31 / 36
第四章 狼と兎が流れ星に祈る時
狼視点②
しおりを挟む
束の間の休息のあと、再び訪れる発情。
「寛太……ねぇ、寛太……」
「ん? 大丈夫。ここにいるよ」
果てしない苦しみ中で、俺の存在を求めて必死にすがりついてくる航が愛しい。
でも絶対に辛いとか、苦しいとか言わない。
こんなんになってまで、こいつは馬鹿だから俺に心配かけまいとする。
果たして、何回目の朝だろうか……。
俺達はこんなに辛い思いをしてるのに、世の中はいつも通りに動き出す。
大学の単位、大丈夫かな……頭の片隅で考える。
疲れたな……。
よくよく考えたら、ろくに飯も食っていないし、寝てもいない。
「風呂、入りてぇなぁ」
ボソッと呟いた。
ようやく発情の波を超え、微睡む航。
その姿に愛しさが込み上げてきて、胸の中からどんどん溢れてきて、でも言葉にならなくて……自分では対処できなくて涙となって溢れ出た。
俺の為に、こんな思いをしてくれる航。
「ありがとう」しか言えない自分が情けなくなる。
月が空に浮かんでる。
また、長い長い夜がきた。
夜は何となく不安が高まる。
多分、それが人間の本能なんだろう。
そして、確かに感じること。
航の発情が徐々に強くなってきている。
「うぅ……んあ……ッ……ぐっあ!!!!」
低く唸り、固く目を閉じたまま蹲る。
時々、布団の上をのたうち回り全身で呼吸をしているように見えるのに、すごく苦しそうで。
毛穴という毛穴から汗が吹き出して、目からは大粒の涙が溢れた。
「航、航……」
抱き締めて、優しく優しく髪を撫でた。
「航、少し休みな……」
ふと、頭の中で母親の声がする。
小さい時によく歌ってくれた子守唄。
航の背中を優しく叩きながら、その子守唄を歌ってやる。
「航も寝な?いい子だから」
まるで乳飲み子をあやすように子守唄を歌った。航が眠りにつくまで、繰り返し歌った。
「寛太、寛太!」
頭の上から聞き慣れた声がしたから目を開ける。
何だよ……まだ眠たいのに。
「寛太、大丈夫か?」
心配そうに俺の顔を覗き込む、莉久の姿が目に入る。
「莉久~、風呂入りてぇ」
呑気な俺の言葉にビックリしたような顔をしたけど、
「入ってこいよ」
って呆れたように笑ってた。
久しぶりの風呂に満足し寝室に戻れば、莉久が愛しそうに航の頬を撫でていた。
「今ようやく発情が終わって寝たとこ」
「そっか」
消え入りそうな声で呟いた莉久の隣に座り込む。
「でもさ、本当にお前ら頑張ってるよ。愛の力ってやつか?」
意地悪く笑った。
その後、切なそうに航の顔を見つめながら、
「本当はさ、根を上げて俺に泣きついてくるのを期待してた。そしたら、『仕方ねぇな』ってお前から航をかっさらえるじゃん?」
バツが悪そうにはにかむ。
「それを期待して様子を見に来たら……全然そんな雰囲気じゃなかった」
悲しそうに俺のほうを向いたから、何て言葉を返したらいいか戸惑ってしまった。
「馬鹿みたいに愛し合ってんだな、お前ら……」
莉久が勢いよく立ち上がる。「さて、帰るか」って大きく伸びをしながら。
「航もお前も、本当にすげぇよ」
泣きそうな顔で無理して笑う莉久を見て、ズキンズキンと心が痛んだ。
「なんかあったら呼んでくれ」
そう言い残して、莉久は帰って行った。
「寛太……ねぇ、寛太……」
「ん? 大丈夫。ここにいるよ」
果てしない苦しみ中で、俺の存在を求めて必死にすがりついてくる航が愛しい。
でも絶対に辛いとか、苦しいとか言わない。
こんなんになってまで、こいつは馬鹿だから俺に心配かけまいとする。
果たして、何回目の朝だろうか……。
俺達はこんなに辛い思いをしてるのに、世の中はいつも通りに動き出す。
大学の単位、大丈夫かな……頭の片隅で考える。
疲れたな……。
よくよく考えたら、ろくに飯も食っていないし、寝てもいない。
「風呂、入りてぇなぁ」
ボソッと呟いた。
ようやく発情の波を超え、微睡む航。
その姿に愛しさが込み上げてきて、胸の中からどんどん溢れてきて、でも言葉にならなくて……自分では対処できなくて涙となって溢れ出た。
俺の為に、こんな思いをしてくれる航。
「ありがとう」しか言えない自分が情けなくなる。
月が空に浮かんでる。
また、長い長い夜がきた。
夜は何となく不安が高まる。
多分、それが人間の本能なんだろう。
そして、確かに感じること。
航の発情が徐々に強くなってきている。
「うぅ……んあ……ッ……ぐっあ!!!!」
低く唸り、固く目を閉じたまま蹲る。
時々、布団の上をのたうち回り全身で呼吸をしているように見えるのに、すごく苦しそうで。
毛穴という毛穴から汗が吹き出して、目からは大粒の涙が溢れた。
「航、航……」
抱き締めて、優しく優しく髪を撫でた。
「航、少し休みな……」
ふと、頭の中で母親の声がする。
小さい時によく歌ってくれた子守唄。
航の背中を優しく叩きながら、その子守唄を歌ってやる。
「航も寝な?いい子だから」
まるで乳飲み子をあやすように子守唄を歌った。航が眠りにつくまで、繰り返し歌った。
「寛太、寛太!」
頭の上から聞き慣れた声がしたから目を開ける。
何だよ……まだ眠たいのに。
「寛太、大丈夫か?」
心配そうに俺の顔を覗き込む、莉久の姿が目に入る。
「莉久~、風呂入りてぇ」
呑気な俺の言葉にビックリしたような顔をしたけど、
「入ってこいよ」
って呆れたように笑ってた。
久しぶりの風呂に満足し寝室に戻れば、莉久が愛しそうに航の頬を撫でていた。
「今ようやく発情が終わって寝たとこ」
「そっか」
消え入りそうな声で呟いた莉久の隣に座り込む。
「でもさ、本当にお前ら頑張ってるよ。愛の力ってやつか?」
意地悪く笑った。
その後、切なそうに航の顔を見つめながら、
「本当はさ、根を上げて俺に泣きついてくるのを期待してた。そしたら、『仕方ねぇな』ってお前から航をかっさらえるじゃん?」
バツが悪そうにはにかむ。
「それを期待して様子を見に来たら……全然そんな雰囲気じゃなかった」
悲しそうに俺のほうを向いたから、何て言葉を返したらいいか戸惑ってしまった。
「馬鹿みたいに愛し合ってんだな、お前ら……」
莉久が勢いよく立ち上がる。「さて、帰るか」って大きく伸びをしながら。
「航もお前も、本当にすげぇよ」
泣きそうな顔で無理して笑う莉久を見て、ズキンズキンと心が痛んだ。
「なんかあったら呼んでくれ」
そう言い残して、莉久は帰って行った。
2
あなたにおすすめの小説
とろけてまざる
ゆなな
BL
綾川雪也(ユキ)はオメガであるが発情抑制剤が良く効くタイプであったため上手に隠して帝都大学附属病院に小児科医として勤務していた。そこでアメリカからやってきた天才外科医だという永瀬和真と出会う。永瀬の前では今まで完全に効いていた抑制剤が全く効かなくて、ユキは初めてアルファを求めるオメガの熱を感じて狂おしく身を焦がす…一方どんなオメガにも心動かされることがなかった永瀬を狂わせるのもユキだけで──
表紙素材http://touch.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=55856941
トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
二人のアルファは変異Ωを逃さない!
コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
★お気に入り1200⇧(new❤️)ありがとうございます♡とても励みになります!
表紙絵、イラストレーターかな様にお願いしました♡イメージぴったりでびっくりです♡
途中変異の男らしいツンデレΩと溺愛アルファたちの因縁めいた恋の物語。
修験道で有名な白路山の麓に住む岳は市内の高校へ通っているβの新高校3年生。優等生でクールな岳の悩みは高校に入ってから周囲と比べて成長が止まった様に感じる事だった。最近は身体までだるく感じて山伏の修行もままならない。
βの自分に執着する友人のアルファの叶斗にも、妙な対応をされる様になって気が重い。本人も知らない秘密を抱えたβの岳と、東京の中高一貫校から転校してきたもう一人の謎めいたアルファの高井も岳と距離を詰めてくる。叶斗も高井も、なぜΩでもない岳から目が離せないのか、自分でも不思議でならない。
そんな岳がΩへの変異を開始して…。岳を取り巻く周囲の騒動は収まるどころか増すばかりで、それでも岳はいつもの様に、冷めた態度でマイペースで生きていく!そんな岳にすっかり振り回されていく2人のアルファの困惑と溺愛♡
アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。
生き急ぐオメガの献身
雨宮里玖
BL
美貌オメガのシノンは、辺境の副将軍ヘリオスのもとに嫁ぐことになった。
実はヘリオスは、昔、番になろうと約束したアルファだ。その約束を果たすべく求婚したのだが、ヘリオスはシノンのことなどまったく相手にしてくれない。
こうなることは最初からわかっていた。
それでもあなたのそばにいさせてほしい。どうせすぐにいなくなる。それまでの間、一緒にいられたら充分だ——。
健気オメガの切ない献身愛ストーリー!
オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました
こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。
氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。
水凪しおん
BL
※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。
過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。
「君はもう、頑張らなくていい」
――それは、運命の番との出会い。
圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。
理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる