天職を見つけたので毎日が幸せです!

水空 葵

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第2章 公爵令嬢、料理人になりました

12. 最初の賄い②

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 ハンバーグを口に運ぶと、程よい塩味が一気に広がる。
 流石は王宮仕えの料理人と思える味だ。

 けれども、食材の質が良くないせいで、食感はボソボソとし口の中の水分を奪われるもの。
 味付けのお陰で難なく食べられるものの、決して美味しいとは言えなかった。
 
 一方、スープは王家に出した余りということもあり、具の野菜からは程よい歯応えを感じられる。お肉はとても柔らかく、味付けも相まってとても美味しい。
 けれど味付けは塩味が基本なため、毎回これでは飽きてしまいそうだ。

「マリエットさん、最初の賄いはどうかしら?」
「正直に答えて良いのでしょうか?」

 ひと口ずつ運ぶとアンナに問いかけられ、マリエットは答えに困ってしまう。

「ええ、もちろん」
「分かりました。スープは美味しいと思いますが、ハンバーグはそう思えませんでした。味付けは良いのですけれど、食材が駄目です」
「味付けや調理方法を変えても駄目かしら?」
「お肉だと難しいと思います」

 痛んだ食材を使って料理をしたこともあるものの、痛んだ肉を使った時は上手く出来なかった。
 料理スキルのお陰で食あたりは起さずに済んだものの、とても人に出せるものではないとマリエットは思っている。
 
「マリエットさんでも難しいなら、本当に無理なのかもしれないわね……」
「狩りをすれば安くて良いお肉が手に入るので、アンナさんも試してみますか?」
「命がいくらあっても足りないわ」
「練習すれば大丈夫です。
 ……ごちそうさまでした」

 言葉を交わしている間に完食し、マリエット達は食器を片付けに向かう。
 王族や貴族は食器の片付けを使用人に任せているが、使用人になると自分が使った食器は自分で綺麗にして干す決まりだ。

 だから、マリエットは流し場で汚れを軽く落としてからスキルで綺麗にし、アンナは石鹸を使って洗っていく。
 それが終わると、残りの休憩時間は自由に過ごせる。

「マリエットさん。私は部屋で休むけれど、大丈夫かしら?」
「私も部屋で休憩するので大丈夫です」

 休憩場所の説明は受けていないため、休むなら私室なのだろう。マリエットはそう考え、アンナと同じ方向に足を向ける。
 部屋はすぐ近くだったようで、お互いに会釈をしてから部屋に入った。


 それからしばらくして。
 休憩を終え厨房に戻ったマリエットは、アンナと手分けして賄いを作ることになった。

 賄い担当の仕事は、王宮暮らしをしている使用人の夕食を作ることだ。
 昼食の使用人全員分より量は少ないものの、大変なことに変わりはない。

「まずはオニオンとピーマンはこの切り方で、ベーコンはこんな感じでお願いします」
「分かったわ」

 だから、マリエットは早めに調理を始めて、夕食時に備えることに決めている。
 麺は伸びてしまうためまだ手を付けていないものの、具の方は料理スキルで美味しく温め直せるのだ。

 けれど、オニオンを切るときに目が痛くなることは防げず、マリエットは何度か涙を拭う。
 ちなみに、今回は余っていた食材も使っているものの、どれも状態は悪くない。だから、マリエットは美味く作れる自信を持っていた。

「アンナさんは大丈夫なのですね……」
「慣れだと思うわ。マリエットさんも、すぐ大丈夫になるはずよ」

 食材を切り終えたら、大きなフライパンで炒めていき、頃合いを見てケチャップから作ったソースと和えていく。
 そして、大抵の使用人が夜の休憩に入る時間を見計らって麺を茹で、最後に具と混ぜ合わせ軽く炒めたら完成だ。

「――いよいよ完成かしら?」
「はい。早すぎましたか?」
「丁度良い時間だから驚いたわ。マリエットさんの料理スキル、未来も見えるのかしら?」
「そんな力はありません。ただ、夜の休憩時間から計算して動いただけです」

 言葉を交わしながら盛り付けをすると、休憩に来た使用人が次々と姿を見せる。

「美味しそうな匂い……」
「今日の賄いは当たりかもしれないわ」

 ちらほらと期待する声も聞こえ、マリエットは少し緊張してしまう。
 もし不味いと言われたら、自信を無くすに違いないから。

 けれど、ナポリタンを口にした人の方から聞こえてくるのは、満足している声ばかりだ。

「このパスタ、初めて見るけど……すごくおいしいわね」
「ナポリタンって書いてあったわ。聞いたことが無いから、きっと料理人さんの発明よ」
「また食べたいわ」

 厨房のカウンターから見渡すと、大勢が満足そうに食事を勧めていて、ようやくマリエットは安堵から頬を緩める。
 そして、人の流れが途切れると、マリエット達もナポリタンを手に厨房の奥にあるテーブルを囲った。

「いただきます」
「いただきます」

 食前の挨拶をして、具と麺を絡めて口に運ぶアンナ。
 マリエットはアンナの反応が気になっていて、まだ手を付けられずにいる。

「……美味しい。パスタに似ているようで、別物ね。これなら王家の方も満足させられると思うわ」
「気に入って頂けて良かったです。この量を作るのは初めてで、不安でしたの」
「沢山作る方が難しいから、王家に出すときはもっと美味しく出来そうね」

 期待するような視線を向けられ、マリエットは照れ隠しのように料理へと視線を落とす。
 そして、最初のひと口を確かめると、満足そうに笑顔を浮かべた。
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