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第十二話
王都防衛戦 ⑹海賊を配下にする男
しおりを挟む都内、オヤマダタワー55の最上階55階にあるオヤマダカンパニーの社長室、オヤマダはPCの画面を食い入る様に観ていた。
「いや、怖いて、これ本物の海賊やん!ロキ様もアイーシャ様も相変わらずなんかイチャイチャしてるけどぉ?」
「うわ、アイーシャ様、今の剣捌きかっこよー!もう、なんだろう、完全に……推せる!!」
その時、社長室にノックがあった。
「はい、どうぞー」
「失礼致します」
社長秘書の勅使河原が入室して来た。
30歳前後だろうか、仕立ての良いライトグレーのパンツスーツを着こなした、細身の落ち着いた雰囲気の女性だ。
「社長、ドバイで進めてるリゾート開発の件、報告が上がって来ています」
「うんうん、ありがとん。後で見とくからそこ置いといて」
オヤマダはPCを見たまま、答えた。
「あ、そうだ勅使河原くん。オヤマダ重工の船舶部門にね、ガレオン船を一から作れる体制をお願いしといてくれるかな」
「ガレオン船と言うと、中世の?」
「そうそう、んー規模からすると戦列艦になるのかなぁ?多分近いうちに改修の依頼がありそうだから。今のウチのメンツで無理なら欧州から船大工引き抜いて構わないから」
「詳しくは……まぁ直接指示するから連絡する様に担当役員に言っておいて、あ、でもすぐはダメよ?今はちょっと忙しいから」
「……畏まりました。それでは2時間程度空けて連絡する様にお伝えします」
(最近の社長はとんでもない注文を何処からか良く受けてくる。金額は大きいし、支払いも良いので全く問題はないのだが……何処ぞのアラブの王様でも顧客にしたのだろうか……)
勅使河原は社長のデスクに資料を置く際、見るともなくPCの画面が目に入った。
(社長、海賊映画に夢中になってる……)
マタ・ウエンガ船尾甲板では……
ロキとトンガ・フンガが向かい合っている。
突然、タンガ・ロウが叫んだ。
「さぁお前ら!対決の鬨だ!」
太鼓がドンと鳴らされる。
「野獣の前に立ち竦むお前は鶏だ!」
「おう!!!」
節をつけながら叫ぶタンガ・ロアに呼応して足を踏み鳴らす戦士達。トンガ・フンガはそれに合わせて巨斧を掲げながら舞を踊っている。
「アイちゃん、何が始まった?」
「ちょっと分かりませんが、多分戦いの前に鼓舞する踊りかと」
「これ、俺も踊った方が良いのかな?」
「クスッ、いえ行儀良く見ていればよいかと」
ロキは礼儀正しく直立で見守る事にした。
対決の鬨が終わった。
微妙な空気が流れて、ロキとアイーシャは自信なさげにパチ、パチと拍手を始めた。
「拍手は要らん!!」
トンガ・フンガは怒鳴った。
「怒んなって、ちょっとしたカルチャーショックだろうが、知らんもん戦う前に踊るスタイル。準備が出来たならやろうぜ?」
「お前はいいのか?」
「は、なにを?」
「舞わないのかと聞いている!」
「いやいや、舞わないから!アイちゃん、後ろで拍手しない!」
「そうか、お前、得物は?」
「要らん、素手でぶっ飛ばすから」
「舐めるな!」
トンガ・フンガの巨斧が唸りロキを襲う。重さを感じさせない素早い攻撃だ、と思われたが……。
斧を振り上げた時には、既にロキの姿はそこに無く、トンガ・フンガの懐にあり、右の拳で彼の顎を下から十分に貫いていた。
トンガ・フンガは斧を振り下ろしながら前のめりに倒れた。
「遅い、蝿が止まると言うが、お前の遅さはその斧にサインして視聴者プレゼント出来るほどだ」
口から血を流し、よろよろと立ち上がったトンガ・フンガはめげずに巨斧を横に薙ぎ払った。
ロキはそれを指二本で受け止め、あろうことか相手の口元の血を指で拭い「Loki」とサインした!
そして、巨斧を簡単に奪い取りタンガ・ロウの足元に突き立てて言った。
「ほら視聴者プレゼントだ」
タンガ・ロウは、戦意を喪失しているトンガ・フンガと巨斧を見て、前に出て言った。
「もう良い、あんたの実力はわかった。ロキ殿の配下になろう」
「お、おう。殺す前にわかってくれて良かったよ」
「そいつは俺の弟だ、敵わぬ相手とわかっていて命を落とすのは忍びない」
「あぁ、弟さんね、顎砕いて悪かった」
「おかしらぁ……すまねぇ……ゴフッ」
「いいんだ喋るな弟よ、相手が悪過ぎたんだ。上には上がいるもんだ、慢心せずにもっと強くなるんだぞ」
(なんだこれ、全然感動しねー)
パンッとロキは手を叩いて注目させた。
「はい、じゃあ君らは今から俺の配下ね。この戦いが終わるまではあの崖下で待機、結界に入れとくから。勝手に戦闘に参加して船壊したら怒るよ?特にこのアイーシャさん、俺も身体真っ二つにされそうになったくらい、怖い人だから怒らせないでねー」
「ちょっとロキ様!私に振らないで下さい!いや、みんなで私を見ないで!」
アイーシャは両手で赤面した顔を隠した。
「あとね、さっき沈没した船から助けられるだけ助けてあるから後で引き上げてあげな」
ロキが指差した先にいくつもの救命ボートに乗った戦士達がこちらに近づいていた。
「ロキ殿、戦士の救命感謝する!」
タンガ・ロウが殊勝にも頭を下げる。
「まぁ直撃したり、沈没に飲み込まれたやつらは可哀想だが、戦いの結果だから勘弁してくれ」
ロキは頭をかきながら答えた。
「じゃあ、俺たち魔族を皆殺しに行くから」
そう言って、ロキとアイーシャは黒龍に乗った。
「あ、言い忘れたけど下の船倉に前金の金塊置いといたから確認しといて」
「ロキ殿!戦いが終わったらあの風呂、入らせてもらってよろしいか?」
ロキは荒くれ者達を眺めて
「うーん……考えとく!」
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