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EPISODE2 懐かしい感覚
懐かしい感覚①
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「とりあえず、片付けは明日にするとして。こんな部屋に住んでるくらいなら、ちゃんとしたご飯も食べてないでしょ? 俺、元々料理を作るつもりでいたから、材料買ってきたんだ。これから作るね」
「怜音君、料理できるの?」
「人並みにはね。俺、両親が離婚してるから、家事はなんでもやってたよ」
「そっか、そうだったよね」
その言葉を聞いてふと思い出す。怜音は女手一つで自分を育てる母親のために、いつも頑張っていたっけ。だから怜音は蒼汰と違って、しっかり者だった。
「じゃあ、いい子にして待っててね」
「うん」
鼻歌を口ずさみながらキッチンへと向かっていく怜音を、蒼汰は見送る。突然離れて行ってしまった温もりが寂しく思えた。こんなにも自分は人肌が恋しかったのだと思い知らされる。
「蒼ちゃん、ご飯ができるまで部屋を少し片付けておいてよ」
「あ、うん。わかった」
「頼むね、今日から俺もここに住むから」
「は?」
ビニール袋の中に、ごみをまとめはじめていた蒼汰の手がふと止まる。
怜音は今、一体なんと言ったんだろうか。
「ここに来る前に、蒼ちゃんの実家に寄ったんだけど……おじさんとおばさんが、蒼ちゃんのことすごく心配してたんだよ。最近電話しても出てくれないし、出たら出たで様子がおかしいってさ」
「父さんと母さんが? 怜音君は父さんたちに会ったの?」
「うん。俺、もう一度蒼ちゃんに会いたかったけど、蒼ちゃんの連絡先を知らなかったから。だから、蒼ちゃんの実家に出向いたんだよ。息子さんを俺にくださいって」
「え? 嘘だろ?」
「あははは! 息子さんをください、は嘘だけど。でも、おじさんたちが蒼ちゃんをすごく心配してたから、俺に任せてほしいってお願いはしたよ」
玉ねぎを器用に切りながら、怜音がケラケラと笑う。でも決してふざけてなどいない。きっと怜音も自分のことを心配して、わざわざ今日訪ねてきてくれたのだ。それは痛いくらいに伝わってくる。
その優しさが、今の蒼汰には痛かった。
「だから俺がここに住んで、蒼ちゃんの世話をしようと思って」
「でも、なにも一緒に住まなくても……」
正直、蒼汰は怜音と一緒に暮らすことには抵抗があった。それは怜音が嫌だから……とかではなく、こんな堕落した引き籠り生活を、彼に見られたくなかったからだ。
こんな情けない姿を見られたら、きっとガッカリされてしまうだろう。蒼汰には、それが耐えられなかった。
「怜音君、久しぶりに再会した幼馴染みが、こんなゴミだらけの部屋に住んでるなんて幻滅したでしょう?」
恐る恐る怜音に問いかける。「ガッカリした」と思われても仕方がない。
怜音は、蒼汰のことを初恋の相手だと言っていた。そんな淡い恋心を抱いている人物に数年ぶりに会いに来たら、日の光も差し込まないような汚い部屋に住んでいた……なんて、さぞやガッカリしたことだろう。
大体、こんなにもイケメンに成長した怜音と自分が釣り合うはずなんてない。蒼汰は無意識にキュッと唇を噛み締めた。
「別に幻滅なんてしてないよ」
「え?」
「悪者に虐められて、どこかに閉じ込められてるお姫様なんて、大体こんなもんじゃない?」
「……お、お姫様……?」
「そう、お姫様。だから全然気にしてなんかないよ」
自分がお姫様だなんて……考えただけで顔に熱が籠ってしまう。それでも、無邪気な笑顔を向ける怜音の言葉がすごく嬉しい。
「とにかく部屋を片付けてよ。このままじゃ、部屋にきのこが生えちゃうよ?」
キッチンでクスクス笑う、怜音の声が聞こえてきた。
「簡単なものしか作れなかったけど」
そう言いながら怜音が作ってくれたものは、シチューだった。シチューの優しい香りが、狭い部屋中に広がる。手作りのものを食べるのなんて、一体いつぶりだろうか? 目頭が熱くなるのを感じる。
こんな蒼汰だって、恋人がいたときにはまめに部屋を掃除していたし、恋人の為に料理だって作っていた。そんなことを思い出すと、胸が締め付けられるように痛む。
「じゃあ、食べようか?」
「うん。いただきます。んん!」
「どう? 美味しい?」
「うん、すごく美味しい。俺、手作りのものなんて、本当に久しぶりに食べたよ」
「本当に? シチューくらいでこんなに喜んでもらえるなんて、蒼ちゃんは可愛いなぁ。たくさんおかわりしてね」
「……うん」
嬉しそうに自分の頭を撫でてくれる怜音の笑顔に、蒼汰は救われた気がした。
「怜音君、料理できるの?」
「人並みにはね。俺、両親が離婚してるから、家事はなんでもやってたよ」
「そっか、そうだったよね」
その言葉を聞いてふと思い出す。怜音は女手一つで自分を育てる母親のために、いつも頑張っていたっけ。だから怜音は蒼汰と違って、しっかり者だった。
「じゃあ、いい子にして待っててね」
「うん」
鼻歌を口ずさみながらキッチンへと向かっていく怜音を、蒼汰は見送る。突然離れて行ってしまった温もりが寂しく思えた。こんなにも自分は人肌が恋しかったのだと思い知らされる。
「蒼ちゃん、ご飯ができるまで部屋を少し片付けておいてよ」
「あ、うん。わかった」
「頼むね、今日から俺もここに住むから」
「は?」
ビニール袋の中に、ごみをまとめはじめていた蒼汰の手がふと止まる。
怜音は今、一体なんと言ったんだろうか。
「ここに来る前に、蒼ちゃんの実家に寄ったんだけど……おじさんとおばさんが、蒼ちゃんのことすごく心配してたんだよ。最近電話しても出てくれないし、出たら出たで様子がおかしいってさ」
「父さんと母さんが? 怜音君は父さんたちに会ったの?」
「うん。俺、もう一度蒼ちゃんに会いたかったけど、蒼ちゃんの連絡先を知らなかったから。だから、蒼ちゃんの実家に出向いたんだよ。息子さんを俺にくださいって」
「え? 嘘だろ?」
「あははは! 息子さんをください、は嘘だけど。でも、おじさんたちが蒼ちゃんをすごく心配してたから、俺に任せてほしいってお願いはしたよ」
玉ねぎを器用に切りながら、怜音がケラケラと笑う。でも決してふざけてなどいない。きっと怜音も自分のことを心配して、わざわざ今日訪ねてきてくれたのだ。それは痛いくらいに伝わってくる。
その優しさが、今の蒼汰には痛かった。
「だから俺がここに住んで、蒼ちゃんの世話をしようと思って」
「でも、なにも一緒に住まなくても……」
正直、蒼汰は怜音と一緒に暮らすことには抵抗があった。それは怜音が嫌だから……とかではなく、こんな堕落した引き籠り生活を、彼に見られたくなかったからだ。
こんな情けない姿を見られたら、きっとガッカリされてしまうだろう。蒼汰には、それが耐えられなかった。
「怜音君、久しぶりに再会した幼馴染みが、こんなゴミだらけの部屋に住んでるなんて幻滅したでしょう?」
恐る恐る怜音に問いかける。「ガッカリした」と思われても仕方がない。
怜音は、蒼汰のことを初恋の相手だと言っていた。そんな淡い恋心を抱いている人物に数年ぶりに会いに来たら、日の光も差し込まないような汚い部屋に住んでいた……なんて、さぞやガッカリしたことだろう。
大体、こんなにもイケメンに成長した怜音と自分が釣り合うはずなんてない。蒼汰は無意識にキュッと唇を噛み締めた。
「別に幻滅なんてしてないよ」
「え?」
「悪者に虐められて、どこかに閉じ込められてるお姫様なんて、大体こんなもんじゃない?」
「……お、お姫様……?」
「そう、お姫様。だから全然気にしてなんかないよ」
自分がお姫様だなんて……考えただけで顔に熱が籠ってしまう。それでも、無邪気な笑顔を向ける怜音の言葉がすごく嬉しい。
「とにかく部屋を片付けてよ。このままじゃ、部屋にきのこが生えちゃうよ?」
キッチンでクスクス笑う、怜音の声が聞こえてきた。
「簡単なものしか作れなかったけど」
そう言いながら怜音が作ってくれたものは、シチューだった。シチューの優しい香りが、狭い部屋中に広がる。手作りのものを食べるのなんて、一体いつぶりだろうか? 目頭が熱くなるのを感じる。
こんな蒼汰だって、恋人がいたときにはまめに部屋を掃除していたし、恋人の為に料理だって作っていた。そんなことを思い出すと、胸が締め付けられるように痛む。
「じゃあ、食べようか?」
「うん。いただきます。んん!」
「どう? 美味しい?」
「うん、すごく美味しい。俺、手作りのものなんて、本当に久しぶりに食べたよ」
「本当に? シチューくらいでこんなに喜んでもらえるなんて、蒼ちゃんは可愛いなぁ。たくさんおかわりしてね」
「……うん」
嬉しそうに自分の頭を撫でてくれる怜音の笑顔に、蒼汰は救われた気がした。
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