学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

文字の大きさ
52 / 80
第6章 体育祭

52 信頼の先に

しおりを挟む

「し、失礼しまぁす」

 お昼休みが終わり、わたしは約束を果たすべく生徒会室運営のテントまで足を運びました。

 とは言え、場違い感は否めないので自然と恐る恐るになって声が揺れてしまいます。

「あ、どうかしましたか?」

 すると、手前にいた生徒会のメンバーであろう方から返事を頂きます。

 一般生徒が顔を出せば、気付いた人から対応してくれるのは当然の反応です。

「えっと、あの、その……」

 ですが、当然の反応ができない人がここにいます。

 しどろもどろ。

 ただでさえコミュケーション能力が欠如しているわたしに、接点のない生徒会役員の方を目の前にしては緊張が止まりません。

「……?」

「あー……」

「何でしょう?」

「うー……んと」

「……あの、用がないのでしたらお引き取りを」

 “あー”とか“うー”としか言わないわたしを見かねた生徒会の方に、戻るように催促されます。

「そうですね、失礼しました」

 これだけはいやに滑らかに言葉が出ました。 

 だって、ここはわたしがいるべき空間ではありません。

 回れ右して、本来いるべき場所に戻ることにします。木陰とか、ですかね。

「……ぐえっ」

 しかし、足を踏み出すと同時に首が閉まるような圧力が加わり、それ以上動くことが出来ませんでした。

「貴女、一体何をしに来たのよ……」

 振り返ると、わたしの首根っこを捕まえている千夜ちやさんの姿がありました。

 ジト目を向けられています。

「……アウェイ感を感じたので、引き返すことにしました」

「ほとんどの人がここにホーム感なんて感じないわよ」

 そう言われちゃうと、その通りなんですけど。

 どうやら千夜さんは奥の方で他の役員の方と相談をしていたそうで、わたしを見つけるとすぐに話を切り上げ、こちらに近づいてきてくれたようです。

「あ、会長……?その方、会話が成立しなくて……」

 さっき対応してくれた役員の方が、わたしの奇行を告げ口します。

 千夜さんもわたしの首根っこを捕まえているので、不審者を摘まみ上げている様に見えたのかもしれません。

「いいのよ、私がこの子に用があって来てもらったの」

「会長が……?この人に?」

 “意思疎通が困難な陰キャに会長が何の用?”

 と言わんばかりにキョロキョロする生徒会の方。

 そんな不思議そうな生き物を見る目でわたしのことを観察しないで頂きたい。

「ええ、そうよ。問題ある?」

 しかし、千夜さんがはっきりその意思を伝えると生徒会の方は姿勢を正します。

「いえ、問題はありません。失礼しました」

「いいのよ。私は少し席を外すから、後はお願いね。何かあればすぐに呼んでもらって構わないから」

「はいっ」

 なるほど……。

 出来る上司は部下の自主性を重んじ、下手に口出しせず自由に仕事をさせると言います。

 今の千夜さんがまさにそんな感じでしょうか。

 やはり仕事が出来る女って感じですね。

「……何をそんなに見ているのよ」

「あ、えっと」

 いつの間にか凝視してしまっていたらしく、千夜さんは怪訝そうな表情を覗かせます。

「家だけじゃなくて、やっぱり学校でも頼られる存在なんだなぁと思いまして」

 もちろん千夜さんにだけ届く声で、告げます。

「……っ、無駄話をしているヒマはないわ」

「あっ、はいっ」

 千夜さんは首根っこを掴んでいた手を離すと、急に俯いてテントの外へと歩き出すのでした。

 わたしもその後を追いかけます。






「あ、あの千夜さんっ」

「……何かしら」

「歩くの早すぎませんかっ」

「あっ、そうね」

 早足のままずんずん進んで行くので、追いかけるのも大変なのでした。

 ようやくその速度を緩めてくれます。

「そんなに急ぎの用事なんですか?」

「特に緊急性はないわ」

 じゃあ、なんであんなに早足だったんでしょうか……。

 不思議です。

「わたしは生徒会の何のお仕事を手伝えばいいのでしょうか?」

「見回りよ。本来は二人一組なんだけど、今日は一人欠けているからその代わりが貴女」

「なるほど」

 全くお役に立てる気がしないのですが、大丈夫でしょうか。

「とは言っても基本的に運営は体育委員がやってくれているから、生徒会の仕事は微々たるもの。トラブルがあった際に体育委員の手が足りない場合があれば、協力するのよ」

 有事にすぐ対応できるよう、生徒会の方は交代制で見回りをしているとのことでした。

「ですが、それをどうしてわたしが……?」

 言われるがままにオーケーしましたけど。

 そういう役目なら他の方が適任だったのでは……?

 わたしじゃ何のトラブルも解決できませんよ?

 自分で言ってて悲しいですけど。

「……貴女が言ったことでしょ」

 ぼそりと千夜さんが呟きましたが、わたしは何のことかと首を傾げます。

「私が思ったことを人に伝えるように薦めたのは、貴女でしょ」

 たしかに、言いました。

 普段から自分の気持ちを押し殺す千夜さんに対して、そう言ったのを覚えています。

 でもそれは、どちらかと言うと日和ひよりさんや華凛かりんさんの為を思っての言葉だったのですけどね。

 ……でも。

「千夜さんの方から、わたしを選んで貰えたのなら嬉しいです」

 力になれる気は全くしていませんが、それでも千夜さんから求められる事に悪い気はしません。

「貴女には感謝しているの」

「……ん?」

 あれ、幻聴ですかね。

 なんか今すっごいこと言われた気がします。

「……次、聞き逃したら怒るわよ」

「すいません、はい、ちゃんと聞きます」

 信じられなくて聞き返したんですけど。

 そういうわけにもいかないようです。

「貴女のおかげで、私は息がしやすくなった気がするの」

「……えっと」

「肺がどうとか、呼吸苦とかそういう下らない意味じゃないわよ。察しなさい」

「……ですよねぇ」

 すいません。

 ただでさえ身に余る言葉を頂戴しているので、そんな多彩な言葉を使われると尚のこと理解が追い付かないのです。

「姉妹の仲も前よりずっと良くなったと思っているわ」

「それは……嬉しいですね」

 わたしもそうなって欲しくて頑張った事はあったので、千夜さんにそう感じてもらえるのなら喜ばしい限りです。

「不思議ね。姉妹の仲を直してくれたのは、血の繋がりのない義妹だなんて」

「……でもそれは本来の月森さんたちの仲があればこそですよ」

 本当にいがみ合う仲であれば、わたしなんかがどうこう出来ることはなかったでしょう。

 ただ、ボタンが少しずつ掛け違っていただけ。

 だからこそ、他人で、外側にいるわたしの方がそのボタンを掛け直すことが出来た。

 ただ、それだけの話なのです。

「……だから、ね。貴女は私達……いや、私にとっても、必要な存在になっていると思うの」

 千夜さんの一切揺れることのないその瞳が、わたし真っすぐに射抜きます。

 その視線を反らすことが出来ません。

「それで、もし貴女がよければ、その――」

 ――と、千夜さんが何かを言い掛けた。

 その瞬間でした。

「ねえ、何なの、何なのそれっ!?」

「あらあら、お弁当ですよ?お昼ご飯が入っていたんですよ?」

 まるでカットインするかのように見知った声が飛び込んでくるのでした。

「そうじゃなくてっ、お弁当そのものについて話しているんじゃなくてっ!その浮かれた弁当箱は何だって聞いてんのっ!」

「ハートちゃんです♡」

 両手にあるハートのお弁当を頬に寄せる日和さん。

 可愛いですけど……なにやってるんでしょう、あのお二人。

「絶対明莉のやつじゃんっ!なんでいつもの弁当箱じゃなくて、二人だけ違うのよっ!」

「あら、心の形を表現するのに物を使うのは古典的な方法じゃないですか?」

 そして、華凛さんは何をそこまで目くじらを立てているのでしょう。

 そして、日和さんはあのお弁当箱を心って言ってたような……あれ、心臓って言ってませんでしたっけ……聞き間違いでしょうか。

「……あの子たち」

 そして隣にいる千夜さんの声には怒気が籠り始めていましたっ。

 はわわ……!

 周りにいる生徒の方々も、お二人の言い争いを遠巻きから見守っています。

「あの、これって……トラブルになるんですかね?」

「あの子たちのせいで野次馬も集まってるし……そうなるわね」

「あ、でも、これって体育委員の方が解決してくれるんじゃ……」

「体育委員の代表はあの子華凛よ」

 オーマイガァ。

 体育委員長であり、学園のアイドルの二人が口論している。

 それは誰も止められません。

 ……となれば。

「生徒会の出番なんですね」

「……残念ながら、そうなるわね」

 鼻息荒く返事をしてくれる千夜さん。

 それについさっき、姉妹の仲は良くなったと仰ってくれたばかりなのに……。

「ほら行くわよ」

 すると、千夜さんがわたしの手を握ってきます。

 ちょっとドキッとしてしまいましたが今はそんな場面じゃないことくらい、わきまえています。

「やっぱり、わたしもですか?」

 勿論、千夜さんのお手伝いとして一緒にいましたけど。

 果たして力になれるかどうか……。

「貴女が一番、私達のことを理解してくれているんでしょ?」

「……!」

 それは千夜さんがわたしに向けてくれる最大の信頼で。

 そして、わたしが求めていたことです。

 推しのことを理解し、推しの信頼を得る。

 これが喜びじゃなくて、何が喜びでしょうか。

「もちろんですっ!」

 だから、わたしはやっと自信を持って千夜さんの手を握り返すことが出来ます。
 
 体育祭はまだまだ終わりそうにありません。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...