悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します

水空 葵

文字の大きさ
56 / 100
第1章

56. 地雷を踏み抜きました

「あの子達と仲が良いみたいだが、貴女は何者なんだ?」
「どう見ても私達と同じ平民じゃないわよ」
「女性のお貴族様は男に好き勝手されて大変って聞くから、逃げ出してきたのよ。きっと」

 不審がられては無いけれど……憐れむような目を向けられて、曖昧な表情を浮かべてしまう。
 この町では女性も尊重されているけれど、平民でも他の場所では女性の扱いが酷いことは認識されているみたい。

 だから、こんな目を向けられているのよね……。
 拒絶されなくて良かったけれど、この現実には泣きたくなってしまう。

「皆さんが思っているような目には遭っていませんわ。
 とりあえず、治癒魔法をかけていきますね?」
「あ、はい。お願いします」

 曖昧な返事が返ってきたけれど、気にしないで一人ずつ治癒魔法をかけていく。
 みんな痛みを我慢していたみたいで、治した後は安心したような表情を浮かべる人が多かった。

 そして、最後の一人を治すと、こんな言葉が飛んできた。

「貴女、領主様なんですよね? どうして俺達みたいな平民に関わってるんですか?」
「確かに……。まさか、見返りを求められるのか?」

 途端に不安そうな雰囲気になってしまったから、慌てて口を開く。

「私は苦しい思いをしている人を放っておきたく無いのですわ。
 だから平民でも、困っていたら手を差し伸べるように心がけています。
 見返りも求めたりはしませんわ」

 私に害を成そうとしている人は別だけれど、困っている人は放っておけないのよね。
 それに、他の貴族は平民と関わることも嫌うみたいだけど、私は小さい頃から領民と遊んだりしていたから、抵抗も感じない。

 仲良く出来たら良いな……と思っているけれど、身分差があるから難しいのよね。

「そうですか……」
「変わった人ですね」
「ちょっと、それは失礼よ。聖女様みたいな人って、怒らせると怖いのよ!?」

 変わった人と言ってきた男性が女性にぺしぺしと頭を叩かれている。
 ここの人達は仲が良いみたい。

「多少なら見過ごしますから、怖がらないでくださいね」
「ひっ……」

 怖がらせないように笑顔で声をかけてみたのだけど、逆効果だったみたい。
 でも、他の人がこんな言葉を零していた。

「これだけ治せるって、どう考えても聖女様だよな……」
「確かに、スタセレニナ物語に出てくる聖女様って感じがするな。容姿もそっくりだし」
「まさか、聖女様の生まれ変わりか?」
「私、その聖女様の子孫みたいですの。だから、この力も聖女様のお陰ですわ」
「なるほど。聖女の子も聖女という話は本物だったんですね」

 それから、どんどん話が大きくなって、私は領主じゃなくて聖女として敬われることに決められていた。
 くすぐったいからお断りしたけれど。

 ……どうして残念そうにしているのかしら?
 気になったけれど、地雷を踏み抜きそうな気がしたから、口にはしない。

 

 無事に領民に受け入れられたことは、素直に喜んだ方が良いわよね?
 魔力はまだ余裕があるけど、こんなに使ったのは初めてだから、疲れてしまった。



   ◇



 あの後、私達は一旦カストゥラ邸に戻ることになった。
 帰るのが遅いと心配させてしまうから、授かった領地のことは執行官に簡単に指示を出してから、屋敷を発った。

 執行官というのは、新しく領主になった人に統治の方法を教える人みたいで、私達よりもかなり遅れて屋敷に来たのよね。
 どうやら私の立場も知っているみたいで、提案したらすぐに受け入れてもらえた。

 良くないことをされても、遠見の魔法でブランが監視しているからすぐに分かるみたい。
 なんて頼もしいのかしら?

「まさか馬も乗せられるとはな」
「怖がらないように眠らせているとはいえ、少し心配になる」
「何かあっても治せますから、大丈夫ですわ」

 馬を撫でるグレン様とお父様に、そう口にする私。
 もちろん万が一が起こらないように気を付けているから、治癒魔法の出番は無いと思うけれど、安心させるつもりで言ってみた。

「頼りにしているよ。今も防御魔法をかけてくれているようだが……」
「怪我をしないのが一番ですもの」

 ものすごい速さで過ぎていく雲を横目に、そんなことをお話している。
 どういうわけか、私はグレン様の足の上に座らされているから、少し落ち着かないのよね……。

 ブランがいくら大きくても、馬を二頭乗せていたら人が座れる場所が無くなってしまって、この状態に落ち着いた。
 お父様とグレン様が一緒に座ること、私とお父様が座ることも提案してみたのだけど、一秒も待たずに却下されてしまったのは不思議だわ。


 お父様に抱きしめられるのは抵抗があるけれど、恥ずかしくは無いから大丈夫なのに。

「グレン様、顔が近いですわ」
「仕方ないだろ。これでもユリウス殿と一緒になるよりはマシだ」

 た、確かに……!
 私とグレン様なら頭一つ分くらい背丈が違うけれど、お父様とグレン様だったら、後ろを向けなくなってしまうわ。

 私が後ろを向いてもグレン様の胸にぶつかるだけだから何も起こらないけど……。
 ……これ以上は考えない方が良さそうね。

「レイラ、何を想像している?」
「な、何も考えていませんわ」

 何かを察したらしいお父様が振り向いてきて、無表情で問いかけてきた。
 慌てて答えたけれど、失敗した気がするわ……。

「それなら良いが。
 男同士なんて、見ていても気持ち悪いだけだから止めておきなさい」
「っ……」

 この言葉のせいで、私は声にならない悲鳴を上げながら、表情を隠したくてグレン様の胸に顔を埋めた。
 どうして脳裏に浮かんでいたことが分かるのよ……!?
感想 27

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。 というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。 私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。 だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。 戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。