12 / 31
第十二話
王都防衛戦 ⑹海賊を配下にする男
しおりを挟む都内、オヤマダタワー55の最上階55階にあるオヤマダカンパニーの社長室、オヤマダはPCの画面を食い入る様に観ていた。
「いや、怖いて、これ本物の海賊やん!ロキ様もアイーシャ様も相変わらずなんかイチャイチャしてるけどぉ?」
「うわ、アイーシャ様、今の剣捌きかっこよー!もう、なんだろう、完全に……推せる!!」
その時、社長室にノックがあった。
「はい、どうぞー」
「失礼致します」
社長秘書の勅使河原が入室して来た。
30歳前後だろうか、仕立ての良いライトグレーのパンツスーツを着こなした、細身の落ち着いた雰囲気の女性だ。
「社長、ドバイで進めてるリゾート開発の件、報告が上がって来ています」
「うんうん、ありがとん。後で見とくからそこ置いといて」
オヤマダはPCを見たまま、答えた。
「あ、そうだ勅使河原くん。オヤマダ重工の船舶部門にね、ガレオン船を一から作れる体制をお願いしといてくれるかな」
「ガレオン船と言うと、中世の?」
「そうそう、んー規模からすると戦列艦になるのかなぁ?多分近いうちに改修の依頼がありそうだから。今のウチのメンツで無理なら欧州から船大工引き抜いて構わないから」
「詳しくは……まぁ直接指示するから連絡する様に担当役員に言っておいて、あ、でもすぐはダメよ?今はちょっと忙しいから」
「……畏まりました。それでは2時間程度空けて連絡する様にお伝えします」
(最近の社長はとんでもない注文を何処からか良く受けてくる。金額は大きいし、支払いも良いので全く問題はないのだが……何処ぞのアラブの王様でも顧客にしたのだろうか……)
勅使河原は社長のデスクに資料を置く際、見るともなくPCの画面が目に入った。
(社長、海賊映画に夢中になってる……)
マタ・ウエンガ船尾甲板では……
ロキとトンガ・フンガが向かい合っている。
突然、タンガ・ロウが叫んだ。
「さぁお前ら!対決の鬨だ!」
太鼓がドンと鳴らされる。
「野獣の前に立ち竦むお前は鶏だ!」
「おう!!!」
節をつけながら叫ぶタンガ・ロアに呼応して足を踏み鳴らす戦士達。トンガ・フンガはそれに合わせて巨斧を掲げながら舞を踊っている。
「アイちゃん、何が始まった?」
「ちょっと分かりませんが、多分戦いの前に鼓舞する踊りかと」
「これ、俺も踊った方が良いのかな?」
「クスッ、いえ行儀良く見ていればよいかと」
ロキは礼儀正しく直立で見守る事にした。
対決の鬨が終わった。
微妙な空気が流れて、ロキとアイーシャは自信なさげにパチ、パチと拍手を始めた。
「拍手は要らん!!」
トンガ・フンガは怒鳴った。
「怒んなって、ちょっとしたカルチャーショックだろうが、知らんもん戦う前に踊るスタイル。準備が出来たならやろうぜ?」
「お前はいいのか?」
「は、なにを?」
「舞わないのかと聞いている!」
「いやいや、舞わないから!アイちゃん、後ろで拍手しない!」
「そうか、お前、得物は?」
「要らん、素手でぶっ飛ばすから」
「舐めるな!」
トンガ・フンガの巨斧が唸りロキを襲う。重さを感じさせない素早い攻撃だ、と思われたが……。
斧を振り上げた時には、既にロキの姿はそこに無く、トンガ・フンガの懐にあり、右の拳で彼の顎を下から十分に貫いていた。
トンガ・フンガは斧を振り下ろしながら前のめりに倒れた。
「遅い、蝿が止まると言うが、お前の遅さはその斧にサインして視聴者プレゼント出来るほどだ」
口から血を流し、よろよろと立ち上がったトンガ・フンガはめげずに巨斧を横に薙ぎ払った。
ロキはそれを指二本で受け止め、あろうことか相手の口元の血を指で拭い「Loki」とサインした!
そして、巨斧を簡単に奪い取りタンガ・ロウの足元に突き立てて言った。
「ほら視聴者プレゼントだ」
タンガ・ロウは、戦意を喪失しているトンガ・フンガと巨斧を見て、前に出て言った。
「もう良い、あんたの実力はわかった。ロキ殿の配下になろう」
「お、おう。殺す前にわかってくれて良かったよ」
「そいつは俺の弟だ、敵わぬ相手とわかっていて命を落とすのは忍びない」
「あぁ、弟さんね、顎砕いて悪かった」
「おかしらぁ……すまねぇ……ゴフッ」
「いいんだ喋るな弟よ、相手が悪過ぎたんだ。上には上がいるもんだ、慢心せずにもっと強くなるんだぞ」
(なんだこれ、全然感動しねー)
パンッとロキは手を叩いて注目させた。
「はい、じゃあ君らは今から俺の配下ね。この戦いが終わるまではあの崖下で待機、結界に入れとくから。勝手に戦闘に参加して船壊したら怒るよ?特にこのアイーシャさん、俺も身体真っ二つにされそうになったくらい、怖い人だから怒らせないでねー」
「ちょっとロキ様!私に振らないで下さい!いや、みんなで私を見ないで!」
アイーシャは両手で赤面した顔を隠した。
「あとね、さっき沈没した船から助けられるだけ助けてあるから後で引き上げてあげな」
ロキが指差した先にいくつもの救命ボートに乗った戦士達がこちらに近づいていた。
「ロキ殿、戦士の救命感謝する!」
タンガ・ロウが殊勝にも頭を下げる。
「まぁ直撃したり、沈没に飲み込まれたやつらは可哀想だが、戦いの結果だから勘弁してくれ」
ロキは頭をかきながら答えた。
「じゃあ、俺たち魔族を皆殺しに行くから」
そう言って、ロキとアイーシャは黒龍に乗った。
「あ、言い忘れたけど下の船倉に前金の金塊置いといたから確認しといて」
「ロキ殿!戦いが終わったらあの風呂、入らせてもらってよろしいか?」
ロキは荒くれ者達を眺めて
「うーん……考えとく!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる