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あの事件以来、私はミッチェルに対して完全に愛想を尽かしてしまった。
ポーラとの不貞を知って以来もちろん愛はすっかり冷めてしまっていたのだけれど、まさか仲間を使って自分の妻を手篭めにさせようとし、私に離婚の責任を押し付けようとまでしてくるなんて、その下劣な人間性に嫌悪感が増すばかりだった。
こうなってくるともう同じ屋根の下に暮らしていることさえ苦痛でならない。マキシミリアーノ様は手を尽くしてミッチェルとポーラとの不貞の証拠を確実に集めてくださっている。
きっともう少しの辛抱だ。
(……マキシミリアーノ様……)
マキシミリアーノ様のことを考えている時だけは、心がじんわりと温かくなる。お顔を思い出すだけで胸が高鳴るのだ。
(……早くまた、お会いしたい)
そんなある日、突然ポーラが屋敷にやって来た。
不貞の証拠を揃えるまでは自然にしていなくてはと思うのだけど、やはりどうしてもポーラの屋敷からも足が遠のいてしまっている。
だってわざわざ会いに行きたいはずがないじゃない?夫の不倫相手になんて。
「最近全然会いに来てくれないじゃないアミカったら。新婚さんだから、旦那様に夢中なんでしょ?もう、寂しいわ」
「ふふ、やだポーラったら。そんなことないわよ」
あぁ、顔が引き攣るわ……。落ち着くのよ、私。
「ごめんなさいね、何かとバタバタしていて」
「ふふ、いいのよ。ねぇ、美味しいプラムのケーキをいただいたから持ってきたのよ。一緒にお茶しましょうよ、久しぶりに」
「まぁ、嬉しいわポーラ。ありがとう。じゃあ私は美味しい紅茶を入れてもらうわね」
「ふふ、ありがとうアミカ」
「ふふ」
「うふふっ」
「……。」
「…………。」
くるりとポーラに背を向けた途端、無表情に戻る私。おそらくポーラもそうだろう。
メイドに紅茶を頼んで、私はポーラと向かい合って部屋でお喋りを楽しむ、フリをする。そのうちメイドが香りの良いお茶を運んできてくれた。
そのメイドが部屋から退出するとすぐに、ポーラが話題を変えた。
「それにしても素敵なお屋敷よねぇ。ベルナップ伯爵から譲っていただいたのでしょう?」
「ええ、そうなの。気に入っているわ。調度品も素敵よね」
「いいわねぇ、ミッチェル様もお優しい方だし、順風満帆な新婚生活でしょう?」
「ええ……まぁそうね」
……これ、一体何の会話かしら。ポーラの真意を測りかねる。……夫婦生活が上手くいっているのかを確認しに来たのかしら。
「そう。じゃあミッチェル様とは相変わらず仲良しなのね。安心したわ。その様子じゃ、あなたたちの可愛い赤ちゃんに会えるのもきっとすぐね」
「……。」
…………ん?
その時、私はふと思った。
もしかしたら、ポーラはミッチェルが私にエイダンをけしかけてきたことを知っているのかしら。……いや、多分そうだ。きっと知ってる。二人で逢瀬を繰り返しながら、どうにかして早く私に何らかの落ち度を作って離婚に持ち込もうと相談しているはずだ。だけどエイダンの件は失敗した。
待っている身のポーラからすれば、焦燥感を覚えてもおかしくはない。もしかしたら、ミッチェルの気持ちに対して不安を抱いたりもしているのかもしれないわ。
ポーラはわりと気が短くてヒステリックな一面がある。今回の失敗が原因でミッチェルとの間で喧嘩になったのかもしれない……。
(……うーん……)
本当は意地悪したいところだ。この子にされている裏切りを思えば、そうなのぉ~、もう毎晩寝かせてもらえないのよ~うふふ、ぐらい言っても罰は当たらないだろう。
だけどここでポーラを刺激し過ぎて二人が今さら不仲になったら、困るのは私だ。こっちはすっかりミッチェルに愛想を尽かしているんだから、今となってはむしろポーラにあの男を貰ってもらわなくてはならない。ここで破局されたら簡単には離婚できないもの。
数秒のうちにいろいろと頭を巡らせた私は、報復してやりたい私情をグッと我慢してポーラを刺激しない方向でいこうと決めた。
ポーラとの不貞を知って以来もちろん愛はすっかり冷めてしまっていたのだけれど、まさか仲間を使って自分の妻を手篭めにさせようとし、私に離婚の責任を押し付けようとまでしてくるなんて、その下劣な人間性に嫌悪感が増すばかりだった。
こうなってくるともう同じ屋根の下に暮らしていることさえ苦痛でならない。マキシミリアーノ様は手を尽くしてミッチェルとポーラとの不貞の証拠を確実に集めてくださっている。
きっともう少しの辛抱だ。
(……マキシミリアーノ様……)
マキシミリアーノ様のことを考えている時だけは、心がじんわりと温かくなる。お顔を思い出すだけで胸が高鳴るのだ。
(……早くまた、お会いしたい)
そんなある日、突然ポーラが屋敷にやって来た。
不貞の証拠を揃えるまでは自然にしていなくてはと思うのだけど、やはりどうしてもポーラの屋敷からも足が遠のいてしまっている。
だってわざわざ会いに行きたいはずがないじゃない?夫の不倫相手になんて。
「最近全然会いに来てくれないじゃないアミカったら。新婚さんだから、旦那様に夢中なんでしょ?もう、寂しいわ」
「ふふ、やだポーラったら。そんなことないわよ」
あぁ、顔が引き攣るわ……。落ち着くのよ、私。
「ごめんなさいね、何かとバタバタしていて」
「ふふ、いいのよ。ねぇ、美味しいプラムのケーキをいただいたから持ってきたのよ。一緒にお茶しましょうよ、久しぶりに」
「まぁ、嬉しいわポーラ。ありがとう。じゃあ私は美味しい紅茶を入れてもらうわね」
「ふふ、ありがとうアミカ」
「ふふ」
「うふふっ」
「……。」
「…………。」
くるりとポーラに背を向けた途端、無表情に戻る私。おそらくポーラもそうだろう。
メイドに紅茶を頼んで、私はポーラと向かい合って部屋でお喋りを楽しむ、フリをする。そのうちメイドが香りの良いお茶を運んできてくれた。
そのメイドが部屋から退出するとすぐに、ポーラが話題を変えた。
「それにしても素敵なお屋敷よねぇ。ベルナップ伯爵から譲っていただいたのでしょう?」
「ええ、そうなの。気に入っているわ。調度品も素敵よね」
「いいわねぇ、ミッチェル様もお優しい方だし、順風満帆な新婚生活でしょう?」
「ええ……まぁそうね」
……これ、一体何の会話かしら。ポーラの真意を測りかねる。……夫婦生活が上手くいっているのかを確認しに来たのかしら。
「そう。じゃあミッチェル様とは相変わらず仲良しなのね。安心したわ。その様子じゃ、あなたたちの可愛い赤ちゃんに会えるのもきっとすぐね」
「……。」
…………ん?
その時、私はふと思った。
もしかしたら、ポーラはミッチェルが私にエイダンをけしかけてきたことを知っているのかしら。……いや、多分そうだ。きっと知ってる。二人で逢瀬を繰り返しながら、どうにかして早く私に何らかの落ち度を作って離婚に持ち込もうと相談しているはずだ。だけどエイダンの件は失敗した。
待っている身のポーラからすれば、焦燥感を覚えてもおかしくはない。もしかしたら、ミッチェルの気持ちに対して不安を抱いたりもしているのかもしれないわ。
ポーラはわりと気が短くてヒステリックな一面がある。今回の失敗が原因でミッチェルとの間で喧嘩になったのかもしれない……。
(……うーん……)
本当は意地悪したいところだ。この子にされている裏切りを思えば、そうなのぉ~、もう毎晩寝かせてもらえないのよ~うふふ、ぐらい言っても罰は当たらないだろう。
だけどここでポーラを刺激し過ぎて二人が今さら不仲になったら、困るのは私だ。こっちはすっかりミッチェルに愛想を尽かしているんだから、今となってはむしろポーラにあの男を貰ってもらわなくてはならない。ここで破局されたら簡単には離婚できないもの。
数秒のうちにいろいろと頭を巡らせた私は、報復してやりたい私情をグッと我慢してポーラを刺激しない方向でいこうと決めた。
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