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漫才姉弟
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眼帯の少年の後ろから現れたのは、少年と同じ暗青色の髪を頭の後ろで櫛と棒で結い上げた、銀色の瞳をした少女だ。服装がこちらも着物なので、同じ国から来たのだろう。ただし、こちらの着物は藍色で、足下までと長い。帯は黄色で華やかだ。足には先が二股になっている白い靴下と、サンダル? を履いている。これは少年たちもそうだ。
「何をするんだ姉上! 俺様は貸し切りなんて舐めた真似した奴に一言物申そうと…」
これに対して少女はパシンと、先程と同じ、厚紙を山折り谷折りした物で少年を叩く。こちらの少女は眼帯の少年の姉上であるようだ。
「ここは王室御用達なのよ!? そんな店を貸し借りに出来るって事は、相応の格があるって事くらい察しなさいよ!」
そう口にした少女が謝ろうとしてか、こちらへ視線を向け、インシグニア嬢を目にするなり、
「ひいいいいい!!」
と金切り声のような悲鳴を上げる。その余りの煩さに、思わず両手で耳を塞いでしまった程だ。全員の視線がどうしてもその少女に集まる。眼帯の少年も、姉上の予想外の行動に固まっている。
「も、もももも……、申し訳ありません!」
少女が少年の頭をガシッと掴むなり、強引にその頭を下げさせつつ自分も頭を下げる。
「だ、第二王子殿下の婚約者様がいらっしゃるとは露知らず、図らずも愚弟の傍若無人な振る舞いを許してしまい、とんだご無礼を!」
どうやら少女の方はインシグニア嬢の事を知っているようだ。平謝りとはこの事を言わんとばかりに何度も弟の少年の頭を下げさせている。
インシグニア嬢の方へ視線を向けると、どうすれば良いか分からず、未だに俺の服の袖を掴んだままだ。策を練る事は得意だが、突発的な事態には弱いらしい。まあ、俺もこのままではいけないと思い出し、異国の二人に声を掛ける。
「頭をお上げください。ニドゥーク皇国の将軍家のご子息ご令嬢に頭を下げさせたなど噂になれば、こちらも外聞が悪いですから」
俺の発言に、俺たちを守護するように展開していた俺の派閥がびっくりしたようにこちらを振り向く。それに俺は肩を竦める。インシグニア嬢や二人の侍女はそれに対して、何も言ってこないので、少なくとも少女の方がニドゥーク皇国の将軍家の人間である事は分かっていたのだろう。
「そう言って頂けると、国同士の要らぬ衝突を避けられて、こちらもありがたく……、あれ?」
頭を上げた少女は、インシグニア嬢の隣りに座るのが、グロブス殿下でない事に首を傾げ、次に顔面蒼白となって冷や汗を流し始める。
「あの、こちらのインシグニア嬢とグロブス殿下の婚約は既に解消されておりますから、お嬢さんの考えられているような、見てはいけない場面ではないですから」
俺がそう伝えると、心底ホッとしたような顔になる少女。この少女も心労が絶えなそうだ。
「何だよ、王子の婚約者じゃねえじゃねえか」
頭下げて損した。と言った顔になった眼帯の少年の後頭部を、あの厚紙で叩く少女。
「お馬鹿! 王子殿下の婚約者じゃなくなってもね、あの方はこの国の四大貴族の一角、グリフォンデン家のご令嬢なのよ!」
「更に言えば、次期領主ですね」
俺が付け加えれば、また少女は顔を青くして百面相となる。女性にさせる顔ではないな。やり過ぎたようだ。眼帯の少年はキョトンとしているが。
「君が乗ってきた魔導船や、列車を製造している領地の領主貴族だ。って言った方が早いかな?」
ここに来て漸く少年も事態が飲み込めたらしく、
「それは……、済まなかった」
と自発的に頭を下げた。ニドゥーク皇国では、将軍家の者でも悪いと思えば素直に頭を下げるようだ。うちの父上にも見習わせたい美徳だ。
✕✕✕✕✕
「いやあ、悪いな。同席させて貰って」
「いやいや、先程も言いましたが、たまたま空いた時間を使わせて頂いただけで、別にここを占領したかった訳ではないので」
現在、俺とインシグニア嬢の席に、ニドゥーク皇国の将軍家の少年と少女が加わった。彼らの連れは俺の派閥の者たちと席を同じくしている。
「済みません、弟はチョコレートに目がなくて。まさかここまでの凶行に及ぶとは」
先程から少女は謝ってばかりだ。しかしこれでは話が進まない。
「まあまあ、それは不幸なすれ違いと言う事で。ここに|集(つど》ったのも何かの縁。皆で美味しいチョコ菓子を堪能しましょう。そう言う訳で、恐らくこの場で一番、「お前誰だよ?」となっている私から自己紹介を。私はフェイルーラ・ヴァストドラゴン。この度、彼女、インシグニア・グリフォンデン嬢の婚約者となった半端者です」
「ヴァストドラゴン家の!?」
俺の家名にまた百面相になる少女。元々こんな性格なのかも知れない。
「ドラゴンねえ? 家名だけは強そうだな」
弟の要らぬ一言にまた厚紙で叩く少女。これがニドゥーク皇国の躾なのだろうか?
「ヴァストドラゴン家も、グリフォンデン家と並ぶ四大貴族よ! あんた、この国に来るのに、何を勉強して来たのよ!」
「ああ、思い出した。アダマンティアに負けた国の奴か」
また叩かれた。気持ちは分からんではないが、正直過ぎるかな? ニドゥーク皇国もかつてアダマンティア王国と何度か戦争を繰り返してきた歴史があるが、征服される事なく、自国領土を今尚守り続けている島国だ。アダマンティアの南に位置し、更に南に南大陸がある。因みにチョコレートはその南大陸からニドゥーク皇国を経由してアダマンティアに来るので、この国では高級品だ。
「日道国将軍、海神宗矩家康が第八子、海神十兵衛吉宗! いずれ最強になる漢だ!」
後頭部を叩かれた少年が、頭を擦りながら名乗りを上げた。格好は付いていないが。ニドゥーク皇国は確か、皇室である天照家と、宰相である月読家、そして将軍である海神家が血縁関係にあり、この三家によって興された国だったはず。その歴史はアダマンティア王国よりも古く、神代の時代より、三家の祖となる神々が降臨して国になったとか何とか。
「いやあ、しかしニドゥーク皇国とは、遠路遥々……」
「日道国だ」
…………。
「ニッドゥーク?」
「日道国!」
ジュウベエヨシムネ君は国名に誇りがあるらしい。
「にち!」
「ニッチ?」
「どう!」
「ドゥー?」
「こく!」
「クック?」
頭を抱えられてしまった。
「諦めなさい。南大陸の人たちからも、日道国と呼ばれていないでしょう?」
ジュウベエヨシムネ君の姉上である少女が嘆息を漏らす。何だか申し訳ない。
「出来る限り、正確な発音が出来るように頑張ります」
俺がそう口にすると、少女は手を振って、曖昧な笑顔を返す。
「そんなに気にしなくて良いですよ。国内でも、日道派と日道派がいますから」
「はあ?」
国内でも国名にブレがあるのか。面白いな。
「あ、私もまだ名乗っていませんでしたね。私は家康が第六子、海神・グレース・|円(まどか》です」
「グレースマドカ嬢ですね」
「グレースがミドルネームで、円がファーストネームですね。寮の皆はマドカと呼んでいます」
「ああ、そう言う」
長い名前だと思ったら、ミドルネームが挟まっていたのか。
「ではジュウベエヨシムネ君も?」
「俺様の事はジュウベエと呼べ!」
こちらはミドルネームで呼んで欲しいのか? マドカ嬢へ視線を向けると、呆れた顔をしている。本当に百面相をする少女だ。
「ニドゥークにかつていた高名な剣豪の名前なんです。それを名乗っているだけなので」
「俺様は十兵衛様を超える!」
う~ん……。まあ、将軍家の子なのだし、魔力量も多いだろうし、頑張れ、としか言えんが。
そしてそれぞれが名を名乗ったところで、テーブル内の視線がインシグニア嬢に向けられる。
「……インシグニア・グリフォンデンです」
「…………」
「…………」
「それだけかよ!」
また厚紙で叩かれた。懲りないな。
「分かっているの? インシグニア様は、この王都で『歌姫』と讃えられ、王侯貴族だけでなく、一般市民たちからも敬愛される方なのよ! その歌声は天上からの賜物と称され、それをインシグニア様は皆に分け与えてくださる、慈悲深いお方なの!」
インシグニア嬢の歌が天上よりの賜物なのは同意だが、それを皆に分け与えていた?
「済みません、私は昨日王都に着いたばかりで、王都の常識に疎いもので、それはどう言う意味でしょう?」
恥を忍んで尋ねると、少女は我が意を得たりとばかりに胸を張って話し始めた。
「インシグニア様は、王城でグロブス殿下の派閥だけでなく、呼ばれればどの派閥の社交場にも顔を出され、その歌声とエラトの旋律を奏でて下さったものです。たまに卒業した寮の先輩たちや、王族に近しい同輩に連れられて王城に行った時に、インシグニア様の歌が聴けた事の、何と僥倖であった事か」
恍惚な顔となるニドゥーク将軍家のマドカ嬢。その横でインシグニア嬢は恥ずかしそうにしているが、うん、分かります。そうやって派閥の垣根を越えて情報収集していたんですね。一つの派閥に席を置かず、どんな場所にも乗り込んで、音楽一本で情報収集と情報操作をしていたと思うと、今更ながら、やはりとんでもない。
「そうですか、インシグニア嬢の歌を……」
俺が逡巡すると、マドカ嬢が小首を傾げる。
「いや、インシグニア嬢はもう王子の婚約者ではなくなったので、王族の身内でもなくなりました。それでも今後もインシグニア嬢が、社交場で歌を歌う意味があるのかどうかと……」
「そ、そんな! 魔法学校の入学式や卒業式、契約召喚の儀など、重要なセレモニーには、インシグニア様の歌が不可欠でしたのに!」
悲しむマドカ嬢。ふ~ん、それはかなり重要なカードだな。
「何をするんだ姉上! 俺様は貸し切りなんて舐めた真似した奴に一言物申そうと…」
これに対して少女はパシンと、先程と同じ、厚紙を山折り谷折りした物で少年を叩く。こちらの少女は眼帯の少年の姉上であるようだ。
「ここは王室御用達なのよ!? そんな店を貸し借りに出来るって事は、相応の格があるって事くらい察しなさいよ!」
そう口にした少女が謝ろうとしてか、こちらへ視線を向け、インシグニア嬢を目にするなり、
「ひいいいいい!!」
と金切り声のような悲鳴を上げる。その余りの煩さに、思わず両手で耳を塞いでしまった程だ。全員の視線がどうしてもその少女に集まる。眼帯の少年も、姉上の予想外の行動に固まっている。
「も、もももも……、申し訳ありません!」
少女が少年の頭をガシッと掴むなり、強引にその頭を下げさせつつ自分も頭を下げる。
「だ、第二王子殿下の婚約者様がいらっしゃるとは露知らず、図らずも愚弟の傍若無人な振る舞いを許してしまい、とんだご無礼を!」
どうやら少女の方はインシグニア嬢の事を知っているようだ。平謝りとはこの事を言わんとばかりに何度も弟の少年の頭を下げさせている。
インシグニア嬢の方へ視線を向けると、どうすれば良いか分からず、未だに俺の服の袖を掴んだままだ。策を練る事は得意だが、突発的な事態には弱いらしい。まあ、俺もこのままではいけないと思い出し、異国の二人に声を掛ける。
「頭をお上げください。ニドゥーク皇国の将軍家のご子息ご令嬢に頭を下げさせたなど噂になれば、こちらも外聞が悪いですから」
俺の発言に、俺たちを守護するように展開していた俺の派閥がびっくりしたようにこちらを振り向く。それに俺は肩を竦める。インシグニア嬢や二人の侍女はそれに対して、何も言ってこないので、少なくとも少女の方がニドゥーク皇国の将軍家の人間である事は分かっていたのだろう。
「そう言って頂けると、国同士の要らぬ衝突を避けられて、こちらもありがたく……、あれ?」
頭を上げた少女は、インシグニア嬢の隣りに座るのが、グロブス殿下でない事に首を傾げ、次に顔面蒼白となって冷や汗を流し始める。
「あの、こちらのインシグニア嬢とグロブス殿下の婚約は既に解消されておりますから、お嬢さんの考えられているような、見てはいけない場面ではないですから」
俺がそう伝えると、心底ホッとしたような顔になる少女。この少女も心労が絶えなそうだ。
「何だよ、王子の婚約者じゃねえじゃねえか」
頭下げて損した。と言った顔になった眼帯の少年の後頭部を、あの厚紙で叩く少女。
「お馬鹿! 王子殿下の婚約者じゃなくなってもね、あの方はこの国の四大貴族の一角、グリフォンデン家のご令嬢なのよ!」
「更に言えば、次期領主ですね」
俺が付け加えれば、また少女は顔を青くして百面相となる。女性にさせる顔ではないな。やり過ぎたようだ。眼帯の少年はキョトンとしているが。
「君が乗ってきた魔導船や、列車を製造している領地の領主貴族だ。って言った方が早いかな?」
ここに来て漸く少年も事態が飲み込めたらしく、
「それは……、済まなかった」
と自発的に頭を下げた。ニドゥーク皇国では、将軍家の者でも悪いと思えば素直に頭を下げるようだ。うちの父上にも見習わせたい美徳だ。
✕✕✕✕✕
「いやあ、悪いな。同席させて貰って」
「いやいや、先程も言いましたが、たまたま空いた時間を使わせて頂いただけで、別にここを占領したかった訳ではないので」
現在、俺とインシグニア嬢の席に、ニドゥーク皇国の将軍家の少年と少女が加わった。彼らの連れは俺の派閥の者たちと席を同じくしている。
「済みません、弟はチョコレートに目がなくて。まさかここまでの凶行に及ぶとは」
先程から少女は謝ってばかりだ。しかしこれでは話が進まない。
「まあまあ、それは不幸なすれ違いと言う事で。ここに|集(つど》ったのも何かの縁。皆で美味しいチョコ菓子を堪能しましょう。そう言う訳で、恐らくこの場で一番、「お前誰だよ?」となっている私から自己紹介を。私はフェイルーラ・ヴァストドラゴン。この度、彼女、インシグニア・グリフォンデン嬢の婚約者となった半端者です」
「ヴァストドラゴン家の!?」
俺の家名にまた百面相になる少女。元々こんな性格なのかも知れない。
「ドラゴンねえ? 家名だけは強そうだな」
弟の要らぬ一言にまた厚紙で叩く少女。これがニドゥーク皇国の躾なのだろうか?
「ヴァストドラゴン家も、グリフォンデン家と並ぶ四大貴族よ! あんた、この国に来るのに、何を勉強して来たのよ!」
「ああ、思い出した。アダマンティアに負けた国の奴か」
また叩かれた。気持ちは分からんではないが、正直過ぎるかな? ニドゥーク皇国もかつてアダマンティア王国と何度か戦争を繰り返してきた歴史があるが、征服される事なく、自国領土を今尚守り続けている島国だ。アダマンティアの南に位置し、更に南に南大陸がある。因みにチョコレートはその南大陸からニドゥーク皇国を経由してアダマンティアに来るので、この国では高級品だ。
「日道国将軍、海神宗矩家康が第八子、海神十兵衛吉宗! いずれ最強になる漢だ!」
後頭部を叩かれた少年が、頭を擦りながら名乗りを上げた。格好は付いていないが。ニドゥーク皇国は確か、皇室である天照家と、宰相である月読家、そして将軍である海神家が血縁関係にあり、この三家によって興された国だったはず。その歴史はアダマンティア王国よりも古く、神代の時代より、三家の祖となる神々が降臨して国になったとか何とか。
「いやあ、しかしニドゥーク皇国とは、遠路遥々……」
「日道国だ」
…………。
「ニッドゥーク?」
「日道国!」
ジュウベエヨシムネ君は国名に誇りがあるらしい。
「にち!」
「ニッチ?」
「どう!」
「ドゥー?」
「こく!」
「クック?」
頭を抱えられてしまった。
「諦めなさい。南大陸の人たちからも、日道国と呼ばれていないでしょう?」
ジュウベエヨシムネ君の姉上である少女が嘆息を漏らす。何だか申し訳ない。
「出来る限り、正確な発音が出来るように頑張ります」
俺がそう口にすると、少女は手を振って、曖昧な笑顔を返す。
「そんなに気にしなくて良いですよ。国内でも、日道派と日道派がいますから」
「はあ?」
国内でも国名にブレがあるのか。面白いな。
「あ、私もまだ名乗っていませんでしたね。私は家康が第六子、海神・グレース・|円(まどか》です」
「グレースマドカ嬢ですね」
「グレースがミドルネームで、円がファーストネームですね。寮の皆はマドカと呼んでいます」
「ああ、そう言う」
長い名前だと思ったら、ミドルネームが挟まっていたのか。
「ではジュウベエヨシムネ君も?」
「俺様の事はジュウベエと呼べ!」
こちらはミドルネームで呼んで欲しいのか? マドカ嬢へ視線を向けると、呆れた顔をしている。本当に百面相をする少女だ。
「ニドゥークにかつていた高名な剣豪の名前なんです。それを名乗っているだけなので」
「俺様は十兵衛様を超える!」
う~ん……。まあ、将軍家の子なのだし、魔力量も多いだろうし、頑張れ、としか言えんが。
そしてそれぞれが名を名乗ったところで、テーブル内の視線がインシグニア嬢に向けられる。
「……インシグニア・グリフォンデンです」
「…………」
「…………」
「それだけかよ!」
また厚紙で叩かれた。懲りないな。
「分かっているの? インシグニア様は、この王都で『歌姫』と讃えられ、王侯貴族だけでなく、一般市民たちからも敬愛される方なのよ! その歌声は天上からの賜物と称され、それをインシグニア様は皆に分け与えてくださる、慈悲深いお方なの!」
インシグニア嬢の歌が天上よりの賜物なのは同意だが、それを皆に分け与えていた?
「済みません、私は昨日王都に着いたばかりで、王都の常識に疎いもので、それはどう言う意味でしょう?」
恥を忍んで尋ねると、少女は我が意を得たりとばかりに胸を張って話し始めた。
「インシグニア様は、王城でグロブス殿下の派閥だけでなく、呼ばれればどの派閥の社交場にも顔を出され、その歌声とエラトの旋律を奏でて下さったものです。たまに卒業した寮の先輩たちや、王族に近しい同輩に連れられて王城に行った時に、インシグニア様の歌が聴けた事の、何と僥倖であった事か」
恍惚な顔となるニドゥーク将軍家のマドカ嬢。その横でインシグニア嬢は恥ずかしそうにしているが、うん、分かります。そうやって派閥の垣根を越えて情報収集していたんですね。一つの派閥に席を置かず、どんな場所にも乗り込んで、音楽一本で情報収集と情報操作をしていたと思うと、今更ながら、やはりとんでもない。
「そうですか、インシグニア嬢の歌を……」
俺が逡巡すると、マドカ嬢が小首を傾げる。
「いや、インシグニア嬢はもう王子の婚約者ではなくなったので、王族の身内でもなくなりました。それでも今後もインシグニア嬢が、社交場で歌を歌う意味があるのかどうかと……」
「そ、そんな! 魔法学校の入学式や卒業式、契約召喚の儀など、重要なセレモニーには、インシグニア様の歌が不可欠でしたのに!」
悲しむマドカ嬢。ふ~ん、それはかなり重要なカードだな。
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