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LMAO

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 痩せた成人男性が真っ裸で立っている図は、シュール過ぎて俺には笑えない。


 全員の総意で、痩身猫背の男、ミッケル・ジェランには、足首を治してから、真っ裸にして魔法スキルを封じる手枷を嵌めてある。だってこいつら自殺するから。でもあまりにもあまりだから、腰に布を巻いてあげた。


 その後、ジェランに拘束されていた人々の頭の輪っかを解除して貰い、その数十名を第一階層へと連れて行く事に。バヨネッタさんにゼラン仙者に武田さんはこの場に留まる事を強く要求したので、他の面子だけで拘束されていた人々を連れて行った。



「…………はあ」


「お疲れのようね?」


 一階から第四階層に戻ってきて早々、思わずバヨネッタさんを睨んでしまった。いかんいかん、気が荒ぶっている。深呼吸してと。


「そりゃあそうですよ。敵の居城で囚われていた人たちを、一階まで連れて行ったんですよ。神経すり減らしますよ」


 ジト目であろう俺を見ても、バヨネッタさんは「ふ~ん」とあまり気にしていない。はあ。俺もこの階に残れば良かった。


「せっかく外に出られるのに、外で飛行系は禁止されていますからね。わざわざ何十人も引き連れて、外階段を下りて、脱出シューターで下りて、螺旋階段で下りて、ようやっと治安維持軍に引き渡してここまで戻ってきたら、外が白み初めていましたよ」


「そう。大変だったのね」


「全然大変そうに思われていない!」


 とりあえずツッコんでおく。こんな事を言ったところで、聞く耳持ってくれないのは分かっているけど。


「しかし、何があったんですか?」


 俺はジト目のまま、武田さんの方を見遣る。そこでは、先程までの戦いが嘘だったかのように、武田さんと打ち解けて会話を弾ませているジェランの姿があった。


「さあ? 私は遠目にあの男が逃げたり変な行動をしないように見張っていただけだから」


 さいですか。ゼラン仙者の方を見ても、首を横に振られてしまった。これは武田さんに聞かないと分からなそうだ。


「武田さん、何だか楽しそうですね?」


 ジェランを警戒させないように、爽やか笑顔を装って、二人に話し掛ける。失敗してジェランに余計な警戒をされてしまったが。


「ああ、L魔王様の話をしていたんだよ」


「…………え、L魔王ですか?」


「知らないか?」


「いえ、知ってはいます。アレですよね、女性のバーチャル動画配信者の……」


 バーチャル動画配信者とは、自身の配信動画内で、バーチャルキャラクターを自らのアバターとして出演させ、ゲームをしたり歌を歌ったり、何か面白企画をしたりとかしている配信者の事だ。


「おお! 貴公もL様をご存知だったか!」


 貴公? L様? こいつこんな奴だったのか。


「でもL魔王って、日本のバーチャル動画配信者ですよね?」


「日本のバーチャル動画配信者は、世界に進出しているんだぞ? 投げ銭で数千万円稼いでいる配信者もいるしな!」


「へえ、そうなんですね」


 目をキラキラ輝かせている二人を見て、成程、バヨネッタさんが近寄らないようにしていた理由が分かった。


「でも、神を信奉しているに、魔王に投げ銭していたんですか?」


「我らの神はその程度の事に目を吊り上げる程、不寛容ではない」


 さいですか。まあ何にせよ、他人様を苦しめて稼いたお金で投げ銭して貰っていたなんて、L魔王も知りたくはないだろう。


「やっぱりL様と言えばあの透き通るような歌声だよな~」


「分かる! 癒されるよなあ!」


 魔王なのに癒やしの歌声してるんだ。


「L魔王と言えば、ホラゲーできゃあきゃあ悲鳴を上げているイメージなんですけど」


「ああ」


「ああ」


 なんだか納得した感じに深く頷かれた。そこは解釈一致なんだ。


「分かる。分かるよ。まず初心者はそこから入るんだよねえ。面白いからねえ。そこからレースゲームの下手な運転に悲鳴を上げているL様、アクションゲームが出来なくて不貞腐れるL様、と色んなL様にハマっていき、そして気付くのさ、歌ってみた動画がある事に」


 ジェランの知ったかぶりがうぜえ。


「歌ってみた動画は全くの別物だよな! 正しく天使の歌声!」


 魔王だろ。


「やばいって! 脳がとろけるから! もう、聴く麻薬だよ!」


 天使の歌声なんだよね? ジェランもうんうん頷いているけど、なんかそこまで言われると、逆に聴きたくなってきたな。だけど今はこんな話を呑気にしている場合じゃない。


「そうですか。それで俺たち、もうそろそろ次の階層に行きたいんですけど」


 ジェランに先導して貰い、次の階層へ行く手はずとなっていたはずだ。


「まあ待てよ。それはミッケルから色々聞いてからでも遅くないだろ?」


「それは…………まあ。でもそこまで話してくれます?」


 俺が尋ねると、二人は顔を見合わせにやりと笑う。


「問題ない」


 とジェラン。問題ないんだ。


「既に聞き出しているしな、ミッケルと色々話して、なんでこいつらが死を顧みずにこんな神風特攻みたいな事が出来るのか、分かったぞ」


「本当ですか!?」


 声を上げたのはシンヤだ。他の皆も気になっていたのだろう、強い視線がジェランに集まった。


「本当だろうな!?」


 リットーさんが眉根を寄せて詰め寄る。


「本当かどうかは分からないが、ドミニクがミッケルたちに何を吹聴していたかは分かった。成程、死を恐れない訳だよ」


 リットーさんに睨まれたジェランは、蛇に睨まれた蛙の如く、身を竦ませ口をつぐみ、その代わりに武田さんが教えてくれた。


「死を恐れない理由、ですか?」


 俺の問いに首肯する武田さん。今現在、リットーさんを恐れているけどね。


「ああ。ミッケルの話だと、ドミニクは『蘇生』スキル持ちらしい」


「ありえないわ。レアやユニークどころか、これまで存在が確認されていないスキルじゃない」


 とバヨネッタさん。そんなに稀有なスキルなのか。


「ああ。俺も疑わしいと思っているが、話はここからだ。ドミニクはその『蘇生』スキルによって、この地球上から死を消し去り、永久生の、永遠の世界を構築するつもりらしい」


 規模が大き過ぎるだろ? 個人に可能とは思えないな。

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