あなたのお気に召すままに

舞々

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第六章 突然のキス

突然のキス④

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「おはようございます、成宮先生」
「あー」


 翌日、俺はドキドキしながら出勤をした。昨日、あんなにも突然キスを交わした訳だから……何かが始まるかもしれない。俺の胸は否応なしにも高鳴った。


 もしかしたら、当直室にでも連れ去られて、またキスをされるかもしれない。『好きだ』って熱っぽく囁かれて、そのままベッドに押し倒されて……。


 うひゃーーー!


 なんで自分はこんなにも浮かれてしまってるんだろうか。もしかしたら、俺は成宮先生のことを……いや、そんなはずはない!
 首をフルフルと横に振って、その考えを頭の中から追い払う。胸がドキドキして、痛くて仕方ない。
 そんなことを考えて、俺は眠れない夜を過ごした。


 それなのに、まるで俺の事なんて興味がないかのような素振りに、全身の力が抜けて行くのを感じる。



「あー、ってそれだけ?」
 もっと顔を赤らめるとか、視線を不自然に逸らすとか……可愛らしい反応が、この人にはできないのだろうか。


「間抜け面してねぇで、朝のミーティング行くぞ」
 呆れたような表情すら浮かべながら、成宮先生は俺を置いてさっさとナースステーションへと向かっていく。
「ちょ、ちょっと先生!」
 俺はそんな成宮先生を必死に追いかけた。


 その後も、成宮先生のいつもと変わらない対応に、俺は戸惑いを隠せない。
 少しだけ俺たちの関係が変わるかもしれない……そんな淡い期待を抱いていた俺は、ひどく傷ついてしまった。


 もしかしたら、あの宝石みたいな夜景を目の前に交わした熱い口付けは、夢だったのではないだろうか。
 でも、俺の記憶にはしっかり刻まれている。冷静になってよく考えてみると、手術直後だったから気持ちが高ぶっていただけかもしれない……そうにも思えてきた。


「そっか……成宮先生は、あのことをなかったことにしたんだ」


 そうだよな。冷静になって考えてみたら、こんなにも完璧な人が俺のことを相手にするわけがない。わかりきってたことだったのに……。俺だけ浮かれて馬鹿みたいだ。


 そう頭ではわかっているものの、胸が引き裂かれたように痛む。息をすることが苦しくなって、思わずその場に蹲った。
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