科学魔法学園のニセ王子

猫隼

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Ch1・令嬢たちの初恋と黒の陰謀

1ー17・一瞬決着作戦

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「それじゃ、また学校でな」
 自分の言いたい事だけ言って、ガーディはさっさとその場を後にした。

「あの子もだいぶ謎ね」
「いや、そうでもないよ」
 ニーシャの言葉に、エミィはひとつ思い出す。
「そういえばまだ報告してなかったっけ」

 実はこの数日。エミィは学園でのガーディの行動を調査し、ある事を突き止めていた。

「わたしたちの学年でもうひとり、経歴ごまかしてるエマちゃんて子いるでしょ。ガーディはよく彼女とこっそり会ってるみたい。まるでこっそり付き合ってるカップルみたいに」
 また、どういう繋がりかはわからないが、少なくともガーディとエマは互いの事を知っているようであった。
 つまりガーディは、エマの事を調べているとかではない。
 彼の任務はエマに関係しているか、もしくはエマとガーディは協力関係にあるようなのである。

「ユイト」
 暗い顔をしていた彼に気づいたレイ。
「うん、大丈夫」
 暗い顔のまま、ユイトは呟く。

(「あなたでも、今のわたしの邪魔になるなら容赦なく消すわ」
「あいつはもうおまえの知ってるあいつじゃない」)

「ユイト様」
 その名を呼び、彼に微笑みかけるミユ。
「わたしたちだって、もうあなたの友達ですからね」
「うん」
 それでようやく、彼は暗い顔をやめた。

ーー

 クロ姫、アイテレーゼとユイトが再会したパーティの日から数週間ほどが経った。
 アイテレーゼにもガーディにも大きな動きはなく、しばらくは平穏な学園生活を満喫していたユイトたち。
 相変わらず、嫌っているというよりレイに無関心のようなフィオナ。
 完全にレイを嫌っているリリエッタとネージ。
 それにユイトの分まで課題を頑張るミユ。
 そのミユのために、こっそりニーシャに勉強を教えてもらっていたユイト。

 そして、新たな問題は突然起こった。

 その問題が起きた日の、昼休憩の屋上。
「やばいって、どうしよう」
「どうしようもありませんね」
 かなり絶望しきった様子のユイトに、きっぱりと言うミユ。
 友達だろうが何だろうが、どうしようもない事はどうしようもないのである。
「いや、もう頑張ってとしか」としか言えないエミィ。

 新たな問題。
 それは、四人チームでの模擬戦闘授業。ランダムで決められた、偽物レイであるユイトのチームメンバー。
 一人はセシリアという女の子。おとなしい感じの子で、特殊技能は、様々な物質の圧力の向きを変える"反転フリップ"。
 しかし彼女が問題なのではない。問題は残り二人のメンバー。
 つまりフィオナとネージ。

「絶対やばいよね」
「そうですね」
 実はちょっと否定してほしかったのだが、ミユは否定してくれなかった。
「運ないよねえ、せめてミユちゃんかわたしが一緒ならよかったのに」
 苦笑いのエミィ。

 実際に戦闘があるのは翌日の午後であり、前日であるその日は、チームメンバーそれぞれが、別々の空き教室にて作戦会議。
 つまり別のチームメンバーである、ミユやエミィには、まさにどうする事もできない。

「まあ、多分、ちょっと気まずいだけだと思いますので」
「だよね、そうだよね」
 ミユの言葉に、そうであってほしいとばかりに頷くユイト。

ーー

 実際には、ちょっとでなく、かなり気まずかった。
 チーム四人で空き教室のひとつに入り、用意されていた大きなテーブルを囲うそれぞれの椅子についてから、1時間ほどは一切の会話がなかった。
 まるで、どれだけ沈黙してられるかを競うゲームでもしているようであった四人。
 フィオナはちょうどテーブルを挟み、偽物レイのユイトと向かい合う位置だが、目を合わせないようにだろう、ずっと顔をそらしている。
 ネージは、普段のような敵意は抑え気味だが、というか彼もユイトと同じく、どういうふうにすればいいのか、わからないで困っているようだった。
 一番哀れなのはセシリアで、時折他のメンバーを見ては、結局何も言い出せず、気まずい雰囲気におどおどしていた。

 だが会話がなかったのは1時間ほどにすぎなかった。
「レイ」
 ギスギスした空気の中、沈黙を破ったのはフィオナ。
「前線で戦うわたしたちを、あなたが指揮するのがいいと思う。解析アナライズがあるし」
 勇気をだして、そう意見してくれたのはいいが、それを了承するわけにはいかなかった。
 何せそのレイは偽物であり、解析アナライズなど実際は使えないのだから。
 レイのような指揮を取る事はできないだろう。個人で戦う場合はともかく、チーム戦でのサポートとなると、ボロが出てしまう可能性がかなり高い。
「不本意だけど、それが最善だよな」
 上手い反対意見を思いつく前に、ネージもフィオナの提案に賛成してしまう。
「えっと、だな」
 結局、まったく合理的なそのチーム戦術に反対できないまま、会議は終わった。

ーー

「やばいって、どうしよう」
 模擬戦を控え、前日の昼休みとまったく同じ台詞を放つユイト。
「ひとつ、作戦があります」とミユ。
「それ、おれが関係してるのか?」
 急に呼ばれ、不機嫌そうなガーディ。
 彼はミユと同じチームメンバー。
「はい、あなたも、特殊技能が解析アナライズだと偽っているのは幸運でした」

 ミユの作戦は、そもそも解析アナライズなど使えないとバレる前に、さっさと偽物レイをリタイアさせるというもの。
 まず、あらかじめユイトのチームの位置取りを確認しておく。なぜそれを知っているか、その理由に、ガーディの解析アナライズ設定を使おうというわけである。
 さらにミユが風芸ウィンドアートを使い、すぐさまユイト、つまり偽物レイのところまで奇襲をかけて仕留める。

「わたしならレイをあっさり倒してもおかしくはないはずです。あいつとは何度も戦ってて慣れてますし」
 実際に、本物のレイが相手で、かつガーディが本当に解析アナライズの使い手なら、この戦法は妥当なものでもある。
「それでは、わたしたちはわたしたちのチームメンバーに、この作戦について話してきます」

 そしてガーディと共に去ったミユ。
 彼女らの他のチームメンバーは、リリエッタと、アルーゼという男子生徒。
 アルーゼは、どこかのんびりした感じの少年で、特殊技能は土を操る"大地手グランドテク"。

「ていうかさ、もういっそ本物王子を一時召喚したら解決するんじゃ」
 まさしくもっともなエミィの意見。
「えっと、まあそうなんだけど」
 ユイトもそこで苦笑い。
 そう、確かにこの場合は、その模擬戦闘のみ本物に出てもらえばすむ話。実際、ミユはそれもしょうがないだろうと考えていたようだった。しかし彼女曰く、先をこされてしまったらしい。
 つまりレイは、状況を見越して逃げてしまっていたのである。


──

"反転フリップ"(コード能力事典・特殊技能18)

 物質の有する力の向きを反転させる特殊技能。
 物質操作系か空間転移系かの議論が古くからある。
 コード能力影響下にある物質の反転はかなり難しい。
 この能力を使う者は、しばしば空気や水などの圧力を反転させ、疑似的な足場などの代わりに使う。


"大地手グランドテク"(コード能力事典・特殊技能3)

 土を操る特殊技能。
 古くは使いやすいと言われていたが、開発された都市、特に空中都市においては、人工物質の方がむしろ多く、かなり厳しい。
 他の豊富とされる物質と比べると、液体である事が多い水や、気体である事が多い空気に対し、土はたいてい個体なので、物理的な攻守により優れているとされる。
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