学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

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最終章 決断

71 炭酸ジュースにご注意を

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「ここよ」

 冴月さつきさんの家は高層マンション。

 それも上の方の階で、外を眺めると一軒家の屋根を悠々と見下ろすことが出来ます。

 高いなぁ……なんて、ありきたりな感想を抱きつつ、冴月さんの部屋に案内されます。

 その扉を潜り、ぺこりと会釈。

「お、お邪魔します」

 ちょっと思っちゃったのですけど。

 親御さんと挨拶した時、娘が連れてきた友達がわたしだと驚くんじゃないでしょうか?

 陽キャの友達は陽キャ、当然いつもその輪をご両親も見ているでしょうから。

 突然、わたしのような陰キャが来訪したら娘はどうしたんだと心配させてしまうのではないでしょうか?

 その展開が脳裏をよぎり、キョロキョロと辺りを見回します。

「あ、安心して。その……この時間は、親いないから」

 なぜか、もじもじとしながら告げる冴月さん。

 その反応を見て、わたしは冴月さんの行動にピンときてしまいました。

「わざと、ですね?」

「え、いきなり、なにっ」

「わざとご両親がいない日と時間を選んだんですねっ」

「やっ、そ、そんなことなくて……たまたま……」

「そんな偶然のはずがありませんっ、冴月さん本当のことを言って下さいっ」

 詰め寄ると、冴月さんはあわわと口をパクパクさせ、観念したようにうなだれます。

「……狙い、ました」

 やはり、冴月さんは確信犯でした。

「冴月さん、あんまりです……」

「え、うん?」

「わたしが陰キャで人に見せられるようなものじゃないからって、ご両親が不在のタイミングを狙わなくてもいいじゃないですかっ」

 人付き合いが苦手でも、あえて避けられるのはツラいんですよっ。

 だからと言って、決してお会いしたいわけではないですけどねっ。

 自分で言ってて、わたしこいつ難しすぎますねっ。

「そうじゃないでしょっ!」

 吠える冴月さん。

 なぜ。

「え、いつも陽キャの方々としか絡んでないから、わたしを紹介するとハブられたと思われるのが嫌で避けたんじゃないですか?」

「あんた自分のことを何だと思ってるの……?」

「冴月さん、そうは言いながらも明確な答えを提示できていませんよ?」

 否定だけはしてますが、その理由を回答できていないのです。

「いや、だから、それは……」

「ふふ、急に口ごもる当たりが図星の証拠、観念して下さい」

 なんか勝ち誇ってみましたけど、わたしにとって結構悲しい展開ですよね、これ。

 冴月さんは“ん~”と唸っていましたが、意を決したように目を見開きます。

「好きな人と初めて一緒に遊ぶなら、二人っきりの方がよくね!?」

「――っ!?」

 ば……ばばっ、爆弾発言でしたっ!

 冴月さんは顔を真っ赤にさせながら、ふーふーと息を荒くしています。

 わたしもどうしていいか分からず、手をパタパタ上下させることしか出来ません。

「い、言わせんな……恥ずかしい」

「す、すいません……」

 お互いに俯いて目も合わせられなくなってしまいました。

 そ、そうですよね。

 冴月さんにとっては、わたしはそういう人なんですもんね……。

花野はなのが自分自身のことを下に見てるのは知ってるけど、わたしにとってはそうじゃないから。それ忘れんなし」

「は、はひぃ……」

 わ、分からなさすぎます。

 こんな展開、今までなくてどうしていたらいいのか分かりません……。

 と、溶けそう……。


        ◇◇◇


「ほら、入って」

「あ、失礼します」

 とは言え、立ち話をし続けるのもおかしいと思ったのでしょう。

 冴月さんのお部屋を案内されます。

「……おう」

「あ、あんま見ないでよ」

 人様の部屋に入ってそれはムリがありますよね。

 冴月さんの部屋は意外な印象を受けました。

 くすんだオフホワイト系の家具を中心に、あわいピンクカラーも織り交ざって、女の子らしい部屋作りです。

 なにより点在しているぬいぐるみたちによってメルヘン要素が増しましになっています。

「冴月さん、普段の刺々とげとげしい印象とは裏腹に、心の中は可愛い世界観で生きてるんですね?」

「あんたはたまにムカつく言葉選びするわねっ! 普通に可愛いって言いなさいよ!」

 怒られました……。

 いつもの冴月さんです。

「なんか飲む? 用意するけど」

「……え」

 空気を変えようとしてくれたのか、おもてなしの提案をしてくれましたけど。

 こういう時、なんて答えるのが正解ですか?

 招待してもらってる身でありながら飲み物まで要求するなんて、ちょっと厚かましい気もしますし……。

「お構いなく、もう帰りますので」

「早すぎだろ!!」

 間違えたようでした……。

 “炭酸系のジュースが好きです”と言うと、“そうやって言え!”とオレンジソーダとお茶菓子を用意してくれるのでした。

 ううむ、時にはおねだりするのも正解なのか……日本人特有の奥ゆかしさも時には封印しないといけないのですね。

「……ごくごく」

 喉がしゅわしゅわっとして、弾けます。

 美味っ、と思いながらグラスから口を離すと冴月さんと目が合いました。

 ……二人だけなので、当然なのですが。

 なんだか改めて新鮮というか、不思議な気分です。

「何考えてんのよ」

 そんなわたしの気持ちを見透かしたのか、冴月さんが問いかけてきます。

「いえ、こうして冴月さんと一緒にプライベートな時間を過ごす日が来るとは思わなかったもので……」

 思わずそんな感慨にふけってしまいました。

「……わたしは前々から考えてたわよ」

 ふん、と鼻を鳴らす冴月さん。

 それはどこか照れ隠しのようにも見えました。

「そうなんですか?」

「鈍感な花野には分からないでしょうけど。わたしはそれなりに前からあんたのこと考えてたんだから」

 面と向かって言われると、なかなか恥ずかしいですが……。

「それって、どれくらい前ですか……?」

「まあ、一年生の春頃って言うか……」

 それって出会ってほぼすぐじゃないですか……。

「そ、そうだったんですね……」

「そ、そうだけど?」

「……へ、へぇ」

「……う、うん」

 ど、どんな顔していいか分かりませんっ。

 この何とも言えない空気感と沈黙、一人でいる時とはまた違う居心地が定まらない感覚。

 間が持たないので、ジュースをグビグビします。

「……ぶほあっ!」

 炭酸だったんでした!!

 大量に一気飲みしようとしてしまい、思わずむせ込んでしまいました。

「な、何してんのよ……!」

「ず、ずびまぜん……」

 すぐにハンカチを取り出して(女子力高いです)、吹き出したわたしを拭いてくれる冴月さん。

「もう、こんなの制服につけたら汚れとるの大変じゃない」

「返す言葉もありません」

「ったく、こんな所までこぼして……」

 と、わたしが広範囲に吹き出したせいで、冴月さんの手元はブレザーの裾から自然と上がって行きます。

「……あ」

「あって、何よ。こっちは一生懸命やってんのに」

「あ、いえ、そこ胸だなぁと思いまして……」

「は……はあ!?」

 当然、冴月さんの手はわたしの胸元までくるわけで。

 もみもみされたわけでもないので、何ともないのですが。

 ただ、その……ねえ?

「ご、ごごっ、ごめん!!」

 ババッと手を離して距離まで一気に空ける冴月さん。

「あ、いえ、女の子同士なので気にしないんですけど……」

 ただ、その……冴月さんは一応、好きでいてくれるわけで……。

 その場合のこういうのって、どうなるんだろうと思いまして。

 未知すぎて、よく分かりませんでした。

「え、いいの?」

 しかし、わたしの返事に妙に食いつく冴月さん。

「あ、や、いいのと聞かれると……」

「触っても別に気にしないわけ?」

 すごい食い気味ですっ。

「いえ、改めて聞かれて、触れられるのは違うような……」

「そうだよね、女子同士だしっ、わたしたち女子同士だからノーカンじゃん!?」

 あ、なるほど。

 妙に鼻息荒くしている姿を見て、冴月さんにとって体に触れる行為がわたしの知らない世界に通じているの感じます。

 これはダメなやつですねっ。

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