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46. 罠と同じ方法
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「――殿下、お怪我はありませんか?」
「無傷だ。皆も怪我は無いか?」
「全員、かすり傷一つありません!」
元お義父様が取り押さえられて少しすると、兵士達がイアン様の問いかけに余裕の表情で応える。
元お義父様は拘束の手から逃れようと必死にもがいているけれど、六人の屈強な兵士に囲まれては成す術が無いようで、うめき声は聞こえてもピクリとも動かなかった。
でも、まだ油断は出来ない。うつ伏せで何も見えない状況でも、周囲を巻き込む攻撃魔法なら使えるのだから。
何かいい方法があればいいのに……。
そう思った時、使っていた洗脳魔法が脳裏を過った。
「イアン様、洗脳魔法が書かれている本はありませんか?」
「ここにある」
あることを思いついて問いかけると、イアン様は懐から小さな魔法書を取り出した。
手のひらと同じくらいの大きさで、中の文字は普通の魔法書よりもずっと小さい。
それでも洗脳魔法の記述を読み取ることは出来るから、さっそく詠唱を始める。
「味方に当てないように気を付けて」
「分かりました」
ここからだと兵士に当ててしまいそうだから、私は兵士達のすぐ近くまで移動して、間に手を差し込む。
そして洗脳魔法を放つと、うめき声が止まった。
すると兵士の一人が縄を取り出し、あっという間に元お義父様を縛っていく。続けて元お義母様も縄で縛られて、路地の外へと運ばれていった。
「……アイリス、俺達も馬車に戻ろう。あの二人が首謀者とは限らないから、防御魔法はそのままで」
「はい、分かりました」
元お義父様達には洗脳の魔法がかかっているから、取り調べに苦労はしないと思う。
でも、まだ本人達の口からは何も語られていない。だから、今は最悪の事態を考えることにした。
◇
あの後、私達はウェストフォールの町で一泊してから王都に戻った。
これから元お義父様達の取り調べが行われることになっていて、洗脳魔法をかけた私は最初の一瞬だけ顔を合わせないといけない。
「えっと、命令すれば良いのですよね?」
「ああ。この文通りに言えば大丈夫だ」
今はその時で、私の目の前には元お義父様の姿がある。
正直、これ以上顔を合わせたくない。
だから、渡された紙に書かれている文章を読み上げる。
「これは命令をする。これからは他人にも自分にも危害を加えないこと。質問を受けたら、誰が相手でも正直に答えること。私の命令を最優先にすること。この場に居る人の指示に従うこと。以上」
自分の言葉ではないから違和感があるけれど、これが洗脳魔法の使い方だから仕方ない。
幸いにも一回で成功したみたいで、元お義父様は一回だけ頷く。洗脳魔法にかかっている時特有の、視線が定まらない様子は変わらないけれど……イアン様が指示を出すと従っていたから、効果は出ているらしい。
「これで取り調べが出来ます。ご協力、感謝します!」
「ロイド、ついてこい!」
兵士の命令にも従っているから、取り調べで私が手を出すことはこれ以上無いと思う。
ちなみに、元お義母様はイアン様が跳ね返した洗脳魔法にかかっていて、命令は彼自身がしている。
元お義父様と違って、元お義母様は厄介な魔法を使えるから、イアン様の命令だけを聞き入れるようにしたらしい。
「アイリス、嫌な役を任せて申し訳なかった」
「大丈夫です。これくらい気になりませんから」
元お義父様が連れていかれ、静まり返った広間に私達の声だけが響く。
焦りも危機感もない状況は久々だから、なんだか落ち着かない。
「……それに、恨んでいる人の惨めな姿を見れて気分が晴れたので、感謝するくらいですわ」
「それなら良かった。取り調べの結果が出るまで、お茶でもどうだろうか?」
「ぜひ、ご一緒したいです」
ようやく緊張が解けて、私は久々に笑顔になれる。
イアン様に手を差し出すと、彼は迷いなく手を重ねて笑顔を返してくれる。
そして、二人並んで庭園が見える部屋に足を向けた。
「無傷だ。皆も怪我は無いか?」
「全員、かすり傷一つありません!」
元お義父様が取り押さえられて少しすると、兵士達がイアン様の問いかけに余裕の表情で応える。
元お義父様は拘束の手から逃れようと必死にもがいているけれど、六人の屈強な兵士に囲まれては成す術が無いようで、うめき声は聞こえてもピクリとも動かなかった。
でも、まだ油断は出来ない。うつ伏せで何も見えない状況でも、周囲を巻き込む攻撃魔法なら使えるのだから。
何かいい方法があればいいのに……。
そう思った時、使っていた洗脳魔法が脳裏を過った。
「イアン様、洗脳魔法が書かれている本はありませんか?」
「ここにある」
あることを思いついて問いかけると、イアン様は懐から小さな魔法書を取り出した。
手のひらと同じくらいの大きさで、中の文字は普通の魔法書よりもずっと小さい。
それでも洗脳魔法の記述を読み取ることは出来るから、さっそく詠唱を始める。
「味方に当てないように気を付けて」
「分かりました」
ここからだと兵士に当ててしまいそうだから、私は兵士達のすぐ近くまで移動して、間に手を差し込む。
そして洗脳魔法を放つと、うめき声が止まった。
すると兵士の一人が縄を取り出し、あっという間に元お義父様を縛っていく。続けて元お義母様も縄で縛られて、路地の外へと運ばれていった。
「……アイリス、俺達も馬車に戻ろう。あの二人が首謀者とは限らないから、防御魔法はそのままで」
「はい、分かりました」
元お義父様達には洗脳の魔法がかかっているから、取り調べに苦労はしないと思う。
でも、まだ本人達の口からは何も語られていない。だから、今は最悪の事態を考えることにした。
◇
あの後、私達はウェストフォールの町で一泊してから王都に戻った。
これから元お義父様達の取り調べが行われることになっていて、洗脳魔法をかけた私は最初の一瞬だけ顔を合わせないといけない。
「えっと、命令すれば良いのですよね?」
「ああ。この文通りに言えば大丈夫だ」
今はその時で、私の目の前には元お義父様の姿がある。
正直、これ以上顔を合わせたくない。
だから、渡された紙に書かれている文章を読み上げる。
「これは命令をする。これからは他人にも自分にも危害を加えないこと。質問を受けたら、誰が相手でも正直に答えること。私の命令を最優先にすること。この場に居る人の指示に従うこと。以上」
自分の言葉ではないから違和感があるけれど、これが洗脳魔法の使い方だから仕方ない。
幸いにも一回で成功したみたいで、元お義父様は一回だけ頷く。洗脳魔法にかかっている時特有の、視線が定まらない様子は変わらないけれど……イアン様が指示を出すと従っていたから、効果は出ているらしい。
「これで取り調べが出来ます。ご協力、感謝します!」
「ロイド、ついてこい!」
兵士の命令にも従っているから、取り調べで私が手を出すことはこれ以上無いと思う。
ちなみに、元お義母様はイアン様が跳ね返した洗脳魔法にかかっていて、命令は彼自身がしている。
元お義父様と違って、元お義母様は厄介な魔法を使えるから、イアン様の命令だけを聞き入れるようにしたらしい。
「アイリス、嫌な役を任せて申し訳なかった」
「大丈夫です。これくらい気になりませんから」
元お義父様が連れていかれ、静まり返った広間に私達の声だけが響く。
焦りも危機感もない状況は久々だから、なんだか落ち着かない。
「……それに、恨んでいる人の惨めな姿を見れて気分が晴れたので、感謝するくらいですわ」
「それなら良かった。取り調べの結果が出るまで、お茶でもどうだろうか?」
「ぜひ、ご一緒したいです」
ようやく緊張が解けて、私は久々に笑顔になれる。
イアン様に手を差し出すと、彼は迷いなく手を重ねて笑顔を返してくれる。
そして、二人並んで庭園が見える部屋に足を向けた。
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