科学魔法学園のニセ王子

猫隼

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Ch1・令嬢たちの初恋と黒の陰謀

1ー19・仲直りと、乙女の決意と

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「面白いじゃん、前のリベンジね」
 ネージのリタイアから間もなく現れ、蹴りを放ってきたエミィ。
 とっさに風圧で迎えうったユイト。
 しかし相手は分身だったようで、消え去り、背後にいた本体の攻撃により、結局負けてしまう。

ーー

 戦闘を終えての、ユイトたちのチームの反省会。
 作戦会議の時と同じく、あまり会話はなかったが、しかし、雰囲気はかなり和らいでいた。
 もう授業自体は終了扱いで、反省会は、別にさっさと帰りたければ帰れるが、誰もすぐには帰らなかったのは、間違いなくいい傾向である。

「まあ、負けたけど、悪くなかったよ」
 そして偽物レイのユイトの方を見るネージ。
「結局おまえは大嫌いだけどな」
 そう言い残し、彼は教室を出ていった。

「あの、わたしもそろそろ」
 セシリアも退室。

 そうして部屋にふたりきりとなったユイトと、彼をレイだと思っているフィオナ。
 さすがにふたりは気まずいので、ユイトもさっさと帰ろうと立ち上がる。
「レイ」
 だが意外にも、フィオナは彼をひき止めた。
「今日は悪かったわね。あなたの事、囮みたいに使って。それに結局やられそうになっちゃって」 
「いや別に、少なくともミユの思惑は崩せただろうし」

 それは間違いないだろう。本来はそもそもが、偽物レイはミユに一撃であっさりやられるはずだったのだから。

「何か妙な感じね」
 立ち上がり、そして、それまでは存在自体無視していたようだった、ユイト、偽物と知らないレイに対し、笑みも見せたフィオナ。
「レイ、まるであなたに初めて会ったみたいに思えるわ」
 それだけ言うと、呆然とするユイトを残し、彼女も教室を出ていった。

 その時、彼女がユイトの顔を見たのは、微笑みかけた瞬間だけだったが、実はおかげで助かっていた。
 その笑顔はとても可愛くて、まったく不意討ちだった。
 ユイトはその瞬間まで、無愛想な彼女しか知らなかったから。

 そして、やらかしてしまっていた事を思い出したのは、学園の門で待っていたミユの、冷たい笑顔を見た時だった。

ーー

「まったく、反省してくださいよ」
「ご、ごめん」
 正座させられ、小一時間ほどの説教をミユにくらってしまう。

「あし、痺れる」
 だがなんとか説教されていた部屋から出てきたユイト。
「まだ説教だけならいいだろ、ぼくなんて晩御飯抜きだぞ」
 ユイトと同じくらいの時間をかけて怒られた上に、レイは晩御飯抜きの刑にあっていた。別に外食すればいいのだが、そうすると後が恐ろしすぎる。

「なんか、きみたち、力関係はっきり出てるよね」
 笑うエミィ。
 彼女は、特にエージェントとしての役割関係なく、最近はよく麗寧館に遊びに来ている。
「ユイト様」
 そこで、さっきまでいた部屋からのミユのお呼び。
「えっと」
「いい展開か、悪い展開かはわからないけど、悪い展開だとするとさっさと行った方がいいと思う」というレイのアドバイスに従い、さっさと、しかし恐る恐る彼女のいた部屋へユイトは戻る。

「これ、あなたですね」
 ミユを驚かそうと、こっそりやっておいた、自分の分の課題の用紙を突きつけられる。
 それで、それをやっておいた事を、自分でも思い出すユイト。
 まずいチームの組み合わせや、今回の失敗やらですっかり忘れてしまっていたのである。
「うん、驚かせようと思って」
 正直に頷く。
「最近、休日に出かけているのは、ずっと勉強を?」
「うん、エミィちゃんにお願いして。ニーシャさんに教えてもらってる」 
 いつか、手伝いを断られはしたが、やはり自分の分の課題までしてもらうのは心苦しかったからと、何もかもをもう白状する。

「まったく」
 怒ってはいないが、呆れたようなため息をついたミユ。
「これじゃ間違いが多すぎますよ」
「ごめん」
「この課題は90点以上が合格ラインなんです。あなたのは半分もあってなさそうですよ。結局わたしの手間です」 
「ごめん」
 ズバズバと言われ、とにかくユイトは謝るしかない。 

「でも、でもです」
 唐突に笑顔。
「ほんとに嬉しいです。やっぱりレイなんかよりずっと、あなたはとても素敵ですよ」
「う、うん」
「あの」
 そしてミユも、勇気を振り絞って言った。
「ありがとう。ユイト」

 それから、互いに真っ赤な顔で部屋から出てきて、互いに逃げるようにそれぞれの自室へと帰って行ったユイトとミユ。
 その様子をぼんやりと見ていたレイとエミィ。
「これはアレだな。雨降って地固まる、てやつだな」
 楽しそうに言うレイ。
「そうみたいだね」とエミィも笑うが、彼女は少し口惜しそうでもあった。

ーー

 ほぼ同じ頃。

「今、いいかしら?」
「おま、アイテレーゼ?」
 暮らしてる貸家に直接訪ねて来た依頼主に、ガーディは心底驚愕した。

「何の用だ? 罠か? それとも、何かで用済みになったおれを殺しに?」
「あなたの中でのわたしがどんなイメージなのかがよくわかるわね」
 そしてガーディのイメージ通りの、毒々しい笑みを浮かべるアイテレーゼ。
「だが理由がないのはマジだろ、何で来たんだ?」
 冷静になり、ガーディは改めて聞く。
「ちょっと直に会って聞きたい事があってね」
「は? 聞きたい事?」
「これを」
 小型球体コンピューターを起動し、ガーディの前にスクリーンを表示させるアイテレーゼ。それに映されてたのは、とある貴族パーティーの招待客リスト。
「これは」
 そのパーティーを主宰する家名と、招待客リストの中のある名前を見て、ガーディも、アイテレーゼが何を聞きたがっているのかを理解する。

「彼は来ると思う?」
「多分来るな、ユイトの方が」
 即座に答えたガーディ。
「それなら、あなたにお願いがあるわ」
 追加の命令はこれまでに何度もある。
 だが、アイテレーゼがガーディに、「お願い」と言ったのは、これが初めてだった。
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