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悲劇の朝
しおりを挟む「この咎人を捕らえよ!」
蒼い鎧を身に纏った逞しい体躯の兵士が力強くそう言った。息が苦しくなるくらいの緊迫感が漂う。
すると、20名ほどの近衛兵達が1人の青年をあっという間に取り囲む。青年の風貌は女の子のように少々華奢で、腰の左右に2刀ずつ、計4刀を携えており、どこか華やかさを感じさせる魅力がある。
(なんでオレがこんな目に……こんなはずじゃなかったのに……!)
青年の顔は動揺を隠しきれていない。瞳の奥には深い悲しみが感じられる。
それに対して、無慈悲に彼を捕らえようと迫り来る兵士達。兵士達の腕が目一杯伸び、青年の体に迫り来る。
それを青年はバレリーナの様な華麗な身のこなしで、ひらりと身を躱かわし、振り払った。窓に向かって今度はリレー選手のスタートダッシュさながらの全速力で駆け抜ける。そしてなんと、高さ100メートル以上はあるだろうか、ミレトス王国の中心に高くそびえ立つ城の窓を突き破って飛び降りた。
その瞬間、世界が一気に変わる。
空気の流れが激しく全身を叩きつけ、抗うことの出来ない力が作用する。目を開けることもままならない。
なんとか目を開けて視界に入ったのは、一点の曇りなく澄み切った青空。手の中に収まりそうなくらい小さく見える、鮮やかな色合いの建物の数々。その美しいコントラストは、自身の命の最大の危機(現在進行形)を忘れさせるほど彼を魅了して、神秘的な感覚へと誘いざなった。
「決して逃してはならぬ! 奴を追うのだ!」
蒼い鎧の男の怒号と共に、飛び降りた彼も人生史上最も大きいであろう声で叫んでいた。
「う"う"う"お"お"お"お"お"お"お"落ちるう"う"う"う"!!!!!!!!!!!!」
命綱もパラシュートもない。この高さから地面に落ちたとあっては五体満足で助かる希望はもう1パーセントも残ってないだろう……。
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