呪いなんて怖くない!〜木こりの息子と仮面の少年

閑人

文字の大きさ
45 / 51

45.誘拐 ④

しおりを挟む
   <外>

 「救出完了の合図は指笛でするのでよろしく」

 先生との打ち合わせが終了。オットー先生の「学園の警備がきてからでも…」と言う意見は、ノラ先生の「その間にルドルフ君に何かあったら?」に退けられた。
 その言葉で腹をくくったらしいオットー先生は剣を試す様に振り「久しぶりだ…うまく使えるだろうか」と呟いた。大丈夫!先生たちはあいつらを引きつけてくれればいいんで。ルドルフさえ助け出せれば万事OKだ。
 「私はどのくらいやっていい~?」とノラ先生がこっそり俺に聞いた。 
 「派手にお願いします。ただオットー先生は巻き添えにしないようにだけ気をつけてください。この建物を壊すってリスと約束しちゃったんで」
 「だと思った~じゃ屋根は壊すと危ないから外壁中心に狙うね~楽しみ~」建物を壊していい機会なんてあまりないもんな…怖。
 そんな言葉を残して、先生たちは建物に向かった。

 「すげえなぁー、何あれ?あの女先生だよな?ぶっ壊してんの」文字通り木の上で高みの見物をしているフォーちゃんがびっくりしている。俺もびっくりだよ。

 開口一番「お邪魔しま~す。ダメだと言っても入りま~す」と大声で言い、ノラ先生は入り口をパンチ1発で粉々にして、建物内にオットー先生と乗り込んで行ったのだ。その後中でバタバタと音がして、「何だてめえ!」「なにしやがるんだ!」「こいつも化け物だ!」などと悲鳴とも罵声ともつかない声が外まで聞こえてきた。その間も外壁にボコボコ穴が空いていく。よし、敵を充分引きつけたところで俺の出番だ。
 


   <内>

 心を落ち着かせる為、紅茶を飲んでいると視線を感じた。窓を見ると愛らしいリスが窓際からこちらをじっと見ている。「何かご用かな?」と近づくとちょっとふらついた後、逃げて行ってしまった。
 身震いするほど窓際は寒い。ただ身体以上に心が寒い。今のところ危害を加えられる事はなさそうだが、それも彼女の気持ち1つで変わるだろう。
 一応救出しに来てくれた人たちがここに辿り着けるよう香水を使って匂いを残してみたが、もし馬車が発見されるまで時間がかかった場合、匂いが消えてしまう可能性が高い。その時は…どんな手をうったらいいのかと悩んでいると、何やら大きなー物を壊した時の様な音ーがして見張りたちがそれを確認する為にドアから離れた。これはとドアを動かしてみるが、残念ながら鍵がかけられていてびくともしない。でも見張りがいないのはチャンスには違いない。さてどうする私?思考をまとめる為部屋をうろうろする。すると
 
 「ルドルフ、窓から離れて」

 その声で反射的に窓際から離れた。次の瞬間重い音がして窓の鉄格子が窓枠ごと外され、見慣れた手がにゅっと伸びてきた。

 「ごめん遅くなって。さあ逃げよう!」

 私はその手をぎゅっと掴んで…


 俺はルドルフの手を掴んで引っ張った。半地下の部屋から引っ張り出すのに四苦八苦したが、なんとかルドルフを外に出す事に成功した。
 「身体強化でやれば簡単だったのでは?」
 開口一番それかよ?
 「まだ力加減ができないから骨折れるかもよ」
 「…そうか。あ、まだ言ってなかった…ありがとう。助かったよ」

 俺は指笛を高らかに鳴らした。


 俺たちはそのまま先生たちと合流する為建物正面まで戻った。誰も追ってはこない。正面に近づくと
 
 「「うわぁ…」」

 建物の惨状が目に入ってきた。「屋根は壊さない」とノラ先生は言っていたけど、確かに壊してはいないが、ここまで壁を壊したら屋根が落ちるのも時間の問題だ。

 俺の指笛を聞いた先生たちは建物から脱出し、俺たちと合流しようとこちらに向かってきた。するとその後ろで、どこに隠してあったのか手下たちがメヒティルトさんを馬に乗せて逃げようとしていた。俺たちの馬は森の入り口に繋いできてしまったので、追いかける事はできない。頼みの綱のノラ先生もさすがに魔力切れでへばっている。どうする?このまま逃げられてしまうのか?

 「兄さん!そいつらが誘拐犯だ!捕まえてくれ!」
 
 オットー先生のその大声を期に森の入り口付近からどっとガタイのいい集団が現れて、あれよあれよという間にメヒティルトさんたちは捕まって連れていかれた。

 「あれは騎士団じゃないか!どうしてこんな所に?」
 
 誘拐の話と王家の紋章つきの馬車が襲われた事を重く見た学園長が1番近くで演習中の騎士団を救助に向かわせてくれたらしい。逃げられなくて本当に良かった。
 そして森に残った騎士団のうちの数人は建物を取り壊し始めた。(と言ってもノラ先生があらかた壊していたのでどちらかというと片付けに近い作業のようだ)本当にここは軍事的に大事な場所なんだな…これでリスの約束も守る事ができてほっとした。
 騎士団の1人、1番偉いと思われるひときわ身体の大きく優しそうな目をした人が俺たちに怪我が無いことを確認した後、小声で
 「君たちのオットー先生ってどんな先生かい?」と聞いてきた。
 『武術を大切にしてきた家』
 『兄さん!』
 この人ひょっとして…
 
 「学生思いのとても良い先生です」

 とルドルフが言うと
 
 「そうか…」と呟き

 俺たちの頭をそのでっかい手でポンポンと撫でてくれた。手の触れた所がとても暖かく感じた。

 お迎えの馬車が学園から来て、俺たちはやっと帰途につくことができた。疲れてしまったオットー先生も魔力切れでダウン中のノラ先生も一緒だ。
 ふかふかの座席に着くと隣のルドルフが俺をつついて
 
 「ダメだ。何故だか涙が止まらない。どうしよう」

見ると肩が震えている。そりゃそうだよなあんな怖い目にあったんだから…あれ?俺もいつの間にか泣いているのに気がついた。おかしいな?
 
 先程の騎士団の人と同じ様な優しい目で
 
 「2人とも大変な目に会いましたからね。涙が出るのも当然ですよ」とオットー先生が言った。
 
 ノラ先生はどこから取り出したのか大きな袋(後で聞いたらルドルフを誘拐する時に使った袋らしい。『建物の中で拾った~』と言ってた)を俺たちに被せた。
 
 「何でこんな袋被せられた?」と思いつつも、俺たちは一緒に入れられた袋の中で泣き続けたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...