百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。

白藍まこと

文字の大きさ
35 / 77
本編

35 採寸

しおりを挟む

 ルナに手を引かれ街の中心部を訪れると、お高そうなガラス張りのお店が現れた。
 扉の前には人が立っており、ドアマンと呼ばれる方がお客さんが来るたびにドアを開け閉めしてくれるそうだ。

「し、失礼しますっ」

「ユズキ、ここ学院じゃないからね?」

 思わず敬語で入店してしまう。
 さっそく不慣れを露見させて恥をかいた。

 お店の中はピカピカに磨かれており、内装は豪華絢爛、並んでいる商品も一つずつ空間を意識された配置になっていて、いわゆる大量生産商品の雑多な並びとは全然印象が違う。
 こんな高級な場所、場違い感が否めない。

「お待ちしておりましたマリーローズ様」

 するとスーツ姿の店員さんが訪れて、挨拶をして頂ける。
 その立ち姿は気品に満ち溢れていた。

「今日はどのような物をお探しに来られたのでしょうか?」

「今回はルナじゃなくて、この子の物を買いに来たの」

 ルナに紹介され、店員さんがあたしを見る。
 すいません、この場に似つかわしくない平凡な人間が来てしまってすみません。

「さようでしたか。それでは何をご希望ですか?」

「うん、この服と同じものをこの子に用意して欲しいの」

 ルナが自分の洋服を指差す。
 意図を察した店員さんは少し驚いたようにも見えたが、すぐに営業スマイルを張り付ける。
 あたしなんかがこんな清楚な服装、似合わないと思ってる?
 自覚はあるよっ。

「かしこまりました。ではどうぞこちらへ」

 案内されたのは個室の部屋。
 お高そうなインテリアがライティングされ、ソファが置かれている。
 
「今、担当の者をお呼びしますのでもう暫くお待ちください 」

 店員さんはお辞儀をして、部屋を後にする。
 残されたのはあたしとルナだけになった。
 VIP対応すぎるでしょ。

「ルナ……毎回買い物の度にここに通されるの?」

「そうだね、日本の支店に来るのは初めてだけど、だいたいこんな感じかな?」

「……ん、初めてなの?」

 なんか会話に違和感。

「うん、英国イギリスの本店には行ってたけたど、日本のは初めて」

「……はぁ……って、うん?」

 そうなるとちょっと疑問が。

「じゃあなんで店員さんはルナの事、知ってるの?」

「ここはママの会社の傘下、ココも連絡入れてくれたみたいだし。だからじゃないかな?」

「……ほーう」

 なんかよく分かんないけど、スケールの大きさだけは感じた。
 こんな島国にまで店舗を拡大しているブランドを手中に収めているママに、あたしの存在を知られているのか……。
 そりゃルナに粗相したら追放もされますわな。
 二度と悪女にはならないと誓おう。

「お待たせ致しました、私の方で採寸させて頂きますね」

 数分と待たずに、別の女性の店員さんが現れる。
 この待ち時間の短さにも特別待遇を感じる。

「失礼ですが、こちらに立って頂いてもよろしいですか?」

「あ、はい」

「それでは正確な数値を測りたいので、出来ればお召し物をお脱ぎになって頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「……え」

 それはつまり下着姿という事ですね?

「何か問題がありましたか?」

 あたしの戸惑いを店員さんが察してくれる。

「あ、そのですね……」

 ちらりとルナの方を見る。
 いや、店員さんは仕事なんですからいいんですけど。
 問題は向こうの人ですよ。

「大丈夫、ルナが見守ってるから」

 ふん、と鼻息を荒くするルナ。
 違うよ、君が問題なんだよっ。

「……いや、ちょっと見ないで欲しいというか」

「ルナは気にしてない」

「あたしが気にするんだよっ」

 なぜか自分目線で話すルナ。
 あたしの親近感ボディを、あんなお人形さんボディの持ち主に見られてたまるかっ。

「別室にご案内させて頂く事も可能ですが……?」

 店員さんのナイスアシストが入る。
 そうだね、あたしは別室で店員さんと二人きりにさせてもらおう。

「大丈夫、ここでいい」

「どうしてルナが返事するのかなっ!?」

 あたしは見られたくありませんのよっ。

「かしこまりました」

「店員さんっ!?」

 忖度だっ!
 親会社の令嬢に逆らわないように、あたしの意見が無視されているわよっ。
 ……まぁ、そりゃそうかっ。
 社会の非情さを垣間見たような気もしたが、冷静に考えたらこんな場所に好意で連れて来てもらって何言ってんだあたし、だよね。

「どうしても嫌でしたら、カーディガンだけ脱いで頂ければ後は服の上からでも可能ですので……」

 よかった!
 ゆずりは柚稀ゆずきの薄着がこんな時に役立つなんてっ!

「じゃあ、カーディガンだけ……」

「大丈夫、ユズキは下着姿になる」

「ルナっ!?」

 だから勝手に決めないでもらえるかなっ。

「かしこまりました」

「店員さんっ!?」

 どうしてするすると服を脱がしているのかなっ。
 しかもすっごい上手だねっ、これがハイレベルな接客かっ。






「はい、それでは次にバストを測りますね」

「……はい」

 いや、もう何も言うまい。
 あたしは下着姿になってしまったが、別にこれは必要な事をしているだけだ。
 あたしが恥ずかしいと思うから恥ずかしいのだ。
 服を仕立てる為に採寸する事に、何を恥じる事があるだろう。

「それでは失礼します」

 メジャーが胸の上に巻き付く。
 じーっと目盛りを見る店員さん、その後ろに目を細めて数値を見ようとする人がもう一人……っておい。

「ルナ、何見ようとしてんの」

「ん……えっと……そう、ちゃんと測れてるのか心配してね?」

「変な間があったぞ」

 あたしの胸のサイズは絶対に教えないぞ。

「……はっ、すみませんっ」

 手がぶるりと震えてメジャーを落としてしまう店員さん。
 彼女もプロだろうに、こんなミスをしてしまうのは大物令嬢が監視しているせいだ、絶対。
 “ちゃんと測れてるのか心配”って、店員さんからしたら絶対プレッシャーだろうし。
 本人も悪気はないから誰も悪くないのがこれまたややこしい。

「大丈夫、ルナは気にしない」

 そう言ってメジャーを拾い上げ、あたしの方を見るルナ。
 なんでこっちを見る?

「店員さんは休んでて、代わりにルナが……」

 メジャーを持ってあたしの胸に手を伸ばそうとするルナ。
 もちろん、あたしはその腕を掴んで阻止する。

「……なにユズキ」

「いいわけないよね?」

「大丈夫、ルナは慣れてる」

「そういう問題じゃないから、店員さんに返してっ」

 頑なに譲ろうとしないルナだが、この一線だけは守るからねっ。

「……ユズキの意地悪、ちょっとくらい教えてくれてもいいのに」

「それ逆の立場ならどうするのさ」

 聞く方は簡単でも、教える方はハードル高いんだぞ。

「ユズキはルナの体を知りたいの、いいよ? 店員さん、ルナのも改めて測って……」

「ああ、いい! ウソウソっ、大丈夫だから! 店員さん、それよりあたしの早く測って下さい!」

 くっそー。
 知られても気にならないくらい立派な人はいいですねっ。
 同じ土俵で考えていたあたしが間違えてましたっ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...