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「へえ。次の相手はジルッタか」
バトルフィールドに現れた緑と茶色のバイカラーの長髪を首の後ろで結んだ、濃茶色の瞳の少女に、笑顔を向けるフェイルーラ。これに左手を胸に当てて礼で返すジルッタと呼ばれた少女。彼女はフェイルーラ派閥の一人だ。
「フェイルーラ様と対戦出来る事、僥倖の至りです」
「買い被り過ぎだよ。グーシーたちの方が強いし」
フェイルーラの言葉を言質と取ったのか、ジルッタは口角を上げる。
「それはまた僥倖です」
意味が分からず首を傾げるフェイルーラ。
「派閥の女性陣でフェイルーラ様の側近となれているのは、ブルブル様だけ」
「そうだね」
「フェイルーラ様は公平な方ですから、実力でブルブル様を側近としておられるのは理解していますが、それでも、女性陣の中には不満もあるのです」
「そうだったのか。至らないボスで済まないね」
これにジルッタは首を横に振る。
「フェイルーラ様が気に掛ける事ではありません。全ては女性陣の実力が劣っているが為の責任転嫁」
「…………」
「ですので私はここで、フェイルーラ様に私の実力を示したい。と宣言させて下さい」
ジルッタの言に拳を顎に当てるフェイルーラ。
「それはつまり、この試合で俺に勝ったなら、側近に格上げして欲しい。と言う事かな?」
「はい」
ジルッタの眼は真剣だ。これに幾ばくか逡巡するフェイルーラだったが、
「一考はしよう。ただ、闘技場での闘いで、即座に側近に召し上げるのは、俺の一存では無理だな。現側近である三人の意見も聞きたいし、多分、三人から、側近になるのに相応の試練が課される事だろう」
「それで構いません。実力で認めさせてみせます」
強気に言い切るジルッタ。フェイルーラはそのやる気に満ちた眼に、己の眼を細める。
「じゃあ、始めようか。手は抜かないよ」
「それこそ望むところ。たとえこの一戦だけであろうとも、フェイルーラ様に勝てなければ、側近の資格を掴む事など出来ませんから」
宣言するジルッタは、両手のグローブの空間魔法陣から、レイピアを取り出す。レイピア二刀流である。そのレイピアも、独特の形をしていた。レイピアの特徴通り、その剣は細身であったが、ジグザグに曲がって、いや、折れているからだ。
『READY! DUEL!!』
試合開始のアナウンスが流れる。
「ジルッタ・ゲイリールート、参る!」
試合開始とともに、フェイルーラは竜の武威を放つ。それに対してジルッタは動揺する事なく、右手に握ったレイピアを突き出した。開始点からの突き。ジルッタとフェイルーラとの間は十メータは離れており、本来であれば、その突きが届くはずはない。が、ジルッタのレイピアはその距離をものともしなかった。
折れていたレイピアが、突きの勢いとともに真っ直ぐに伸びていく。伸長するレイピアの切っ先がフェイルーラへ向かうが、それでもフェイルーラまでは届かない。はずであった。
伸長するレイピアは、更にその剣身を伸ばす。レイピア自体に伸長する能力が備わっているからだ。それはまるで根を伸ばす草木のようであり、その鋭さは空を斬り裂くが如くであった。
フェイルーラはそれをサイドステップで躱しながら、左手のグローブからガンブレードを取り出す。そしてすかさず左から来るレイピアを受け止めた。右手のレイピアで突きを繰り出し、躱す方向を誘導させての左手のレイピアによる薙ぎ。
しかし武器は突きに特化したレイピアである。フェイルーラのガンブレードで断ち斬られる左手のレイピアであったが、手元に戻した左手のレイピアは、ジルッタが軽く振るうと、斬られた先が元通りになる。伸長し、再生するレイピア。それが二本。
「まだまだ行きます!!」
ジルッタは歯を食いしばり、両手のレイピアで高速の突きを連続で繰り出す。その回転速度は凄まじく、防御に回らざるを得ないフェイルーラ。
(分かっていたが、疾風と生長の魔力属性。モトナリ君とはまた違った厄介さだな)
フェイルーラは連続で繰り出されるレイピアを、ダッキングやサイドステップで躱しながら、薙ぎ、払い、そうしてレイピアを斬り落としていくが、その側から再生するレイピアに苦戦を強いられていた。
(でも)
フェイルーラは躱しつつ、魔弾を素早く入れ替えると、ジルッタに向ける訳でもなく、適当な方向にパーンッと撃ち出した。
一瞬にして真っ白に発光するバトルフィールド。モトナリ戦でも使った閃光弾だ。夜霧の中ではその威力を十全に発揮出来なかった閃光弾も、照明の下では目を潰す程に眩しく発光する。
これには目をやられて何も見えなくなるジルッタだったが、この程度で動揺する事も、戦闘意欲が削がれる事もない。
ジルッタは素早くレイピアの柄頭と柄頭をくっつけると、それは根が絡みつくように一体化し、両先に刃を持つ双刃の剣となる。これを振り回すジルッタ。
伸長する刃が、ほぼバトルフィールドの中央にいるジルッタから疾風を纏いながら伸び、バトルフィールド全体をジルッタのダブルブレードの刃が襲う。
しかし視界を潰されたジルッタでは、刃の精度は欠き、どうにか上へ下へと隙をなくすようにダブルブレードを振り回すも、相手の隙を見逃すフェイルーラではなく、双刃をスライディングで躱してジルッタに接近する。
閃光に焼かれて白くなったジルッタの視界が、何とか見えるようになったところで、フェイルーラは既にガンブレードの銃口をジルッタに向けていた。
これを一瞬の判断で仰け反り避けるジルッタ。それと同時にジルッタはダブルブレードを解除すると今度はレイピアの両刃を密着させる。それは瞬時にギュルリと回転して両刃は細いドリルのような形へと変形する。
そしてそのドリルをフェイルーラ目掛けて突き出すジルッタ。ドリルの刃は回転しながら伸長し、フェイルーラの胸目掛けて一直線に突き進む。
が、苦し紛れの一撃がフェイルーラに届くはずもなく、フェイルーラはそれを身体を左半身にして躱すと、ガンブレードを持たない左掌をジルッタ目掛け突き出す。
「がはっ!?」
次の瞬間には、ジルッタの周囲の空気は一瞬で全てフェイルーラの左手のグローブに圧縮して収納され、ゼロ気圧となった事で、ジルッタの身体は瞬間で燃えるように発熱膨張し、目鼻口から泡を吹き、そして左手に収納された圧縮空気が、ゼロ気圧に喘ぐジルッタにお見舞いされると、ジルッタに避ける術はなく、そのままバトルフィールドの場外まで吹き飛ばされたのだった。
✕✕✕✕✕
(さて、どうしよっかなあ)
インビジブル・バーストは使った。これでスフィアンへの義理は果たした。しかし現在フェイルーラは二十階であり、あと一勝で二十一階まで進める。
(毎月十二回闘わないと、位階が下がるんだっけ?)
そんなフェイルーラの思考を読み取ったポッドの画面に、勝敗に対しての説明文が表示される。
(ああ、毎月十二回闘わないといけないのはチェックメイターだけなのか。五十階以下は月一で良いんだ。でも五十階以上は月に六回闘わないといけない、と。そう言えば、賭けってどうなっているんだ?)
フェイルーラが疑問に思うと、画面に説明が表示される。どうやら五十階以上の決闘者は、事前予約が必要らしい。その予約された決闘者から賭けの対象を選ぶようだ。五十階以下は試合ごとに番号振り分け制で、誰がどの番号やどのフィールドになるかは分からない仕様らしい。五十階以下は統計よりも賭け要素が強い。
そんな説明文を読んでも、悩みが解決したとは言い難い。
(二十一階まで上がれば、母上と同じニュービーの一日達成記録に並ぶ。…………ま、ここを最低限に設定しておくか)
エスペーシに己の記録を、そしてニュービーの記録を抜かせる為、フェイルーラは『DO YOU WANT TO CONTINUE?』と言う文言に対して、『YES』と応えるのだった。
バトルフィールドに現れた緑と茶色のバイカラーの長髪を首の後ろで結んだ、濃茶色の瞳の少女に、笑顔を向けるフェイルーラ。これに左手を胸に当てて礼で返すジルッタと呼ばれた少女。彼女はフェイルーラ派閥の一人だ。
「フェイルーラ様と対戦出来る事、僥倖の至りです」
「買い被り過ぎだよ。グーシーたちの方が強いし」
フェイルーラの言葉を言質と取ったのか、ジルッタは口角を上げる。
「それはまた僥倖です」
意味が分からず首を傾げるフェイルーラ。
「派閥の女性陣でフェイルーラ様の側近となれているのは、ブルブル様だけ」
「そうだね」
「フェイルーラ様は公平な方ですから、実力でブルブル様を側近としておられるのは理解していますが、それでも、女性陣の中には不満もあるのです」
「そうだったのか。至らないボスで済まないね」
これにジルッタは首を横に振る。
「フェイルーラ様が気に掛ける事ではありません。全ては女性陣の実力が劣っているが為の責任転嫁」
「…………」
「ですので私はここで、フェイルーラ様に私の実力を示したい。と宣言させて下さい」
ジルッタの言に拳を顎に当てるフェイルーラ。
「それはつまり、この試合で俺に勝ったなら、側近に格上げして欲しい。と言う事かな?」
「はい」
ジルッタの眼は真剣だ。これに幾ばくか逡巡するフェイルーラだったが、
「一考はしよう。ただ、闘技場での闘いで、即座に側近に召し上げるのは、俺の一存では無理だな。現側近である三人の意見も聞きたいし、多分、三人から、側近になるのに相応の試練が課される事だろう」
「それで構いません。実力で認めさせてみせます」
強気に言い切るジルッタ。フェイルーラはそのやる気に満ちた眼に、己の眼を細める。
「じゃあ、始めようか。手は抜かないよ」
「それこそ望むところ。たとえこの一戦だけであろうとも、フェイルーラ様に勝てなければ、側近の資格を掴む事など出来ませんから」
宣言するジルッタは、両手のグローブの空間魔法陣から、レイピアを取り出す。レイピア二刀流である。そのレイピアも、独特の形をしていた。レイピアの特徴通り、その剣は細身であったが、ジグザグに曲がって、いや、折れているからだ。
『READY! DUEL!!』
試合開始のアナウンスが流れる。
「ジルッタ・ゲイリールート、参る!」
試合開始とともに、フェイルーラは竜の武威を放つ。それに対してジルッタは動揺する事なく、右手に握ったレイピアを突き出した。開始点からの突き。ジルッタとフェイルーラとの間は十メータは離れており、本来であれば、その突きが届くはずはない。が、ジルッタのレイピアはその距離をものともしなかった。
折れていたレイピアが、突きの勢いとともに真っ直ぐに伸びていく。伸長するレイピアの切っ先がフェイルーラへ向かうが、それでもフェイルーラまでは届かない。はずであった。
伸長するレイピアは、更にその剣身を伸ばす。レイピア自体に伸長する能力が備わっているからだ。それはまるで根を伸ばす草木のようであり、その鋭さは空を斬り裂くが如くであった。
フェイルーラはそれをサイドステップで躱しながら、左手のグローブからガンブレードを取り出す。そしてすかさず左から来るレイピアを受け止めた。右手のレイピアで突きを繰り出し、躱す方向を誘導させての左手のレイピアによる薙ぎ。
しかし武器は突きに特化したレイピアである。フェイルーラのガンブレードで断ち斬られる左手のレイピアであったが、手元に戻した左手のレイピアは、ジルッタが軽く振るうと、斬られた先が元通りになる。伸長し、再生するレイピア。それが二本。
「まだまだ行きます!!」
ジルッタは歯を食いしばり、両手のレイピアで高速の突きを連続で繰り出す。その回転速度は凄まじく、防御に回らざるを得ないフェイルーラ。
(分かっていたが、疾風と生長の魔力属性。モトナリ君とはまた違った厄介さだな)
フェイルーラは連続で繰り出されるレイピアを、ダッキングやサイドステップで躱しながら、薙ぎ、払い、そうしてレイピアを斬り落としていくが、その側から再生するレイピアに苦戦を強いられていた。
(でも)
フェイルーラは躱しつつ、魔弾を素早く入れ替えると、ジルッタに向ける訳でもなく、適当な方向にパーンッと撃ち出した。
一瞬にして真っ白に発光するバトルフィールド。モトナリ戦でも使った閃光弾だ。夜霧の中ではその威力を十全に発揮出来なかった閃光弾も、照明の下では目を潰す程に眩しく発光する。
これには目をやられて何も見えなくなるジルッタだったが、この程度で動揺する事も、戦闘意欲が削がれる事もない。
ジルッタは素早くレイピアの柄頭と柄頭をくっつけると、それは根が絡みつくように一体化し、両先に刃を持つ双刃の剣となる。これを振り回すジルッタ。
伸長する刃が、ほぼバトルフィールドの中央にいるジルッタから疾風を纏いながら伸び、バトルフィールド全体をジルッタのダブルブレードの刃が襲う。
しかし視界を潰されたジルッタでは、刃の精度は欠き、どうにか上へ下へと隙をなくすようにダブルブレードを振り回すも、相手の隙を見逃すフェイルーラではなく、双刃をスライディングで躱してジルッタに接近する。
閃光に焼かれて白くなったジルッタの視界が、何とか見えるようになったところで、フェイルーラは既にガンブレードの銃口をジルッタに向けていた。
これを一瞬の判断で仰け反り避けるジルッタ。それと同時にジルッタはダブルブレードを解除すると今度はレイピアの両刃を密着させる。それは瞬時にギュルリと回転して両刃は細いドリルのような形へと変形する。
そしてそのドリルをフェイルーラ目掛けて突き出すジルッタ。ドリルの刃は回転しながら伸長し、フェイルーラの胸目掛けて一直線に突き進む。
が、苦し紛れの一撃がフェイルーラに届くはずもなく、フェイルーラはそれを身体を左半身にして躱すと、ガンブレードを持たない左掌をジルッタ目掛け突き出す。
「がはっ!?」
次の瞬間には、ジルッタの周囲の空気は一瞬で全てフェイルーラの左手のグローブに圧縮して収納され、ゼロ気圧となった事で、ジルッタの身体は瞬間で燃えるように発熱膨張し、目鼻口から泡を吹き、そして左手に収納された圧縮空気が、ゼロ気圧に喘ぐジルッタにお見舞いされると、ジルッタに避ける術はなく、そのままバトルフィールドの場外まで吹き飛ばされたのだった。
✕✕✕✕✕
(さて、どうしよっかなあ)
インビジブル・バーストは使った。これでスフィアンへの義理は果たした。しかし現在フェイルーラは二十階であり、あと一勝で二十一階まで進める。
(毎月十二回闘わないと、位階が下がるんだっけ?)
そんなフェイルーラの思考を読み取ったポッドの画面に、勝敗に対しての説明文が表示される。
(ああ、毎月十二回闘わないといけないのはチェックメイターだけなのか。五十階以下は月一で良いんだ。でも五十階以上は月に六回闘わないといけない、と。そう言えば、賭けってどうなっているんだ?)
フェイルーラが疑問に思うと、画面に説明が表示される。どうやら五十階以上の決闘者は、事前予約が必要らしい。その予約された決闘者から賭けの対象を選ぶようだ。五十階以下は試合ごとに番号振り分け制で、誰がどの番号やどのフィールドになるかは分からない仕様らしい。五十階以下は統計よりも賭け要素が強い。
そんな説明文を読んでも、悩みが解決したとは言い難い。
(二十一階まで上がれば、母上と同じニュービーの一日達成記録に並ぶ。…………ま、ここを最低限に設定しておくか)
エスペーシに己の記録を、そしてニュービーの記録を抜かせる為、フェイルーラは『DO YOU WANT TO CONTINUE?』と言う文言に対して、『YES』と応えるのだった。
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