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第2章 公爵令嬢、料理人になりました
14. 【閑話】興味を惹かれる理由
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マリエットが今日の仕事を終えた時から遡ること一時間。
夕食を終え趣味の時間を始めようとしていたテオドールの耳に、使用人の会話が入っていた。
「今夜の賄い、美味しかったなぁ」
「ナポリタンだっけ? 王家に出しきれなかった分にしては多かったな……」
「あれは賄い用に作ったらしいぞ。しかも、考えたのは新人の料理人らしい」
自分が楽しみにしているナポリタンを使用人が先に食べているらしい。
王族に出す前に使用人の賄いで出すことで、味の確認をしているのだろう。
これ自体は普段から行われていることで、ただ聞いただけなら気にも留めない。
しかし、今回は様子がおかしい。
先の会話以外にもナポリタンを褒めたたえる声が方々から聞こえてくるのだ。
(一回目は不評なことが多いが、今回は好評だな……俺も食べてみたい)
だから、テオドールは今夜の賄に興味を持った。
既に夕食を済ませた後だが、美味しいものは別腹と言う。完食は難しくないだろう。
「……俺が賄いを貰うことは出来るか?」
「いくら殿下でも、難しいかと。賄いは残り物や状態が悪い食材から作られます。味付けが良くても、とても殿下の口に入れるわけにはいきません」
とはいえ王族が使用人向けの賄いを口にすることは難しい。
使用人向けに作られる料理だから毒を盛られる心配はなく、また王族は解毒スキルを持っているため何か起きる心配は無いものの、それは周知されていないため料理人が快く料理を出すとは考えにくかった。
けれど、食べる方法が無いわけではない。
王太子と見抜かれなければ、賄いを口にすることも出来るはずだ。
「そうか。では、俺も使用人という体で貰いに行く。何も知らなければ、料理人が罰せられることも無い」
「では、私も見なかったことに致しますが、よろしいですか?」
「当然だ。全て俺が独断で行ったことで、責任も俺にある」
万が一があっても使用人達を巻き込まないよう策を講じ、テオドールは使用人達の調査で用いる変装用の服に着替える。
そして、侍従達の前を何度か往復して気付かれないことを確認してから、賄いが出される厨房へと向かった。
「今から賄いを頂くことは出来ますか?」
「ええ。麺を茹でる必要があるので、十分ほどお待ちいただけますか?」
「分かりました」
やり取りからは、気付かれている気配は感じられない。
しかし、対応している料理人――マリエットの顔を見れば、正体を見抜かれていると察せる。
(彼女は見なかったことにしているようだ。こちらの意図を汲んでくれて助かった)
今まで変装を使用人に見抜かれたことが無いテオドールは大いに焦ったが、マリエットの対応を見て安堵した。
そして、きっかり十分で出てきたナポリタンを前に、頬が緩みそうになる。
「いただきます」
使用人に混じってひと口目を運ぶと、言葉に言い表し難い味が広がっていく。
見た目からトマトを使っていることは想像できるが、今まで食べた料理には無いものだ。
(これは美味しいな。味付けは完璧だし、肉の食感もかなり良い。しかし、マリエット嬢はどこからこの肉を手に入れたのだ?)
これまでに無かった料理の味を満喫するテオドールだが、不審なことにも気付く。
この肉は貴族に出されるものと同じか、それ以上に良いものだ。しかし、賄いに使える費用は限られており、毎日決まった金額が料理人に手渡される決まりだ。
マリエットが優秀な令嬢だとしても、商店で破格の安さまで値切ることは考えにくい。
だから、不正や買収の二文字が脳裏を過った。
貴族が己の評判のために周囲を買収した例はいくつもあり、マリエットが同じようなことをしていることも考えられる。
だから、まずは王宮内の財務を管理している文官を調査することに決め、完食してからすぐ行動に移す。
けれども、不正の兆しは一切無く、あの肉の謎は深まるばかり。
テオドールはしばらく考え、ある可能性に行き着いた。
(まさかとは思うが、自ら狩りをしたのか? グルース公爵家の者なら、そういう事が出来るスキルを隠し持っていても不思議ではない)
王国内では、スキルを全て曝け出すことは義務になっていない。
義務にしなくても、権威に繋がるため大抵の者が自ら公表するためだ。
しかし、マリエットはグルース公爵家の者としては不自然にスキルが少ない。だから、何か強力なスキルを使えるのだろう。テオドールはそう考えている。
(マリエット嬢の手の内を知るには……まずは信頼を得るところからだな)
かくして、テオドールはマリエットに興味を持ち、距離を縮めようと行動を始めた。
夕食を終え趣味の時間を始めようとしていたテオドールの耳に、使用人の会話が入っていた。
「今夜の賄い、美味しかったなぁ」
「ナポリタンだっけ? 王家に出しきれなかった分にしては多かったな……」
「あれは賄い用に作ったらしいぞ。しかも、考えたのは新人の料理人らしい」
自分が楽しみにしているナポリタンを使用人が先に食べているらしい。
王族に出す前に使用人の賄いで出すことで、味の確認をしているのだろう。
これ自体は普段から行われていることで、ただ聞いただけなら気にも留めない。
しかし、今回は様子がおかしい。
先の会話以外にもナポリタンを褒めたたえる声が方々から聞こえてくるのだ。
(一回目は不評なことが多いが、今回は好評だな……俺も食べてみたい)
だから、テオドールは今夜の賄に興味を持った。
既に夕食を済ませた後だが、美味しいものは別腹と言う。完食は難しくないだろう。
「……俺が賄いを貰うことは出来るか?」
「いくら殿下でも、難しいかと。賄いは残り物や状態が悪い食材から作られます。味付けが良くても、とても殿下の口に入れるわけにはいきません」
とはいえ王族が使用人向けの賄いを口にすることは難しい。
使用人向けに作られる料理だから毒を盛られる心配はなく、また王族は解毒スキルを持っているため何か起きる心配は無いものの、それは周知されていないため料理人が快く料理を出すとは考えにくかった。
けれど、食べる方法が無いわけではない。
王太子と見抜かれなければ、賄いを口にすることも出来るはずだ。
「そうか。では、俺も使用人という体で貰いに行く。何も知らなければ、料理人が罰せられることも無い」
「では、私も見なかったことに致しますが、よろしいですか?」
「当然だ。全て俺が独断で行ったことで、責任も俺にある」
万が一があっても使用人達を巻き込まないよう策を講じ、テオドールは使用人達の調査で用いる変装用の服に着替える。
そして、侍従達の前を何度か往復して気付かれないことを確認してから、賄いが出される厨房へと向かった。
「今から賄いを頂くことは出来ますか?」
「ええ。麺を茹でる必要があるので、十分ほどお待ちいただけますか?」
「分かりました」
やり取りからは、気付かれている気配は感じられない。
しかし、対応している料理人――マリエットの顔を見れば、正体を見抜かれていると察せる。
(彼女は見なかったことにしているようだ。こちらの意図を汲んでくれて助かった)
今まで変装を使用人に見抜かれたことが無いテオドールは大いに焦ったが、マリエットの対応を見て安堵した。
そして、きっかり十分で出てきたナポリタンを前に、頬が緩みそうになる。
「いただきます」
使用人に混じってひと口目を運ぶと、言葉に言い表し難い味が広がっていく。
見た目からトマトを使っていることは想像できるが、今まで食べた料理には無いものだ。
(これは美味しいな。味付けは完璧だし、肉の食感もかなり良い。しかし、マリエット嬢はどこからこの肉を手に入れたのだ?)
これまでに無かった料理の味を満喫するテオドールだが、不審なことにも気付く。
この肉は貴族に出されるものと同じか、それ以上に良いものだ。しかし、賄いに使える費用は限られており、毎日決まった金額が料理人に手渡される決まりだ。
マリエットが優秀な令嬢だとしても、商店で破格の安さまで値切ることは考えにくい。
だから、不正や買収の二文字が脳裏を過った。
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義務にしなくても、権威に繋がるため大抵の者が自ら公表するためだ。
しかし、マリエットはグルース公爵家の者としては不自然にスキルが少ない。だから、何か強力なスキルを使えるのだろう。テオドールはそう考えている。
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