誰にも邪魔させない

咲倉なこ

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冗談じゃねーけど。

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だけどその間は何も起こらなくて、疑問に思って少しずつ目を開けると、



「なーんちゃって。本気にした?」


柊はそう言って、私を開放してベッドから降りた。




ねえ。


今のなんだったの!?




「大丈夫だよ、海莉なんか襲ったりしない」




…そんなこと、


「言われなくても、分かってるよ」




私は女として見れらていなこと、ちゃんと分かってる。


ドキドキした自分がホントばかみたい…。







あれは中学の時だった。


柊が他の男子生徒を話しているのをうっかり聞いてしまった。


***


「柊って海莉ちゃんと仲いいよな?」

「仲いいって言うか腐れ縁?
ただの幼なじみだよ」

「えー!そんな風に見えないけど?
本当は好きなんじゃないの~?」


ある日の放課後、忘れ物を取りに戻る途中で、柊と柊の友達の声が教室から聞こえてきた。


聞いちゃいけないと思ったけど、私はその答えが気になって、教室に入らずそのまま聞き耳を立てた。






「は?あんな奴、女だなんて思ったことねーよ」




なんだ。


そっか。


そうだよね。


「女じゃないから普通に喋れるっつーか。
俺にとっては男友達みたいなもんだよ」


「うわーひっでー!
それ聞いたら海莉ちゃん泣くぞ?」


「ばーか。海莉だって俺のこと何とも思ってないよ」



***



その時はそれ以上聞くのが怖くて、忘れ物なんてそっちのけで、その場を立ち去った。


あの時私は、柊の言葉がショックで。


何度も諦めようって思ったのに。


それができなかった。




柊への想いは、ずっと消えずに胸の中に残ってる。







「もう帰って」


柊の顔なんて見たくもない。


「はいはい、悪かったって、そんな怒んなよ?」


そんな私の気持ちとは裏腹に、柊はまた私に近づいてくる。



「怒ってないから」


もうそれ以上近づかないで。




「じゃあ何?本当に襲ってほしかった?」


その言葉に耳を疑った。




「ふざけないで」


私は精一杯柊を睨みつけているのに。


柊はびくともしない感じで。




「明日の朝も、迎えに来るから」


って、柊は本当に何考えてんの?




「明日は一緒に行けない」


私がそう返事をすると、

「なんで?」


柊が一気に不機嫌になったのが分かった。


柊は自分の誘いを断られるのが単純に嫌なだけなんだ。




「委員会で早く行かなきゃ行けないから」


一応ちゃんとした理由を言うと、

「それって坂城も一緒?」


ってまた坂城くんが出てきた。



「そうだけど」


「はぁ、オレが何のために…」


「何のために?」




言葉の続きを聞きたかったのに、柊は続きを教えてくれなくて。


「なんでもねーよ、じゃあな」


結局最後の最後まで素っ気ない柊。


そんな柊が部屋から出ていく姿を、ぼんやりと眺めることしかできない私。




ねえ、なんで坂城くんと喋っちゃいけないの?


なんでそんな悲しそうな顔してたの?


どうしたら私を女として見てくれるの?


ねえ柊。


柊が何考えてるか、私には全然分かんないよ。



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