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16.同窓会でのご挨拶
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ラザフォード侯爵家の大きな広間は懐かしい顔ぶれでいっぱいだった。あちらこちらで再会を喜ぶ声が聞こえてきて、到着した途端私の気分は少し上向きになった。
「まぁ!クラウディア!」
「やっと会えたわ」
「っ!アイリス!ハンナ!お久しぶりね」
「ふふ、ええ!卒業以来まだ大きな夜会なんかがなかったものね。会えて嬉しいわ」
仲の良かった友人二人に声をかけられて、私は満面の笑みで挨拶をする。
「結婚生活はどう?クラウディア」
「あら?ダミアン様は?」
二人がそう言ったのでたった今一緒に入ってきたはずのダミアン様の方を振り向くと……、すでにそこに彼はいなかった。
「……おかしいわね、一緒に来たのだけれど。…たぶんご友人の方々を探しているのだと思うわ」
私は慌ててごまかし、とってつけたように微笑んだ。せめて主催者のエレナ様にご挨拶を済ませるまでは傍にいてほしかった…。
見渡してみたけれどダミアン様の姿が見つけられず、私は仕方なく一人でエレナ様の元へ向かった。夫婦で呼ばれているのに一人でご挨拶に行くなんて……惨めで恥ずかしくてならない。どう思われるだろうか。
広間の奥で数人のお友達とお喋りをしているエレナ様の元におずおずと向かう。エレナ様の隣にはアーネスト様がいて、私の方をじっと見つめていることに気が付いた。目が合うと、アーネスト様がこちらに歩いてきた。
「…やあ、来たんだね、クラウディア嬢」
「ごきげんよう、アーネスト様。……はい。あの、エレナ様にご挨拶をと、思ったのですが……その…」
「ああ。……彼は?」
「……ちょっと……は、はぐれてしまって……。お友達にご挨拶に行ったのだと思いますわ」
「……。そう。おいで」
一瞬の沈黙は、やはりダミアン様と一緒にいないことを不自然に思われたからだろうか。でもアーネスト様は私を連れてエレナ様に声をかけてくださった。正直言うとお友達とのお喋りを楽しんでいるエレナ様に声をかけるのは緊張するのでとても助かった。
「おい、エレナ。ほら、クラウディア嬢がご挨拶に来てくれたよ」
「……あらっ、お久しぶりねクラウディアさん!今日は来てくれてありがとう」
「ごっ、ご無沙汰しております、エレナ様。ごきげんよう…」
アーネスト様の声にすぐにこちらを振り向いてくださったエレナ様だが、やはり私が一人で来たことが不思議なのだろう。キョトンとしている。周りにいたエレナ様のご友人の方々にも注目されてドキドキする。
「…ご主人は?ウィルコックス伯爵令息は、今日は来られていないの?」
「あ、いえ、そ、それが…」
「一緒に来たそうだがはぐれてしまったようだ。彼は自由人だからな」
「あら。ご友人でも見つけてお話が弾んでいるのかしらね」
アーネスト様がフォローしてくださって、エレナ様もクスッと笑っている。
「もっ、申し訳ありません……」
「いいのよいいのよ、気にしないで。そんな堅苦しい会じゃないわ。今日は若者ばかりだしね。ふふ。あなたも楽しんで」
「は、はい。ありがとうございます…」
エレナ様が寛容な方でよかった……。気まずい思いをしたけれど、どうにか主催者へのご挨拶は済ませた形となった。
では失礼いたします、と言おうとしたが、エレナ様はまだ私に話しかけてくる。
「あなたたちは結婚が早かったわよね。卒業してすぐだったもの。いかが?新婚生活は。ご夫婦で仲良くやってる?」
「……っ、」
一瞬頭が真っ白になって返事に詰まってしまう。昔から嘘が下手なタイプの私は、とくに親しくもなく、しかも侯爵家のお嬢様である彼女からそんなことを聞かれて、緊張と気まずさで固まった。
「……?」
「あ、……えっ、ええ。……はい、順調でございます…」
「そう?ふふ、よかったわ。でも何か困ったことがあったら相談に乗るわよ」
「お前では相談相手にならないだろう。結婚もしたことないくせに」
「いちいちうるさいわねアーネスト!いいのよ、婚約者はいるんだから!あなたよりは頼りになるでしょう私の方が」
「……ふふ」
普段の社交の場ではもっとかしこまって完璧な立ち居振る舞いを披露しているアーネスト様とエレナ様のくだけた会話が楽しくて、思わず笑ってしまう。やはり今日は同窓生だけいうことで皆リラックスしているのだろう。
屋敷に閉じこもっているより、ずっと気が紛れる。
やっぱり、来てよかったな。
「まぁ!クラウディア!」
「やっと会えたわ」
「っ!アイリス!ハンナ!お久しぶりね」
「ふふ、ええ!卒業以来まだ大きな夜会なんかがなかったものね。会えて嬉しいわ」
仲の良かった友人二人に声をかけられて、私は満面の笑みで挨拶をする。
「結婚生活はどう?クラウディア」
「あら?ダミアン様は?」
二人がそう言ったのでたった今一緒に入ってきたはずのダミアン様の方を振り向くと……、すでにそこに彼はいなかった。
「……おかしいわね、一緒に来たのだけれど。…たぶんご友人の方々を探しているのだと思うわ」
私は慌ててごまかし、とってつけたように微笑んだ。せめて主催者のエレナ様にご挨拶を済ませるまでは傍にいてほしかった…。
見渡してみたけれどダミアン様の姿が見つけられず、私は仕方なく一人でエレナ様の元へ向かった。夫婦で呼ばれているのに一人でご挨拶に行くなんて……惨めで恥ずかしくてならない。どう思われるだろうか。
広間の奥で数人のお友達とお喋りをしているエレナ様の元におずおずと向かう。エレナ様の隣にはアーネスト様がいて、私の方をじっと見つめていることに気が付いた。目が合うと、アーネスト様がこちらに歩いてきた。
「…やあ、来たんだね、クラウディア嬢」
「ごきげんよう、アーネスト様。……はい。あの、エレナ様にご挨拶をと、思ったのですが……その…」
「ああ。……彼は?」
「……ちょっと……は、はぐれてしまって……。お友達にご挨拶に行ったのだと思いますわ」
「……。そう。おいで」
一瞬の沈黙は、やはりダミアン様と一緒にいないことを不自然に思われたからだろうか。でもアーネスト様は私を連れてエレナ様に声をかけてくださった。正直言うとお友達とのお喋りを楽しんでいるエレナ様に声をかけるのは緊張するのでとても助かった。
「おい、エレナ。ほら、クラウディア嬢がご挨拶に来てくれたよ」
「……あらっ、お久しぶりねクラウディアさん!今日は来てくれてありがとう」
「ごっ、ご無沙汰しております、エレナ様。ごきげんよう…」
アーネスト様の声にすぐにこちらを振り向いてくださったエレナ様だが、やはり私が一人で来たことが不思議なのだろう。キョトンとしている。周りにいたエレナ様のご友人の方々にも注目されてドキドキする。
「…ご主人は?ウィルコックス伯爵令息は、今日は来られていないの?」
「あ、いえ、そ、それが…」
「一緒に来たそうだがはぐれてしまったようだ。彼は自由人だからな」
「あら。ご友人でも見つけてお話が弾んでいるのかしらね」
アーネスト様がフォローしてくださって、エレナ様もクスッと笑っている。
「もっ、申し訳ありません……」
「いいのよいいのよ、気にしないで。そんな堅苦しい会じゃないわ。今日は若者ばかりだしね。ふふ。あなたも楽しんで」
「は、はい。ありがとうございます…」
エレナ様が寛容な方でよかった……。気まずい思いをしたけれど、どうにか主催者へのご挨拶は済ませた形となった。
では失礼いたします、と言おうとしたが、エレナ様はまだ私に話しかけてくる。
「あなたたちは結婚が早かったわよね。卒業してすぐだったもの。いかが?新婚生活は。ご夫婦で仲良くやってる?」
「……っ、」
一瞬頭が真っ白になって返事に詰まってしまう。昔から嘘が下手なタイプの私は、とくに親しくもなく、しかも侯爵家のお嬢様である彼女からそんなことを聞かれて、緊張と気まずさで固まった。
「……?」
「あ、……えっ、ええ。……はい、順調でございます…」
「そう?ふふ、よかったわ。でも何か困ったことがあったら相談に乗るわよ」
「お前では相談相手にならないだろう。結婚もしたことないくせに」
「いちいちうるさいわねアーネスト!いいのよ、婚約者はいるんだから!あなたよりは頼りになるでしょう私の方が」
「……ふふ」
普段の社交の場ではもっとかしこまって完璧な立ち居振る舞いを披露しているアーネスト様とエレナ様のくだけた会話が楽しくて、思わず笑ってしまう。やはり今日は同窓生だけいうことで皆リラックスしているのだろう。
屋敷に閉じこもっているより、ずっと気が紛れる。
やっぱり、来てよかったな。
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