ドライバー&ワケアリーズ 史上最悪のヒッチハイク

草薙ユイリ

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エピローグ

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 朝8時、青森。約束通り奢ったコンビニアイスを食べながら、3人は青森を行く。どうやらまだ雪は降っていないらしい。珍しい。

「……なんだかんだ楽しかったですね。この旅行」

 カイトさんがそう言った。いや、俺は散々だったけどな。まぁ、楽しくなかったと言えば嘘になるけど。そんな中、俺はふと気になったことを質問する。

「そういえば皆さん、帰りもヒッチハイクですか?」
「「「いえ、帰りの交通費はあります」」」

 まさかのタイミングでハモった。どうやら、俺はここで3人とお別れらしい。

「……藍さん、もしかして寂しいんですか?」

 カイトさんに図星を突かれる。いやまぁ、なんか普通に刺激的だったし。

「まぁ、ある意味ここで完全にお別れだと寂しいというか。でも、連絡先交換するわけにも……」
 
 すると、カイトさんは提案する。

「じゃあ、もしもまた次会ったら連絡先を交換しませんか?」
「次って?」
「何かの偶然で、またこのメンバーが集まったら。最初の出会いは偶然かもですけど、二度も続いたら運命を感じるじゃないですか」

「……私も賛成です。なんか、そういうノリ好きです」

 ミアさんは会話に参加する。というか、賛成なのかよ。ジンさんもなんか納得いってる顔してるし……

「じゃあ、それで」
「ふふっ。また出会いましょうね。藍さん、ミアさん、ジンさん」

 そんな偶然あるのかな、と思いつつ、俺はその約束を胸にしまう。もしまた出会えたら、割と嬉しい。さて、ここいらでいよいよ本当にお別れだ。車をしばらく走らせると、実家近くの繁華街に着いた。

「……じゃあ、この辺で。ありがとうございました。藍さん」
「感謝するぞ、藍さん」
「ありがとうございました。あなたに主神のご加護がありますように」

 そして、車の中には俺だけになった。なんというか、いつも乗っている車なのにやけに広々と感じる。そりゃ4人も乗ってたんだからな。お疲れ様、俺の車。

 しばらく走らせていると、ついに実家に着いた。意外と繫華街近くにあるのが俺の実家だ。近代的で洋風な住宅だ。俺はインターホンを鳴らして家に入る。元気そうな母親が出迎えてくれた。リビングに入ると、懐かしい感情が湧き上がってくる。

「……あれ、兄貴は?」
「それが、遠くから来る友達を迎えに来ているらしいの」

 俺の兄貴は実家暮らしのくせに、妙に交友関係が広い。今度はどんな珍しい人間を持ってくるのかな……と思いながら、実家でゆっくりする。2時間ほど経つと、インターホンが鳴った。兄貴かな。母親がインターホンに出た。

「……え? あぁ、そういうのお断りして。あの、うち宗教とか信じてなくて」

 まさかの宗教勧誘。お疲れさまだな、母親も。

「いや『ラブラの会』がどうとか知りませんが……」

 俺は大急ぎで玄関に向かう。母親の止める声も聴かず、俺はドアを開けた。そこには――――カイトさんと、教団員らしき女性がいた。宗教らしい白装束をしているが、さすがに見間違えではないだろう。

「……すごいなぁ、主神の力だ。藍さん、さっきぶりです」
「さ、さっきぶりですね……」

 そうこうしてたら、兄貴の車が帰って来た。運転するのは兄貴。その隣には兄貴の『遠くから来る友達』……おいちょっと待て見覚えある顔だぞ。車から出てきたのは、兄貴とジンさんだ。

「……え?」

 目を丸くするジンさん。カイトさんは嬉しそうに「ジンさんまで来た!」と言っている。そういえば、ジンさんも『青森に友達がいる』と言っていたような……そうこうしていたら、兄貴の車から父親も出て来た。

 俺は焦る心を抑え、ジンさんとカイトさんを置いておき、一旦父親と話す。いつも早朝に仕事を終えるはずの父親が、なぜ今になって帰って来たのか。それを聞いてみた。

「中学生くらいのお嬢ちゃんに『この辺で豪雪が見られるのはどこですか?』って聞かれてな。色々調べてたらこんな時間だった」

 カイトさんとジンさんを無理やり俺の車に乗せ、父親から教えられた豪雪スポットに向かう。繫華街を抜け、畑が多くなる場所に差し掛かった。そこに――――ミアさんはいた。

「……え、どういう偶然ですか!?」

 ミアさんはそう叫び、ジンさんは呆れ、カイトさんは「もう全員で年越ししましょうよ!」と言っている。しかも他の2人も、全員で年越しすることに乗り気だ。

「まぁ、再会できてよかった、ってことで……」

 俺は震えながら、そう呟く。どうやら、最高にややこしい年越しとなりそうだった。
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