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Ch1・令嬢たちの初恋と黒の陰謀
1ー18・どうせなら勝ってよ
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28人を4人ずつ、7チームに分けて行われる模擬戦闘。
シミュレータで設定されたのは、山と林が広がるステージ。
偽物レイのユイトは、小高い丘の上。
そしてその丘から、少し離れた所で立っていたチームメンバー3人。
絶妙な距離だ。戦闘開始と共に飛んで来るミユに気づいたとして、オリハルコンの衝撃によるフィオナのバネや、ネージの近距離空間転移では間に合わないだろう。
「セシリア、ネージ、聞いて」
レイと思っているユイトには聞こえないよう小声で、フィオナは隣の2人にある事を伝える。
そう、その通り。確かにフィオナのバネっ跳びでも間に合わないだろう。ミユが来てからでは。
戦闘開始を告げる、鐘のような音。
「は?」
思わずすっとんきょうな声をあげてしまうユイト。
予定通り真っ先にミユは、彼のところに飛んできた。予定通りでなかったのはフィオナの動き。
「ミユ、やっぱり来たわね」
戦闘開始と同時に、ミユと同じようにユイトのところに跳んできたフィオナ。
つまり彼女は、ミユの戦法を読んでいたのである。
「フィオナ様」
繰り出した風圧をオリハルコンの盾で跳ね返され、逆に吹き飛ばされるミユ。
「フィオナ」
ユイトも思わずその名を呼ぶ。なんとかぎりぎり、ちゃんは付けなかったが。
「ほらレイ、何やってるの? ふたりのサポートを」
フィオナの叫びにハッとさせられもする。
「あ、ああ」
そこでブルクハルトと、そのチームメイトであるエドアルドという男子生徒の攻撃を、ネージとセシリアが受けていたのにも気づく。
ブルクハルトの水芸による地下水。
それに"金細工師"という金を操る特殊技能で作った、黄金の棒によるエドアルドの攻撃。
ネージは、空間歯車による空間転移で、セシリアは反転で空気を蹴ったりして、なんとか攻撃を避けていた。
もうこうなったらやるしかなかった。
(そうだ、解析はなくても、実戦経験ならあるんだ。勘を働かせろ)
「ネージ、右。セシリア、下へ跳べ」
なんとか、長年の戦闘で培われた勘を頼りに、ネージとセシリアに、的確な指示を飛ばすユイト。
一方、すぐ側で繰り広げられていた戦いは、まずいことにフィオナがミユを押しぎみであった。
「くっ」
連続で風圧を次々放つも、バネによる跳びで全てかわされてしまうミユ。
「これで」
一瞬の隙をついて、ミユの横に回りこんだフィオナ。
「終わ」
しかし、そこで現れたリリエッタの放った火を防ぐために、フィオナは攻撃に使おうとしたオリハルコンの剣を、とっさに盾に変えた。
「ミユ、加勢するわ」とリリエッタ。
「ありがたいです」
まさしくであった。
「フィオナ」
「レイ、いい」
2対1にはなったが、フィオナはユイトに、つまりはレイに助けは求めない。
実際これは微妙な場面である。
フィオナは勝てなくても時間をなんとか稼げばいい。
ネージとセシリアの方は、他のチームも加わり混戦状態だが、3人や4人揃ってるチームもあり、明らかに不利。
だが、迷う事はそもそもない。むしろさっさとやられるという目的のために、ここは秘かにミユたち側を応援すべき場面である。なので、その後に彼がとってしまった行動は、本当に愚かであった。
「あつっ」
リリエッタの加熱で、オリハルコンの剣を熱くされ、フィオナは落としてしまう。
さらに背後に回ったミユの風圧。なんとかそれに対しては、ギリギリ、盾にしてる時間なくただの塊であったオリハルコンで受けるフィオナ。だが圧力を跳ね返す事はできず、軽く飛ばされバランスを崩してしまう。そしてその隙を狙い、リリエッタが放った火の玉。
だがその火の玉も、横からの風で掻き消された。ユイトが起こした風で。
「フィオナ」
そう、彼はとっさにフィオナを助けてしまったのである。
「大丈夫か?」
「う、うん」
フィオナ自身、偽物とは知らないレイのその行動は意外なようだった。
[「バカ」]
「あっ」
風芸により伝えられたミユの一言で、失態に気づいたユイト。
「レイ」
そしてミユが次に放った風圧も、フィオナにより外されてしまった。彼女は偽レイの腕を掴み、オリハルコンのバネ跳びでその場を離れたのだった。
そしてそのまま混戦の場に来たふたり。
ミユとリリエッタも追いかけてきて、ほぼ全チーム入り乱れての戦いとなる。
「きゃっ」
女子生徒ソフィーが、斬という特殊技能で発生させた、剣で切ったかのような斬撃を受けてリタイアするセシリア。
「終わりよ、フィオナ」
「あなたも」
リリエッタの発火にやられるも、オリハルコンの弾の一撃で同士討ちに持ち込んだフィオナ。
「おい、サギ王子、このままじゃヤバイ」
叫ぶネージ。
「わかってるけど」
しかしユイトとしても、真面目にどうしようもない。
位置取りが不利だった。
他はわからないが、とりあえずその場に参戦していた、生き残りがいるチームは3チーム。そしてユイトたちは、ちょうど他の2チームに挟まれた状態であった。
一旦退いて体制を立て直したいところであるが、そうしたいからといって、それができる状態でもなかった。
「うっ」
そして、ついにソフィーの斬撃が偽物レイをリタイアさせようとした瞬間。
「ちっ」
前にリリエッタと戦った時のように、空間歯車を高速で連続発動するネージ。しかも今度は偽物レイと共に。
ユイトの感覚としては、まさに回転、自分ではなく周囲の空間の。そして回転の度に、自分たちの立つ位置が変わっていく。
それはかなりの無理であった。
しかしとりあえず、戦線は離脱し、争っていた場からは、距離を取れたふたり。
「おい、サギ王子」
あまりの疲労に膝をつくネージ。
「不本意だけど助けてやったんだ。どうせなら勝ってよ」
そして彼も力尽き、リタイアした。
──
"斬"(コード能力事典・特殊技能21)
空間中の線に沿って、流体を加速させ、まるで刀で切ったかのような攻撃を放てる特殊技能。
流動性に効果が左右されるので、物質を固められると弱い。
"金細工師"(コード能力事典・特殊技能26)
黄金を操る特殊技能。
金は優れた伸縮性を持つため、かなり扱いやすい。
しかし最大の問題は、一般的な社会におけるその価値の高さのために、ある場所とない場所にかなり差があることだろう。
シミュレータで設定されたのは、山と林が広がるステージ。
偽物レイのユイトは、小高い丘の上。
そしてその丘から、少し離れた所で立っていたチームメンバー3人。
絶妙な距離だ。戦闘開始と共に飛んで来るミユに気づいたとして、オリハルコンの衝撃によるフィオナのバネや、ネージの近距離空間転移では間に合わないだろう。
「セシリア、ネージ、聞いて」
レイと思っているユイトには聞こえないよう小声で、フィオナは隣の2人にある事を伝える。
そう、その通り。確かにフィオナのバネっ跳びでも間に合わないだろう。ミユが来てからでは。
戦闘開始を告げる、鐘のような音。
「は?」
思わずすっとんきょうな声をあげてしまうユイト。
予定通り真っ先にミユは、彼のところに飛んできた。予定通りでなかったのはフィオナの動き。
「ミユ、やっぱり来たわね」
戦闘開始と同時に、ミユと同じようにユイトのところに跳んできたフィオナ。
つまり彼女は、ミユの戦法を読んでいたのである。
「フィオナ様」
繰り出した風圧をオリハルコンの盾で跳ね返され、逆に吹き飛ばされるミユ。
「フィオナ」
ユイトも思わずその名を呼ぶ。なんとかぎりぎり、ちゃんは付けなかったが。
「ほらレイ、何やってるの? ふたりのサポートを」
フィオナの叫びにハッとさせられもする。
「あ、ああ」
そこでブルクハルトと、そのチームメイトであるエドアルドという男子生徒の攻撃を、ネージとセシリアが受けていたのにも気づく。
ブルクハルトの水芸による地下水。
それに"金細工師"という金を操る特殊技能で作った、黄金の棒によるエドアルドの攻撃。
ネージは、空間歯車による空間転移で、セシリアは反転で空気を蹴ったりして、なんとか攻撃を避けていた。
もうこうなったらやるしかなかった。
(そうだ、解析はなくても、実戦経験ならあるんだ。勘を働かせろ)
「ネージ、右。セシリア、下へ跳べ」
なんとか、長年の戦闘で培われた勘を頼りに、ネージとセシリアに、的確な指示を飛ばすユイト。
一方、すぐ側で繰り広げられていた戦いは、まずいことにフィオナがミユを押しぎみであった。
「くっ」
連続で風圧を次々放つも、バネによる跳びで全てかわされてしまうミユ。
「これで」
一瞬の隙をついて、ミユの横に回りこんだフィオナ。
「終わ」
しかし、そこで現れたリリエッタの放った火を防ぐために、フィオナは攻撃に使おうとしたオリハルコンの剣を、とっさに盾に変えた。
「ミユ、加勢するわ」とリリエッタ。
「ありがたいです」
まさしくであった。
「フィオナ」
「レイ、いい」
2対1にはなったが、フィオナはユイトに、つまりはレイに助けは求めない。
実際これは微妙な場面である。
フィオナは勝てなくても時間をなんとか稼げばいい。
ネージとセシリアの方は、他のチームも加わり混戦状態だが、3人や4人揃ってるチームもあり、明らかに不利。
だが、迷う事はそもそもない。むしろさっさとやられるという目的のために、ここは秘かにミユたち側を応援すべき場面である。なので、その後に彼がとってしまった行動は、本当に愚かであった。
「あつっ」
リリエッタの加熱で、オリハルコンの剣を熱くされ、フィオナは落としてしまう。
さらに背後に回ったミユの風圧。なんとかそれに対しては、ギリギリ、盾にしてる時間なくただの塊であったオリハルコンで受けるフィオナ。だが圧力を跳ね返す事はできず、軽く飛ばされバランスを崩してしまう。そしてその隙を狙い、リリエッタが放った火の玉。
だがその火の玉も、横からの風で掻き消された。ユイトが起こした風で。
「フィオナ」
そう、彼はとっさにフィオナを助けてしまったのである。
「大丈夫か?」
「う、うん」
フィオナ自身、偽物とは知らないレイのその行動は意外なようだった。
[「バカ」]
「あっ」
風芸により伝えられたミユの一言で、失態に気づいたユイト。
「レイ」
そしてミユが次に放った風圧も、フィオナにより外されてしまった。彼女は偽レイの腕を掴み、オリハルコンのバネ跳びでその場を離れたのだった。
そしてそのまま混戦の場に来たふたり。
ミユとリリエッタも追いかけてきて、ほぼ全チーム入り乱れての戦いとなる。
「きゃっ」
女子生徒ソフィーが、斬という特殊技能で発生させた、剣で切ったかのような斬撃を受けてリタイアするセシリア。
「終わりよ、フィオナ」
「あなたも」
リリエッタの発火にやられるも、オリハルコンの弾の一撃で同士討ちに持ち込んだフィオナ。
「おい、サギ王子、このままじゃヤバイ」
叫ぶネージ。
「わかってるけど」
しかしユイトとしても、真面目にどうしようもない。
位置取りが不利だった。
他はわからないが、とりあえずその場に参戦していた、生き残りがいるチームは3チーム。そしてユイトたちは、ちょうど他の2チームに挟まれた状態であった。
一旦退いて体制を立て直したいところであるが、そうしたいからといって、それができる状態でもなかった。
「うっ」
そして、ついにソフィーの斬撃が偽物レイをリタイアさせようとした瞬間。
「ちっ」
前にリリエッタと戦った時のように、空間歯車を高速で連続発動するネージ。しかも今度は偽物レイと共に。
ユイトの感覚としては、まさに回転、自分ではなく周囲の空間の。そして回転の度に、自分たちの立つ位置が変わっていく。
それはかなりの無理であった。
しかしとりあえず、戦線は離脱し、争っていた場からは、距離を取れたふたり。
「おい、サギ王子」
あまりの疲労に膝をつくネージ。
「不本意だけど助けてやったんだ。どうせなら勝ってよ」
そして彼も力尽き、リタイアした。
──
"斬"(コード能力事典・特殊技能21)
空間中の線に沿って、流体を加速させ、まるで刀で切ったかのような攻撃を放てる特殊技能。
流動性に効果が左右されるので、物質を固められると弱い。
"金細工師"(コード能力事典・特殊技能26)
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