門番のダイス

Fukan

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一詩

天国の門

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名前がわからないなら、
仮に天国の門と名付けておく。
そうしないと今の現状に
耐え切れなくなってしまいそうだからだ。

天国のイメージ
つまり、青々しい空に放物線を描くように
うっすらとすじ雲がたなびき、
その下に聳え立つ石造りの門。
しかし、そこには高々と鉄格子の扉がはめられ、
どんな屈強な泥棒さえも乗り越えることはできない。
私は、その門の向こうにどんなきれいな世界が待っているのか、
門の前で想像することしかできない。

その門から見える景色がすべてであり、
想像力で補完するにはあまりにも私の経験が乏しく、
またあまりにもその場になじんでしまっていた。

人や車や生き物が通った後が
だんだんと馴らされてけもの道になるように
いつのまにか目的のためのツールにしか見えないのだ。

次の目的地に行くための中継地だとすると、
その前には別の中継地があり、
その先には新たな中継地がある
私の意識はその瞬間にゆっくりと宙を浮き、
ボードゲームのようなマップの全容が
広々としたエリアの中に見えてくるようになるのだ。

マップは次の目的地に行くためのツールであり、
そこに行きたい理由があるから、
行くためにはどうすればいいかを考える。

何をするのか
いついくのか
いつまでいるのか
費用はいくらかかるのか
行った先にどんなリスクがあるか
それまでに何をするか

芋づる式にそんなものはいくらでも
出てくるにちがいない。

だが今の現状、そして将来を見越して、
人生の収支を試算してみたとき
そこに行くことがいつかプラスになると判断したから
そこに行くことにしたのだ。

その目的地に行きたいと思ったときから
自分の今いる場所は色あせてしまう。
そしてその目的地はずっと昔から変わらず、
あらゆる光に包まれた
自分だけの天国になるのだ。

天国の門は天国にいくための目印でしかない。
いつのまにかその門をめざすことが人生の目的になり、
門を目的地に設定して、
そのためにあらゆる意識を奔走させてゆく。

目的地がはっきりとその形を現したとき、
なぜ人は成長できるのだろうか?

目的地までのルートを遮る建物の周囲に
縦横無尽に走る裏道の中から最適を探してイメージを作り、
また、ルートの前を右往左往するあまたの人の中から、
偶然を意識して目的地につなげようとする。

それぞれの人生を生き、同じ時間を共有した、
時に優しく助けてくれたり、本音を晒したり、
また傷つけたりした彼らは私にとって
ただの中継地なのか
目的地なのか
それとも天国だったのかはわからないが。
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