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Season1 探偵・暗狩 四折
弾け飛んで1
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◇暗狩 四折
「翔太!依頼よ!」
私は窓から翔太の部屋に侵入し、彼の体を揺さぶった。
「……姉ちゃん。今六時だよ!?」
「あ、ごめん」
まだ薄暗い空の下で、翔太は体を起こした。
まだポヤポヤした表情が少しかわいらしい。
しかし、その目には確かに憎悪が籠っていた。
「……ごめんって」
「で、その依頼ってのは何?」
私は翔太から手を離した。
ひとまず、この子に情報を伝えよう。
「爆弾の作り方を調べてほしいらしいの」
「爆弾っ?!」
翔太は完全に目覚めたようだった。
「いい眠気覚ましになった?」
「うん……というか姉ちゃん、早く続きを」
どうやら、いい感じに食いついてくれたらしい。
「事件はある町の商店街で起こったの」
「依頼人が朝散歩してると、通りから大きな音が聞こえてね」
「様子を見たら……ゴミ箱はへこんで、張り紙は破れていた」
「爆発が起こったの。依頼人も危なかったみたいよ」
そこまで聞くと、翔太は一つ質問した。
「あの、爆発事件なら警察に言えばいいんじゃ?」
そりゃそうだ。
どこの誰かもわからない物好きに推理を依頼するなんて、普通はしないだろう。
だが、今回の依頼人は普通じゃない。
「当日中に依頼人の知り合いが、商店街の偉い人に謝ったみたいで」
「……じゃあ解決でいいんじゃ?」
私はそれとなくにやけた。
そのまま、私は話を続ける。
「その知り合いは、どうやって爆弾を作ったのかは明らかにしなかったの」
「……それを推理する、ってことね」
私は頷いた。察しがよくて助かる。
「ということで、私は至急行くから」
「オッケー」
翔太はゆっくりと立ち上がった。
私はそれと同じタイミングで部屋を出て、外を出る準備を整える。
腕時計、白い半袖、青い短パン。
よし。完璧だ。
◇暗狩 翔太
「で、事件の場所は?」
僕は靴を履いて、外に出る準備を完全なものにした。
「……翔太ついて来るんだ」
「何か問題でも?」
姉の顔が変わった。
いつもの、怪しげなにやけだ。
「いや?私が手塩にかけて『育成』した成果が出たな、って」
「……姉ちゃん?」
姉の術中にはまっていることを自覚するのは、あまりにも遅すぎた。
「い、いや?そういえば今日はゲームの気分のような~」
「じゃあいいよ?私一人でも行けるし」
学校にも行かず、変人偏屈な行動をとる姉。
自分の趣味を他人に押し付けようとする姉。
そんな姉と同類になるのは、なるべく避けたかった。
「……事件の場所は?」
「……隣町よ!行きましょう!」
僕はこの姉と家族で、姉弟であることを理解してしまった。
そんな午前七時だった。
◇◇◇
「……暑くない?姉ちゃん」
「そりゃ熱いよ。夏休みだもん」
僕は買ったスポーツドリンクを飲みつつ、事件現場へ向かった。
白い壁と白い自販機、白いゴミ箱と白が多い場所だった。
「そういや、依頼人はいつ来るの?姉ちゃん」
「あぁ。今回は電話だけよ」
「……え?」
「この暑さじゃ、翔太も家から出たくなくなるでしょ?」
それでも僕らは外に出てるというのに。
なんか不公平な感じがした。
「それじゃ、姉ちゃんはどうやって調べるつもりなの?」
「そうね……まずは、適当に散歩とでも行きましょうか」
「は?」
姉はこっちを振り向くと、笑顔をした。
普段のにやけとは違う、明るい笑顔だ。
「散歩してたら、仮説のアイデアが見つかるかもしれないでしょ?」
「だからそれはドラマの中だけだって……」
相変わらず、この人と言うのはどういう生き物なんだろう。
僕は炎天下をルンルンで歩く姉を見て、何考えたらいいのかわからなくなった。
◇暗狩 四折
「で、翔太何頼む?」
「いちごソフトで」
私はおばあさんに注文を伝えた。
慣れた手つきで機械を操作する彼女を見ていたら、弟が服を引っ張った。
「暑さに勝ててないじゃん。言い出しっぺの姉ちゃんが」
「気温32度よ?勝てるわけないじゃん」
翔太と小競り合いをしている内に、ソフトクリームが届いた。
「はい。いちごソフトと抹茶ソフトね」
「ありがとうございます。ほら、翔太も!」
「……ありがとうございます」
私は翔太にソフトクリームを渡した。
その渦巻きを舐めながら、私達はまた夏空の下に出た。
「……姉ちゃん、ここからどうするの?」
「もうちょっと散歩しましょ。まだ時間はあるし」
翔太の顔が少し呆れたようなものになる。
まぁ、私はそんな事は気にしない。
「……姉ちゃん、今気づいたんだけどさ」
「何?翔太」
「あの自販機のゴミ箱、いっぱいだったね」
「え?」
私はなんとかして、ゴミ箱の映像を引っ張りだそうとした。
その映像には、確かに大量のゴミが映っていた。
「それがどうしたの?翔太」
「いや、特に何も」
あのゴミ箱は大きな道路に通じている。
ひょっとしたら、それでジュースがよく買われるのかもしれない。
「……こんな事、言う必要ないかな」
「いや?そういう小さい情報こそ大切なんだよ?翔太」
私は翔太の質問に答えながら、心に残ったしこりについて考えていた。
その大量のゴミに、なにがあるって言うんだ。
「翔太!依頼よ!」
私は窓から翔太の部屋に侵入し、彼の体を揺さぶった。
「……姉ちゃん。今六時だよ!?」
「あ、ごめん」
まだ薄暗い空の下で、翔太は体を起こした。
まだポヤポヤした表情が少しかわいらしい。
しかし、その目には確かに憎悪が籠っていた。
「……ごめんって」
「で、その依頼ってのは何?」
私は翔太から手を離した。
ひとまず、この子に情報を伝えよう。
「爆弾の作り方を調べてほしいらしいの」
「爆弾っ?!」
翔太は完全に目覚めたようだった。
「いい眠気覚ましになった?」
「うん……というか姉ちゃん、早く続きを」
どうやら、いい感じに食いついてくれたらしい。
「事件はある町の商店街で起こったの」
「依頼人が朝散歩してると、通りから大きな音が聞こえてね」
「様子を見たら……ゴミ箱はへこんで、張り紙は破れていた」
「爆発が起こったの。依頼人も危なかったみたいよ」
そこまで聞くと、翔太は一つ質問した。
「あの、爆発事件なら警察に言えばいいんじゃ?」
そりゃそうだ。
どこの誰かもわからない物好きに推理を依頼するなんて、普通はしないだろう。
だが、今回の依頼人は普通じゃない。
「当日中に依頼人の知り合いが、商店街の偉い人に謝ったみたいで」
「……じゃあ解決でいいんじゃ?」
私はそれとなくにやけた。
そのまま、私は話を続ける。
「その知り合いは、どうやって爆弾を作ったのかは明らかにしなかったの」
「……それを推理する、ってことね」
私は頷いた。察しがよくて助かる。
「ということで、私は至急行くから」
「オッケー」
翔太はゆっくりと立ち上がった。
私はそれと同じタイミングで部屋を出て、外を出る準備を整える。
腕時計、白い半袖、青い短パン。
よし。完璧だ。
◇暗狩 翔太
「で、事件の場所は?」
僕は靴を履いて、外に出る準備を完全なものにした。
「……翔太ついて来るんだ」
「何か問題でも?」
姉の顔が変わった。
いつもの、怪しげなにやけだ。
「いや?私が手塩にかけて『育成』した成果が出たな、って」
「……姉ちゃん?」
姉の術中にはまっていることを自覚するのは、あまりにも遅すぎた。
「い、いや?そういえば今日はゲームの気分のような~」
「じゃあいいよ?私一人でも行けるし」
学校にも行かず、変人偏屈な行動をとる姉。
自分の趣味を他人に押し付けようとする姉。
そんな姉と同類になるのは、なるべく避けたかった。
「……事件の場所は?」
「……隣町よ!行きましょう!」
僕はこの姉と家族で、姉弟であることを理解してしまった。
そんな午前七時だった。
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「……暑くない?姉ちゃん」
「そりゃ熱いよ。夏休みだもん」
僕は買ったスポーツドリンクを飲みつつ、事件現場へ向かった。
白い壁と白い自販機、白いゴミ箱と白が多い場所だった。
「そういや、依頼人はいつ来るの?姉ちゃん」
「あぁ。今回は電話だけよ」
「……え?」
「この暑さじゃ、翔太も家から出たくなくなるでしょ?」
それでも僕らは外に出てるというのに。
なんか不公平な感じがした。
「それじゃ、姉ちゃんはどうやって調べるつもりなの?」
「そうね……まずは、適当に散歩とでも行きましょうか」
「は?」
姉はこっちを振り向くと、笑顔をした。
普段のにやけとは違う、明るい笑顔だ。
「散歩してたら、仮説のアイデアが見つかるかもしれないでしょ?」
「だからそれはドラマの中だけだって……」
相変わらず、この人と言うのはどういう生き物なんだろう。
僕は炎天下をルンルンで歩く姉を見て、何考えたらいいのかわからなくなった。
◇暗狩 四折
「で、翔太何頼む?」
「いちごソフトで」
私はおばあさんに注文を伝えた。
慣れた手つきで機械を操作する彼女を見ていたら、弟が服を引っ張った。
「暑さに勝ててないじゃん。言い出しっぺの姉ちゃんが」
「気温32度よ?勝てるわけないじゃん」
翔太と小競り合いをしている内に、ソフトクリームが届いた。
「はい。いちごソフトと抹茶ソフトね」
「ありがとうございます。ほら、翔太も!」
「……ありがとうございます」
私は翔太にソフトクリームを渡した。
その渦巻きを舐めながら、私達はまた夏空の下に出た。
「……姉ちゃん、ここからどうするの?」
「もうちょっと散歩しましょ。まだ時間はあるし」
翔太の顔が少し呆れたようなものになる。
まぁ、私はそんな事は気にしない。
「……姉ちゃん、今気づいたんだけどさ」
「何?翔太」
「あの自販機のゴミ箱、いっぱいだったね」
「え?」
私はなんとかして、ゴミ箱の映像を引っ張りだそうとした。
その映像には、確かに大量のゴミが映っていた。
「それがどうしたの?翔太」
「いや、特に何も」
あのゴミ箱は大きな道路に通じている。
ひょっとしたら、それでジュースがよく買われるのかもしれない。
「……こんな事、言う必要ないかな」
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