あなたのお気に召すままに

舞々

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最終Episode 星に願いを

星に願いを③

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 成宮先生が、今度する手術の動画を食い入るように見つめている。
 医療に携わっていない人が見たら、きっと咄嗟に目を逸らすことだろう。でも俺達から見たら、目から鱗の大事な資料なのだ。
 こうやって、手術のイメージトレーニングをする。
「このドクター、メチャクチャ手術が上手いなぁ」
 その動画を成宮先生の背中にしがみつきながら眺めた。
 自分もいつかこんな手術をしてみたいって思う。でも……。
「なるほどな……そこでこうして……へぇ……」
 背中にくっついている俺には見向きもせず、真剣に動画を見る成宮先生に少しだけイライラしてしまう。


 俺は、こんなに悩んでるのに……。


 一人で勝手に悩んでるくせに、何だか面白くない。
 ワガママを言って、困らせてやりたい衝動に駆られる。もっともっと俺に困ればいいんだ。
 もっともっと、俺のことを考えて欲しい。
 ワガママを聞いて欲しい。
 甘やかしてほしい。
 俺だけを見てて欲しい。


「俺、千歳さんとの子供が欲しいです」
「はぁ? 無理だろ? 突然なんだよ……」
 動画から一切視線を外すことなく、サラッと答える成宮先生。
「でも欲しいんですもん」
 本当に珍しく駄々を捏ねて見せれば、
「じゃあ、ぬいぐるみでも買うか?」
「えぇぇ……」


 おもちゃ屋に売られているのが、俺達の子供……?
 確かに、確かに凄く可愛いけど……。


「せめて、毛が生える哺乳類がいいです」
 思わず唸り声をあげてしまう。
「じゃあ、犬でも飼って二人で育てるか? このマンションペットOKだし」
「そ、そりゃそうですけど……」
 全然本気で取り合ってくれない彼氏に、やっぱりイライラしてしまう。
 どうしても、ワガママを言いたくなる。
 だって、俺は成宮先生にかまってほしい……。


 自分の思い通りにいかないのが、本当に面白くない。
 俺が子供を産めないのは、成宮先生のせいじゃない事なんか百も承知だ。
 でも、でも、他に当たり所がない。


 俺のワガママを許して?
 全部受け止めて?
 いつもみたいに、「そんな葵も可愛い」って言って?
 完全に女の子になってしまった自分が、可笑しくて仕方ない。
 でも、俺を変えたのは成宮先生だから……責任とってよ。


「千歳さん、エッチしたい…」
「え? でも、もうこんな時間だし……お前、明日朝早いんだろう?」
「でも、したいです」
 成宮先生の上着の裾を子供みたいに引っ張る。
「どうしてもしたい」


 多分、俺は今、泣きそうな顔をしている。
 成宮先生を凄く困らせているのなんて、わかってる。普段、俺はワガママなんて言わないから、きっとビックリしてるよね。
 本当にごめんなさい。


「葵……突然どうした?」
 俺をそっと抱き締めてくれるから、胸が締め付けられる。
 言葉にできなくて、俺は成宮先生の腕の中でフルフルと首を振った。
「したいの?」
 耳元で囁かれたら、甘い電流が全身を駆け抜ける。
「いいよ。しよう?」
 成宮先生が、仕事用のスマホを無造作に床に投げ捨てた。


「電源切ったから……職場からの電話はこないよ。じゃあ、エッチしようか?」
 俺の顔をエロい顔をしながら覗き込む成宮先生と視線が合えば、思わず恥ずかしくて後退りをしてしまった。
 そんな体を力一杯引き寄せられて、腕の中に捕らえられてしまう。
「自分から誘っておいて、それはないだろ? 覚悟しろよ?」
 ペロリと首筋を舐められただけで、「んぁ…ッ」と甘い声が漏れてしまう。
「可愛い…」
 そのままそっと床に押し倒されて口付けられれば、全身の力が抜けていく。


「ねぇ、来て……千歳さん…」
「………」
 目の前の成宮先生が目を見開いた。
「抱いて……?早く挿れて……我慢できない……」
「馬鹿、が……」
 成宮先生の中に獣を見つける。
 そう、それは性に飢えた雄の獣。俺が、その獣を覚醒させたんだ。


「抱いて……」


 俺の甘い甘い声が、静かな室内に響き渡った。
「葵…こっちに来い」
 成宮先生が俺の体を抱き上げ、ソファーに寝かせた。
「ねぇ、千歳さん……キスして?」
 俺は成宮先生を引き寄せ、またキスをねだる。


 キスをしながら急にズボンと下着を脱がされてしまったから、少しだけ抵抗を見せれば、
「なぁ、本当にエロくて可愛いな。何回やっても恥ずかしがるなんて……」
 愛おしそうに髪を撫でてくれる。
 そんな仕草に、心に仕舞いきれなかった愛おしさが溢れ出した。


「千歳さん、好き……」
「うん。俺も好き」
 

 抱きしめる腕も、与えられるキスも……全部が全部甘くて、とろけそうになる。


「愛してるよ、葵」
 そっと囁いた成宮先生に、きっと俺は、身も心もトロトロにされてしまうことだろう。


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