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第一章 透明人間殺人事件
第四話 もう一人
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まず、近隣の防犯カメラから調べることにした。顔は分からなくても服装は分かっているのだ。画質が荒くても構わない。知りたいのは被害者の情報ではなく、屋上から突き落とした人物の情報だ。
ビル周りを歩いていると、交差点の定点カメラを見つけた。確か交差点のカメラは警察の管轄であったはずだ。
それを思い出した僕は、所轄に電話をして交差点のカメラ映像を送ってもらうよう手配した。
待っている間、僕たちは蓮の記憶について話していた。
「なんか恨み買うような真似でもしたんか?」
『んんんん・・・』
「それも、記憶にない感じ?」
これは普通の人間よりも困難だ。生きているなら病院に連れて行けば万事解決だが、死んでいるなら記憶を刺激すること以外に方法はないし思いつかない。
事件の捜査のはずが、まるでカウンセリングみたいな展開になってきてしまった。前回の事件がいかに楽に稼げていたのかをありありと実感させられる。
まさかこんな面倒な依頼になるとは思わなんだ。
「俺は仕事が関係してる気がするがな。記憶をたとえ失っても、本来の性格はあまり変わらねえだろ?」
『恨まれる仕事・・・ヤクザ、とか?』
「安心して。顔は見えないけど声色的にそんなコワモテじゃないでしょ」
最初は蓮の性格に問題がある可能性を疑ったが、話している感じではその線は薄い。つまり、知らない間に誰かを怒らせたか、あまり考えたくはないが勘違いによる殺人の可能性も否定はできない。
「あ、動画きた」
「どれどれ?」
二人の人間と幽霊一人で、スマホに送られてきた動画を見る。交通課の配慮で画質が思っていたよりも高かった。そこはビルのあった区画に最も近い交差点の映像で、歩道もよく映っている。
死亡推定時刻の午前三時より一時間前の二時から再生した。まず、普通車が五台、タクシーが二台、歩行者は・・・・・・いた。顔は画質を向上させても分からなかったが、服装から分かる。蓮だ。
もう一人の連れの男は、赤いパーカー黒いズボンで、蓮よりも少し背が高い。服装はこれで分かったが、また新たな発見があった。蓮と連れの男が、普通に仲良さそうに歩いていた。
であれば、あの後ろ向きの手すりの跡は何だったのか? 謎が別の謎に再構築されていく。その度に神経回路が移り変わり、CPUを消費していく感覚がした。
「俺らが当初考えてた"誰かが蓮を突き落とした瞬間に真犯人が後頭部を打った"説もなさそうだな」
「だね。・・・・・・あれ、待って? じゃあ何で二人はあのビルの屋上に行ったの?」
『確かに。何で俺はあんな場所に?』
映像の男を見つけることも大事だが、真犯人と同じくらいの大きな謎は『何故あんな場所にいたのか』である。あのビルと何か関係があるのだろうか? はたまた、別の理由で二人ともあの場所に誘導されたのか?
「まぁ、真実はこの赤いパーカーの男を見つけりゃ分かることか」
「でもどうやって探すの?」
「徒歩でこの場所を歩いていたってことは、二人とも近所に住んでいる可能性が高い。どっちかが遠い場所に住んでいたなら、車に乗せてるからな」
『なるほど』
池袋は商業地帯と一般的には思われているが、南池袋や西池袋、一部の東池袋や北池袋エリアに住宅街は存在する。事件現場が東池袋側であることから、5丁目が最有力だろう。あの場所は、池袋駅に最も近い東側の住宅街だ。そこで聞き込みをした方が確実だろう。
しかし、一丁丸々聞き込みは時間がかかる。故に、東池袋から池袋駅までの道のりを見ている人物を探すべきだ。
そう思い立った夜見は、東池袋にある交番に向かった。真夜中に住宅街や路地といった、大通りより見晴らしのよくない場所を通るとは考えにくい。ならば、安全で交番もあるこの通りを歩いていたはずなのだ。
4丁目7番地にある交番に行くと、警官が一人駐在していた。警官は僕たちを見ると、何か用事があるのかと思ってカウンターの奥から出てきた。
「こんにちは、どうしましたか?」
「探偵の夜見です。池袋であった男性の死亡事件でそうさしてまして、この映像の赤いパーカーの男をご存知ないですか?」
警官に映像を拡大して見せてみる。しばらく考えた後、警官は悩んで俯いていた顔を上げた。何か思い出したような顔だ。
「そうだ、確か前に全く同じ服の男を駐禁で職質したことがありました」
「その男の書類とかありますか?」
「ありますよ。ちょっと待っててくださいね」
幸先がいい。蓮を含めた三人は警官が見えなくなったところで小さくガッツポーズをした。これで男を見つければ、当時何があったのかと蓮の本名が判明する。あとはその人間関係から真犯人を探すだけだ。
難航すると思っていた捜査の進捗に浮き足立つ。やっぱり朔弥がいるからなのか。神がかり的な直感は幸運も引き寄せてくれるのだろうか。
なんて脱線したことを考えていると警官が戻ってきた。手には一枚の紙がある。あの男の情報だろう。
「これが当時職質した男の情報です」
「ありがとう」
紙の写真と映像は解像度が違うからはっきりと断言できないが、似ている気がした。写真でも赤いパーカーを着ている。男の名前は倉本俊輔、34歳で職業は美容師らしい。
その男の写真を見た瞬間、隣の蓮がまた頭を抱えだした。苦しそうに数秒唸ると、蓮は顔を上げた。
『そうだ、・・・俊輔だ。俺は俊輔と深夜に遊びに出かけたんだ。次の日は有休で数日間休みにしたから』
「なるほど、怨恨が無いなら犯人はこいつじゃないな」
「重要参考人には変わりないけどね」
免許証を確認したことにより、住所も書かれていた。東池袋5丁目。ビンゴだ。蓮の話が確かなら、倉本は休暇で家にいるはずだ。
「じゃあ聞きに行こうか。三時にいったい何があったのか」
ビル周りを歩いていると、交差点の定点カメラを見つけた。確か交差点のカメラは警察の管轄であったはずだ。
それを思い出した僕は、所轄に電話をして交差点のカメラ映像を送ってもらうよう手配した。
待っている間、僕たちは蓮の記憶について話していた。
「なんか恨み買うような真似でもしたんか?」
『んんんん・・・』
「それも、記憶にない感じ?」
これは普通の人間よりも困難だ。生きているなら病院に連れて行けば万事解決だが、死んでいるなら記憶を刺激すること以外に方法はないし思いつかない。
事件の捜査のはずが、まるでカウンセリングみたいな展開になってきてしまった。前回の事件がいかに楽に稼げていたのかをありありと実感させられる。
まさかこんな面倒な依頼になるとは思わなんだ。
「俺は仕事が関係してる気がするがな。記憶をたとえ失っても、本来の性格はあまり変わらねえだろ?」
『恨まれる仕事・・・ヤクザ、とか?』
「安心して。顔は見えないけど声色的にそんなコワモテじゃないでしょ」
最初は蓮の性格に問題がある可能性を疑ったが、話している感じではその線は薄い。つまり、知らない間に誰かを怒らせたか、あまり考えたくはないが勘違いによる殺人の可能性も否定はできない。
「あ、動画きた」
「どれどれ?」
二人の人間と幽霊一人で、スマホに送られてきた動画を見る。交通課の配慮で画質が思っていたよりも高かった。そこはビルのあった区画に最も近い交差点の映像で、歩道もよく映っている。
死亡推定時刻の午前三時より一時間前の二時から再生した。まず、普通車が五台、タクシーが二台、歩行者は・・・・・・いた。顔は画質を向上させても分からなかったが、服装から分かる。蓮だ。
もう一人の連れの男は、赤いパーカー黒いズボンで、蓮よりも少し背が高い。服装はこれで分かったが、また新たな発見があった。蓮と連れの男が、普通に仲良さそうに歩いていた。
であれば、あの後ろ向きの手すりの跡は何だったのか? 謎が別の謎に再構築されていく。その度に神経回路が移り変わり、CPUを消費していく感覚がした。
「俺らが当初考えてた"誰かが蓮を突き落とした瞬間に真犯人が後頭部を打った"説もなさそうだな」
「だね。・・・・・・あれ、待って? じゃあ何で二人はあのビルの屋上に行ったの?」
『確かに。何で俺はあんな場所に?』
映像の男を見つけることも大事だが、真犯人と同じくらいの大きな謎は『何故あんな場所にいたのか』である。あのビルと何か関係があるのだろうか? はたまた、別の理由で二人ともあの場所に誘導されたのか?
「まぁ、真実はこの赤いパーカーの男を見つけりゃ分かることか」
「でもどうやって探すの?」
「徒歩でこの場所を歩いていたってことは、二人とも近所に住んでいる可能性が高い。どっちかが遠い場所に住んでいたなら、車に乗せてるからな」
『なるほど』
池袋は商業地帯と一般的には思われているが、南池袋や西池袋、一部の東池袋や北池袋エリアに住宅街は存在する。事件現場が東池袋側であることから、5丁目が最有力だろう。あの場所は、池袋駅に最も近い東側の住宅街だ。そこで聞き込みをした方が確実だろう。
しかし、一丁丸々聞き込みは時間がかかる。故に、東池袋から池袋駅までの道のりを見ている人物を探すべきだ。
そう思い立った夜見は、東池袋にある交番に向かった。真夜中に住宅街や路地といった、大通りより見晴らしのよくない場所を通るとは考えにくい。ならば、安全で交番もあるこの通りを歩いていたはずなのだ。
4丁目7番地にある交番に行くと、警官が一人駐在していた。警官は僕たちを見ると、何か用事があるのかと思ってカウンターの奥から出てきた。
「こんにちは、どうしましたか?」
「探偵の夜見です。池袋であった男性の死亡事件でそうさしてまして、この映像の赤いパーカーの男をご存知ないですか?」
警官に映像を拡大して見せてみる。しばらく考えた後、警官は悩んで俯いていた顔を上げた。何か思い出したような顔だ。
「そうだ、確か前に全く同じ服の男を駐禁で職質したことがありました」
「その男の書類とかありますか?」
「ありますよ。ちょっと待っててくださいね」
幸先がいい。蓮を含めた三人は警官が見えなくなったところで小さくガッツポーズをした。これで男を見つければ、当時何があったのかと蓮の本名が判明する。あとはその人間関係から真犯人を探すだけだ。
難航すると思っていた捜査の進捗に浮き足立つ。やっぱり朔弥がいるからなのか。神がかり的な直感は幸運も引き寄せてくれるのだろうか。
なんて脱線したことを考えていると警官が戻ってきた。手には一枚の紙がある。あの男の情報だろう。
「これが当時職質した男の情報です」
「ありがとう」
紙の写真と映像は解像度が違うからはっきりと断言できないが、似ている気がした。写真でも赤いパーカーを着ている。男の名前は倉本俊輔、34歳で職業は美容師らしい。
その男の写真を見た瞬間、隣の蓮がまた頭を抱えだした。苦しそうに数秒唸ると、蓮は顔を上げた。
『そうだ、・・・俊輔だ。俺は俊輔と深夜に遊びに出かけたんだ。次の日は有休で数日間休みにしたから』
「なるほど、怨恨が無いなら犯人はこいつじゃないな」
「重要参考人には変わりないけどね」
免許証を確認したことにより、住所も書かれていた。東池袋5丁目。ビンゴだ。蓮の話が確かなら、倉本は休暇で家にいるはずだ。
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