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アルカイックスマイル
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「インシグニア嬢が入学式で歌奏をするのは決定事項だ! それを覆せる訳ないだろう! 頭おかしいんじゃないか!? それとも魔力量が少ないと、そんな事も理解出来ないのか!?」
小柄な男性が喚く後ろで、セガン陛下はジッとこちらを見ている。それにしても、一応俺も四大貴族ヴァストドラゴン家の一人なんだけどな。王都だと、魔力量が少ないと、それも関係なく下に見られるのかな?
そして何か俺の横のインシグニア嬢から、ちょーっとセガン陛下側へ向けてはいけない魔力が漏れ出ているんだけど? 小柄な男性は、それが自分に向けられている事を理解出来ていないのかな?
「おい! 何とか言ってみろ! 貴様は今、『王命』を破棄しろとほざいたんだぞ!」
「破棄しろと命じているのではなく、棄却して欲しいと要望を出しているのです。それと、何故、貴方が喚いているのですか? 私はセガン陛下へ上奏したのですが?」
「んな!? 貴様如きが陛下と直接話せるとでも思っているのか! 陛下の言葉は全て王の言葉と同義! 四大貴族の子息であろうと、軽々しく話し掛ける事など出来ん!」
「先程会話を交わしましたが?」
おお、おお、正しく悪魔の如き形相で俺を睨んでくるな。放つ魔力に殺気が込められているが、王城で、しかも王配の前でその態度はどうなんだ? 確かに四大貴族と言っても初めて王都に来た田舎者だ。これが王城の、王配のやり方なのかも知れない。いや、インシグニア嬢からも殺気が放たれて周囲が困惑している。気付いていないのは小柄な男性だけだ。
「……貴様!」
「少し、黙ってくれるかい?」
そんな一触即発な状況でも、セガン陛下の声は良く通る。不思議と場を宥める声質をしている。
「そうだ! 黙れ!」
「君に言っているんだよ?」
小柄な男性が、セガン陛下に乗っかるように声を張れば、それを咎めるようにセガン陛下が口を開いた。これに驚き、セガン陛下を振り返る小柄な男性。それに対してにこりと笑顔を返すセガン陛下。これに小柄な男性は、冷や汗をだらだら垂らして押し黙る。
「済まなかったね、フェイルーラ君」
その言葉に、俺の心臓がビクンと跳ねた。いや、俺だけじゃない。横のインシグニア嬢も、他の、ここにいる全員が、驚き固まる。このアダマンティア王国の頂点の一人、王配が謝罪したのだ。あり得ない事態に、頭が真っ白になる。
「彼は僕の側近になってまだ日が浅くてね。自分の領分と言うものを理解出来ていなかったようだ。上司として、不快な思いをさせた事、謝罪させてくれ」
この方は、王配として、その権能がどれ程のものか理解している人だ。社交場で話さないのも、それが理由だろうとは何となく勘付いていたけれど、それがガイシア女王による采配なのか、セガン陛下自らなのか、判断出来ずにここまで来たが、これは後者だな。が、これで俺の頭も冴えてきた。
「セガン陛下の謝罪ですが、それは私への謝罪ですよね? その謝罪でしたら、私は気に致しません。私がお声掛けしたのは、あくまでセガン陛下であり、その側近の方ではありませんから」
これに視線を上に向けるセガン陛下。周囲は俺が謝罪を受け入れなかった事に、更に驚いているが。
「ふむ。そうだったね。それで、フェイルーラ君の願いは、インシグニア嬢をセレモニーに出演させないで欲しい。で合っているのかな?」
「はい」
「ふむ。それは優しさなのか、合理性なのか」
独り言のように呟くが、俺が聞き取れる大きさで口にしている。駆け引きが上手いなあ。そして、こう言う駆け引きなら嫌いじゃない。
「両方と言いたいところですが、四対六か三対七か、まだインシグニア嬢と出会って三日目ですので、どうしても、合理性が先立ちますが、その根幹は、インシグニア嬢の歌奏に惚れ込んでの私の感情かと」
「ふふ。君もインシグニア嬢の歌奏に魅入られてしまった一人と言う事か」
「魅入らました。そして、可哀想な方だと思いました」
「…………」
これには反応しなかったか。これはインシグニア嬢の歌奏が、情報収集も兼ねている事に勘付いているかな。
「今回上奏させて頂く為、参上しましたのは、人の身体と言うものは、とても壊れ易いと言う事をご理解して頂きたかったからです」
「成程。確かにね。僕もそんなに身体が丈夫な方じゃないから、壊れ易いと言う意見には賛同出来るかな」
「ありがとうございます。セガン陛下も、王立魔法学校のご出身かと存じます」
「そうだね」
「では、貴族に音楽の授業が必修なのはご承知の通りかと」
「そうだね」
「では、お聞きしますが、音楽の時間だけで、陛下は曲を奏でられるようになられましたか?」
俺の質問に、目をまん丸にした後、口元を袖で押さえて笑うセガン陛下。んん? 何か変な質問したかな?
「ああ、ごめんね。僕は音楽を聴くのは好きなんだけど、僕自身は音痴でね。音楽の授業は、いつも赤点ギリギリだったんだ」
「そ、それは失礼致しました!」
「構わないよ。昔の話だし。ああ、でも君が危惧している事が分かったよ。王国のセレモニーに、教会のセレモニー、それに学校の授業まで加わったら、確かに他の事に時間が割けないね」
うんうん。とセガン陛下は頷く。
「はい。今回の騒動で、インシグニア嬢はグリフォンデン領の次期領主となられる事が決定しました。次期領主が、音楽のみだけに特化し、日々音楽を奏でるだけで領地運営がお粗末では、他領の貴族から笑い者になってしまいます。それは避けなければなりません」
「そうだね」
「ですので、グリフォンデン領次期領主となられるインシグニア嬢の為、今後のセレモニーへの出演を白紙にして頂きたく、参った次第です」
これに頷いたセガン陛下だったが、すぐにその首を傾げる。
「それで、担当者はどうして君たちを会議室に置き去りにして、出て行ってしまったんだい?」
ああ、そこが引っ掛かったのか。
「ここはまず最初に主導権を握ろうと、あれやこれや口にして、インシグニア嬢の入学式での歌奏をお断りしたのです。で口では私に勝てないと判断したらしく、多分今頃、陛下を探して王城内を右往左往しているかと」
「へえ。参考までに、どのように凹ませたのか、聞いても?」
俺の話を聞いて、いたずらっぽく笑うセガン陛下。ふむ。年齢不詳で整った顔。そんな方がこう言う顔をするととても魅力的だな。俺には出来ん芸当だ。
「まず、王国憲法第三条の特記事項を持ち出しました」
「まずそこからなの?」
これに目を見開くセガン陛下。第三条特記事項は、ここから察するに、ほぼ機能していないのだろう。それはガイシア陛下がちゃんと国務に勤しんでいる証左だ。
「はい。それから、そもそもインシグニア嬢の入学式での歌奏が公文書として残されているのか追及しました」
「そっちが先だと思ったけど……」
「そのご様子だと、やはり公文書は存在せず、セガン陛下の願望から、入学式でインシグニア嬢に歌奏して欲しいと、どこかで漏らした形ですか?」
これに困った顔となるセガン陛下。
「うん。ガイシアとインシグニア嬢の歌奏を聴いた時にね。入学式が近い時期で、これが入学式で聴けたらなあって。それが形骸化してしまったんだよ」
やっぱりか。
「それでは……」
「うん。僕からガイシアに口添えす……」
「いた!!」
俺がセガン陛下とあれこれと話し合いをしていると、後ろから大声を掛けられ、思わず振り返ると、先程の王城担当者がこちらを指差している。王配に対して指を差すのはどうかと思うが?
「ガイシア陛下がお呼びだ! 全員、謁見の間まで来て貰う!」
大声出しながらふんぞり返る担当者。んん? もしかして、セガン陛下がここにいるって気付いてない?
「おい! どうした! さっさとしろ!」
「そんなに大声出さなくても、聞こえているよ」
優しく諭すようにセガン陛下が窘めると、キッとそちらに厳しい視線を向け、それがセガン陛下だと気付いたのか、真っ青になって膝を突く担当者。こりゃあ、良くて配置換えかな? 悪ければクビだろう。
「はあ。ガイシア案件になってしまったか。どうする?」
言っていたずらっぽく笑うセガン陛下。この状況楽しんでます? はあ。
「やれるところまでやります。女王案件になるのは覚悟のうえで来ましたから」
「ふふ。なら僕は特等席で見物させて貰おうかな」
楽しんで貰えるものになれば良いですけど。
小柄な男性が喚く後ろで、セガン陛下はジッとこちらを見ている。それにしても、一応俺も四大貴族ヴァストドラゴン家の一人なんだけどな。王都だと、魔力量が少ないと、それも関係なく下に見られるのかな?
そして何か俺の横のインシグニア嬢から、ちょーっとセガン陛下側へ向けてはいけない魔力が漏れ出ているんだけど? 小柄な男性は、それが自分に向けられている事を理解出来ていないのかな?
「おい! 何とか言ってみろ! 貴様は今、『王命』を破棄しろとほざいたんだぞ!」
「破棄しろと命じているのではなく、棄却して欲しいと要望を出しているのです。それと、何故、貴方が喚いているのですか? 私はセガン陛下へ上奏したのですが?」
「んな!? 貴様如きが陛下と直接話せるとでも思っているのか! 陛下の言葉は全て王の言葉と同義! 四大貴族の子息であろうと、軽々しく話し掛ける事など出来ん!」
「先程会話を交わしましたが?」
おお、おお、正しく悪魔の如き形相で俺を睨んでくるな。放つ魔力に殺気が込められているが、王城で、しかも王配の前でその態度はどうなんだ? 確かに四大貴族と言っても初めて王都に来た田舎者だ。これが王城の、王配のやり方なのかも知れない。いや、インシグニア嬢からも殺気が放たれて周囲が困惑している。気付いていないのは小柄な男性だけだ。
「……貴様!」
「少し、黙ってくれるかい?」
そんな一触即発な状況でも、セガン陛下の声は良く通る。不思議と場を宥める声質をしている。
「そうだ! 黙れ!」
「君に言っているんだよ?」
小柄な男性が、セガン陛下に乗っかるように声を張れば、それを咎めるようにセガン陛下が口を開いた。これに驚き、セガン陛下を振り返る小柄な男性。それに対してにこりと笑顔を返すセガン陛下。これに小柄な男性は、冷や汗をだらだら垂らして押し黙る。
「済まなかったね、フェイルーラ君」
その言葉に、俺の心臓がビクンと跳ねた。いや、俺だけじゃない。横のインシグニア嬢も、他の、ここにいる全員が、驚き固まる。このアダマンティア王国の頂点の一人、王配が謝罪したのだ。あり得ない事態に、頭が真っ白になる。
「彼は僕の側近になってまだ日が浅くてね。自分の領分と言うものを理解出来ていなかったようだ。上司として、不快な思いをさせた事、謝罪させてくれ」
この方は、王配として、その権能がどれ程のものか理解している人だ。社交場で話さないのも、それが理由だろうとは何となく勘付いていたけれど、それがガイシア女王による采配なのか、セガン陛下自らなのか、判断出来ずにここまで来たが、これは後者だな。が、これで俺の頭も冴えてきた。
「セガン陛下の謝罪ですが、それは私への謝罪ですよね? その謝罪でしたら、私は気に致しません。私がお声掛けしたのは、あくまでセガン陛下であり、その側近の方ではありませんから」
これに視線を上に向けるセガン陛下。周囲は俺が謝罪を受け入れなかった事に、更に驚いているが。
「ふむ。そうだったね。それで、フェイルーラ君の願いは、インシグニア嬢をセレモニーに出演させないで欲しい。で合っているのかな?」
「はい」
「ふむ。それは優しさなのか、合理性なのか」
独り言のように呟くが、俺が聞き取れる大きさで口にしている。駆け引きが上手いなあ。そして、こう言う駆け引きなら嫌いじゃない。
「両方と言いたいところですが、四対六か三対七か、まだインシグニア嬢と出会って三日目ですので、どうしても、合理性が先立ちますが、その根幹は、インシグニア嬢の歌奏に惚れ込んでの私の感情かと」
「ふふ。君もインシグニア嬢の歌奏に魅入られてしまった一人と言う事か」
「魅入らました。そして、可哀想な方だと思いました」
「…………」
これには反応しなかったか。これはインシグニア嬢の歌奏が、情報収集も兼ねている事に勘付いているかな。
「今回上奏させて頂く為、参上しましたのは、人の身体と言うものは、とても壊れ易いと言う事をご理解して頂きたかったからです」
「成程。確かにね。僕もそんなに身体が丈夫な方じゃないから、壊れ易いと言う意見には賛同出来るかな」
「ありがとうございます。セガン陛下も、王立魔法学校のご出身かと存じます」
「そうだね」
「では、貴族に音楽の授業が必修なのはご承知の通りかと」
「そうだね」
「では、お聞きしますが、音楽の時間だけで、陛下は曲を奏でられるようになられましたか?」
俺の質問に、目をまん丸にした後、口元を袖で押さえて笑うセガン陛下。んん? 何か変な質問したかな?
「ああ、ごめんね。僕は音楽を聴くのは好きなんだけど、僕自身は音痴でね。音楽の授業は、いつも赤点ギリギリだったんだ」
「そ、それは失礼致しました!」
「構わないよ。昔の話だし。ああ、でも君が危惧している事が分かったよ。王国のセレモニーに、教会のセレモニー、それに学校の授業まで加わったら、確かに他の事に時間が割けないね」
うんうん。とセガン陛下は頷く。
「はい。今回の騒動で、インシグニア嬢はグリフォンデン領の次期領主となられる事が決定しました。次期領主が、音楽のみだけに特化し、日々音楽を奏でるだけで領地運営がお粗末では、他領の貴族から笑い者になってしまいます。それは避けなければなりません」
「そうだね」
「ですので、グリフォンデン領次期領主となられるインシグニア嬢の為、今後のセレモニーへの出演を白紙にして頂きたく、参った次第です」
これに頷いたセガン陛下だったが、すぐにその首を傾げる。
「それで、担当者はどうして君たちを会議室に置き去りにして、出て行ってしまったんだい?」
ああ、そこが引っ掛かったのか。
「ここはまず最初に主導権を握ろうと、あれやこれや口にして、インシグニア嬢の入学式での歌奏をお断りしたのです。で口では私に勝てないと判断したらしく、多分今頃、陛下を探して王城内を右往左往しているかと」
「へえ。参考までに、どのように凹ませたのか、聞いても?」
俺の話を聞いて、いたずらっぽく笑うセガン陛下。ふむ。年齢不詳で整った顔。そんな方がこう言う顔をするととても魅力的だな。俺には出来ん芸当だ。
「まず、王国憲法第三条の特記事項を持ち出しました」
「まずそこからなの?」
これに目を見開くセガン陛下。第三条特記事項は、ここから察するに、ほぼ機能していないのだろう。それはガイシア陛下がちゃんと国務に勤しんでいる証左だ。
「はい。それから、そもそもインシグニア嬢の入学式での歌奏が公文書として残されているのか追及しました」
「そっちが先だと思ったけど……」
「そのご様子だと、やはり公文書は存在せず、セガン陛下の願望から、入学式でインシグニア嬢に歌奏して欲しいと、どこかで漏らした形ですか?」
これに困った顔となるセガン陛下。
「うん。ガイシアとインシグニア嬢の歌奏を聴いた時にね。入学式が近い時期で、これが入学式で聴けたらなあって。それが形骸化してしまったんだよ」
やっぱりか。
「それでは……」
「うん。僕からガイシアに口添えす……」
「いた!!」
俺がセガン陛下とあれこれと話し合いをしていると、後ろから大声を掛けられ、思わず振り返ると、先程の王城担当者がこちらを指差している。王配に対して指を差すのはどうかと思うが?
「ガイシア陛下がお呼びだ! 全員、謁見の間まで来て貰う!」
大声出しながらふんぞり返る担当者。んん? もしかして、セガン陛下がここにいるって気付いてない?
「おい! どうした! さっさとしろ!」
「そんなに大声出さなくても、聞こえているよ」
優しく諭すようにセガン陛下が窘めると、キッとそちらに厳しい視線を向け、それがセガン陛下だと気付いたのか、真っ青になって膝を突く担当者。こりゃあ、良くて配置換えかな? 悪ければクビだろう。
「はあ。ガイシア案件になってしまったか。どうする?」
言っていたずらっぽく笑うセガン陛下。この状況楽しんでます? はあ。
「やれるところまでやります。女王案件になるのは覚悟のうえで来ましたから」
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