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第十一話
王都防衛戦 ⑸ただ船をねだる男
しおりを挟むタンガ・ロウの船団後列は前列の沈没に巻き込まれまいと既に動き出していた。
「黒龍、あの旗艦の横につけてくれるかい?」
黒龍が船団に悠々と追いついて中央の『マタ・ウエンガ』の横に付けた。
船尾の甲板に一際勇猛そうな男がいる。
ロキはキャノピーを開けて呼びかけた。
「おーい、お前が一番偉いやつか?ちょっと止まってくれ、話がしたい」
黒龍の頭から人が現れた事に驚愕しながらも、タンガ・ロウが答える。
「敵に止まれと言われて止まる馬鹿がいるか!これは逃げるのではない、一度帰還し立て直してだな、また……」
「いやいや、どっちでも良いんだけどー、一回止まってくれない?止まらないなら今すぐぜーんぶ沈没だからー」
黒龍が咆哮し、口に熱線を溜め始めた。
船団がゆっくりと停止する。
ロキはアイーシャを連れて黒龍からタンガ・ロウがいる船尾甲板に降り立った。
タンガ・ロウは大勢の戦士と共にいたが、無意識に後退り緊張した面持ちとなった。
「さっきは半分くらいの船を沈めて悪かったね。あれは勿体ない事をした。これ作るの大変だろう?」
「話とは何だ!」
「ちょっと俺忙しいから、端的に聞くけど……オースト……」
「オーストベルクです」アイーシャが耳元で教えた。
「そのオーストベルク辞めて、俺の配下にならない?」
「何だと?我が故郷、オーストベルクを裏切れと言うか!」
「あぁ、すまん。あんたにそんな殊勝な忠誠心があるとは思わなかった。しかしだ、僅か、かどうかは知らんが三十隻の軍艦で派遣したあんたんとこの王様は忠誠を誓う価値はあるのかねぇ?」
「てめぇ、お頭に裏切れとは、ふざけてんのかー!」
ロキ達を囲んだ兵士の一人が突然斬りかかった!
しかし、後ろに控えたアイーシャが不気味なオーラを放つ黒い刀身の魔剣でそれを受け止めた。
「ロキ様が今話してるでしょう?殺しますよ?下郎」
アイーシャに睨みつけられ、斬りかかった兵士はそれ以上びくともしない剣を引っ込めた。
「お頭ねぇ、あんたら元海賊かぁ。じゃぁ信義もくそもなかろう?どうせ軍務が無けりゃ海賊行為でもしているんだろ?」
ロキは続けた。
「配下と言っても俺はズールの家臣じゃない、無所属の客分みたいなもんだ。俺の指示がない時は好きにしてりゃあ良い。どうだ?」
タンガ・ロウは思案の為所と考えていたが。
「いや、駄目だ我らはそこのバケモノ龍にやられてはいるが、お前の実力を知らん。……いや待て、そこの女、さっきロキと言ったか?」
「この方はロキ様、先の魔族討伐で壊滅寸前まで追いやった正にその人だ。控えおろう!」
アイーシャは時代劇水戸黄門をロキに観せてもらってからのファン(東野英治郎版の)である。無論兵士らが、ははーっと土下座はしないのだが。
(やっぱり、印籠って大事なのね……)
「あんたが例のロキか、ロキとはやり合うなと言われていたが戦場で対峙して、どうして戦いを避ける事が出来よう」
ロキは勇ましいタンガ・ロウの発言を聞いて思った。
(こいつ……さっき列をなして逃げてたくせに……)
「いいぜ、来いよ。あんたが相手か?お頭」
兵士の中から一際大きな戦士が現れた。
「お頭、ここは俺が出る」
2mは優に超え、全身筋肉の鎧で包まれ、身体からスキンヘッドの頭まで、隅々にタトゥーを刻んだ男が巨斧を携えている。
「トンガ・フンガか、お前は我らが最強の戦士。一対一では可哀想だが、相手はロキだ、話だけだが相当な実力、全力で、踏み潰せ!」
トンガ・フンガは前に出た。
「ロキ様、私がやったります」
アイーシャは進み出ようとしたが、ロキはそれを制して
「やったんなさい!とはいかないかな。ここは俺がやらないといけないでしょう、ねぇ助さん?」
アイーシャはクスッと笑って下がった。
「それではご隠居、頑張って下さい」
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