ネイビーフォースの男たち

スナイプ・アタック

そして、ビルの監視者である、テロリストの位置情報が、判明すると、すぐに、ロシア当局の尾行がついた。


三人のテロ容疑者は脱出用の船のある、港湾施設で、逮捕された。


米・露、双方の政府管理下に置かれた、

この3人は当然、事情聴取を拒んだが、


助けが来ることもない、孤立状態から、やがて、恐怖心に耐えられず、尋問者達の前で

洗いざらい、告白しまった。


その告白の中に、フセイニがテロ事件の首謀者であること、彼自身の個人情報も含まれていた。


いくつもある隠れ家の所在も明らかになり、米・露政府は報復を決定した。


ロシアでのテロの後 手下が逮捕され、刑務所への収監が決まったことをフセイニはテレビで、知った。


しかし、すでに、容疑者三人はロシア政府の超法規的手法で、収監7日後に処刑されていたことまではフセイニは知らず、無論、自分の位置情報が知れ渡っていることも、

把握していなかった。


以後、1年間にわたって、アブ・ビン・

フセイニの追跡が行われ、居場所がベイカー達の見ている、邸宅だと分かったのが今年の5日前。


そして、綿密な殺害計画が練られ、実行のために、ネイビーフォースの精鋭、二人は

ウラグスタンに潜入後、


こうして、狙撃地点で待機することになり、

世界を震撼させた、悪辣なテロの黒幕の抹殺時間が迫っているわけである。


ビギローは観測スコープを通して、フセイニの仕草を注意深く、観察した

「まだ 紅茶を飲んでる 
    家の中に入る気配は無いな」。

ビギローは深呼吸を一度して、言った。

「風速もいいし、撃てるぞ。
    ベイカー、、やれ！」。


ベイカーは呼吸を止め、全意識をフセイニの顔の中央あたりに集中させ

ライフルの引き金をゆっくり、絞り

発射しようとした。


しかし、突然 ベイカーの意識は、
もろくも崩れた。


フセイニの背後から、

6、7歳だろうか？幼い女の子が飛び出し、


フセイニの体に、抱きついた。


「くそ！ 冗談だろ、、！全く、、」


ビギローは思わず、毒づいた。


女の子は１度フセイニに抱き抱えられ、

笑顔を向け、父の方も娘に、微笑み返していた。



その様子をネイビー隊員たちは、
どうしようもなく、眺めていた。


しかし、運命の神は、アメリカ兵士、

からチャンスを取り上げなかった。



フセイニはズボンのポケットから、携帯電話を取り出すため、


一度、娘を家の中に戻した。


彼が電話を手に取り、会話を始めた時、


ビギローは決断した。


「一撃で決めろ！今 だ！」。


ベイカーが引き金を引くと、ライフルから

7.62ミリ弾が高速で飛び出し、電光石火の如く、突進した。


弾丸はフセイニの顔面に命中し、彼は後ろにドサリと倒れた。


「グッドキル、無線で、本部に連絡しよう。
    応援チームと、専門家に来て  
    もらわないとな、、、」


静かにベイカーはうなずいた。



日が暮れかかる直前、フセイニの邸宅では、ネイビーフォースを管理する、アメリカ特殊戦司令部のチーム、CDIAの情報員、

分析班、在ウラグスタンのロシア大使館スタッフが集まっていた。



邸宅の中では、あちこちを、分析チームのスタッフが行き交っていた。



タブレット端末で、写真撮影する者、


メモを取る者、


電話をかける者と、その種類も様々で、

軍事作戦の場というより、警察の現場検証を思わせる光景があった。


黒い遺体袋にフセイニが、収容されるのを、
確認してから、CDIA工作担当の


アレン  レッドマンは

かがんでいた、床から、立ち上がり、直立不動でいるベイカーとビギローに近づいた。


ビギローの目に静かな憤りが、あるのを、

レッドマンは見逃さなかった。


「中尉、すまない。子供の件は、、、
   私の部下のミスだ 、部下には、
   相応の叱責を与えておく。」


ビギローはにこりともしなかった。


「ありがとうございます。しかし、あなたが、あれこれ、考えたところで、時間は戻りませんよ。だって、、、」

彼は顎をある方向へしゃくった。


フセイニの娘が、椅子に座って、ポロポロと涙を流し、顔中がその涙で、濡れていた。