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第2章 公爵令嬢、料理人になりました
8. パスタに似たもの①
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「この料理を作ったのは誰か聞いても?」
マリエットが声のした方に視線を向けると、青い髪の男性――テオドール王太子に射抜くような視線を向けられていることに気付く。
問いかける口調は穏やかでも、目玉焼きを作ったのがマリエットだと確信しているようだ。
「私でございますが、何か問題がございましたでしょうか?」
テオドールとは家同士の付き合いや社交の場で何度も顔を合わせているため、怒りを買っていないことは察せられる。とはいえ、不興を買っている可能性もゼロではなく、マリエットは下手に出ることを選んだ。
すると、テオドールの後ろに控えているカミラがほくそ笑むところが目に入る。
マリエットは令嬢の中では背が高い方だが、長身のテオドールが間に入るとカミラの姿は見えなくなった。
(私が窮地だと思って喜ぶなんて、酷い人……)
ちなみに、カミラはマリエットよりも背が低く、社交界では可愛らしい令嬢と評されていた。性格はちっとも可愛くないが、社交界では猫を被っているため真実を知る人は少ない。
「――とんでもない。とても美味しかったから、褒めに来たのだ。
あの黄色と白の料理の名前を聞いても良いだろうか?」
「聞いても驚かないで頂けますか?」
名前が名前だからと念押しすると、テオドールは笑顔で頷く。
「目玉焼きでございます」
「初めて聞くが、納得の名前だ。昼食も楽しみにしている。
そうだな……グルース公爵が絶賛していたナポリタンを食べてみたい」
「見習いの私で宜しければ、来週辺りにご用意いたします」
一週間かかるのは、王宮のメニューの大半は一週間後まで決まっているからだ。
食材によっては数日から一週間かけて用意する必要があるため、簡単に変えることも出来ない。
それでも良いならと、突然のリクエストに困惑しつつ頷くと、テオドールは小さく拳を握り締めてから踵を返した。
すると、少し離れたところから見ていたカミラが近付いてきて、こんなことを口にする。
「殿下に目を付けられるなんて、貴女は天才ね。いつまでここに居られるか、見ものだわ」
本人は嫌味のつもりだが、マリエットには届かない。
陰口が溢れる社交界を生き抜いてきたのだから、これくらいの小言では動じないのだ。
それに、マリエットの頭の中は既に料理のことに切り替わっており、食材を集めるために一番美味しくなりそうなレシピを確認している。
「……アンナさん、すぐに集められる食材のレシピが思いついたのですけど、昼食も私が作って良いでしょうか?」
「すぐに集まる食材で王家の方々を満足させられるかしら?」
「グルース公爵家は全員満足していたので、大丈夫だと思います」
グルース公爵家といえば、王家には劣るものの筆頭公爵家として知られている。
料理人を含めた使用人の質は王家に並んでおり、パーティーが開かれる際には誰しもが料理の美味しさに満足以上の感想を抱くほど。
上質な料理を毎日口にしているグルース家の全員を満足させた料理なら、王家に出しても問題ないはずだ。
アンナはそう考え、王太子のリクエストに応えるための行動に移ることにした。
「物凄い説得力ね。でも、私が決められることでは無いから、一度料理長に相談してみましょう」
「分かりました」
マリエットがお皿を片付け終えると、ちょうど料理長が姿を見せる。
彼は昼食の仕込みに来たようで、手早く道具の準備を進めていく。
「グレンさん、夕食のメニューで相談したいことがあります」
そこにアンナが割って入ると、料理長――グレンは手を止めた。
「今夜はパスタにする予定と言ったはずだが、良い味付けでも思いついたか?」
「いえ、テオドール殿下がナポリタンという料理を希望されまして、マリエットにお願いしようと思うのです」
「見習いには荷が重すぎると思うが……そもそもナポリタンとは何だ? 俺も知らない料理だが、マリエットは分かるのか?」
「はい。私がグルース家で作ったところ、公爵様は大変満足されておりました。レシピも必要ならお伝えしますが……」
「嘘は言っていないようだな。五日後の夕食が決まっていないから、そのナポリタンにしよう。
食材の調達からアンナとマリエットに任せても良いか?」
「はい、もちろんです!」
こうして、マリエットは夕食も任されることに決まる。
けれども、料理長とはまだ自己紹介をしていないことに気付き、買い出し前に軽く談笑することになった。
マリエットが声のした方に視線を向けると、青い髪の男性――テオドール王太子に射抜くような視線を向けられていることに気付く。
問いかける口調は穏やかでも、目玉焼きを作ったのがマリエットだと確信しているようだ。
「私でございますが、何か問題がございましたでしょうか?」
テオドールとは家同士の付き合いや社交の場で何度も顔を合わせているため、怒りを買っていないことは察せられる。とはいえ、不興を買っている可能性もゼロではなく、マリエットは下手に出ることを選んだ。
すると、テオドールの後ろに控えているカミラがほくそ笑むところが目に入る。
マリエットは令嬢の中では背が高い方だが、長身のテオドールが間に入るとカミラの姿は見えなくなった。
(私が窮地だと思って喜ぶなんて、酷い人……)
ちなみに、カミラはマリエットよりも背が低く、社交界では可愛らしい令嬢と評されていた。性格はちっとも可愛くないが、社交界では猫を被っているため真実を知る人は少ない。
「――とんでもない。とても美味しかったから、褒めに来たのだ。
あの黄色と白の料理の名前を聞いても良いだろうか?」
「聞いても驚かないで頂けますか?」
名前が名前だからと念押しすると、テオドールは笑顔で頷く。
「目玉焼きでございます」
「初めて聞くが、納得の名前だ。昼食も楽しみにしている。
そうだな……グルース公爵が絶賛していたナポリタンを食べてみたい」
「見習いの私で宜しければ、来週辺りにご用意いたします」
一週間かかるのは、王宮のメニューの大半は一週間後まで決まっているからだ。
食材によっては数日から一週間かけて用意する必要があるため、簡単に変えることも出来ない。
それでも良いならと、突然のリクエストに困惑しつつ頷くと、テオドールは小さく拳を握り締めてから踵を返した。
すると、少し離れたところから見ていたカミラが近付いてきて、こんなことを口にする。
「殿下に目を付けられるなんて、貴女は天才ね。いつまでここに居られるか、見ものだわ」
本人は嫌味のつもりだが、マリエットには届かない。
陰口が溢れる社交界を生き抜いてきたのだから、これくらいの小言では動じないのだ。
それに、マリエットの頭の中は既に料理のことに切り替わっており、食材を集めるために一番美味しくなりそうなレシピを確認している。
「……アンナさん、すぐに集められる食材のレシピが思いついたのですけど、昼食も私が作って良いでしょうか?」
「すぐに集まる食材で王家の方々を満足させられるかしら?」
「グルース公爵家は全員満足していたので、大丈夫だと思います」
グルース公爵家といえば、王家には劣るものの筆頭公爵家として知られている。
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上質な料理を毎日口にしているグルース家の全員を満足させた料理なら、王家に出しても問題ないはずだ。
アンナはそう考え、王太子のリクエストに応えるための行動に移ることにした。
「物凄い説得力ね。でも、私が決められることでは無いから、一度料理長に相談してみましょう」
「分かりました」
マリエットがお皿を片付け終えると、ちょうど料理長が姿を見せる。
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