丈夫」
ユーゴの心を見透かしたように微笑んで、拳を解いて指を絡ませてくる。そのまま温かな手にきゅっと強く握られて、ユーゴは小さく息を吐いた。
こちらを見返してくるレイの瞳は、まっすぐで穏やかで嘘がない。その瞳に吸い込まれるように、ユーゴは自然と「うん」と頷いていた。
船長室に着いてそのドアを開けると、中にはセオドアの他にタフィーとリアムの姿があった。
「良かった。おまえら呼ぶかって話してたところだったんだ」
タフィーが言ってセオドアを振り返る。執務机に座っていたセオドアは、「タフィーからだいたいの話は聞いている」とレイとユーゴに告げ、「どうぞ」とソファを指して、ふたりに着席をすすめた。タフィーとリアムの正面にそれぞれ座ると、セオドアが視線でリアムを促す。
「さっき頼まれた子たちの記憶、綺麗に消しておいたよ。すごく丁寧に、ね」
「ありがとう」
「で、消す前に少し話をしたんやけど」
リアムがタフィーを見ると、彼は小さく頷いた。
「あの子ら、エイミーともうひとりも含めて、十六人がこの船に乗ってるみたいなんやけど、全員特待生なんやって」
「十六人、全員が?」
レイとユーゴは顔を見合わせた。さっき部屋でも話していたことだけれど、特待生の名目でそれだけの人数が集められているのは、やっぱり奇妙だ。
「それで、乗船記録を確認したんだけど」
セオドアがトントンと机の上の紙束を指で叩き、深く息をつく。
「記録では、全員神学学術院の生徒で、研修旅行の帰りということになってる」
「研修旅行?」
「でも、おかしい。全員がそれぞれ違う港から乗ってきていて、この船で初めて顔を合わせたんだそうだ」
「研修旅行なのに初対面…?」
ユーゴが疑問を口にすると、セオドアは頷いた。
「乗船申込の段階では、全員が初対面かどうかなんてわからないから一旦置いておく。乗る港がバラバラなのは、その時点で少し変だとは思ったが、班ごとに別々の研修地に行ってたんだと言われた。それで納得してしまったんだ。───神学学術院が、この船を研修旅行で使うのは珍しいことじゃないからな」
セオドアは紙束を指でトントンと叩きながら続けた。
「学術院は金持ちの子どもが多いし、学校自体も寄付で潤ってる。豪華な研修旅行だって話題作りの一環なんだろう。俺も今回も同じだと思い込んで、深く確認しなかった」
「でも、今回の子たちは違ったんやね?」
リアムが静かに促すと、セオドアはトントンと指を止め、深い息を吐いた。
「記録を見返したら、乗ってる子どもたちは全員、寒村やそれに近い町の出身だ。それも、全員に学術院への『推薦状』が送られていたらしい」
「推薦状?」
ユーゴが思わず声を上げた。セオドアが真剣な顔で頷く。
「エイミーだけじゃないんだ。十六人全員、誰かの推薦を受けたことになっている。───もちろん推薦者は偽名だろうがな」
「じゃあ…彼らは何のために?」
訊ねるユーゴの声が震えた。セオドアの拳が、ドン! と強く机を叩く。
「本当の『目的地』は学術院じゃない可能性が高い。くそ……俺の船を利用して、碌でもないことをしやがって…!」
「ま、まだそうと決まったわけじゃないじゃん!」
あわてて立ち上がったタフィーが、側に立ってセオドアを宥める。リアムが、やれやれといったふうに首を振った。
「船をいいように使われてるのは気に入らんけど、おかげで怪しいとこの目星はついた。そっちの対策練りましょう」
「そうやね」
それまで黙って話を聞いていたレイが、そう相槌を打ってニコッと笑った。───嫌な予感がする。
「なんかいい考えでもあんのか?」
レイの様子にセオドアが彼にそう訊ねる。
相変わらずニコニコ笑いながらレイが口を開いた。
「おれが潜入する」
………は?
聞き違いかとユーゴはあわてて隣を見たけれど、レイは至って普通だ。何で? と困惑しているユーゴたちを不思議そうな顔で見ている。
「だって何かあってもおれなら自力で逃げれるし、適任やない? リアムが記憶操作して他の子と入れ替えてくれれば、いけると思うんやけど」
「駄目だ」
レイの提案をセオドアが即座に却下した。
「おまえ、さっきステージで歌ってただろうが。忘れたか? おまえみたいな目立つやつが紛れ込むとか出来るわけないだろ」
「えー! いい考えだと思ったんやけどなぁ」
「リアムの暗示だって万能じゃない。それにせっかく見つけた手がかりだ。無駄にできない」
確かにセオドアをはじめ、ここの船員は船内で有名人だし、もしかしたらルイーズの街でもそうなのかもしれない。それに皆、身長も高い。ユーゴだってそうだ。この中で小さいのはセオドアとタフィーくらい。そう思って前を向くとタフィーが盛大なため息をついた。
「あー…俺かぁ。俺だよな。俺しかいないじゃんね?」
ニヤッと笑ってみせたけれど、その口元が少し引きつっている。それでもタフィーは、仕方ないという風に口を開いた。
「いいよ、俺。やるやる。───そうだ。エイミーと入れ替わろっか?」
「えっ!?」
びっくりしてユーゴはソファから腰を浮かせた。
「で、でも…」
「性別違う方が変装って感じでいいじゃん」
「そうじゃなくて…っ」
「まあいいじゃん。あの子が安全なとこにいた方が、おまえ、安心だろ?」
言われてユーゴは咄嗟に返事が出来なかった。
そんなユーゴにタフィーがことさら明るく笑う。
「別にユーゴのためにやるわけじないよ。どうせ誰かと入れ替わるんだから、ってだけ。元々こういう仕事なんだし」
「……いいのか?」
訊いたのはセオドアだ。
タフィーは肩をすくめた。
「だって、元々の依頼主はサイラスでしよ。あいつが知りたいのはそこなんだろ? この船で運ばれてきた子供たちが、どこに連れて行かれるのか。ルイーズで開かれてる闇オークションと、この『特待生』の件が繋がってるのか。確かめたいのはそこなんだろ。確かめようよ」
「危ないよ?」
レイがそう言うと、「嫌なこと言うなよ」とタフィーが顔を顰める。
「それでも、あの子たちがただの『特待生』なのか『部品』として連れてこられたのか、突き止めないわけに行かないじゃん。───でも俺、怖いのも痛いのも嫌いだから、ヤバくなったらすぐ助けに来てね」
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